ANDROID END
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最初の異変はほんのささいなものだった。
あれは一体なんだったのだろうか。今朝の射撃場でのことだ。
撃とうとしたまさにその瞬間、一瞬で指先の感覚がブレた。
まるで自分の指が自分のものではないように逸れた。それに反発して身体を硬直させたのに、隣のレーンに向かって発砲している自分が居た。
もし、あのまま指の動きに逆らわなかったら、背後にいたロックオンやアレルヤたちに当たっていたかもしれない。そう思えば、ただの誤作動だと思うにはあまりにも問題が有り過ぎた。
そしてあれが、一時の事だったのならいい。

(…また、だ…)
今、また指先の感覚が僅かに鈍っているような気がした。
なぜこんな時に。
ロックオンの背中にしがみついていた腕を右手だけ離して、自分の目の届くところまで持ち上げる。じっと手のひらを見つめてみるけれど、その手は何も問題がないように見えた。
いつもと変わらぬ、自分の手だ。
人工皮膚で覆われた人間に近い状態の肌。
力を入れて、指を動かし、手を開いたり閉じたりと繰り返す。
問題なく、動いていると思う。
では、先ほど感じた違和感は一体なんだったのか。
気のせい…であればいいのだが、それにしては射撃場でのこともある。
(何か不具合が…)
ロックオンが頭の上でゆっくりと揺れている。
先ほど達したばかりで敏感になった身体を慰めるように、緩やかに進む時間。ロックオンの動きも、余韻を楽しんでいるかのようだ。
(今ならセックスに集中していなくても大丈夫だろうか…)
刹那は頭の中に意識を集中させ、自分の体内状態に深くアクセスをした。自分の身体の不調は、自分の中に問いかけてみるに限る。
頭の先から爪先まで、洩れることなく身体の内側を探る。
正常に動いている箇所、腹の中の感触。
ロックオンが挿入している下腹の圧迫感も含めて全てを探り、総スキャンを完了する。
神経系統も筋肉構造も問題無しだ。異常の文字はどこにも見あたらない。いたって正常だ。
(…気のせい…なのだろうか…)
あの感触は。
指先を、ほんの僅かな電流が走ったような気がした。ピリ、と僅かに走った痛みにも似たもの。それが腕を動かしたように感じたのだが…。
「何やってんだ、お前は」
ふいに、ロックオンの腰の動きがぴたりとやんだ。声に促されて意識を戻せば、ロックオンの不機嫌そうな顔とかち合った。その顔に浮かんだ汗の粒。
久しぶりだから今日は時間をかけてやるぜと言ったとおり、どうやらロックオンは本気でセックスを楽しんでいるようで、挿入して一度達してもまだ抜かずに、ゆるゆると腰をなめらかに動かしては、刺激を繰り返して楽しんでいる。よくもこんなに長い時間もつものだと思いながらも、ロックオンの体力とて無尽ではない。顔には疲労と汗が滲んでいた。
「疲れているな」
「そりゃあ、そういうもんなんだよセックスてのは。お前が涼しい顔してる方が問題だ。体力有り余ってんのか」
「しばらくセックスしていなかったからだ。俺は平気だ」
「ああそうかい。ならまだ終わんねぇからな。…ってか集中しろっての。なんだよこの手は」
背中から離れた手の事を言っているらしいと判って、刹那は、ああ、と頷く。
「少し、動きがおかしい」
「おかしいってなんだよ。俺はいつものようにヤってるぞ」
「お前の事じゃない」
「は?」
目をしばたく。そこでようやく意味が判ったらしい。
「何か具合が悪いのか?」
刹那の腕を取り上げ、まじまじと見つめた。