「どうした刹那。今日は乗り気じゃないのか?」
上に乗り上げて、身体を好き勝手に突き上げておきながら、なんて事を言うんだ。もう戻れないところまで来ているというのに、今更辞めようとするのか。
あとは吐き出すだけ。もっと強い刺激を与えて、お互い開放させるだけなのに。

「……別に…」
「お前はそういう言葉ばっかりだな」

笑いを含んだロックオンに言葉を返す気はなくて、顔を逸らして返答をする。どうせこの男には、刹那の腹の内など知り尽くされている。
薄く笑ったロックオンは、仕方ないなと笑って、再度突き上げを開始した。今度はより深く交わるために、刹那の腰を持ち上げ、背中がシーツから離れる程に身体を浮かす。
「ひぅっ…!」
拒絶に逸らされた背中。けれど身体を押さえられていれば刹那が動けるのは上半身だけだ。
身体を捻ってシーツを掴む。
捻られた身体のライン。女には無い、筋肉と鎖骨が浮かぶ。

「ここ、だよな?」
「…っ、あ!」
弱いと判っている部分ばかりを狙ってくる抱き方は、ロックオンの機嫌が悪い時だ。
乗り気じゃないと判ったから、腹いせに。

…なんて酷い。
そうして、女を抱くように、この身体を抱くんだ。
女性ではない身体を、まるで女性を抱くように。男にしかない快感神経を煽って、女のように濡れない場所に無理矢理突っ込んでかき回す。

いやだ。

あの女を抱いている身体で、抱かれる。
…同じように、何でもないように、身体の中の欲を吐き出すためだけに。

いやだ…!


「…どうした?」
唇を。
噛んでいなければ、何かが洩れてしまう。
この口から、何かを言ってしまう。
ロックオンの動きが、また止まる。上から覗き込み、大きな手で子供の頬を包み込んで顔を見つめる。
おぼろげな目でロックオンを見つめれば、刹那の頬を包む手が、すり、と頬を数度なぞった。

酷い。

激情に任せて抱かれている方が楽なのに、どうして止めるんだ。どうして。
やさしくして欲しいわけじゃない。

「刹那、お前今日変だぞ。おい」
動きを止め、頬を撫で、汗で濡れた前髪をかきあげて、そうして目を覗き込んでくる。

なんて、酷い。
憎い。憎い。
この男が、たまらなく憎い。

「こないだの事なら謝っただろうが」

判ってる。
違う。謝られたかったわけでもない。
刹那が望んでいる事など、この男はきっと判っている。

遊ばれているんだ。
手の中で、好き勝手に。
心を揺さぶって、行為を見せ付けて、そうして謝る事で、刹那に劣等感ばかりを残していく。
女を抱いているロックオンを許せない腹の内を、笑ってるんだ。

刹那、それはヤキモチって言うんだ。
お前の独占欲が、俺を支配したいって言ってるんだよ。

そう言っている声が聞こえる気がした。
馬鹿にしてる。
酷い。
酷い。

「…もう、いやだ…」
「何が。ほら、とりあえずイっちまえよ」

首を振り、ロックオンの胸を押す。
イく直前の、膨れ上がったモノもそのままに刹那はロックオンの中から抜け出そうと身体の力を抜いて、身を引いた。
この男にイかされなくても、一人でだってイける。指で、道具で、なんならアレルヤに言えば。…あいつならきっと抱いてくれる。困った顔をしながらきっと。

「おい刹那」
うるさい。うるさい、うるさい。
もう嫌だ。
こんな程度の事で、こんな、たったこれだけの事で、なんで。

「…お前なんか…っ、」

もう、お前なんかいらない。
そう言おうとした刹那の声を、ロックオンの唇が塞いだ。
口を全て覆うようなキスが。

「…っ、…ん、…」
ねっとりと絡みつく。吐息を全て持って行く。唾液が、喉を伝った。唇が濡れていく。
ぎゅっと拘束した腕が緩み、その途端、腰を抱き寄せられて、尻の肉を掴まれる。
せっかく抜き出したものが、また深くまで挿入されて、やめることを許されない。

あぁ、
また、捕まった。