ベッドの中から刹那の背中を見送るのはいいもんだ。
無性に煙草をふかしたくなった。けど煙草は10年前にとっくにやめてる。

暗がりの部屋の中。
ソレスタルビーイングの制服に身を包んだ刹那の後ろ姿。
振り返らなくても、表情ぐらい想像がつく。憮然とした顔だろう。
コツコツと歩き、ドアを開ける直前、刹那がくるりと振り返った。
そこに、想像通りの顔。

「…長時間は持たないぞ」

ぽつりとつぶやくように言うから、つい目を見開いてしまった。
長時間、持たせようとしてんのか。そんな状態で。

笑うには失礼すぎて、ああ、悪かったよと肩をすくめて返した。
それ以上に何を言えばいいのか。
帰ってきたら、綺麗にしてやるよ、とか?
帰ってきたら、もう1回してやるよ、とか?
早く帰ってこいよ、とか?

結局どれも言えないままに、刹那は通路へと出て行った。
常時灯がついた通路のまばゆい光が一瞬差込み、ドアが消えた途端にまた暗がりへ。
部屋にはひとりになった。

「けど帰って来るってさ」

スリープモードに入ったハロに問いかける。
部屋にはひとりと一機のみ。
ハロから返事はない。ない方がいい。
どうせ刹那はすぐに帰って来る。多分、気持ち悪そうな顔をして。
たかがミーティングだ、すぐに終る。問題が何もなければ、だけれど。

刹那は仕事がたんまりある。
この部屋だけが居場所の俺とは全然違う。

「…このぐちゃぐちゃはさぁてどうするかね…」
あまりにもベッドがぐちゃぐちゃ過ぎて、鼻で笑った。
あぁ、精液くさい。

まぁ、ひとまずセックスしようぜとなし崩しにベッドの入ったのは2時間前。
いつものセックス、いつもの方法、いつもの手順。
別に、どうという事はなかったはずだ。それなのに、気がつけばいつもとちょっと違うセックスになっていて、ちょっとばかり興奮して、…いつの間にか泥沼みたいにずぶずぶハマりながら、動物みたいに、無性に腰をふる。
そういう気分だった。

どこまで出来るのか、どこまでイかせられるのか。
半ば意地のような気分になって、刹那を泣かせてみせようとした。けれどなかなか刹那は泣かない。なにせ相手は刹那だ。そう簡単に泣くはずはないのだが、…いや、…それで意地になったのが悪かったのか。
2度イってもまだ足りず、ぐいぐい身体をすすめていったところに、呼び出しのベル。
3分後には始める、と告げられた言葉のおかげで、処理も出来ず、刹那は恨めしげにズボンをはいた。

「だからって、セックスの時間も取れないんじゃなあ、ハロ?」

スリープモードを解くつもりはなかったのに、つい呼んでしまったから、ハロは目をチカチカさせてこっちへ飛んでやってくる。
受け止めた。
ハロの能天気な顔を見てたら、なんだか笑えてきた。

「いや、俺、幸せだな、と思ってさ」

キスしたくなった。
もちろん刹那にだ。
けど、刹那は今居ないから、ハロのデコに、むちゅ、とキスをしてやった。