こっのやろ…

刹那からのキスなど滅多にあることではないが、今日は今日で話が別だ。
なんだって今日に限ってコイツはこんなに煽ってきやがる。しかも左奥を重点的に。

「…いい加減にしろよ刹那」
唇をぶはっと離して睨みつけてやったが、あまり効果はない。いつものように無表情。しかしその仮面の下で笑っているのが判るぞ刹那。
「なんのことだ?」
「しらばっくれるのもいい加減にしろ。お前知っててやってるだろ」
「何をだ」
「このやろ…」
可愛くねぇ!そこが痛みの元だと判っていて煽ってるのは判ってるんだ!

ソコが痛み出したのは数日前、ちょうどミッションに入る直前だった。だからとりあえずこのぐらいの痛みならばと我慢していたわけだが、放っておいてよくなる痛みでもなかった。ようやく宇宙に上がって医務室に駆け込んでみれば、こんな時に限ってドクターモレノが居ないってのはどういうことか。帰ってくるのは3日後だという。
…ということは、3日もこの痛みと付き合わなきゃならないってことだ。しかも徐々に左頬は腫れてきてやがる。
…この歳になって、いや、この歳だからこその痛みが憎らしい。「親知らず」よく言ったもんだ。だったらもっと早く来て欲しかったモンだがな。
刹那はそれを知って遊んでやがる。…あらかたアレルヤあたりに聞いたんだろう。
「もういい、後ろむけよ刹那」
遊ぶぐらいだったらさっさとイって終わるに限る。



が、しかし。
そう簡単にイけなかったのは、動くたびに痛みが走るからだ。
そういえばどっかの誰かが、痛みがある時は種の保存が働いて性欲が活発になるとか聞いたが、あれは嘘だ。歯痛は関係ねぇ。
背後から突いてる所為で、刹那の顔は見えない。俺の顔も見えていない。それは助かるんだが、…どうにもこうにも。
「…ロックオン」
「あぁ?なんだよ」
ぱんぱん、肉がぶつかる音をさせながら、刹那が振り返る。癖毛がひよひよ揺れていた。
「…代わってやる」
「何がだ」
聞いた直後に判った。立場だ。
「…冗談じゃねぇよ!」
悔しくなって、奥の奥を突きぬけるように、ゴンッ、と腰を入れた。刹那は不意の行為に喘いだが、俺にとっては痛みを増すだけ。…まったく、冗談じゃねぇ!

その日のセックスは何故かやたらと長かった。
刹那の好奇心とたまに出るS気質の所為だった。