「俺、抱きしめられながらするの、好きなんですよ」 「え?」 インパルスのOSをいじっていたシンが、突然ぽつりと漏らす。 コアスプレンダーのコックピットに細身を収め、何事もでもないように、キーボードを叩きながら。 俺は意味が判らなくて、…いや判っているのだが聞き間違いか何かかと思い、もう一度聞きなおす。 「何が、だって?」 「だから、アナタとセックスする時の体位の話です」 「……えぁっ!?」 言われて、驚いて廻りを見渡した。きょろきょろと見渡す俺は多分不審者だ。しかし気になるだろう、幾らなんでも格納庫でいきなりそんな事を言われてしまえば! 慌てる俺とは対照的に、シンはピピピと鳴るOSを黙らせようと、数値を変えて調整しようとし、余計にバランサーが狂って眉を顰めていた。あぁ、バーニアの出力ゲージはそれじゃ高すぎるって…いや、けどそれを言うよりも先に、だ。 インパルスの専用ハンガーには、幸いにして俺とシン以外の整備班の姿は見えない。格納庫のクルーには声が届いていないと確認して声をひそめ、シンの耳元で囁く。 「…体位って、な、お前…」 「正常位でも抱き合えるっていや抱き合えますけどね、アレあんまり好きじゃないんですよ俺。だって背中擦れるし、頭はベッドヘッドに打ちそうになるし。しかも深くまで挿らな…」 「あーもういいから!いい、説明は!!」 こんなところでそういう会話はよせと咎めようとした俺の声よりも、シンがつらつらと現状の不満を語る方が早かった。慌てて声を出して阻止するものの、俺の声の方が格納庫に響いているようで、数人がこちらを振り返る。…逆効果じゃないか…。 体裁が悪くて黙ったところへ、尚もシンの言葉が響く。 「だから、なんていうんだっけ、あれ。座って向かい合わせになるやつ…」 「対面座位だろ?…いや、だからな、そういう話は、」 「そうそう!それです、それ。あれが好きです。深くまで挿るし、イイトコ当たるし、抱きしめてもらえるし俺も抱きしめられるし」 「………シン、あのな…」 咎めようとしながらも、シンは楽しそうで、思わず言葉を飲み込む。またさっきの二の舞になってクルーがこっちに来たら大変だ。 とりあえず深呼吸だろうこういう時は。…すーはー。…それにしてもシンは座位が好きなのか。知らなかった。そういえばこいつはいつも俺の背中に手を回したがるな。…抱き合うのが好きと、そういう理由だったのか。 「あと、立ったままも好きです。ぎゅうって後ろから抱きしめられたまま出来るから。でもアスランさん、夢中になると俺の腰だけ掴んでかき回すから、ちょっともうちょっと密着していて欲しい。あ、その方が乱暴だけど気持ちいいからそうされてもイイんですけど」 「あ、あぁ…そうだったのか…」 上目遣いで見上げられ、不平不満を口にされて、なるほどじゃあ次からは抱きしめたまましてやろう、って… 「いや、そういうんじゃなくてな。シン、お前、ここをどこだと…」 「MS格納庫です。でも、アスランさん」 こんな話題になりながらも、手は止めなかったシンが、ふと俺を真面目な顔で見つめ、手も止める。 シンの目線が、俺の身体を眺め、言う。 「でもアスランさん。今の話で勃っちゃったみたいですよ?」
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