第24話



騒動から一夜明けて、機龍たちは集まって昨日の反省会をしていた。

「まったく、呆れたもんね。こんなにカード作っちゃって」

ネギと機龍のカードを見ながら言うアスナ。

「えうぅぅ〜〜〜………」

「………面目ない」

「ギャ〜〜〜〜〜、ダ、ダンナ!! 勘弁してくれ!!」

アスナに責められ、涙目になるネギと、首謀者の片割れのカモにキャメ○クラッチを掛けながら申し訳なさそうにしている機龍。

青い顔でカモの様子も見る和美。

(下手したら、あたしもベル○ンの赤い雨なんてくらってたかも………)

「とにかく、宮崎さんには魔法のことは伏せておいた方がいいでしょう」

「へっ? 龍宮さんはいいの?」

「龍宮はこちら側の関係者です」

「えっ! そうなの!?」

「知りませんでした………」

驚くアスナとネギ。

「ええ、とりあえず、事情の説明は………」

「俺がする」

刹那の言葉を遮って機龍は言った。

「機龍さん。しかし………」

「これは俺との契約カードだ。なら、俺が筋を通さなくてはならんだろう」

アスナから真名のカードを取ると、それを見ながら言う。

「なら、コイツを渡しといてくれ。カードの複製(コピー)だ」

と言って、カードの複製(コピー)を渡すカモ。

「ダンナは魔法使いじゃねえから契約執行はできねえけど、アーティファクトと念話だけならカードがありゃ使えるからな」

「分かった、渡しておく」

それを受け取ると、機龍はロビーへと向かって行った。

「やっぱり軍人ね。潔い態度だわ」

「軍人は関係ないと思うんですけど………」

変な感心をするアスナとそれに突っ込むネギ。


真名は4班のメンバーと共に全員私服でロビーに集まっていた。

「ちょっといいかな?」

「あ、機龍先生」

4班のメンバーが視線を向けてきたが、真名は視線を逸らし頬を染めていた。

「なんですか?」

「すまないんだが、龍宮くんを今日一日借りたい」

「!!」

指名されて驚く真名。

「え、龍宮さんを?」

「はは〜〜ん………」

1人頷く裕奈。

「さては機龍先生………龍宮さんと………」

「指導が必要か? 明石」

「すいませんでした」

指導と言う言葉を聞いたとたん、直立不動の体制になる裕奈。

「スマンな。じゃあ龍宮くん、ちょっと来てくれ」

「あ、ああ」

内心ドキドキしながら機龍の後を追う真名。

心なしか、機龍の方も少しそわそわしていた。


ホテル近くの橋に訪れる機龍と真名。

早朝のせいか、通行人はまばらだ。

橋の手摺りに腰を掛けた機龍の横に真名は立った。

「あの、機龍先生。私に何か?」

「昨日のことなんだが………」

途端にドキッとして顔を赤くする真名。

「こんなものが出てきてな」

と言って、機龍は真名の仮契約カードを内ポケットから取り出す。

「!! そ、それは!?」

無論、真名はそれを知っていた。

何故なら、元パートナーとのカードを今も持っていたからだ。

しかし、機龍が持つカードは真名のもっているカードとは違い、幼い頃の真名の姿ではなく、今の姿が描かれていた。

(昨日のアレは、仮契約目的の企画だったのか………)

己の迂闊さを内心で呪う。

「ネギ先生からこれが何なのかは聞いている。それにいたる経緯もな………」

さらに顔を赤くして俯く真名。

「ふぅ〜〜〜………龍宮くん」

「は、はい!」

大きく息を吐いた後立ち上がり、真名の方を向く機龍。

「本来ならば、君がやったことは学校校則に大きく違反するものであり、処罰の対象となることだ」

「はい………」

シュンとしてしまう真名。

「が、現在の状況を考えるとこれ以上戦力を減らすわけにはいかんし、君には部屋まで運んでくれたという恩もある」

「えっ?」

「よって、この件は特別に不問とする。しかし、次はないぞ」

「あ、ありがとう」

頭を下げる真名。

「とりあえず、コレは君に渡しておくよ」

カードの複製(コピー)を真名に渡す機龍。

「ああ、すまない」

渡されたカードを見て、また顔を赤くする真名。

「それと、今日には親書を関西呪術協会の本山に届けなくてはならない。俺は近衛くんの護衛を頼まれているから傍を離れられん。だから、龍宮くんにはネギ先生の方を頼みたいんだが………」

「わかった、引き受けよう」

「頼んだぞ」

そう言って右手を差し出す。

真名はやや戸惑いながらもその手と取る。

ガッチリと握手する2人。

(………やっぱり大きい手だな………そして、暖かい………あの人みたいに)

機龍の手か伝わる熱を感じる真名。

その思いはまたも元パートナーに行き着く。

「あ、機龍さ〜ん、龍宮さ〜ん」

不意に聞こえてきた声に慌てて手を離す真名と聞こえてきた方を向く機龍。

声の主、ネギが私服姿で走ってきた。

「ネギ先生。どうしたんですか?」

「アスナさんと一緒に行こうと思って、ここで待ち合わせの約束してたんですけど………」

「ネーギ先生」

と言ってやって来たのは私服姿の5班のメンバー全員だった。

「わあ〜〜〜〜っ!! 皆さん、かわいいお洋服ですねー」

思わずそう言うネギだったが、はっと我に返り、アスナに小声で話しかける。

「………じゃなくて!! なな、何でアスナさん以外の人がいるんですか〜〜〜〜っ!?」

「ゴメン。パルに見つかっちゃったのよー」

「ネギ先生! そんな地図もって、どっか行くんでしょー!? 私達も連れてってよー!!」

そんな2人を気にとめずに言うハルナ。

「5班は自由行動の予定はないのか?」

ネギに代わって機龍が聞いた。

「ないです」

「ネギくん、機龍先生、一緒に見て回ろー」

「むう………」

機龍は頭を捻ると小声でネギに言った。

「仕方ありません、途中で撒きましょう。俺が残りますからネギ先生は本山へ行ってください」

「わかりました」

ハルナたちに向き直る機龍。

「それじゃ龍宮くんも連れて行っていいかな? ちょっと、手伝ってもらいたいことがあるんだ」

「ええよー。人数は多い方が楽しいし」

「よーーーし!! んじゃ、レッツゴー!!…………っと、その前に機龍先生。自由行動なんだから私服に着替えてきてくださいよ」

と言われて、機龍は自分がスーツ姿のままであることに気づく。

「ああ、スマンスマン。今、着替えてくるよ」

その後、私服に着替えて(何故かギャ○ンこと一○寺 烈の格好)武装ケースを持った機龍と共にネギたちは出発した。


一同は嵐山近くのゲーセンで遊んでいた。

その中で真名と機龍はガンコントローラー式のシューティングゲームにのめり込んでいた。

それぞれ1丁づつ、機龍が右手、真名が左手で、ガンコントローラーを持ち、画面に出てくる敵を撃ち抜いていく。

「やるな、龍宮くん」

「機龍先生こそ」

そして画面にラスボスが現れる。

機龍と真名は背中合わせになり、銃を持った手をラスボスに向ける。

「「JACK POT!!」」

2人同時に放った弾丸がラスボスを撃破する。

[ミッションコンプリート!!]

電子声の後、スコア表の1位の場所に名前が記録された。

「ま、こんなもんか」

「だな」

とそこへ、ネギが話しかけてきた。

「機龍先生。それじゃ、僕たちは親書を届けに行ってきます」

「ん? そうか。じゃあ、龍宮くん、頼む」

「ああ、分かった。ネギ先生、私も付き合うよ」

「えっ!? でも………」

「心配するな、足手まといにはならない」

ネギは少し考えて言った。

「分かりました、よろしくお願いします」

「ああ、では行くか」

「気をつけてな」

アスナと合流し、本山へと向かうネギたち。

果たして、彼らを待ち受けているものは??


そして、ネギたちの様子を影から覗く者がいた。

「見つけたで〜〜。この前は遅れをとったが今度はそうはいきまへんで〜〜」

天ヶ崎千草とその仲間たちだった。

「へへ、あの西洋魔術師、結構やるみたいやな。楽しみや」

「この前は〜、二刀流のお兄さんに邪魔されましたが〜、今度はそうはいきまへんで〜刹那せんぱ〜い」

ニット帽を被り、学ランを着た少年と月詠が嬉しそうに言う。

「フッ………大口を敲いてるが大丈夫か? 何時か送った式神ヌエもやられたじゃないか」

と、そこで、後ろの方に佇んでいた軍服を着た男が言った。

「むう………そっちのお相手はあんさんの担当でっしゃろ。だいたい、今更になって手伝いに来るなんて遅すぎや」

「フン………手伝いが必要なほど、優秀だと言っていたお前たちが苦戦するとは思わなかったんでな………」

「ぐう………」

愚痴を零す千草を男は皮肉で言い包める。

「まあ、良い………」

男はゲーセンにいる機龍に目を向ける。

「………なかなか楽しめそうな奴もいるしな」

そう言った男の軍服の肩にはヴァリム共和国のマークが刻まれていた………


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