自分の生が、どれだけ無為なものか知っている。

男の上で腰を振る。結合部が、にちにちと音を立て、肉と肉のぶつかる音ばかりが響き、喉から出る声は、喘ぎともつかないため息のような音ばかり。
いきり立った男のものは萎える事も無く、随分長い時間、体内で埋まり続けている。

もう一度イきたい。
サーシェスの腿を押さえていた手を離し、上から突き落とすような腰の動きをやめて、かき回すように横にスライドさせる動きに替え、勃起した自分のものに手を添える。少しばかり扱けばすぐに強い電流のような快感が下半身から広がって身体を満たした。

「おい、またお前だけイくのか」
うるさい。お前が抱く気にならないからだ。
こちらがどれだけ尽くしたとて、簡単に終らせようとしないのはお前だ。
イきたいのなら、自分が腰を振れ。この強靭な力でねじ伏せるようなセックスをしてこればいい。
ずこずこと、精液の絡む竿を扱き、サーシェスが揶揄してくる声を聞きながら達した。…あぁ、気持ちいい。
びゅくびゅくと流れる白い点々が、サーシェスの茂みと下腹部に散らばる。
中に留まる精液を扱いて全て吐き出しながら、刹那は目を閉じた。余韻に浸れば、ナカで隆々としたそれが一際存在感を増すようだった。

「どけ」
言われた言葉と共に、サーシェスが刹那の身体を押し倒す。
反動で、ナカからずるりとモノが引き抜かれる。刹那の身体はベッドの上に投げ出された。
「…何、」
「お前じゃ役不足だって言ってんだよ」
「………」

中央を勃起させたままベッドから降りたサーシェスが、ドアに向かって声を上げた。女を2,3人連れてこい、と。
そうして裸のまま、ずかずかと部屋を歩き、隣接されたもう1つのベッドルームへと歩いて消える。
そのたくましい背中を見つめながら、刹那はゆっくりと目を閉じた。

あいつが女を抱くというならそれでいい。
別に自分でなくても、他の女で用が足りるのならばそれで。
本来は、こんな役目は女のする事だ。
男の欲求を発散させて、甘い香りを残し、柔らかい胸で眠りにつかせる。
自分は、戯れで抱かれているに過ぎない。
別に、誰でも良かった。

たとえば、あのクルジスで、自分以外の誰かが生き残ったのなら、おそらく別の男がサーシェスの情人となっていたのだろう。
あの戦いで生き残り、サーシェスと共に、中東の紛争の耐えない地域を点々と移動している。戦争をとめたいわけではない。…ただ戦場でしか生きられないから、そうしている。
セックスの相手のために生きているわけではない。
けれど、あの男の片腕として生きている。
戦うこと、抱かれること。…それだけしか出来ないから、ここにいる。

あの男の傍に居る事、ただそれだけを許されているから。


やがて、隣室から聞こえてきた女の声。
はじめのうちは随分と楽しそうな喘ぎ声に始り、笑い声さえ混じって聞こえた。
随分楽しんでやがる。刹那は目を閉じて毒づく。

そうしてしばらく。
女の声は、泣き声になり、拒絶になり、悲鳴になって、やがて何も聞こえなくなった。


「だから、…俺、なんだ…」
音の無い静かな部屋で仰向けに寝そべりながら、刹那は目を開き、白い天井を見つめ舌を鳴らした。
もうすぐ、あの男がやってくる。