ねえアスランごめんね。
僕にもシンを分けてくれる?
だって、綺麗なんだ、彼。
目も心も綺麗だね。僕とは全然違うよ。だから愛しい。
大丈夫、僕とアスランが愛してあげれば、いい。
そうすれば、あの子は逃げ道を自分で作るから。
アスランだけの愛じゃ、シンは不安になっちゃうよ。
いつかなくなっちゃうかもしれない愛でしょう?
僕もシンを愛するから。ね、そうすればシンは壊れない。
アスランがもし死んでも、シンは壊れずに今度は僕だけを愛するでしょう?
僕が死んでも同じ事だ。アスランが慰めてあげたらいい。
だって。僕もシンが好きなんだ。いいでしょう?ねぇ、アスラン…。


***


『キラに好き勝手抱かれておきながら、俺に会うのかお前は』
そう言ったアスランの台詞は冷たかった。
そんなの勝手でしょう、アンタが認めた関係だ。
シンがそう言ってしまったから、アスランの逆鱗に触れた。ベッドに乱暴に投げ落とされ、いつもよりもさらに強引にシンを扱うアスランに不安を感じて、「何をするんだ」と噛み付いてみたものの、遅かった。
手首を縛り上げられて、下半身を剥かれ、シャワールームに行ったアスランが手に取っていたものを見て愕然とした。
こんな趣味があるのか、と罵ってやったが、趣味じゃない、お前が汚いからだと即答されて、シンは答えを失った。
確かに、今のシンは汚い。
キラの精液がまだ身体の中に残っている。汗ばんだ身体は、まだ拭き清めてもいない。
キラのにおいをさせたまま、キラのものを残したまま。
『だから、綺麗にしなきゃいけないだろ』
と言うアスランの言葉は憎悪を含んでいた。

強引に指で押し広げた場所に、水を入れられた。とぷとぷと水が中に入ってゆく。
気持ち悪い。じょうたんじゃない。
けど綺麗にしなくちゃいけないから。全部出さなきゃ、きたない。そう、キラの、なんか。
栓をされて、ベッドに転がる。
アスランは、シャワールームに行ってしまった。

「ひぃっ…ぐ、う…」
腸内を捻られているようだ。
身体の中が、いろいろな液体で溢れて破裂しそうでたまらない。
カタカタと体が震える。苦しい。
小さなベッドルームで、シンひとり。

「…すら、さ…!」
冷や汗が、シンの米神を流れてシーツにぽたりと落ちる。…あぁくそ、これでまた怒られる。反射的に思って肩をすくめると、腹の中がぐるると悲鳴を上げた。
尻から注入された大量の水は、シンの腹の中でまるで生き物のようにのたうちまわっている。こぽこぽと音がしそうな程の水量。下の腹は水の容量で膨れている。力を抜いてしまえば、栓をしてあるはずの出口から、全ての水が噴出してしまうだろう。そんな事にだけはなりたくなくて、シンは唇を噛み締める。
いくらなんでも、アスランのベッドを汚物で汚すのはごめんだ。
けれど、すでに立ち上がる事も身体を動かす事も困難になっている今、どうしたらこのベッドの上から抜け出す事が出来るというのだろう。
「う、ひぃっ!」
堪えきれなくなった喉から唾液も流れる。駄目だ。もう限界だ。本能的に涙が流れて、シーツを濡らす。
我慢しきれず、下肢に手が伸びた。けれど、元より手錠によってくくられている手は下肢まで届く事は無い。
「も、…む、りっ、…!」
吐き出したい。…いくら栓がしてあるからといっても、ずっと耐え切るのは無理だ。
腸内には大量の水で溢れている。いつか耐え切れなくなる。
それなのに、トイレは、バスルームを使用しているアスランによって使われていた。アスランがシャワーを浴びている間は使えない。
ベッドから降りるなよと言われた。
けれどシンには、もうベッドから降りるだけの体力も無い。少しでも動けば、濁流になって流れてゆきそうになる。
「…も…う…」
ぐるるるる、と下腹が鳴る。
苦しい。苦しい!
我慢出来ず吐き出せば、ベッドを汚してしまう。耐えなければいけない。アスランがバスルームから出てくるまで。
…はやく出てきて。お願いだから、ねぇ、はやく。
シャワーの水音は止まない。
冷たい汗がまたシンの米神をつたってシーツに落ちた。

「も…ぅ、…もれちゃ…」
吐きたい。胸の奥にもやもやとした不快感が湧き上がってくる。
気持ち悪い。吐き出したい。
涙は止まらなかった。冷や汗は身体中に噴きだしていて、喘ぎ声が洩れるたびに唾液がシーツを汚す。
「すら、さ…っ…!」
ぽたぽたと涙が落ちる。緩んだシンの視界に、ベッドサイドに備え付けられている端末が見えた。
この艦の全室何処にでも繋げる事が出来る端末だ。あれで助けを呼べば。
(…っ…でも、…)
呼べば、助けが来てくれるだろう。
部屋のドアには鍵か掛かっている。アスランが設定したバスワードでしか開かないが、権限のある人間ならば、そのパスワードさえも関係なく入る事が出来る。
そう、たとえば、キラの立場なら。
思い至って、手を伸ばす。
あの白服を着たキラならば、シンが助けてと手を伸ばせば、幾らでも助けに来るはずだ。
アスランに拘束されているから、と。
そう言えば、必ずキラは来る。
手錠が、じゃらりと音を立てた。蓑虫のようにベッドの上を動く。
そのたびに、下肢からこぽこぽと水音が聞こえ、腹の中でのたうつ水が出口を探して渦巻いていた。
くるしい。


『キラとまたしたな』
そう言ったアスランの目は、いつものように冷たいものだった。
シたのか、と言われ、シンには嘘をつく事も出来なかった。
毎日のように身体を求めてくるキラを拒んだことは殆どない。抱きたいといわれ、唇が近づいてくるから許した。そうして抱かれた。
キラはシンを緩やかに静かに抱く。言っている事は強引なのに、やっている事も力づくなのに、キラのセックスは酷く優しかった。そのギャップに打ちのめされる。あんな優しく細めされた紫の目で見つめられ、愛しげに頬を辿り、もっと激しくしていいのにと思う程、優しく優しくシンを抱く。
そんなキラの行動に振り回されてばかりだ。

アスランは。
アスランは、あんなにも優しいのに。
ベッドの中ではいつも怒ってばかりだ。キラに抱かれてるシンの身体。それが憎いのか、いつも強引で勝手で。
…何故なんだと思う。普段アスランがどれだけ紳士的で細やかな神経の持ち主なのかは、シンが一番知っている。誰にでも優しい。誰にでも。
それなのに、アスランはベッドの中で変わってしまう。
愛されていないのかもしれない。
そう思う程に、アスランは強引で手ひどい。
今だってそうだ。こんなにくるしい。こんなに限界に達しているというのに、アスランはまるでシンを見ないで、仕置きだと称して自分はシャワーを浴び、身体を清めている。
シンの体内は、きたないもので溢れていて、少しも綺麗にならない。それなのに。


「…でん、わ…」
通信機に、手が届きそうだった。
躊躇いは無かった。だって苦しくてたまらない。もう持たない。あと少しで全部出てしまう。
伸ばした指が震えていた。ひくひくと震える自分の指先を見つめながら、通信機に手が届く、その瞬間。身体が宙に浮いた。一瞬の浮遊感の後、腹の中から強烈な痛みが走る。あまりの辛さに声も出なかった。米神を伝う冷や汗を妙にリアルに感じる。限界だ。

「お前は本当に手癖が悪いな」
シンの身体を横抱きに抱えたまま、アスランは自分が今まで使っていたシャワールームにシンを運ぶ。
抱きしめる手は優しく、シャワーを浴びた直後のアスランの肌は暖かくて心地いい。それでも、こんなにも冷たい動作。

「ほら、もう出していい」
トイレの上にシンの身体を乗せて、開放を促す。
手錠がパチンと外れた。
無我夢中で、後孔に手を伸ばし、栓を外した。

アスランの見ている目の前で、シンは全ての汚いものを吐き出した。
シンの中にあったキラの痕は、全て消えて無くなってゆく。