(う…ん…)
この状況は、はてどうしたものか。
表面上は無表情に、けれど、この状況をそのままにしていいものかと、首を捻りながらも刹那は思案中だ。
ベッドの中。
狭い、シングルベッドに2人。
お互い全裸で、肌は密着していて、しかも言ってしまえば、未だ挿入中だ。
セックスは先程終わったというのに、抜かないからこういうことになるんだ。しかも体内でずくりと疼いていて、刹那もたまらない。いい加減にして欲しい。
狭いシングルベッドで身を寄せ合っている。首にあたるのは、ロックオンの腕枕というものだし、密着した肌に触れるのはロックオンの体温だ。汗が引いてようやく温かみが戻ってきた。

濃厚なセックスが終ったのはつい先ほどで、体内の精液を洗い流そうと、身体を動かした刹那を、ロックオンは引き止めた。
「今日ぐらいは傍にいろって」
引き寄せられて、尚も深くへ挿入される。
ロックオンの言葉と強引な態度に、刹那はなすがままになっている。まったくこの男は身勝手だ。
一度イったのだから萎えているかと思えば、思いの他ロックオンは元気で、完全な萎えではないらしい。
中途半端に勃起したままだから、もう一度精力を取り戻すのは早いだろう。しかし本当にこの男は24歳なのか。もしかしたら、フケ顔に見えて本当はもっと若いのかもしれない。そういえばサーシェスと初めてセックスした時は20代だったが、あの男も特別元気だった。…もしかしたら、自分の性教育だけ間違っているのかもしれない。誰だ、20を過ぎたら大人しくなるとか俺に言ったのは。大嘘じゃないか。
そんな事まで無表情で考えるから、ロックオンは刹那が退屈をしているのかと思い、湿った前髪を梳いてはまだ幼さの残る額にキスを落とし、舌で舐めてはあやす。

「刹那、もうちょっと休んだら、もう1回な」
「………」
いや、もういい。
そう言おうとして、なぜか言う気が削がれた。まぁもう1回ぐらいならいいかと思ってしまった刹那こそ若い。当然の事ながら、ロックオンやサーシェスよりも若いのだ。数をこなせるのも若い内。

「もうそろそろお前も勃つ?」
露骨に言われ、答える気もなく黙っていたら、むんずと握られた。そのままゆるゆると扱かれて、あぁもう仕方ないなと身を委ねる。やりたいならやればいい。どうせなら早く終わって、睡眠に時間を当てたい。
しかしそれにしても。
何故、今日はこんなにもねちっこいんだ。
今も、髪を触ってきたり、口先でうなじにキスをしてきたりと、ねちねちしている事この上ない。

(……発情期か?)
この寒い時期に。
はた迷惑にも程がある。

刹那は、離れる事が出来なくなったロックオンの腕の中で、小さくため息をついた。
刹那は知らない。
今日が大変意味のある日だという事を。

「…まだ…やるのか…」
「お?どうした、もう次にいっていいのか?積極的だなぁ刹那」

何を言う。人の内股を撫でさすっておきながら。いい加減にしろ。中途半端に挿れているぐらいなら、さっさと喘がせてみろ。
そう思う心を、眉間に皺をよせる事で表情に表す。
言葉を伝えるのが面倒くさくて、
「やるなら早くしてくれ…」
という、ため息まじりに答えれば、ロックオンは期待に沿えるべく、もう一度刹那を組み敷く。
体勢を入替えようとして、ずるりとロックオンが抜けた。
どろりと精液が垂れる。あぁ気持ち悪い。腹を下しているみたいだ。
色気もない事を思いながらも、楽しそうに刹那の上に乗り上げるロックオンを見つめる。
また、正常位だろうか。
狭いシングルベッドでは、やれる体位は限られていて、駅弁やらアクロバティックな疲れる体位を選ばれないだけいいのかもしれないが、この先ロックオンがノってきてしまえば、どうなるか判らない。
あぁ、疲れるのはいやだ。そう訴えてみようか。いや、でも言ったら言ったで、騒ぎ立てた上に何か違うものを要求されそうだ。やめておく。
それにしても。
「なんで今日はこんなに…」
「ん?どうした」

唇を下半身に移動させながらロックオンが上目使いに刹那を見上げる。

「…どうして今日は皆、セックスをしたがる…」
「…は?」

呟いた刹那の言葉に、ロックオンは、はっとして顔を上げた。
…今、刹那は何と言った?

「どういう事だ刹那?」
どういうって。言葉のままの意味だ。面倒くさいから目を合わせ、瞬きをするだけで答えを促した。通じたらしい。ロックオンの口端がひくりと動く。

「まさかお前、…俺以外とも今日、セックスしたの…か?」

言われて、答えを逸らす事でもないなと思い、頷いた。
今日、というより昨晩からだ。
ユニオンの士官だという男が、食事に行こうと誘い、その後ホテルに行った。
帰ってきたらきたで、アレルヤとハレルヤが交互に話かけてくるからそのままの勢いで事に至って、ティエリアだけはため息というより冷たい目をしていたが、その後もサーシェスと青姦じみた事をしていたし。
何を今更ロックオンは言ってるのだろう。

「…おまっ…だから今日、妙に淡白なのか!…ああああ!そういえばこの首筋のも鎖骨のも俺がつけた覚えねぇぞっ!?」

まさに今更、だ。
ロックオンがぎゃあぎゃあと騒ぎ立てるのが面倒くさくて、刹那はもう一度寝るかと目を瞑った。

「おいちょっ!お前な、俺の立場ッ!!!」

うるさい。疲れた。もう寝かせろ。
揺さぶられながら目を閉じた。
どうせ、一通り騒ぎ立てたら、続きをするんだろう。そしたら嫌でも目が覚めるだろうから、その時相手をすればいい。
セックスにおしゃべりは必要ない。だから、どうせなら快楽だけ与えて見せろ、ロックオンストラトス。

「刹那、くそ、お前見てろよ、他の男になんか目ぇいかない程にイかせてやる、このやろう!」


けれど、ロックオンは知らない。
戻る場所があるからと、足早にロックオンの元へと急ぐ、刹那が居たことを。