「ほら、刹那。また顔が固まってるぞ」
ふいに言われた言葉に、閉じていた目を開けて見下ろす。シーツの上で苦く笑うロックオンの姿があった。
手が伸ばされて、頬をつねられ、その意味が判った。
「…笑え、とは言わねぇから。気持ちイイんなら表情ぐらい変えろって言ったろ?それとも何か?今日は気分が乗らないか」
言うが早い。刹那のものに触れると、片手で扱きあげた。
ねっとりと湿気たそれを、巧みに動かす。敏感になっていたそれはすぐに反応を返し、硬度を取り戻した。刹那の背が撓る。
「…ん、」
「ほら、そーゆー顔だよ。…けど、今日はやっぱり気分が乗らないみたいだな、やっぱり」
「…そんな、事は」
「俺が客だからって、遠慮するこたねぇよ。ヤりたくない日だってあるだろ。…やめとくか、今日は」
自己完結して、細い腰を持ち上げる。深く埋まっていたソレを、ずるっと抜こうとすると、途中で刹那が動きを制した。
「…やめ、ろ。抜かなくて、いい…」
「刹那?」
「…ん!」
途中まで抜きかけたそれを強引にもう一度奥にまで挿入し、間髪置かずに、ずるずると内壁にこすり付けるように腰を動かし始めた。
「刹那、おい、無理すんな」
「…だいじょうぶ、だ…」
くぷくぷと水音と肉が擦れる音が響く。穴の入口が擦れて痛む。今日は客が多かった。痛みが走った。けれど、やめることは出来ない。ロックオンは客だ。こうしてセックスをして金を貰っている。
だからこそ、ここで気を使わせるわけにもいかない。
「…ロックオンッ…」
名前を呼ぶ。表情を変える。出来るだけ。
そうすると、この男が喜ぶ事を知っているからだ。
「…刹那、…せつ、なッ」
与えられた名前を呼ばれる。
この名前で呼ばれることに慣れていない。数年前、孤児院で新しくつけられた名だ。
「…ロックオ…ッ…」
声が跳ね上がり、そのまま昇天出来るかと思えば、後少しのところで波が下がってしまった。
「まだだ、ま、だ…」
「おい、無理するなって、…刹那っ、」
ずくずくと腰を動かす。痛い。けれど気持ちがいい。
相反する感覚が身体の中をせめぎあう。
「刹那、どうしたよ…おい」
「…いき、そう、か…?」
「俺?…いつでも。気持ちいいぜ刹那」
腰を持たれたまま、ロックオンが笑う。汗がこめかみを伝ったのが判った。気持ちいい思いをさせている。今、自分が。それが、何より----、
「…んぁっ…!」
ビクッ、と身体が震えた。直後、強張った身体から、ビクビクと精液が飛び散る。
息が止まる。
目の前が真っ白に染まる。
先にイッたのは、ロックオンではなく、自分だった。

「…いい顔ッ…」
うっとりと、まるで陶酔したように囁くその言葉を聞く。
その直後、中に迸る熱い精液のかたまりを感じた。
息が止まったまま、ロックオンの熱を受け止めながら、ふと目に入ったのは、終了の時間を知らせる時計のベル音だった。