第22話



ついに始まってしまった『修学旅行特別企画!! くちびる争奪!! 修学旅行でネギ先生と機龍先生にラブラブキッス大作戦〜〜!!』

「さ〜あ、勝利の栄光は誰の手に!? ではメンバーの紹介に入りたいと思います」

実況役の朝倉が各部屋のテレビで見ている生徒に解説する。


1班代表 鳴滝風香 鳴滝史伽

「あぶぶぶ………お姉ちゃ〜〜ん、指導いやです〜〜」

「大丈夫だって。僕等には、かえで姉から教わった秘密の術があるだろ」

自信満々の風香とビビる史伽。

「そのかえで姉と当たったらどうするんですかー!? それに機龍さんに出会ったら1週間指導だよ〜〜〜!!」

ピシッと固まる風香。

鳴滝姉妹は悪戯での指導の常習犯だ。

機龍の指導の恐ろしさはその身で体験している。

「…………何とかなるさ」

「今の間は何です〜〜〜〜!!」

それでも諦めない2人。

果たして栄光を掴めるか?


2班代表 古菲 長瀬楓

「一位になってしまったらどーしよアルかねー!? ネギ坊主とは言えワタシ、初キスアルよ〜〜〜!!」

「んーーーーー」

規格外れの体力、身体能力をもつバカレンジャーの2人。

古はイベントを純粋に楽しんでいるようだ。

しかし、楓は、

(機龍殿………実力を拝ませてもらうでござるよ)

イベントに託けて、機龍と手合わせを狙っているようだ。

機龍にとってはいい迷惑である………


3班代表 雪広あやか ザジ・レニーデイ

「頼みますわよ! ザジさん!!」

「…………」

ショタパワー全開のあやかと終始無言のザジ。

「ネギ先生の唇は私が死守します!!」

「…………」

言うまでもないが、あやかはザジと意思疎通しているわけではない。

あやかが一方的に暴走しているだけだ。

(…………機龍先生)

もちろん、ザジの狙いが機龍であることなど知るよしもない………


4班代表 佐々木まき絵 龍宮真名

「龍宮さんが参加してくれるなんて心強いよ」

チームメイトにエントリーした真名にまき絵は言った。

「…………」

しかし、真名はそれに答えず沈黙している。

「龍宮さん?」

「まき絵くん、言っておくぞ」

深く静かに語りだす真名。

「私の狙いはあくまで機龍先生だ。それを邪魔するなら、例えチームメイトの君でも………」

素早くデザートイーグルを両手に握るとまき絵に突きつける。

「………蜂の巣にするぞ」

殺気を出しながら言い放つ真名。

目が本気だ。

「は、はい〜〜〜〜!!」

恐怖に支配されるまき絵。

端からルールなんて知らんつもりだ………


5班代表 綾瀬夕映 宮崎のどか

「がんばろうね!! 夕映!!」

「は、はい。すごいやる気ですね。何かあったんですか?」

普段とはうって変わって闘志を燃やすのどか。

その迫力にやや押される夕映。

「夕映、愛って何?」

「はっ? 愛??」

「ためらわないことなの!!」

「…………」

唖然とする夕映。

(機龍先生………これが若さですね!!)

恩師からの教えを胸に恋する乙女、いざ出陣!!


このメンツで血を見ずに治まるか? (無理だろう………)

果たして勝負の行方は!?


そんなことはつゆ知らず、ネギは身代わりの紙型を使うと見回りへと出かけてしまった。

………失敗した紙型が暴走していると気づかずに。

そして、機龍は、

「何だか騒がしいな?」

読んでいた漫画(ボボボーボ・ボー○ボ)を閉じると、ケースを持ち、愛刀を二刀とも腰に差して見回りに出た。

自分がターゲットに含まれているとは知らずに…………


そして、最初の会合から戦いは始まった。

激突する3班と4班。

「ーーーーーっ!! いいんちょ!?」

「まき絵さん!! 勝負ですわっ!!」

激しく(枕で)殴り合う二人。

「た、龍宮さん!!」

「ざ、ザジさん!!」

「「援護を!!」」

それぞれパートナーに助けを求める二人。

が、その姿はなかった。

「「あれ??」」

「おおっ、エモノたくさん発見アル!!」

さらにそこへ2班が乱入。

一瞬で階段前は戦場と化した。

『おおーーっと、開始早々、三つ巴の大乱闘だーーーっ!! 武道派、古菲選手が優勢か!? 枕を使用しない打撃は反則ですよーーーっ!!』


一方、その頃、教員宿泊室前では、

(よし、誰もいないな………)

迂回ルートでやって来た真名が、廊下の角から教員宿泊室の様子を窺っていた。

(さて、どうする? 機龍先生のことだから、まだ寝ていないだろうし………かと言って、寝るまで待つわけにはいかないし………強襲なんてもってのほかだ)

と、その時、

「!! 殺気!?」

慌てて屈むとさっきまで頭があった位置に投げナイフが突き刺さった。

魔眼を発動させると、ナイフが飛んできた方向を向きながらデザートイーグルを突きつける真名。

そこにはナイフでジャグリングしているザジの姿があった。

「!! ザジ!!」

無表情で今度はトランプを投げつけるザジ。

「!! くっ!!」

身を捻ってかわすと、反撃に発砲する。

ザジはそれをバック転で難なくかわす。

睨み合う2人。

無敵のガンナーVS地獄の道化師。

さながら、そんな光景だった。

凄まじいまでの殺気に実況の朝倉も黙り込む。


階段前では、なおも激しい争いが続いている。

だが、しかし、そんなに激しい争いを繰り広げれば、当然、この男が気づかぬはずがない。

「何の騒ぎだ!?」

争う2・3・4班の前に現れる機龍。

「「「き、機龍先生!?」」」

『お〜と! ここで標的の1人、機龍先生が現れた!!』

「! お前たち………どうやら指導されたいらしいな!!」

ケースに手を伸ばす機龍。

と、そこへ、手裏剣が飛んで来た。

「!! む!?」

咄嗟にケースを盾にして防ぐ。

「ここは拙者に任せるでござる」

どこからか忍者刀を取り出し、逆手に構えて言う楓。

「助かったアル、楓!」

「頼みましたわ、長瀬さん!」

「お願いね〜〜〜!!」

退散する3人。

「長瀬くん、どういうつもりだ?」

「一度、お主と手合わせしたかったのでござるよ」

「困った生徒だ………」

ケースを置くと二刀を抜く機龍。

刃がギラリッと輝く。

「………来い!!」

「ニンニン!!」

『あ〜と、長瀬選手!! 何を思ったのか、機龍先生と戦い始めた!!」

侍VS忍者。

時代劇顔負けの戦いが繰り広げられる。


『さあ、各班、激しい戦いを繰り広げております!! 果たして勝利は誰の手に!!』

2階階段前では機龍と楓が。

職員宿泊室脇の角では真名とザジが。

そして、職員宿泊室前の廊下で残りのメンバーが、激戦を繰り広げている。

だが、その戦いは意外な形で幕を下ろした。

「ひやああああぁあ〜〜〜〜〜〜っ!!」

1人、ネギの宿泊室に突入していたのどかの悲鳴が響いた。

慌てて、職員宿泊室前の廊下にいたメンバーが全員突入を果たす。

「のどか!!」

「本屋!! どーしたアルか!?」

見ると、のどかは目を回して気絶していた。

ネギの姿はない。

『え、えーと5班、宮崎のどかが果敢にもネギ部屋に突入しましたが、どうやらキスは失敗した模様!? ネギ先生は逃走しました! 各オッズは変わらず』

「ね…姉さん、朝倉の姉さん!」

ここでモニターをチェックしていたカモが異変に気づいた。

「何よ?」

「何か………俺っちの目の錯覚かなあ………ネギの兄貴が5人いるように見えるんだけど?」

「な………!?」

モニター5ヵ所全てにネギの姿が映っていた。


京都の夜はまだ明けない。


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