軍人なんだから、いつでも何処でも寝られるのは、もう基本っていうか、鉄則みたいなモンなんだけどさ。 …それでも、まふまふのベッドと、手を広げても寝返りを2回うっても2人で寝ていても余裕の広いベッドは、どうにも俺の性に合わなかったみたいで。 「……ん…ぅ……」 目覚めて、あれ、俺の部屋ってこんな壁だったっけと思い、なんかいつもと違うよなぁ…とぼんやり思いつつも、隣に触れる人肌のぬくもりに、あ、アスランさんだ…と思って嬉しくなって。この人が隣で寝ているなんて珍しい。いつも忙しい人だからさ。 寝返りをうって、アスランさんを起さない程度に懐に入り込んで、ぬくもりに触れる。ひくっと動いたアスランさんが起きてしまったのか、どうか。判らない。俺なんかよりも長く軍人やってるから、ちょっと動いただけでも気配で起きてしまうものなのかもしれない。戦場に長く居ると、そういう風になってしまうと聞いた。 …俺はこの人が寝返りうっても起きないだろうな。なんか安心感みたいなの、感じてるから。 アスランさんの胸にほっぺたをくっつける。 それでもゆったりと上下する胸は規則正しくて、この人ホントに寝てんのかな?と思う。…たぬき寝入りっぽいんだけどな。だって、アスランさんの手が俺の腰と尻に当たってるし。…まぁいいや。 そういえばこのホテルって何時まで居てもいいんだろう。暗闇で時計が見えない。ねぇ、こういうホテルって、ごしゅくはくか、ごきゅうけいっていうのを選ぶんだろ?それによって値段って違うんだよな?チェックアウト時間ってあるの?アスランさん、俺初めてだから全然判らないよ。 ベッドサイドの時計を見ようとしても、アスランさんの身体で見る事が出来なくて、でも見てしまったら現実に戻されるのが判っているから見たくもなくて。現実逃避だ。軍人にあるまじき。 あの艦に戻りたくないわけじゃない。ただ、でも、こんな平和な空間が愛しくて、もう2度とないかもしれないデートだと思うと、名残惜しくて。 どうしたって俺達はあの艦に戻らなくちゃならないし、きっと戻ったらいつ死んでもおかしくない戦場にゆく。迷いながら叱られながら背中おいかけながら敵を倒しながら、泣きながら、戦うんだ。俺達。アンタがいつか何処かへ行ってしまいそうな危惧を抱えながら過ごす。あんたさ、俺よりもずっと深いトコとか、長い尺度とか持ってるから。平MSパイロットの俺と違って、フェイスだから。だから、俺とは長く一緒に居られないだろ? (こんなに好きなのに) そう言葉にして言いたくて、でも言えなくて、口をつぐむ。……好きでも。…でもどうしようもない「好き」だ。こんな気持ちは報われない。 「……シン?」 かけられた声に、あぁ俺、身体硬くなってたんだって判って、息を吐き出して力を抜く。 アスランさんは寝ぼけ声で、俺をぎゅっと抱きしめた。…その手に力は篭ってなくて、寝起きの身体の温かみもあって、まるで狸寝入りしてただなんて思えなかった。 「…狸寝入りは悪趣味ですよ」 「……ん……?」 寝ぼけたフリをしているのか、俺の髪にキスをし、ついばむ。髪の房を口に含み、ちぅ、と吸う。 「ちょっと。何やってんですか」 「……うん……」 「や、うんじゃなくて!つか、手!ちょっ…!」 俺の身体を抱きしめていたアスランさんの手が、するすると動き、腰からどんどん下がっていって、尻の肉に触れ、さらに溝をつーっとなぞった。 うわ、うわ、ヤバいって! 「まだそこ、汚れて…るッ」 「汚れてるも何も、俺のだろ…」 「あ、アンタねぇッ!」 「…今何時だ?」 しれっとした態度。溝をなぞる手はそのままに首だけ動かして時計を見ると、あと2時間弱か、と呟いた。 「狸寝入りしてたくせに時間掴んでないのか」 「だからなんだ狸寝入りって」 「爆睡してたわけないでしょ、あんたが。絶対起きてただろ。俺の間抜けな寝顔見てたんだ」 「…酷い言われようだな…俺が熟睡してたら悪いのか」 アスランさんの顔を見上げれば至近距離で、こらっ、って怒り顔。あー。なんで俺が怒られるんだ? つい逆ギレしそうになって、俺もガルルと食いついてやろうかと思ったら、アスランさんはあっさりとこわばった顔を解き、小さく微笑んで、俺の首筋に顔を埋めた。 「シンの傍で眠るのは気持ちがいい」 言いながら、まるで俺の肌の匂いを嗅ぐみたいに、大きく息を吸い込む。…俺まだシャワーも浴びてなくて、きっと汗くさいのに。 「アスランさん、ちょっ…」 「こら、逃げるな」 「だって、俺、シャワー!」 「俺が今口説いているのに」 「くどっ…!?」 焦った。え?くどいてるのか!?……た、確かにどきどきするけどさぁ…!? 「ミネルバではそうはいかないけど。こんなオフで、隣にシンが居て。1日ずっと一緒に居たな今日は。だからリラックスしてる。気持ちいい。この時間も、もちろんセックスも」 「……っ…」 シンの傍だからだな、って。アスランさんは言った。 言って、俺をもっとぎゅっと抱きしめた。 何故か、俺は泣きたくなった。…腹の奥の奥から、涙腺に染み出してくる何か。…だって。なんで。アスランさん、あんたって。 「シン」 名を呼ばれて、鼻筋を擦り付けられて。胸と胸をあわせると、まるで鼓動が一緒になったみたい。 アスランさんの身体を全部、受け止めてるような気がする。抱きしめられているのに。 どうしよう。俺、今、多分凄くうれしい。 ……って俺ちょっと感動してるのに。 「手、…手は動かさないでください!」 「手?」 「ッ!あんたの手だよ!俺の尻を揉むな!!」 「色気が無い…」 「色気なんてあってたまるか!つか!あ、…やッ、そこに挿れん、なッ…!」 尻の肉を手のひらで掴んだまま、親指がずぶずぶと中に入り込んでくる。 俺も必死に抵抗してみるんだけど、駄目だアスランさんの指は俺が足掻いたところで何の問題もないみたいに、ずぶずぶ入ってくる。 親指は一番太いけれど、指1本ぐらいなら、大して慣らさなくても入るんだ、俺の身体は。…もうそういう風な身体になってしまった。 「…シン」 「う、…う、ンッ…あ、や、…も、1回すんのっ?」 「しようと思うけど」 「じ、かんッ」 「あと、1時間53分ぐらいはある。シャトルを最高スピードで飛ばせば、もうちょっといてもいい。だから…2回ぐらい、か?」 「2回って、あんた、ねぇッ!」 ぬぷぬぷと親指を奥まで挿入し終えた指は、奥でくいっと指を曲げた。浅い部分だったにも関わらず、それがものすごい俺の性感帯を直撃し、鋭く反応してしまい、アスランさんの腰に股間を押し付けてしまう。 「ひゃ、あ、う、…あ!」 声、我慢してるつもりなのに、口が全然言う事を聞かない。どうしよう、声、…声が出ちゃう、よぉっ…! 「シン、ここはミネルバじゃない。だから声も出していい。誰にも聞こえることはないよ」 「っ…つ、あ…!」 そんな事言ってもねぇッ…!指1本程度で善がってたら俺の立場が!! アスランさんは俺の行動にもなんだか余裕で。指1本だけで、俺のナカを散々攻め揚げた。…あぁいやだ…たった指1本でイかされるのか、俺は…。 「今日は楽しかった。シンを独占できた」 指を出し入れしつつ、内壁をひっかくようにして刺激するアスランさんが、うっとりと言った。 俺はその刺激に耐えながら、アスランさんの言葉を何とか聴く。 「…たのしかった…ですか?」 「あぁ」 「ショッピングなんて、女性は楽しいだろうとは思ってたけど。俺もシンの買い物に付き合っているのは楽しかった。シンの服を選んでいるのも、一緒に見たCDも」 「…っ…ふふ」 「なんだ?」 「アスランさん、別に何も買ってないじゃないですか。…最初の店で変なの買っただけで」 「……あれはまぁ…たまにはそういうものと」 「いいですけどね、…マンネリ防止ってやつ…?…う、ンッ…!そこ、ヤっ…!」 「…マンネリしてたのか?」 「あ、…そんな事は、ッ、あ、…アスランさ、…!」 俺が一言余分な事言った? ぬくぬくと指を動かしていて楽しんでいたアスランさんは、俺の一言に無意味にキれ、そして、 「ならマンネリ脱出するか」 と、俺にいつもはしないような体位を要求した。 ……それはもう、二度としないよ!こんなの!!って思うぐらいの。
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