ベッドに仰向けに寝そべったサーシェスの上にまたがって、顔面の前に尻を突き出す。
程よくついた筋肉に手がかかり、硬い尻の肉をサーシェスの指が割った。孔がゆるりと開き、そこから白獨の体液がどろりと零れ落ちるのを、サーシェスの目がじっと見つめていた。

尻の谷間を辿り、股間で勃起しつつあるソレまで伝い、ぼたりと落ちる。
サーシェスの胸の上に、白い精液がぼたりぽたりと落ち続け、白い小さな円を点々と作る。
まるで蝋燭のようだ。垂らされるその白は熱くも冷たくもないけれど。
四つんばいになりながら、その様を見ていた刹那は、あの日の夜、揺れた蝋燭を思い出していた。
あの男は今頃どうしているだろうか。
あの国で、タカ派として恐れられる男の片腕。戦争を起こすために武器を買い占めていた男。
情報を掴んだ今でも、おそらくサーシェスは殺さないのだろう。
あの敏腕な男さえも唆し、手の内に収めて手駒にしている。
戦争を無くすつもりはない。
誰よりも何よりもこのアリーアルサーシェスという男が、争いを好んでいる。戦争になれば金が手に入る。それは莫大な金が。

ふるりと身体が震えた。体内に埋る精液の量が多い。一晩で2度3度、中に出されるのはいつもの事だ。けれど、今夜はこの男にしては随分と陳腐な抱き方を好んだ。性欲を出し終えているのに、こうしてベッドの中に2人で居るのがその証拠。
散々、ナカに放って蹂躙しておきながら、自分の上に乗れなどと。
まるで自分が出したそれを確かめるように、今、孔を広げて犯した白獨を見つめている。

「どうした震えてるのか」

言われて答える言葉がない。広げられた孔がひくひくと震えている。括約筋の痙攣で、ナカから、とぷとぷと精液が溢れ出ている。それは間近で見ているサーシェスが一番判っているだろう。
胸に落ちた精液は、もう小さな円ではない。水溜りのように白色の精液だまりが出来上がって溢れ、サーシェスの胸を伝いシーツにまで流れ落ちている。精液の強いにおいが広がっていた。
その白色。

「…綺麗なモンだ」

嘘をつけ。今までどれだけ抱こうと、いつも汚いものを見る目で見ていたじゃないか。洗浄もしていないそこに無理矢理突き入れて、ぐちゃぐちゃにしていた日もある。綺麗に抱かれた事など一度もない。
この男の”綺麗”は、一般のそれと違うのだろうか。
美しいと思えるもの。それはこの世の中に少ない。
それは人の生き様と、沈む太陽と昇る太陽、崩れた瓦礫から覗く子供の顔、瓦礫に下じきにされて押しつぶされた人間から流れる赤い血。死ぬ間際の命乞いをする人間の目の色。
刹那が綺麗だと思ったものはそのぐらいだ。
精液など、どうしたら綺麗だと思える。
こんなに真っ白で、こんなにとめどなく溢れ出るもの。
白い色など、この腐った世界では必要のないもの。
それなのに。


「お前はまだ抱かれ足りないのか」

何を言っている。
もう今夜はこれで最後だろう。そんなに数をこなしても、疲れるだけだ。サーシェスとて数度立て続けに放っているが、刹那こそもう何度もイかされている。

「…ほぉら、見てみろソラン」

不意に呼ばれた忘れた名は、当の昔の捨てた名。
あぁ、また戯れだろうか。この男はそうして不意を突いて人の心に僅かばかり波紋を立てるのが好きだ。

「完全に勃起しやがった。何度目だ?」
「…っあ、…!」

指1本。爪先だけで勃起したその先端へ触れる。びくりと硬いそれが揺れた。
先端からカリに触れて裏筋を辿り、つつつつ、となぞる。袋を一周して、孔までの短い距離をゆっくりと時間をかけて指を進め、孔に辿りつくと、とぼとぼと零れる白い蜜穴に指をねじ込んだ。
「…ぁ!」
すぐに指は引き抜かれ、白い精液を指から垂らして、また再び勃起した先端までゆっくりと指先だけで辿った。

「すげぇな、もうイきそうだ」
「…っ、…!」
言われて驚く。あぁ確かに勃起している。熱が集まっている。イってしまいたい。
先端から孔まで何度も往復した指先は、白い精液でねちねちと音を立てている。
指が、孔の中に捻じ込まれた。

「…っあ!」
思わず声が上がり、背筋が震えた。顎が天を向く。たかが指1本だけで、こんなに感じている。
震えながらサーシェスの指を受け入れる。四つんばいになった身体が、喜んで揺れていた。腰が動く。

「どうやら随分と欲求不満だったようだ。あの男は戦術だけは見事だが、セックスは下手だったようだな」

孔の中に指を1本だけを埋め込んで、ずぶぶぶぶ、と根本まで差し込み、狭い中の壁を指先で刺激して、また引き抜く。爪が見える程に引き抜いた指にはべったりと白い精液が絡みついていた。それを最奥まで再びゆっくりと沈み込ませる。肉と指が擦れ合う僅かな音がした。

「あ、…あ、あぁ、…!」
「おいおい、まさか指1本でイく気じゃねぇだろうな」

喉の奥で笑いながらも、サーシェスは指1本で翻弄する動きをやめない。
特別、激しく動かしているわけでも、前立腺を執拗に攻めているわけでもない。ただ指1本を最奥まで差込引き抜く。それだけの動きだ。他に何もしていない。何も。

「っ…、あ、ああああッ…!」
けれど、それが限界だった。
四つんばいになったまま、背中を撓らせ、シーツを掴んで、今日何度目かの吐精をする。サーシェスの指を食っていたソコが、ぎゅううう、と絞り上げられた。
「いてえな、お前の孔は」
びゅくびゅくと精液を吐き出しつつ、サーシェスの指を、ぎちぎちと締め付けて、精液を吐き出す。
これはただの指だ。サーシェスの、中指1本。それだけなのに。

「飢えてたのか」
息をつく刹那に、サーシェスの声。頭が朦朧としていた。あぁ…もう眠りたい。無意識に頷いた。
「そうか」
ずるりと指を引き抜き、上半身を起こす。
「なら、ほら」
尻を叩き、こっちを向けと命じて指を目の前に差し出した。サーシェスが上半身を起こした途端、胸に散っていた精液が腹へと垂れた。
刹那が出したものだ。刹那のナカから溢れた、サーシェスの。

「お前、白は嫌いだろう?」
目の前に突きつけられた白い指と、白い胸。
それを見つめて、ゆっくりと瞬きをすると、その胸に手を伸ばし、舌を絡めた。