第71話


ヴァリム軍秘密基地へと飛ぶ魔法戦艦バハムート。

やがて、海上上空へと進む。

魔法戦艦バハムート・ブリッジ………

「陸地上空より離脱」

「航行モード、第2シフトへ移行」

「レーダー及びセンサー、感度良好」

「エンジン出力、安定中」

「ガーディアンエルフとの合流地点まで、1時間ほどです」

「うむ」

艦長席でオペレーター達の報告に頷く超。

「機龍達はどうしてるネ?」

「格納庫で機体の最終調整を行なっている模様です」

「分かった………いよいよ決戦ネ………」

差し迫る決戦を感じ、その表情は真剣に引き締まっていた。











魔法戦艦バハムート・格納庫………

「オーイ!! そこのレンチ取ってくれ!!」

「ハイ!!」

「4番の装甲板はどこだ!?」

「こっちにありまーす!!」

格納庫では機龍達パイロットと、整備員と整備ロボ達が慌しく駆け回り、機体の最終調整を行なっていた。

「ねえ〜〜、こんな差し迫って整備に力入れないでも良いんじゃない?」

めんどくさがりスキル全開の美空が愚痴を零す。

「差し迫っているから整備に力を入れてるんだ」

「いざって時に整備不良で戦死なんて御免でござるからな」

真名と楓が、諭すように言う。

「でも〜〜………」

「コラーーーーッ、春日くん!! ここは戦場だぞ!! 子供の遊び場じゃないんだ!! やる気がないんだったら、海に叩き落とすぞ!!」

直もめんどくさがる美空に、機龍の怒声が飛んだ。

「は、ハイ〜〜〜〜ッ!! スイマセン〜〜〜〜ッ!!」

慌てて手伝いに走る美空であった。

「まったく、もう………」

それを確認すると、機龍は再び愛機の調整の続きを行なう。

「…………」

真名は、そんな機龍を無言で見つめていた。

「………機龍殿に思いは伝えたのでござるか?」

「えっ!?」

と、突然楓が話しを振ってきた。

「な、何だ、楓! いきなり!!」

「今度の戦いはこれまでで最大のものになるでござろう………今までのように、心に気になることを抱えたままでは、危ないでござる」

「そ、それは………」

楓の最もな反論に黙り込む真名。

「真名のことでござる。もう気持ちの整理はついているでござろう?」

「…………」

真名の無言をYESととったか、楓は話を続ける。

「なら、行動するでござる。このまま黙っているなんて、真名らしくなんでござるよ」

と楓が言った時、

「よし! こんなもんで良いだろ………さて、一休みするか」

機龍はそう言って、格納庫を後にした。

「あ!………」

「ほら、真名」

「………分かった。行ってくる」

真名は、機龍の後を追って行った。

楓はそれを微笑みながら見送り、再び自分の愛機の整備に手を入れ始めた。

そのため………真名の後をさらに数人の男女がついて行ったのを見逃したのであった。











魔法戦艦バハムート・休憩室………

自販機と長椅子が置かれた空間で、機龍は長椅子に腰掛け、缶コーヒーを煽っていた。

「ふう………いよいよ決戦か………」

機龍の頭の中に、この1年程の事が蘇ってくる。

(初めてこの星に来て時は………マクダウェル君と絡繰くんに襲われ………その後、超とハカセに出会い………何の因果か教師をすることになったんだよなー………)

懐かしいそうな目で天井を見上げる機龍。

(まさか夢にも思わなかったな………小隊長を任されたと思ったら教師までだなんて………そして今は、防衛部隊、機甲兵団ガイアセイバーズの総隊長だしな………)

脳裏に隊員達の顔が浮かび上がる。

そして最後に、何時も彼の傍にいたパートナーの女の子が浮かび上った時、機龍は回想を中断した。

(真名………)

そのまま、今度は真名のことを考え出す機龍。

(思えば………真名には特に世話になったな………)

と、機龍の脳裏に、この間の竜蔵との遣り取りが思い起こされる。

(これからも真名の事をよろしくお願いします………先生として………恋人として)

(恋人………ハッ!! イカンイカン!! 何を考えてるんだ、俺は!!)

「機龍」

「うわっ!! ま、真名!!」

いつの間にか背後に立っていた真名に驚く機龍。

「? 何を驚いてるんだ?」

「い、いや………何でもない」

機龍は、そう言って飲み終わったコーヒーの缶をゴミ箱に投げ捨てた。

「隣、座っても良いか?」

「あ、ああ………」

真名は、機龍の隣に腰掛けた。

「何を考えてたんだ」

「う、うん、決戦の事をな………」

真名の事を考えていたなどと言えず、嘘を言う機龍。

「そうか………なあ、機龍」

「ん?」

「その………お前………好きな人とかいるのか?」

その質問に、機龍は思わず椅子からずり落ちた。

「な、何だ、いきなり!?」

「わ、私は………私は………その………お、お前の事が………」

その続きが中々でない真名。

(あ〜ん、もう! 真名ちゃん、しっかり!!)

(サクラさん、静かに!! 気づかれちゃうよ!!)

(機龍………お前も年貢の納め時だな………)

(皆さん〜〜〜、やっぱりやめましょうよ〜〜〜)

(こういうの良くないわよ)

(とか言いながら、ネギくんもアスナもちゃっかり覗いとるやんけ)

(むふふ………流石のダンナもタジタジだな)

そして………それを入り口の影から覗き見ているサクラ、ハルナ、レイ、ネギ、アスナ、このか、カモの姿があった。

(フフフ………やっぱり私が感じたラブ臭は間違いじゃなかった………まさか、あの龍宮さんが恋だなんて!! しかも相手は機龍先生!! 良いね、良いよ〜〜!!)

(何が良いのよ………(汗))

(おい、静かに!!)

「私は………お前が………好きだ!!」

思いっきり言い放つ真名。

(((((((言った〜〜〜〜〜〜っ!!)))))))

「き、機龍! お前は私の事をどう思ってるんだ!?」

そして、間髪入れず機龍の気持ちを聞く。

覗き組も、ズズッと聞き耳を立てる。

驚いて呆然としていた機龍だったが、立ち上がると真名に背を向けながら言った。

「俺と君との関係は………相棒だ。それ以上でもそれ以下でもない………」

「え………」

(((((((なっ!?)))))))

思わぬ機龍の言葉に驚愕する真名と覗き組一同。

「き、機龍!!………」

「間もなくガーディアンエルフ旗艦との合流だ。戦闘員にブリッジに集合するよう伝えておいてくれ」

「き………」

「どうした? 聞こえなかったのか?」

「!!………」

真名は主を返すと、休憩室から逃げ出すように走り去って行った。

………その目からは、涙が零れていた。

(すまない………真名)

「機龍ぅぅぅぅぅぅーーーーーーーっ!!」

「ん? うわぁっ!!」

と、物陰から飛び出してきたレイが、両手で機龍のパイロットスーツの襟首を掴んで締め上げる。

「テメェーッ!! どういうつもりだ!? あんな事言いやがって!!」

「見損ないましたよ! リーダー!!」

「そーよ!! 龍宮さんが可哀想じゃない!!」

他の覗き組を次々に出て来て、口々に機龍を非難した。

「………聞き耳を立てていたのか」

「そんなことはこの際どうでも良いのよ!!」

良いのか!?

「どうしてですか? 機龍さん!!」

「何であないな事を!?」

「ダンナ!! 今回ばかりは見損なったぜ!!」

「………レイ、放してくれ」

そう言われて、レイは渋々といった様子で機龍を解放した。

「………例え、真名が俺に好意を持っていても………俺は彼女の気持ちには答えられないんだ………」

「どうしてですか!?」

「俺が………この星の人間じゃないからだ」

「「「「「「「!!」」」」」」」

その言葉にハッとする一同。

「俺は、ヴァリムの侵略阻止という任務を受けてこの星に来ている………この決戦で、ヴァリムとの決着が着けば………おそらくアルサレア本国から帰還命令が下る………俺はずっとこの星にいられるわけじゃないんだ」

「そ、そんなの………」

「そして………」

ネギが何か言おうとするが、機龍は言葉を続ける。

「俺は軍人だ………明日の命も知れぬ仕事をしている………もし俺が戦死したら………彼女にまた大切な人を失う悲しみを味あわすことになってしまう………」

「え、またって?」

「話はここまでだ。もうすぐガーディアンエルフとの合流地点だ。全員、ブリッジに集合するように」

機龍はそう言い放つと、ネギ達の横をすり抜け、休憩室を後にするのだった。

「「「「「「「………………」」」」」」」

ネギ達は何も言えず、暫くその場に立ち尽くすのだった。











魔法戦艦バハムート・ブリッジ………

パイロット達が全員集合し、ガーディアンエルフとの合流を今か今かと待ち侘びていた。

「2時方向に艦影」

「識別確認。ガーディアンエルフ旗艦、ビリーブです」

と、そこへ、和美とさよから報告が挙がり、全員が窓からその方向に目をやった。

そこには、まるでスフィンクスに翼が付いたような形の、シルバーのカラーリングに赤のラインが引かれた戦艦が飛んでいた。

「あれがガーディアンエルフの旗艦………ビリーブか」

「綺麗な船………」

「何か、神秘的だな………」

その美しい外見に、思わずそんなことを漏らす一同。

「ビリーブより通信が入っています」

「メインモニターに映すネ」

「了解!」

夕映がコンパネを操作すると、メインモニターに海軍の将校の帽子を冠り、黒いロングコートを身に纏った、銀髪で青瞳、髪は肩までで後ろで縛っている美人が映し出された。

「初めまして。カーディアンエルフ旗艦ビリーブ、艦長代理のアキナ・レミ・アンダーセンです」

「うわっ! すっごい美人!!」

「…………(怒)」

思わず声を挙げたシリウスの背中を、刹那が思いっきり抓った。

「イデデデデデデッ!! な、何だよ、刹那ちゃん!?」

「………別に」

そっぽを向いて拗ねたような表情を見せる刹那。

シリウスは、何が何だか分からないようだったが、取り敢えず平謝りするのだった。

「久しぶりだな、アキナ」

「元気だったか?」

それを無視して、レッディーとゼラルドがフランクそうに挨拶した。

「ええ、レッディーさんもゼラルドさんもお元気そうで何よりです」

柔和な笑みを浮かべて返すアキナ。

「あ! アキナさん! レッディーさん達と話してるの? 代わって代わって!!」

そこへ、元気そうな声と共に、アキナと同じように海軍将校の帽子を冠り、黒いロングコートを身に纏った、肩まであるブロンドのロングヘアーで、前に三つ網で縛った髪が肩にかかっているという髪型で、濃い紫色の瞳をした、やや幼さが残るが結構な美少女が割り込んできた。

「あ! ブラウニー!」

「ヤッホーッ!! レッディーさん! ゼラルドさん! 元気だった?」

驚くアキナの様子を気にもせず、片手を上げて、これまたフランクな挨拶をしてくるブラウニーと呼ばれた美少女。

「ああ、元気だぜ」

「相変わらずだな、ブラウニー」

「えへへ………」

そう言われて子供っぽい無邪気そうな笑みを浮かべるブラウニー。

「ブラウニー。作戦中ですよ」

「あ、ゴメンなさい! どうも失礼しました。カーディアンエルフ旗艦ビリーブ、副艦長代理のブラウニー・ウィンターホールドです」

アキナに窘められて、ブラウニーは真面目な顔になって敬礼する。

「機甲兵団ガイアセイバーズ総隊長、神薙 機龍少尉です。貴官等の御協力、誠に感謝いたします」

機龍は、一同の前に出ると、ビシッとした軍人らしい敬礼をする。

「いえ、当然のことですよ。神薙総隊長、よろしくお願いします」

アキナも、真面目な顔になって敬礼を返す。

「こちらこそ………ところで、アンダーセンということはひょっとして?」

「はい。ニコラス・ア・アンダーセンは、私の叔父です」

「やはり、そうでしたか」

(誰ですか? ニコラス・ア・アンダーセンって?)

機龍が言った聞きなれない名前について隣にいたレイに尋ねるネギ。

(嘗てアルサレア戦役で、グレンリーダーに並ぶ数々の伝説を作った名艦長さ)

(アルサレア戦役が終結したのは、グレンリーダーと彼の御蔭だと言われているだ。士官学校の教本にも必ず名前が出てくるほどさ)

声が聞こえたのか、アーノルドも口を挿んだ。

(へ〜〜、凄い人のお孫さんなんですね)

ネギが感嘆を表す。

「英雄のお孫さんにお会いできて、光栄です」

「いや〜、私は負け戦ばかりしてきた女ですよ」

アキナは、帽子を冠り直しながら言った。

と、そこへ!!

突然、警報が鳴り響いた!!

「!! どうした!?」

「12時方向より、飛行物体多数接近!!」

「識別はヴァリム軍PF!! 真っ直ぐこちらを目指して飛んで来ています」

「こちらでも確認しました」

オペレーターとアキナから声が挙がる。

「先手を取られたか!?」

「総員出撃!! ヴァリム軍基地までもうすぐだ!! 何としてもここを突破する!!」

「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」

全員が格納庫に向かって走り出した。











魔法戦艦バハムート・格納庫………

整備員が慌しく撤収する中、全員が自分の愛機へと乗り込んで行く。

ふと機龍は、真名の方に目をやった。

すると、真名も機龍の方を見ていたので、お互いに目が合う。

そして、お互いに気まずそうに視線を反らし、機体へ乗り込んだ。

「? どうしたんだ、あの2人?」

「何かあったのかな?」

それを見た隊員達が、怪訝な顔を浮かべる。

「レイ、何か知っているか?」

レイに尋ねるアーノルド。

「それが………」

レイが答えようとした時………

「カタパルト準備完了!! 発進シークエンスに入ります!!」

というアナウスが流れ、搭乗が完了した機体はカタパルトへと輸送されて行った。

………何故か『ワンダバ』というコーラスが流れている。

「GO!!」

機龍の掛け声が響き、ガイアセイバーズの機体は、次々にカタパルトから飛び立って行った。

ビリーブからも、多数の艦載機発進して行く。

「全機、戦力を集中させよ!! 我々の目的はヴァリム軍基地だ!! 一気に突破するぞ!!」

「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」

ガイアセイバーズは、戦艦の正面に道を造るように戦力を集中させた。





「雷の暴風!!」

「アルティメットフラッシャー!!」

Gウィザードから放たれた稲妻を纏った竜巻と、Gウルフの放った光線が絡み合い、敵陣を切り裂く。





「行っけぇぇぇーーーーっ!!」

[ターゲット、マルチロック!!]

Jランチャー・サクラスペシャルと、Gジェットから雨のようなミサイルが発射され、敵機に命中していく。





「いいんちょ! 遅れるんじゃないわよ!!」

「その台詞、そのまま貴方にお返しいたしますわ!!」

GヴァルキューレとGレディが、敵陣に突っ込みながら大暴れし、敵を攪乱する。





「それそれそれ!!」」

「ハイです!!」

エネルギー砲と展開式グレネードランチャーの同時射撃で弾幕を張るGフェアリー・ルビー&サファイヤ。





「ニンニンニン!!」

「喰らえ!!」

Gニンジャが分身して攻撃を加えた敵機に、トドメを刺していくGガンナー。





「氷爆!!」

「…………」

氷の爆発を起こし、敵機を固めていくGバンパイアと、クラッシュボールをジャグリングしながら投げつけて、敵機を火達磨にしていくGマジシャン。





「ハリケーントルネード!!」

「Gリボーーーンッ!!」

飛行不能のため、バハムート艦上から近づく敵機を迎撃するGマーメイドと、それをサポートするGノーベル。





「神鳴流奥義!! 斬空閃!!」

「ホアッタァァァーーーーーッ!!」

そして同じく、ビリーブに近づく敵機を迎撃するGウイングとGカンフー。





「第1バンドゲルググ隊、俺に続けーーーっ!!」

「第3リック・ドムV隊は遠距離仕様にて艦上より支援砲撃!! 第2ジムサラマンダー隊は私に着いて来い!!」

「「「「「「イエッサァァァーーーーーッ!!」」」」」」

JエアロとJスパイラルパワードは、ビーリブ部隊の指揮を取りながら、様々なところに展開する。





「大佐、大丈夫ですか?」

「フッ………レイ。その台詞、そのまま返してやるぞ」

JヘルとJクーロン・アーノルドカスタムは、背中合わせの状態になり、近寄ってくる敵機を撃墜している。





「道を開けな!!」

「さもなくば………地獄を見るだけだ」

カスタム・メガ・ガトリング砲で前方の敵機を薙ぎ払うJギルダーと、敵中を飛び回りながらスタイリッシュアクションを決めるJブレイダー。





「神薙二刀流!! 疾風怒濤!!」

敵陣に深く斬り込み、孤軍奮闘してみせるJフェニックスカスタム。





「拡散熱線放射砲!! 3連装迫撃砲!! 照準セット!!」

「撃てえぇぇぇぇぇーーーーーーーーーっ!!」

一方、バハムートもその圧倒的火力でPFを撃墜しながら強引に進んでいく。





「ECM防御システム全開!!」

「インディゴ! 全砲発射!!」

それに続くようにビリーブも、全砲門を開いて突き進む。











戦闘開始から1時間後………

遂に、ガーディアンエルフとガイアセイバーズの前に、ヴァリムPF軍団を吐き出している島が見えてきた。

「見えたぞ!! あの島だ!!」

「もう少しだ!! ガンバレ!!」

「「「「「「「オオォーーーーーーッ!!」」」」」」」

ガーディアンエルフとガイアセイバーズは、士気を高める。

一方、魔法戦艦バハムート・ブリッジでは………

「目標の島を発見しました!!」

「敵PF部隊は、あそこから発進している模様です!!」

「ウム………艦首波動魔砲、発射用意!!」

「何っ!? 波動魔砲を撃つ気か!?」

超の命令に仰天する千雨。

「まだテストもしてないじゃん!!」

和美も抗議の声を挙げる。

「だから、今するネ」

「正気とは思えませんね………」

夕映が呆れたように言う。

「これ以上の増援を許していたら、進軍は不可能ネ。幸いにも、敵機軍団はガイアセイバーズとガーディアンエルフとの戦いで手一杯ヨ」

「………了解しました。艦首波動魔砲、発射用意!!」

「目標、敵要塞島!!」

さよとのどかが、いの一番に発射準備に取り掛かった。

それを見て、他のオペレーターも意を決したように発射準備に掛かる。

「ガイアセイバーズ、及びガーディアンエルフ全機に告げる!! 本艦はただ今より、波動魔砲の発射態勢に入る」

超がPF部隊に通信を送る。

[波動魔砲?]

[何だ、それは?]

「説明している時間はないネ! 今から送る射線上より退避!! 発射態勢中、本艦をガードして欲しいヨ!!」

戸惑ったような返信が幾つか返ってきたが、超はそれを無視してオペレーターに射線データの転送命令、PF部隊に護衛命令を送る。

[………分かった。全機、射線上より退避!! バハムートを護衛せよ!!………信じるぞ、超!!]

超を信頼し、機龍は命令を発令する。

「ありがとネ、機龍………波動魔砲!! エネルギー充電開始!!」

[こちら機関室!! 戦闘の影響で魔相転移エンジンが不安定です!!]

[やばいよ〜〜!! 波動魔砲なんて撃ったら、どうなっちゃうか分かんないよ!!]

機関室からハカセの報告と、美砂の切羽詰った声が入ってくる。

「出力は半分で良いネ!! 今撃たなければ、やられるヨ!!」

[ええい!! やってやろうじゃん!!]

裕奈の気合の声と共に機関士組全員が作業に取り掛かる。

「エンジンのエネルギー伝達弁を閉じます!!」

「回路、艦首波動魔砲へ!!」

「全エネルギー!! 波動魔砲内シリンダーへ送ります!!」

「波動魔砲全安全装置解除!!」

[こちら機関室!! 異常なし!!]

[エネルギー流入!! 順調なり!!]

テキパキと発射準備を整えるクルー達。

「自動修正、照準プラスマイナスゼロ!!」

「エネルギー充電、120%!!」

「全員! 耐ショック、耐セン光防禦、用意!!」

超がそう言いながら遮光ゴーグルを装着し、シートベルトをきつくする。

オペレーターもそれに倣い、機関室員や格納庫員も専用シートに身体を固定する。

「艦首波動魔砲………発射っ!!」

超の号令と共に、バハムート艦首から途轍もないエネルギー砲が発射された!!

射線上にいたヴァリム軍のPFは跡形もなく消し飛び、着弾した島からはキノコ雲が上った。

程無く、凄まじい衝撃波が吹き荒れた。

「うおおぉぉぉーーーーーーっ!!」

「キャアァァァーーーーーーっ!!」

ガイアセイバーズとガーディアンエルフのPF隊は、吹き飛ばされないように機体を制御するので手一杯になる。

やがて、衝撃波が収まると、そこには島表面部のカモフラージュ部分をすっかり吹き飛ばされ、発進口も熱でドロドロに溶けてしまっているヴァリム軍基地があった。

「す、凄い………」

「半分の出力で、この威力なんて………」

あまりにも凄まじい波動魔砲の威力に呆然とするオペレーター達。

「よし!! 突破口が開いたぞ!!」

「リーダー!!」

「分かっている!! 惑星J組及びネギくん、武闘四天王、神楽坂くんは基地内へ突入!! 残りの者とガーディアンエルフの方々は、残存PF隊の排除並びに出口の確保を頼む!!」

「「「「「「「了解!!」」」」」」」

機龍に続き、露になった基地入り口へと突入していく突入組。

果たして、そこで待ち受けるものは!?










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