「判ってますよ、カミーユさんの事ぐらい」

そんなやさしい言葉を吐かれているのに、のしっと乗り上げられて、カミーユは思わず息をつめた。
判ってる、というのなら、まずこの苦しさをなんとかしろ、と言いたい。
けれど、それを願う前にジュドーは腰を進めてしまうから、もうそれ以上を言えなくなった。
代わりに、喉から出るのは喘ぎ声ばかり。
息を吸って吐くことで精一杯。それ以上はもう何も出来ない。
苦しい。
けれど、気持ちいい。
まったく、どうしてこのジュドーってやつは、セックスは上手いんだ、ちくしょう。

「ね、カミーユさん。だからもう気持ちのいい思いだけしちゃえばいいんだよ」

耳元で囁くな。お前の声で身体の中がいっぱいになる。
上からも下からも、全部侵されている気分になる。
なんで。こんな。


ちがうんだ。
お前と抱きあいたいわけじゃなかった。
セックスしたいわけじゃなかった。

ただもう、誰も居なくなってしまったから、
お前しか居なかったから、
身体を埋めるにはお前しか。…お前だけが。

「だからほら。もっと身体動かしてってば。カミーユさん」

苦しい。気持ちいい。ああ、でもやめないで。
一瞬でも止めて欲しくない。ずっと強烈な感覚を味あわせて欲しい。
だってそうじゃなきゃ、こんな魂がいっぱい散っている場所で、正気なんて保っていられない。

人間の感情が溢れすぎているんだ。
だから、地球にオーロラが掛かって、みんなの意識がひとつになって、地球はまだ地球のままで。

…ああ、駄目だ。駄目、あそこには、あそこには。

「たい、…い…!」

手を伸ばす。その手がジュドーによって引き寄せられる。
触れた手はあたたかい。…違う。熱い。

「駄目。大尉じゃないですよ。俺、まだ中尉なの。だから待って。大尉になるまで、まだ」
「あ、あ、…あああ、あ…」

ジュドーの声が降り注ぐ。
瞼の中、水が溜まる。
零れ落ちる。こめかみに。

散っていく。
いろんなものが、散って、散って、散って………


「ああ、もう……!」

叫んだその瞬間、全てのものを吐き出した。
ああそうだ、これが欲しかった。
欲しかったんだ。

沈みゆく意識の中、何も考えられなくなった。


ジュドー。確かにお前は合っていたよ。
これが欲しかったんだ。