第18話



風呂場の片付けを終えて、このかと3−Aを寝かし就けると一同はホテルのロビーに集まって情報交換をする。

「とりあえず、俺たちで西からの攻撃を防衛するしかないな」

「はい。しかし、機龍先生があそこまでできる戦士だったとは………驚きでした。ホントに自衛官だったんですか?」

「ん………まあ、それはおいおい話すよ」

刹那の質問をはぐらかし、機龍は話を続ける。

「西の狙いがこのかである以上、また何らかの手段に出てくるだろう」

「これ以上、好きにはさせません!!」

「このかのためよ! 協力するわ!!」

闘志を燃やす二人。

「ネギ先生………神楽坂さん」

「では、機龍さん。僕たちの指揮を執ってください」

「俺が?」

「機龍さんはプロですから」

さも当然に言うネギ。

「わかった………では、ここに防衛部隊・ガーディアン隊を結成する。作戦中はコードネームとして、ネギ先生をG1、神楽坂くんをG2、桜咲くんをG3、そして俺のことはリーダーと呼べ」

「ラジャー!!」

「「は、はい!」」

意気揚揚なネギとは対象に、本格的な機龍の雰囲気にやや圧倒される二人。

「それから、各々の連絡はこれで取り合え」

と言って、機龍がケースから出したのは、桜通りをパトロールしていた時に使っていた(第4話参照)インカム付きバイザー(4人分)だった。

「これは?」

「超とハカセ作の特殊バイザーだ。改良によって魔力や気を感知してその発生場所を教えてくれるようになっている」

「まるでスカ○ターね………」

誰もが真っ先に思い浮かべるであろうものを思い浮かべるアスナ。

「では、G2とG3は内部の警戒、G1は正面側の巡回、俺は裏側の巡回にかかる。各員、行動開始!!」

「ラジャー!!」

「「は、はい!」」

それぞれの持ち場につくガーディアン隊。


「こちら、ガーディアンリーダー。現在、異常なし。そちらは?」

ホテル裏側の巡回を終え、連絡を取る機龍。

[こちらG1。今のところ、異常はありません]

ネギから返信が来る。

[こ、こちらG3。問題ないと思われます]

刹那のややなれないといった感じの返信が入る。

[こちらアスナ………じゃなかった、G2。こっちも異常なしよ]

アスナの戸惑った返信が返ってくる。

「了解。G2、近衛くんはそこにいるんだな」

[あ、今ちょっと、トイレに行ってるけど………]

「何!? 何分ぐらいだ?」

[ちょっと、幾ら何でもそれは………]

「何分だ!!」

口調を強くする機龍。

[え、えっと、10分ぐらい………]

気迫に押されて答えるアスナ。

「G3!! 今すぐ調べろ!!」

[は、はい!!]

それを聞くやいなや、すぐさま刹那に命令を飛ばす。

(まさか………)

嫌な予感が頭を埋め尽くす。

[こちらG1!! 今、おサルの着ぐるみを着た女の人が、このかさんを!!]

そこへネギから報告が入る。

「やはりか!! 敵はもう潜入していたんだ!!」

[ええ〜〜〜!!]

[こちらも確認しました! トイレにあったのは身代わりの札です!]

アスナの驚愕の声と刹那の報告が響く。

「全員、直ちにその女を追跡!! 近衛くんを救出せよ!!」

[[[ラジャー!!]]]

指示を出すと自分も追跡を開始する機龍。

が、その前に、デフォルメされた巨大なサルとクマが立ちはだかった。

「む!?」

同時に襲い掛かるサルとクマ。

「チッ!! 遊んでいる暇はない!!」

ケースからグレネードランチャーを取り出し、サルに向けて放つ。

「ウキッ!!」

爆炎と共に消え去る巨大サル。

「クマッーー!!」

残ったクマがそのまま飛び掛る。

機龍はグレネードランチャーをしまうと、愛刀の二刀を取り出し、抜刀するとクマを×の字に斬り裂いた。

「クマッーーー!!」

紙型に戻る巨大クマ。

鞘を左腰に差し、納刀して帯刀すると、バイザーのセンサーをONにする。

バイザーの内側に移動している魔力の反応が映る。

「マズイ! だいぶ離されてるな………ん?」

バイザーに別の反応が映った。

バイクらしき熱源が多数、近づいて来る。

「暴走族か………ありがたい!!」

迷わずその熱源に向かっていく機龍。


サルの女………天ヶ崎千草を追って、京都駅で激戦を繰り広げるネギたち。

しかし、式神・猿鬼を倒すものの、刹那は乱入してきた神鳴流剣士・月詠に苦戦し、アスナは式神・熊鬼に足止めされ、ネギはこのかを人質にされ、手が出せないでいた。

「こ……このかさんをはなしてくださいっ! 卑怯ですよっ!!」

「ホーホホホホホ! まったくこの娘は役に立ちますなぁ! この調子で、この後も利用させてもらうわ!!」

「こ……このかをどうするつもりなのよ……」

熊鬼に締め上げられながらアスナが言った。

「せやなー、まずは呪薬と呪符でも使て口を利けんよにして、上手いことウチらの言うコト聞く操り人形にするのがえーな、くっくっくっ………」

「な………」

「何ですって………?」

(びきっ!!)

全員がその言葉に怒りを覚える。

と、その時、千草のいる階段の上の段から一台のバイクが爆音と共に飛び降りてきた。

「なっ!?」

慌ててこのかを放棄して逃げ出す千草。

「甘い!!」

しかし、バイクに乗っていた男………機龍は素早くバイクを飛び降りると、千草に目掛けてバイクを蹴り飛ばし、その反動でこのかの方に飛び、キャッチして着地した。

「うぎゃあぁぁぁぁーーーーーー!!」

バイクに押しつぶされる千草。

しかし、それだけでは終わらなかった。

機龍は懐からマグナムと取り出すと、バイクのガソリンタンク目掛けてぶっ放した。

「あぎゃあぁぁぁぁーーーーーー!!」

爆発に吹き飛ばされ、千草は夜空の星になった。

「悪党に掛ける情けはない!!」

怒りを込めて言い放つ機龍。

熊鬼も主がやられ消滅する。

「ああ〜、千草はん!! あんさん、何しますねん!!」

「ぐっ!!」

刹那を吹き飛ばすと、機龍へと襲い掛かる月詠。

機龍はこのかを地面に寝かすと、マグナムをしまい、ケースを置くと、左手で抜いた刀で月詠の攻撃を受け、右手で抜いた刀でカウンターを入れる。

「わわわ!!」

慌てて距離を取る月詠。

その間にこのかとの間に距離を空け、巻き添えに会わないようにする。

「みんな、近衛くんを!!」

機龍に促され、慌ててこのかに駆け寄るネギたち。

「このかさん!!」

「このか!!」

「お嬢様!!」

それを確認すると月詠に向き直る。

「お前も剣士か?」

「はい〜〜〜、神鳴流剣士、月詠いいます〜〜」

相変わらずの惚け口調で言う月詠。

「剣士の剣は弱き者を護るためにある。それを悪の為に振るうとは………許せん!!」

「お堅い方ですな〜〜〜。今時、そんな考え、通じまへんで〜」

「もはや問答無用!!」

構えをとる機龍。

「貴様も剣士ならば、実力で語れ!!」

「ふふふ………、神鳴流に敵うとお思いですか〜〜」

しかし、機龍は言い放つ。

「貴様が神鳴る剣ならば、俺はその神を薙ぐ剣だ!!」

そして、高らかに宣言する。

「神薙二刀流! 第248代継承者! 神薙機龍!! 押して参る!!」

一気に月詠との距離を詰め、二刀を振る。

「あわわわ!!」

慌てる月詠。

いかに達人といえど、男と女ではパワー差があった。

加えて機龍は軍人。

実戦的な戦い方を心得ている。

月詠に反撃させまいと、機龍は押して押して押しまくる。

まさに剛剣!!

「ええ〜〜い!! 負けまへんで〜!! にとーれんげきざんくうせーん!!」

距離を取ると、斬撃波を2発飛ばす月詠。

だが、

「!!」

一瞬、機龍の姿が揺らいだかと思うと、煙のように消え、斬撃波は何もない空間を通りすぎ、壁を破壊して消えた。

そして、月詠は脇腹に痛みを感じ、膝を付く。

「神薙二刀流………かすり斬り!!」

いつの間にか月詠の後ろに立っていた機龍が言った。

斬撃波が当たる寸前、機龍は転がるように残像を残すほど素早く移動し、すれ違いざまに月詠の脇腹を峰打ちしたのだ。

「無益な殺生はしない………立ち去れ!!」

「つ、次は負けまへんで〜〜〜」

脇腹を押さえながら退散する月詠。

「ふ〜〜〜」

機龍は深く息を吐くと納刀する。

駆け寄ってくるネギたち。

「すまない、遅くなった」

「いえ、十分間に合いました」

「あのバイク、どうしたんですか?」

ガラクタと化したバイクを指差して言うアスナ。

「いや、なに、親切な連中が貸してくれてな」

「「「はあ?」」」

「さ、帰るぞ。後は俺が引き継いでやるから、君たちは休んでくれ」


翌朝、京都で名を馳せていた暴走族が謎の壊滅を遂げたというニュースが入り、ネギたちは犯人が誰かすぐに検討がついたそうだ。


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