ロク刹でセルゲイソーマを書いてみよう。
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軌道エレベーター、4人掛けの個室。
目の前に座っていたはずの男が、どうして今自分の股間に居るんだろうと、ロックオンはまるで他人事のように後頭部を見下ろしていた。
軍服の下肢だけを緩められ、そこに息づくイチモツを取り出して口に銜えている。
(ありえねぇ…)
同じ軍服を着ている、小さな少年。…今は少尉となった彼の仕事は、こんな夜伽のようなものではないはずなのに。

「…おい、刹那…お前どうしてこんな事…」
溜息をつくように言葉を吐き出す。
答えない刹那に焦れて、髪をそっと掴むと上を向かせた。
口の中に頬張ったままで、刹那が答える。
「…アンタが拒まなかった」
「…あー…確かにそれはそうかもしれないが…」
刹那に何をされるか判らなかったのだ。
この、エレベーターの個室で、二人きりになった途端、刹那がシートベルトを外した。微重力でふわふわと揺れる身体で近づいてきたと思ったらこの有様だ。

「お前の仕事はなんだよ、刹那」
「アンタの副官…」
「違うだろ。MSのパイロットだ」
「しかし、アンタの言うことは聞けといわれている」
「俺はこんな事しろって言ったか?」
「アンタの股間は喜んでいるように見える」
「…おっ…まえ…」
はっきりモノを言い過ぎる!
男の性感帯であるそれを銜えられたら、誰だって勃つに決まってる。それを許したのは確かに自分で、それは問題だったと思うが。
「お前は超人機関でもこんな事をしていたのか?」
「…しろと言われれば…した…」
また口を動かしながら刹那が答える。
していたのか。まさか本当に。
違うと言わせたかったのに、簡単に肯定されてしまった。
ああ、超人機関は腐ってる。
髪をかきあげながら、今度こそ深い息を吐き出した。
けれど、その言葉で、決心もついた。

「やめろ、刹那」
強引に刹那の頭を持ち上げた。ちゅぽん、と抜け出したそれは、完全に勃起しているわけでもないが、勃ち上がっているのは確かだ。
それでも、強引に軍服の中に押し込む。痛い。…いや、構っていられるか。
「…なぜやめる。ロックオン」
「なぜもへったくれもあるか。お前はこういう事はしなくていいんだよ」
「……してはいけなかったのか」
「いけないってわけじゃない。けどな、お前はまだ15やそこらだろ」
「歳は関係ない。俺は超兵だ。軍人として……」
「だったら軍人らしいことをしろよ!」

ラチの開かない会話をしている。
刹那の身体を強引に押して、無重力に近い室内の壁に押し込む。
「…とにかく、今は移動時間なんだ。お前はゆっくりしていればいい」
「………」
早口で言って立ち上がると、部屋のドアを開けた。
いくらなんでも、このままこの部屋にいることは不可能だ。それもまだ途中のままで。部屋を出たすぐの場所には、幸いにもトイレがあった。
呆然と床に座り込んでいる刹那を振り向かずに、部屋を後にした。



刹那・F・セイエイ。
超人機関から送られた、超兵1号。

彼を預けられたはいいものの、どうしたらいいか困っている。
司令から呼び出されたと同時に、半ば無理矢理押し付けられた。面倒を見ろ、とだけ言われて。
極秘裏に開発していた超兵が、まさかあんな子供だとは思わなかった。
MSの操縦は超一流。兵が今まで扱えないと言われていた高Gの掛かるMSでさえいとも簡単に動かしてみせた。近接戦闘は今まで見た事もないような数字を叩き出す。射撃だけは上手くないが、自分が居れば問題はない。
問題があるのはその性格と性癖だ。無口で、常識も知らない。けれど軍の規律ばかりはしっかりと教え込まれている。セックスに対する躊躇いや羞恥はまったくない-----。
「あれをどうしろって言うんだ…」
今頃、司令であるティエリア・アーデは笑っているだろうか。
今度通信を繋げてきた時には、あからさまに眉を顰めてやろう。
なんで、俺があの子供の面倒を見ているんだと。

トイレで、身体の都合を整えてから、部屋に戻ろうとし、少しばかり躊躇ってドアの前で立ち尽くす。
この部屋に戻れば、刹那がそこに居るだろう。
疑問ばかりの目線を投げてくるあの子供。
彼が、ずっと超人機関の一室で操作を受けていたという事は聞いている。デザインベイビーなのか、どこかの難民をつれてきたのかは判らないが、ロクな育ち方もしていない。身体のあちこちを弄られて、人よりも強化された身体。効率よく超兵を生み出すには子供の方が都合がよかったのか、それとも成功例がまた彼しかいないのか。どちらにしろ、誰かが面倒を見なければ、彼の行き先は無い。超兵として失敗作だと認定されれば彼は容赦なく捨て駒にされるのだろう。
「…そうならないために、俺がなんとかしろって…言いたいんだろうな…」
あの腹黒い司令は。

ドアに手をかけ、ある意味、覚悟を持ってドアを開けた。…が、そこに刹那が居ない。
「……ん?」
違う。居ないんじゃない。
「刹那、お前、」
床だ。刹那が床に倒れ伏している。
「どうしたんだ、おい!」
のた打ち回るように身体を丸め、頭を押さえたまま呻く。頬や首筋には汗が伝い落ち、手は指先が痙攣したかのように震えている。どうみても異常だ。
「刹那!刹那!」
「う、ぁ、ああ、ああああ…ッ!」
痛みによって、悲鳴ばかりが刹那の喉から搾り出される。その声から、どれだけ苦しんでるのか想像がついた。…しかし、どうしていきなり。
「刹那、何があったんだ、おい!」
名を呼ぶ。身体を揺する。それでも刹那の身体はまるで硬直したかのように固まったまま。このままでは自分で自分の身体を傷つけそうに思えるほど。
「…く、…る…!」
「…はっ?なに、…」
「来る…!あいつ、がッ…!」
絶え絶えの息で、刹那が吐き出した言葉。耳を済ませた。

来る?
…あいつ、が?

なんの事か判らない。
けれど、それが刹那にとってひどく深刻な事なのか判る。
おそるおそる聞いた。
「…誰だ、誰が来るって言うんだ、刹那」
ぜぇぜぇと息を吐く刹那が、ようやくの息で、けれど確かに告げた。

「あの男が…、アリーアルサーシェスが…、く、る…!」