あいつらみんなしねばいい。


6月に降る雨は、冷たくて。
昼間はあんなに日差しが強かったのに。ほっぺただって、さっきまで熱かった。殴られた後、じんじんする痛みに替わる前は、まるで熱を持ったようだった。
土砂降りの雨の中の公園。誰も通らない。誰も来ない。
濡れた滑り台、ブランコ、ジャングルジム。その傍にある、円を半分に切ったみたいな小高い山の中。空洞になっている中には砂が敷き詰めてあって、奥に入れば雨もしのげる。
けれど、寒い。雨はしのげても、身体の中が酷く寒いよ。

「…ごめん、なさい…」
口の中で呟いて、膝を抱え込んで頭を垂れた。びしょびしょに濡れた服が、肌に張り付いて、体温を奪っていく。
…まぁ、コーディネーターだもん。風邪なんて引かないだろうしさ。
自分に言い聞かせる。頭が痛い。けどこれはきっと精神的なもので、身体の不具合じゃない。コーディネーターだから。

「ごめんなさい…」

酷い顔してた。殴られた頬、殴った後も怒った顔をしていた。
アスランさん、ごめんなさい。
違うの。あんな事、言うつもりじゃなかった。…違う。違う。…でも、きっと本心ではほんとうです。

だって、悔しかった。どれだけ俺が頑張ったって、アンタの1番にはなれない。いくらアンタが好きって言葉をくれても、きっとそれよりもっともっと上に、本当の一番が居る。あんたが何よりも、…自分のいのちよりも愛しいと思う人。守りたいと思う人。きっとその中に俺は居ない。

違うんです。
フリーダムのパイロットも、オーブの代表も、殺したいわけじゃない。…憎いけど、どうしようもなく憎いけど。でも、殺したいわけじゃない。ただ倒したい。叩き潰したい。居なくなればいい。もう、だってそうするしか俺が俺で居る方法がないもの。何もかも奪っていく人達。俺から家族も気持ちも未来も思いも何もかも奪って笑っている人たち。そんなの憎いよ。
アスランさん。アンタは怒るね。俺を怒るね。いつもいつも。何1つ肯定されなくて、何1つ望んでも分け与えてもらえなくて。手を伸ばしても届かず、無理をして背伸びをしても掠りもしないんだ。

だから、言うしかなかった。
アスランさんが怒ると判っている最大の言葉だから。…言うしかなかった。

「あいつら、みんな死ねばいい」