暴力、残酷な表現を含みます。 アスシンですが、他の絡みも多くあります。 戦後・シン19歳前後。 -------------------------------------------------------- (抜粋) シンはゆっくりと目を開けた。 今、生きていることさえ夢のようだ。自分の身体が酷くあいまいなものに感じる。 開いた目を上に向ければ、ざぁざぁと流れるシャワーが目を叩いた。 あたたかなシャワーの湯をめいいっぱい浴びて、身体についた様々な体液を流す。 どろどろと、内股を伝って流れ落ちる精液。自分のものなのか、あの男のものなのか、もう判りもしない。 大きく息を吐き出した。 男に抱かれる、この身体。 こんな事になるなんて、二年前までは思いもつかなかった。あのミネルバに居た頃には、誰にでも抱かれるようになるなんて想像もしていなかった。 たったひとりだけ、そしてたった一度だけ、抱いてもらったことはあるけど。あれは遠い昔のようで、もう現実の事なのか夢の事なのか判断もつかなくなっていた。 ただ、体だけは覚えている。 あの青い髪が揺れるのも、意外と厚い胸板も、身体の筋肉の動きも。 覚えてしまっている。たった一度のことなのに。 ざぁざぁ、激しい雨のように降るシャワー。 ドアを隔てた向こうのベッドには、まだあの男が居るだろう。 あの男は、むちゃくちゃな体位はしないし、回数も時間もまぁまぁで、セックスするには一番楽な相手だった。 ただ全てを見透かすようなあの目と微笑だけが気にいらない。 「…なにが、…誰と重なるって…」 緑の眼、青い髪。 「…ちくしょ…ッ…」 吐き出された言葉と一緒に、降り注ぐ熱い湯が、流れて排水溝に消えていく。 ああ、あんな事を言うから、もう頭から離れなくなったじゃないか。 「シン・アスカ」 ザァザァとシャワーの水音に掻き消される事もない、凛と張った声が、シャワーカーテン越しに聞こえて、顔を上げた。 その声に甘さはなく、戦場で聞く声音と同じで、身体に本能的緊張が走る。 「どうした」 「出頭命令です」 「…誰から」 「貴方が会いたい方からですよ」 「嫌な言い方するなよ。会いたいやつなんて居ないんだから」 苛立ちを含めて言っても、男は名前を言わなかった。 いい加減にしろと苛立ち任せにシャワーを止めて、濡れた髪をかきあげた。 シャワーカーテンを乱暴に開く。そこにいつの間に軍服を来たのか、ついさっきまで裸で絡み合っていた男が立っていた。 直立不動、なのに顔だけが妙に笑いを含んでいて余計にイラつく。 「キラ・ヤマト隊長が、貴方をおよびです」 |