ANDROID SOUL :: お風呂の話。
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こうして刹那を抱きしめるのは何度目か。
アンドロイドを相手にセックスをする日がくるとは思わなかった。今更ながらに思う。
キスもだいぶうまくなったし、抱きしめようと手をひろげれば、意図を察して胸に顔を埋めてくるようになった。
セックスに関しては、刹那の脳は真っ白な状態で、教えることはすべて吸収していく。
キスの仕方を教えた。翌日は、抱きしめ方を。
少しずつセックスを知っていく身体。
肌をあわせるたびに、刹那の成長を知る。
キスをあわせた唇を離した時、ふと笑いが漏れた。
「なんだ?」
「いや。…おまえを思ってただけだよ。よく覚えてるなぁと思ってさ」
今のキスとてそうだ。
教えた通りに舌を絡ませ、唇を吸い上げる。
「…今日はなにを教えてくれるんだ」
「ん?…何にしようかなあ…」
刹那の服を脱がせながら、首筋にちゅちゅ、とキスを落とす。
「いっぺんに教えたら、もったいないだよなぁ」
「…?なぜだ?」
「なぜって…男のロマンってもんが…」
「ロマ…?…??」
「そりゃさすがにおまえには判んねぇか」
目をぱちくりと動かす刹那が愛しい。
髪をかきわけて、額にもキスを落とした。
…そこで、ふと気づく。
「あれ…?おまえ、髪こんなにごわごわしてたか?」
「………?」
確か、刹那を拾ってきた時は、なめらかな髪だなと思った覚えがある。
クセ毛なのか、後ろ髪がぴんぴんと跳ねているが、これはどうやっても直らないらしい。
それはいい。…いいのだが。
「まるで、コンディショナーが利いてないみたいな髪だな、これ…」
「コンディショナーとはなんだ?」
「…なにって…使ってるだろ?いつも。風呂で」
「………?」
刹那が、首を傾げる。傾げるから、なんで知らないんだと思った。
そして気づく。そういえば、刹那に風呂で何をするかまでは教えていなかった。
「…お、おまえ、いつも風呂でなにしてた?!」
「シャワーを出していた」
「出して、それで?」
「頭からかぶった」
「で?」
「…シャワーを止めて、バスタオルで拭く」
「……あー………」
思わず頭ががくりと落ちた。
ああ、そうか。刹那がそれ以上のことを知っているわけがないんだ。
「シャワー教えてもいないし、一緒に入ったわけでもねえもんな…」
ということは、バスタブに湯をためてゆっくり浸かるということもしたことがないのか。
風呂やシャワーの楽しみを、まったく知らなかったということになる。
申し訳ないことをしたな、とロックオンは刹那を見下ろした。
「…刹那、今日はセックスの前にさ、風呂ってやつを教えることにするよ」
「……?…わかった」
刹那が知らないことは多い。
アンドロイド。人工の生物。日常的なことさえ知らない。
まるでこれは、大きな子供のようだ。ひとつひとつ教えていかなければならない。
刹那の手を引いて、風呂場へとすすむ。
「湯をためて、つかって、頭洗って顔もあらって。アンドロイドでも、風呂に入ればきっと気持ちいいぜ、刹那」
「セックスよりか?」
「ぶっ!…ああ、どうだろうな…。そりゃおまえが確かめてみろよ」
「わかった」
まじめな顔をして刹那が頷く。
それがひどく可愛くみえて、思わず唇にキスを落とした。
ふたりで入った風呂が、長い時間になったのは、仕方のないことだった。
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