「刹那っ…!」 切羽詰ったアレルヤの叫ぶ声が聞こえた。 それでも手を緩めずに、口の中に含んだソレを音をたてて舐める。 「っあ…!」 次に低い悲鳴のような声が聞こえ、同時にぐぐぐと手と舌先で刺激していたモノの体積が増す。熱さと硬さも。 「せつ、な…っ…」 喘ぐ声。刹那の髪に、アレルヤの指が絡めらられ、きゅっ、と髪ごと引っ張られて頭皮に痛みが走っても、それでもやめてやる気は起き無かった。 咥えているものを見れば、この男とて、吐き出して仕方ないのだと判っていたから。 ロックオンストラトス以外の人間とセックスをしようとするのは初めてだ。 こうして、あの男以外のものを口に咥え込む事さえも初めてで。 それでも、ロックオンとは幾らでもした事はある。だから、どうしたらいいのか良くわかる。 ほら、口の中で硬く熱くなってきた。あともう少しすれば、ひくひく震えて、エラが張り、先端の孔が少しばかり膨張する。 そうしたら、先っぽばかりを舐めて啜って、ちょっと力を入れてやればいい。と同時に根本をずくずくと扱いてやれば確実に射精する。 簡単にイせせる方法を知っている。 だって、あの男がそうだったから。 「…刹那、もう、だめだよ、…!」 何が駄目だというんだ。ベッドに押し倒されて、簡単にチャックまで下ろさせておきながら。 何をするつもりなんだと、本当に舐める直前までアレルヤは、ぽかんとした表情だった。されるがまま。 咥えられてから、慌てるなんて、まるでそうされたかったようだ。 イカせてやる。 だから、お前も俺をイカせろ。 そう告げた言葉に、アレルヤは目を見開いて、ただ刹那の顔を見つめるばかりだった。 「どうして、こんなこと、…」 アレルヤが吐き出した精液を飲み込み、口を拭う。 唇についた精液も指で梳くって舐め、口の中で消化した。 くさい。 鼻につく臭いをやり過ごそうして我慢をする。表情なんて代わりはしなかったけれど。 勃起したそれの熱さ。 それは、あの男のものと変わる事もない。 ただ形状と大きさだけが違うだけだと刹那は妙に納得した。 人間が違うだけ。やることは一緒だ。 アレルヤの喘ぎ声を聞いたのは初めてで、けれどそんな声でも自分は勃起しているじゃないか。…ほら、アレルヤとしたがっている。 「…刹那、なんでっ…」 髪をくしゃりとかきあげる。見れば、金色の目も見えた。オッドアイ。その不思議な色彩に見とれた。 この男はロックオンじゃない。 けれど同じ人間だ。勃起だってするし、イく寸前は喘ぐし、しかもよりにもよって人の髪を掻き回して、髪の中の指を皮膚に立てるその仕草はまったく同じだった。イく寸前には、イヤだと言いながらも自ら腰を振って射精を促してくる。喉奥に当たる先端で嘔吐しそうにもなる。それさえもロックオンと同じだった。 もしかして男というのは、フェラチオをされると皆同じ行動を取るのか。 ならば自分は特別なのだろうか。 咥えられて、イかされる時、ロックオンの髪に指を絡めたことなど殆どない。 それよりも、シーツを握り、洩れそうになる声を抑えるために口を覆うのが精一杯で。 「刹那、なんでこんなこと」 同じ事を何度も聞くアレルヤに、刹那は首を傾げた。 「何故?」 「…そうだよ、なんで、君は…」 銀色に近い目を細め、苦しげに呼吸を吐き出しながらそんな事を聞く。 なぜ、聞く? あぁ、そうか。 「気持ちよくなかったのか」 「…そういう事じゃないよ、そうじゃなくて、なんで僕に、」 「お前ならしてくれると」 「何を、」 「セックス」 「刹那!」 怒鳴られても。 そのために、咥えたのに。 もしかしたら、アレルヤは自分を抱きたくはないのか。セックスというものをしたくは無いのだろうか。 ならば、咥えただけ損というものだ。 「…忘れてくれ」 「刹那!」 普段、あれだけ温厚で、やさしく接するアレルヤが、今はこんなにも穏やかではない顔をして刹那の行動を何故と罵る。 「こういうのは好きな人とするべきだよ。…君はロックオンと」 「関係ない」 「あるよ、僕がロックオンに怒られちゃう」 それこそ、何故、だ。 ロックオンは、他の女も抱く。 残り香が残る程に密着し、ベッドを共している。 ならば、自分がアレルヤとセックスをしても怒られないはずだ。 ロックオンとて同じ事をしているんだ構わないだろう。 第一、恋人同士ではない関係なのだから。 お互い、男同士。 性欲を吐き捨てるためだめに重ねた身体だった。 「俺としたくないなら」 「そういう事じゃない!」 気持ちいい思いをしたくせに。 こっちは、臭い精液を飲み込んで、イかせてやったのに。 …ロックオンが、他の女に手を出すように、自分もアレルヤに手を伸ばしたのに。 何故、咎められる。 ベッドから身を降ろし、乱れもしなかった服を見下ろす。 この身体に、どんな価値がある? 「…すまなかった」 「刹那!」 謝る事じゃないよ! アレルヤの声が、背後から響く。 これ以上アレルヤから否定的な言葉を聞いていたくない。 頭の奥がズキズキと痛む。 ねばつく舌を舐めれば、口の中に残るアレルヤの精液の味が、酷く不味かった。 |