第3話



学園への道を一人の男が歩いていた。

スーツ姿の機龍である。

街の様子を窺いながら、学園へと向かって行く。

(平和だな……)

街の様子を見ながら機龍は思った。

人々には笑顔が溢れている。

最前線にいたことの多い機龍には、あまり見慣れない光景だ。

平和を感じながら、機龍改めて決意した。

この星をヴァリムの好きにはさせないと。


学園長室まできた機龍は扉をノックした。

「入りたまえ」

「失礼します。」

学園長室に入ると奥の机の椅子に仙人のような老人がいた。

一瞬機龍が、ヴァリムのマンマシーン計画の失敗作か、などと思ったことは銀河の彼方にでも飛ばしてしまおう。

「君かね、魔法十字軍からの派遣兵と言うのは?」

「(一応、軍関係からの派遣となっているのか……助かる)はっ!! 神薙機龍であります!!」

敬礼する機龍。

「フォフォフォ、さすがじゃのう。洗練された動きじゃ」

「ありがとうございます」

「しかし、なるべく生徒の前では普通に振舞ってくれ。生徒が不審に思ってしまうからのう」

「はっ、努力します」

と、ここで学園長室の扉が再びノックされた。

「学園長先生、ネギです」

「おお、入りたまえ」

「失礼します」

噂の子供先生、ネギが入ってくる。

すぐさま、機龍の存在に気付く。

「学園長先生、こちらの人は?」

「うむ、今日から警備員兼3−Aの副担任として君を補佐してくれる……」

「神薙機龍です。粉骨砕身の覚悟で任にあたりますゆえ、よろしくお願いします。ネギ・スプリングフィールド先生」

再びネギに向かい敬礼する機龍。

「えっと……あの……」

「フォフォフォ。すまんのぉ、ネギくん。彼は魔法十字軍からの派遣兵でな」

「魔法十字軍!! あの魔法界最強の軍隊の!! す、すごいですね」

(……俺は随分とすごいところから来たことになってるんだな)

「それでは教室に向かってくれ。みんなに紹介せんとな」

「わかりました。では、神薙さん、ついてきて下さい」

「はっ。それと自分のことは機龍で結構です。では失礼いたします」

学園長にお辞儀し、退室する二人。

近右衛門は一人になると、机から書類を取り出し目を通す。

「神薙機龍か……書類上の問題はないし、確認も取れておるのじゃがのぉ……何か引っ掛かるのぉ?」


機龍はネギ先生に案内されながら、渡された名簿に目を通し、超との情報と照らし合わせる。

と、一人の生徒の写真で目が停まる。

エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。

機龍を襲った少女だ。

(彼女もこのクラスか……まあ、俺がフェニックスのパイロットだとは気づかんだろう)

「機龍さん。着きましたよ」

3−Aの教室前で停まる二人。

「じゃあ、まず、僕が先に説明しますからここで待っててください」

「了解しました」

ネギが教室に入っていく。

休めの体制で、教室の前に待機する機龍。

「「「3年!A組!! 」」」

「「「「「「「ネギ先生ーっ!!! 」」」」」」」

クラスの中から元気な声が聞こえてくる。

「えっと……改めまして3年A組担任になりましたネギ・スプリングフィールドです。これから来年の三月までの一年間よろしくお願いします。それから、皆さん。今日からうちのクラスに副担任として新しい先生が来ます」

「えー、だれだれ?」

「カッコイイ人?」

蜂の巣を突いたように騒ぎ出す3−A。

「静かにしてください。では、紹介します。神薙機龍先生です、どうぞ」

「失礼します」

教室のかもいを潜るように入り教壇の横に立つ機龍。

「神薙機龍です。3−A副担任および体育担当として着任します。粉骨砕身の覚悟で任にあたりますゆえ、よろしくお願いします」

ハッキリとした声で言い、教室を見渡す。(武闘四天王とエヴァが殺気を飛ばしてきたが気づかないふりをする)

「えーでは、機龍先生への質問タイムとしたいと思います。いいですか?」

機龍の方を見て言うネギ。

「はい、問題ありません」

「では、質問のある方は手を上げてください」

「「「「ハイ、ハーイ!!」」」」

教室の所々から手が上がる。

「はい、柿崎さん」

「はーい、神薙先生は何歳なんですか?」

「18歳です」

((((若!!))))

「はーい!」

「はい、裕奈さん」

「身長何センチ?」

「195センチほどです」

((((高!!))))

機龍を見た人が当然思う疑問が終わった。

「はーい!」

「はい、亜子さん」

「どこから来たんですか?」

「茨城県小川町百里です」

「えっ!?自衛隊駐屯地のあるとこじゃん」

「ひょっとして元軍人?」

「「「「まっさかー!」」」」

「はい。元陸自です」

「「「「……うそ!!」」」」

クラスに一瞬、緊張が走る。

「は、はい!」

「はい、村上さん」

「趣味と特技はなんですか?」

「趣味は漫画とアニメ、特撮観賞。特技はタフなことです」

((((よかった……意外と柔らかい人だ……))))

こんどは、安堵の息が吐かれる。

「ハイ!」

「はい、朝倉さん」

「ズバリ、彼女は!?」

「いません」

あっさりと斬り捨てられた。

「では、初体験は?」

「朝倉和美くん。あとで職員室に出頭せよ」

「えっ!?」

放課後、朝倉は職員室に連行され指導(説教)を3時間くらった……(合掌)

「え〜、では……」

ネギが次の質問者を選んでいると、機龍が空いた席があることに気づいた。

「ネギ先生。一人、欠席がいます」

「えっ? あ、本当だ。まき絵さんはどうしたんですか?」

「あれ〜、おかしいな?」

「昨日は元気だったけど?」

教室が騒がしくなる。

と、その時、保険医のしずな先生が現れた。

「失礼します。ネギ先生、機龍先生。ちょっといいですか?」

「あ、はい」

「何ですか?」

しずなに付いて教室を出る。

何事かと思った3−A一同は聞き耳を立てる。


「何かあったんですか?」

しずなに尋ねるネギ。

「実はね……佐々木まき絵ちゃんが今朝、桜通りで倒れてるところを発見されて保健室に運ばれたの」

「ええ!!」

「佐々木くんが!?」

「「「「それ本当!?」」」」

とたんに、教室から顔を出す3−A一同。

「わぁ〜〜〜!?」

「……聞き耳立ててたな」


保健室のベッドの上で眠るまき絵。

「それで、容態は?」

しずなに尋ねる機龍。

「外傷はないわ。ただ眠ってるだけよ」

「なんだ。たいしたことないじゃん」

3−A一同から安堵の声が上がる。

「甘酒飲んで寝てたんじゃないかなー?」

「昨日暑かったし涼んでたら、気を失ったとか……」

(……いや、違うぞ!)

だが、ネギは別なものを感じとっていた。

(ほんの少しだけど……確かに『魔法の力』を感じる……)

「ネギ」

(どういうことだろう……僕の他にも魔法を使える人がいるのかな……?)

「ネギ先生」

(図書館島以外でこんな力を感じたことはない……もしかしたら……?)

「「ネギ(先生)」」

二人の声にはっとするネギ。

「ちょっとネギ。なに黙っちゃってるのよ」

「何か考え込んでいるようでしたが?」

「い、いえ、なんでもないです」

慌てて頭を振って保健室を出るネギ。

「あ、ちょっと!」

(あれじゃ何かあると言ってるようなもんだ)

「ひょっとしてアレかな?」

「例の吸血鬼事件?」

「吸血鬼?」

その単語に反応する機龍。

「最近、夜の桜通りに吸血鬼が出て、人の血を吸うって言う噂があるの」

「それってただの噂でしょう?」

「いや、でも実際に被害者が出てるって……」

「馬鹿馬鹿しい」

噂を一蹴するアスナ。

だが、機龍は一つの心当たりを浮かべていた。

(まさか……)


機龍の教師生活は波乱の幕開けだった。


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