さっきまで、ベッドの中に居たんだけど、あれ?
いや、いや、そうだよ、あそこにアレ以上居たら、寂しくて悲しくてなんか喚きそうだったから、ここに来たんだ。
バスタブの中、大して広くない。正座を崩した形でぺたりと座りこむ。バスタブが尻に当たって冷たい。膝も、足の甲も。…でもだってあのベッドの中にいるよりいい。もう一人になっちゃったし。

出て行っちゃった。アスランさん。
やっぱり駄目だ、こんな風にするのはよくない、ごめん、ってそんな台詞残して、全裸の俺を置いて。

あれ、おかしいな。俺達セックスしようとしてたんですよねぇ。キスだって出来たし、ディープキスもしたし、乳首だってえろえろ舐めたりとか舐められたりとか、俺、アスランさんの軍服だって脱がして自分のも脱いだのに。…最後の最後で駄目って何。

やっぱりここでも涙出そうなんだけど。
中途半端に勃ち上がったままの自分の下半身を見ながら思った。
不憫だ。


ひどいと思う。
ひとしきり泣いて、でも身体は疼いちゃってしょうがないし、勃起してしまったモンは完全にはうなだれてくれなくて、腰が思わず動いちゃうような、うずうずする感覚が続いてたから、一人でマスかくしか無いし。…う、自分の手じゃ、いつもとおんなじだよ。
ひどいよ。アスランさん。
ひどいよ。

涙がぼたっと落ちた。
しこしこ肉の棒をなぞりながら、あぁむなしいよ、むなしいよ、って思いながらも手が止まんない。だってイっちゃわなきゃ収まりつかないのは、自分が一番判ってる。
本当に欲しいものは与えてくれなかったから、俺はなんかを想像しながらするしかなくて、でも俺の目は妄想も幻想も夢も希望も写してはくれなくて。目に見えるのは、俺のきったない勃ち上がったモンだけ。指が浅黒いのを扱いてる。…あぁこんなの見たくない。

「アスランさん、やっぱり酷い…よ…」
目を閉じると、熱い涙が目の裏にじわーっと広がって、なのに腰はうねうね動くし。
むなしい、むなしい、って心で叫んでるのに、結局からだは開放を求めていて、…あぁ、たぶんアレだ。俺はこれを出した途端に、今以上にすごくむなしくなるんだ。…じゃあこのままずっとこうしていたいなぁ。むなしくて寂しいけど、でも気持ちいいから。自分でやってたって気持ちいい。

本当だったら、今頃アスランさんは俺の中に入っていて、俺もアスランさんにひっついていた。
きっとセックスは、痛いと思う。グロいんだと思う。血だって出るだろうな。
けどそれを我慢して、あんな所にモノが入るのも我慢して、それでも受け止めようって頑張ってるはずだったのに。だってアスランさんが好きだから。俺。

「……ひどいよぉ…」
ぽたぽた落ちる。白い精液と透明な涙。


駄目って言われてしまった。
俺は駄目だって。
……だから、きっともう、あの人は俺とこういうことしないだろうな。…そうだよな、グロいのやだよな。アスランさんだって女の人抱いていた方がいいんだろうな。……はは、そうだよ、そうだ。そうに決まってるじゃん。俺だって女の人とヤってる方がいいや。あったかいし、やさしいし、胸あるし、俺が痛い思いしなくてすむし。

でも、だって、でも。
しょうがないじゃん。俺、アスランさん好きになっちゃったんだもん。

きゅっきゅっと扱けば、熱がぐわわと体中を駆け上がってくる感触に、喉をのけぞらせた。
一瞬呼吸が止まったその瞬間に見えた幻は、酷い表情のアスランさんの顔だった。