第47話


「ああ、絶景かな、絶景かな」

そう言う機龍の目の前には、白い砂浜、照りつける太陽、そして青い海と空が映っていた。

機龍の格好も、Gパンに白い半そでTシャツ姿で麦藁帽子を被ったラフな格好だ。

そんな機龍を他所にバカンスに洒落込んでいる水着姿のガイアセイバーズメンバー。

「いっくよー!!」

「それそれ!」

「キャハ! アハハハ!!」

「わっ! 冷たい!!」

浅瀬で水を掛け合うサクラ、アスナ、このか、刹那。

「う〜ん、良い日差し………」

「ホント………」

「焼くにもってこいですわ………」

「皆さん、焼きすぎると身体に悪いですから、気をつけてくださいね」

日光浴をする和美、千鶴、あやか。

それに見守るさよ。(どうやったのかの、スクール水着姿だ)

「ズズズズ〜〜〜………プハッーー! おいしーーい!!」

「うん、良い味です」

「夕映って、普通の飲み物も飲むんだね………」

パラソルテーブルの下で、トロピカルジュースを飲んでいる夏美、夕映、のどか。

「うりゃあぁーーー!! 弾丸サーブアル!!」

「行ったヨ! ハカセ!!」

「任せてください!! この『ビーチバレー君1号』で!!」

「メカを使うのは反則でござるよ」

クー・楓チームと超・ハカセチームはビーチバレーで対決している。

「おハロー!! ちうだぴょん!! 今日は南の島に来てるよん!!」

ホームページアップ用のグラビア写真を撮る千雨。

「………………」

少し沖でイルカと心を通わせているザジ。

「フン………たかが海程度ではしゃぎおって………」

[と言うわりには、ちゃっかり水着姿ですね、マスター]

愚痴を垂れながらも楽しむ気満々のエヴァと、ボディを人口皮膚(超&ハカセ製)で覆って水着姿になっている茶々丸。

「うーん、やっぱ、青空の下で飲む酒は格別だな」

「ソーダロ、ソーダロ」

チャチャゼロと一緒に酒を呷るカモ。

「フッ………海など、久しぶりだな」

「わあっ………ジンさん、速い!!」

「うおぉぉぉっ!! 負けんで!!」

競泳しているジン、ネギ、小太郎。

ここは、あやかの実家の経営する雪広グループのリゾート島の1島である。

連日における事件や出撃で、心身ともに疲労していたネギ達のため、機龍は隊全体で休暇を取ることにした。

そうしたところ、あやかがこの島を貸し出してくれたのだ。

万が一の時に備えて、麻帆良には警備用の無人PFを配置して来た。

それでも、わずか1日の休暇しか取れなかったが、ネギ達には十分な休暇だった。

「フゥ………」

はしゃぐネギ達を優しく眺めた後、ヤシの木の木陰に寝そべり、麦藁帽子を顔に被せる機龍。

………ややおっさん臭い。

そのまま寝入ろうとしていたところ、何者かが機龍の麦藁帽子を取った。

「ん?」

「何おっさん臭いことしてるんだ」

水着姿の真名だった。

とても中学生には見えぬ、褐色のナイスバディが眩しい。

「いや、何………ゆっくりしている方が性に合うのさ」

「それがおっさん臭いっていうんだよ、まったく………」

そう言って、機龍の隣に腰を下ろす真名。

「いいのか? 全員で休暇だなんて?」

「休息は大事さ。毎回、戦場で戦ってもらっているんだ………休暇ぐらいやらないとな」

「そうだな………」

「真名ちゃーーーん!! 真名ちゃんもこっちで楽しみましょうよーーーー!!」

と、サクラが真名のことを呼ぶ。

「あ、いや、私は………」

「楽しんでこいよ。俺は少し寝てるから」

「………そうか」

不満そうな顔でサクラの方に向かう真名。

(??………何かマズイこと言ったかな?)

(………お前が一緒じゃなきゃ、面白くないだろ)

相変わらず鈍いところがある機龍と、それにやきもきする真名であった。











やがて、日が頂点に昇り、昼となった。

海でのバカンスでの食事と言えば、バーべキュー!!

誰が言い出したか知らないが、そういうことになって、楽しそうに網の周りで団欒しながら、バーべキューに齧り付いている。

「いただきま〜す!!」

「肉、肉!!」

我先にと肉にがっつくアスナ達。

「こらこら! ちゃんと野菜も食べろ! 身体に良いんだぞ!」

そう言いながら、カボチャを齧る機龍。

「「「「「はーーーーい!!」」」」」

返事はするものの、肉に伸びる手は全然減ってない。

「やれやれ」

呆れながらも笑顔を浮かべる機龍だった。

その時、誰もが気づいていなかった………

沖の方の海面に巨大な2つの影が泳いでいたことに………











昼食後、機龍を除いてそろって海で泳ぐネギ達。

「まったく………」

相変わらず木陰で昼寝する機龍を見て、愚痴を漏らす真名。

「フフフ………真名殿。気になるでござるか?」

いつもの糸目の笑顔で真名に話しかける楓。

「なっ!? べ、別に私は、機龍のことなんか!!」

「誰も機龍殿のことなんか言ってないでござるよ?」

「うぐっ!!………」

自ら地雷を踏んでしまった真名。

「フフフフ………いやいや、恐れ入ったでござる。あの仕事人を気取っていた真名殿が、今は恋する乙女とは………」

「…………」

頬を染めて、顔を半分まで海に沈める真名。

「それで………機龍殿のどの辺に惚れたでござるか?」

「………お前に答える義務はない」

「ほ〜〜う………そういうことを言うなら………こうでござる!」

楓は真名に組み付くと脇腹を擽る。

「なっ、きゃ、きゃははははは!! バ、バカ、よせ、や、やめろーーー!! きゃははははは!!」

堪らず笑い声を挙げる真名。

バシャバシャと水をかき回すように暴れるが、楓は一向に離れない。

「何やってのかしら、あの2人?」

「さあ?」

「仲が良ろしいんですわね」

そんな真名と楓をやや離れて見遣るアスナ達。











5分後………

「ハア………ハア………ハア………ハア………」

やっと擽りから解放され、先程までとは別の意味で、顔を赤くして息を荒げる真名。

「白状するでござるか?」

ニンマリとした顔で真名に迫る楓。

それを見て、真名は観念したのかポツリと話し出す。

「………ああ、そうだ。私は機龍が好きだ。でも………」

「でも? 何でござるか?」

「私が機龍に惹かれているのは、機龍が死んだパートナーにどこか似ているからだ………でも、それはただアイツに元パートナーのことを重ねているだけかもしれない………」

「…………」

深刻な雰囲気に黙り込む楓。

「私は機龍のことが好きなのか…………それとも元パートナーの代わりとして見ているだけか…………自分でもよく分からないんだ」

「難しい問題でござるな〜」

と、楓が言った時………

「「「「キャアァーーーーッ!!」」」」

アスナ達の絹を裂くような悲鳴が響いた。

「「何!?」」

「どうした!?」

浜辺にいた機龍も飛び起きる。

キョオォォォーーーーーッ!!

見ると、アスナ達の前に巨大なタコが出現していた。

「タコ!?」

「妖怪か!!」

「皆!! 浜辺へ戻るんだ!!」

慌てて浜辺へと泳ぐアスナ達を追い掛ける大ダコ。

機龍はトランクから皆の得物を取り出す。

何とか浜辺へと辿り着くが、大ダコは尚もアスナ達を追いかけ、浜辺へと上陸する。

「「「「しつこいーーーーっ!!」」」」

「皆!! 迎え撃て!!」

そう言って機龍は、取り出した皆の得物を持ち主に投げると自分も愛刀の二刀を構える。

戦闘班でない一同と、まだ訓練期間の浅いあやかは後方へと下がる。(ネギ先生が残られるのなら私も! と喚いていたが、千鶴が引きずっていった)

「このぉーーーっ!!」

最初に仕掛けたのはアスナ。

ハマノツルギで大ダコに殴り掛かる。

足の1本で受け止める大ダコ。

「やあぁぁぁーーーーっ!!」

そこへ別方向から刹那が夕凪で斬り掛かる。

しかし、それも別の足で受け止められる。

キョオォォォーーーーーッ!!

そして、そのまま、2人一緒に投げ飛ばされる。

「キャアーーーッ!!」

「うわぁーーーッ!!」

しかし、落下地点にクーと楓が先回りし、2人を受け止める。

「大丈夫アルか?」

「油断大敵でござるよ」

「あ、ありがとう………」

「すまない………」

「飛び道具を中心にして攻めろ!!」

機龍の号令と共に、ジンがダブル・ファング、サクラがミサイルランチャー、ザジが爆薬入り投げナイフ、茶々丸がアイレーザー、エヴァが氷の矢、小太郎が空牙、ネギが白き雷を放つ。

一斉攻撃を受け、爆煙が大ダコを覆い、足が4本ほど千切れ飛んだ。

キョオォォォーーーーーッ!!

だが、爆煙が納まらぬ内に、大ダコは残りの足を振り回して暴れる。

「キャア!!」

「危ない!!」

それを機龍が二刀流で捌く。

そして、その陰から真名が飛び出し、大ダコの真上で逆さまになると、両手のデザートイーグルを向ける。

「レインストーム!!」

そのまま回転して、弾丸を雨のように浴びせる。

キョオォォォーーーーーッ!!

全身に弾痕を着けられ、大ダコは絶命した。

それを尻目に、真名は波打ち際に着地する。

「やった!!」

「さすが龍宮さん!!」

「まあな………」

そう言って、銃口から上がる硝煙をフッと吹く。

と、その時!!

海から水柱が上がる。

「む!? まだいたか!?」

水柱にデザートイーグルを向ける真名。

そして、水柱から出現したのは!!

キシャァァァーーーーーーッ!!

巨大なエビだった。

「エ、エビ!!………」

途端にヘナヘナとへたり込む真名。

「ちょ、ちょっと、龍宮さん!! どうしたの!?」

「マズイ!! 龍宮はエビが苦手なんです!!」

「逃げるでござるーーー!! 龍宮殿ーーー!!」

楓が叫ぶが、時既に遅し。

巨大エビは真名に向かってハサミを振り下ろす。

「龍宮さん!!」

絶体絶命かと思われたその時!!

「むん!!」

機龍が二刀でそれを受け止める。

キシャァァァーーーーーーッ!!

しかし、巨大エビは質量差に任せて機龍を押し潰そうとする。

「ぐぐぐぐ………!!」

足が砂にめり込んでいく。

「機龍さん!!」

「機龍の兄ちゃん!!」

ネギが右足に稲妻を宿らせ、小太郎が右手を獣化させて、巨大エビへと跳ぶ。

「超電○!! ドリルキィィィック!!」

「大・○・断!!」

ネギの電撃きりもみキックが巨大エビの背中に穴を開け、小太郎の鋭い爪による手刀が機龍を押し潰そうとしていたハサミを根元から切断した。

キシャァァァーーーーーーッ!!

苦悶の声を挙げ、後ずさる巨大エビ。

「もらった!!」

すかさず機龍は跳躍すると、太陽を背にする。

「神薙二刀流!! 電光斬り!!」

落下しながら右手の龍虎で縦に斬り裂き、着地後には左手の雀武で横に薙ぐ。

巨大エビは十文字に斬り裂かれ、絶命した。

「「「「やったーーーーーっ!!」」」」

ネギ達が歓声を上げた。

「……………」

と、機龍は何やら巨大ダコとエビの死骸を見つめている。

「機龍さん?」

「どうしたんですか?」

「なあ………」

巨大ダコとエビの死骸を指差しながら言った。

「コレ、食えるかな?」

「「「「「やめてください!!」」」」」











その後、死骸をかたずけ終わった頃には夕日が海を赤く染めていた。

「しかし、やっぱりもったいなかった気がするなー。あのタコとエビで海鮮料理が大量に食えたと思うんだが………」

「頼むからやめてくれ………」

波打ち際に立って、夕日を眺めながら言う機龍に、その隣で呆れ気味に言う真名。

「しかし、真名がエビが苦手だったとはなー」

「む………私にだって苦手な物くらいある」

「まあ、そりゃそうだな………ん?」

ふと足元に目をやると、何やらニヤリと笑ってしゃがみ込む機龍。

「まったく、とんだ休暇になってしまったな………」

そんな機龍に気づかず、夕日を眺めながらタメ息を吐く真名。

「お〜〜い、真名」

「ん?」

「ほれ!」

自分の方を向いた真名の眼前にエビを持った手を差し出す機龍。

「………キ、キャアァァァーーーーーーッ!! エビーーーーーーッ!!」

慌てて後ずさろうとして、尻餅を付く真名。

バシャーーンと大きく水を撥ねる。

「ハハハハ、いや、そんなに驚いてもらえるとは」

そう言って機龍は、エビを海に返す。

「き、機龍〜〜〜〜〜!!(怒)」

真名は、顔を真っ赤に染めて怒りを表す。

「お、おいおい、軽いジョークだって!!」

「うるさい!!」

そう叫んで、機龍に飛び掛かる真名。

「うわっ!! わ、悪かったよ〜〜〜!!」

それをかわすと、慌てて逃げ出す機龍。

「待て〜〜〜〜っ!!」

その後を追う真名。











「何やってのんかしら、あの2人?」

「追いかけっこ………ですかね?」

「いちゃついてるアルな」

「青春でござるな〜〜」

そんな2人を眺めながら談笑するアスナ達。

「待て〜〜〜〜っ!!」

「待たない〜〜〜〜っ!!」

波打ち際をバシャバシャと水を撥ねながら追いかけっこを続ける機龍と真名。

傍から見ると、2人の行為はいちゃついてるようにしか見えないのだった。











日本近海の海底………ヴァリム共和国軍強行侵略偵察部隊ヘルキラーズ小隊秘密基地。

その作戦室にて………

「例の逃げ出した研究用に捕獲した妖怪………撃破されたみたいだぞ」

作戦室に入ってくるとヴェルに言い放つハクヤ。

「あら、そう………別にいいわ、どうせ廃棄する予定だったんだし」

さも平然として、見ていた資料から目を離さずに返事をするヴェル。

「また必要になったら、新しいのを捕まえればいいでしょ」

そう言って、邪悪な笑みを浮かべる。










こうして、機龍達の休暇はドタバタしながらも終わった。

しかし、その陰でヴァリムは野望を遂行しているのであった。










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