あぁ、やっぱりまた失ってしまった。

目を閉じ、喉を仰け反らせたのは、奥底に突き刺さった先端が、快感の末端神経をちりちりと刺激したからだ。
上半身が倒れ込んできて、首筋に柔らかい髪の感触と熱い吐息が吹きかかる。
唇を噛んだ。
「…っ、あ、…」
「声殺すな刹那」
言われて、噛み締めたばかりの唇を開いた。…では望むままに、声を。
「…きもち、いぃ、…」
言った事もない言葉。そうして伝えた言葉を、どう思ったのか。
熱い吐息がため息に変わった。
「そういう事じゃねぇ、刹那。なぁ…お前、変わっちまったのか」

何が。どうして。
お前が声を出せといったから、その通りにしたのに。
今までのセックスだって散々要求していたじゃないか。声を出せ、絡みつくなら俺の背中にしろ、セックスが終ったら直ぐにベッドから出て行くな。
そんな事ばかりを言われて、馴れ合うのは御免だといつも無言で反抗をしてみせた。
望んだのは、お前なのに。

「…何が、ほしい…」
お前は、俺に。
何故抱く?何故、よりにもよって俺を。まだ。

「お前が欲しい。判るか」

頷く。そのぐらい判る。…くれてやる。どれだけだってくれてやる。ほら持っていくといい。
手を伸ばして背中に縋りつく。…その背に手を回したのは初めてで、爪を立てずに指先で縋りついた。
「…違うんだ、刹那違う。そうじゃねぇ」
再び降ってきたため息に、泣きたくなった。


ほら、やっぱり失ってる。