21歳の刹那がやってきた話:1
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「シン、俺の報告書、知らないか」
「さっき書きあげたやつだろ?アスランさんが持っていったよ。ロックオンのとこに提出しに」
「そうか、ありがとう」
MSデッキで、インパルスの整備中。
後ろから声をかけられて、振り返らずに答えた。
だって、その声は確かに刹那だったからだ。
振り返らなくても判る。もう刹那とは短い付き合いじゃない。
刹那は無口で、あんまり顔色も変えないし、まるで俺とは正反対だって言われた事もあるけど、…まぁ、そういうやつだって思えば、付き合いやすい、いいやつだった。

刹那に声をかけられたって、振り返らない。判るからだ。
…ただ、かけられた声が、いつもより低いなぁと思った。風邪でも引いてるんだろうか。
だから、なんとなくちらりと振り返った。
刹那はもう後ろにいなくて、代わりに知らない男の人の後姿。
「…ん?」
おかしいな、つい今だぞ。刹那に声かけられたの。
知らない男の人の後ろ姿を見ながら、俺はぼけーっと思う。
あの人は刹那じゃないし。
なんか、髪型似てるけど。
でも、あのひとじゃない。あんなに足長くない。てか、あんなに身長高くない。刹那は俺より低い。ほんの数センチだけど。

「刹那…どこ行ったんだ?」
すぐに俺のとこから離れたとしても、この広いMSデッキで簡単に居なくならないだろ。
おかしいなと思って、周囲を見渡してみるけど居ない。
「…あれ?」
首を捻った。
でもまぁいいか。たいしたことじゃない。もう一度作業に戻ろうとしたら、ずっと向こう、MSデッキの入口が開いた。出てきたのは刹那。
「えっ、刹那、いつの間にそんなところに!」
「……?」
刹那は、「?」って顔してやってくる。
俺の傍まで来ると、躊躇いなく口を開いた。
「シン。俺の報告書を知らないか」
「……ん?」
あれ?それ、さっきも聞いたぞ。
「それ、さっき答えただろ?」
「……なんのことだ?」
「なにって、いや、アスランさんが俺の報告書と一緒に持っていったんだって!ロックオンのところに!」
「…そうか。すまない」
刹那は、それが判れば満足だとばかりに、また俺から離れようとした。
「刹那、2度目だぞ。もうボケたのか」
「俺はボケてない」
むっ、とした顔。
刹那は、最近すこしだけ感情を顔に出してくれるようになった。友達としては進歩だ。
だから、むっとされても、別にこっちは、むっとしない。
「さっきアスランさんが持っていったって、言ったばっか。…2度目なんだから、ちょっとはボケたんじゃないの」
「俺は1度しか聞いていない」
「何強がってるんだよ!だってさっき…、」
確かに聞いたよな?
そう言おうとして、口が開かなかった。刹那は嘘をつくようなやつじゃないし、こんな事でここまで強がるようなやつでもない。
「刹那?」
そういえば、声だって、さっきほど低くない。1度目に聞いたやつとは大違いだ。
でも、1度目の人は、俺の報告書と言っていたし、俺の名前も知ってた。
もしかして、刹那に凄く良く似た人が、この戦艦に配属になったんだろうか。
「俺…人違いした?」
刹那の顔を見ながら言ったけど、刹那はむっとしたまま答えてはくれなかった。
「じゃあ、あの足の長い、すらっとした人は誰だったんだ…」
言うと、刹那は、さらにむっとした。
俺、友達だから、あんまり気にしないけど。