「おい刹那ー入るぞー」
一応声だけをかけてドアをあけると、そこには、尻に中途半端におもちゃを突っ込んだ刹那がいた。
ゆっくりと首を動かして、入り口で固まる俺を無表情で見つめてくる、その目。
…おい。なんだこのシチュエーションは。


放っておけば、人間の欲を一切発散させようとしない刹那に、食事を与えて食欲を満たしてやって、眠っていないと思えば薬を渡した。
残るは性欲だが、こればっかりは俺じゃ教えられないだろ…と思っていたから、言葉で教えるつもりが、いつの間にか手を出すようになって、抱くに至るまでは、結構あっという間だった。
堪え性というのが俺には無いらしい。困った弱点だ。
それでも、刹那が自ら自慰をする事は無くて、つまり16歳だというのに性行動を一切しないから不安にもなる。知ってるか刹那。精液溜めすぎると病気になるんだぞ。
俺だって任務だとか色々あって刹那を構い倒せるわけじゃない。
だから刹那に、おもちゃを与えた。大人のおもちゃというやつだ。1人でマスかけないってんなら、別に渡したっていいだろ。…悪いか?

使えばイけるんじゃねえか?と渡してみたが、果たして刹那が使っているのかは不明だった。シリコンで出来た細身のバイブだ。こんなもんでイけるならいいけど、自分で扱いて出すような事をしないから悪いんだ。
半分、冗談の意味も込めて、玩具を渡して………で、今、この状態だ。
ベッドの上でごろりと横たわる刹那。尻からシリコン。

「お前、気持ちいいか?」
「……あんまり」
ベッドに横たわったまま、刹那は表情を変えずに答えた。尻に刺さってる玩具は、根元までずっぷり…なわけじゃないが、半分以上は収まっている。電源は入っていないが。そこまで自分で入れたってんなら刹那の行動を褒めるべきだろうか俺は。…もしかして使い方も説明するべきだったのか?

「刹那、とりあえずな、お前それ…あー…まぁいい、しょうがねぇなもう!」
声に出して何かを注意したかったが、何を注意したらいいのか判らず、仕方がないから、刹那の玩具使用1回目に付き合う事にする。
この坊主は、俺とセックスする時でさえ、表情を変えやがらねぇし、イく時さえも無表情だ。ちゃんとイっているっていうのに、本当に気持ちいいのかどうか疑うことがある。今回もそうだ。玩具でイけるのかどうか、ちょっと気にもなった。
ベッドに座って刹那に手を伸ばす。体温はいつもと同じ。呼吸数も同じだろう。

「痛くはないな?」
「…全然」
まぁ、そうだろうな。…ならばと、尻から出ている取っ手を奥深くへ押し込んだ。刹那は少し力んでいて、強引に入れなきゃ入らなかった。まあいいか。どうせこいつは不感症っぽいしな。
「…っ、う、!」
ずぶりと奥まで入れると驚いた事に刹那が声を出した。…え?今の刹那の声、だよな?
「おい」
「……何」
「いや、何ってか…声」
言ってみたが、刹那はそれ以上答えなかった。無かった事にしようとしてるのかてめえは。
けど、刹那の強情をよく判ってる俺としては、それ以上聞く気にはなれなくて、じゃあ、と刹那に許可なくバイブの電源を入れた。途端、ヴヴヴとくぐもった音が刹那の体内から始まり、その瞬間、ありえないほどに刹那の身体がひくっと震えて跳ねた。
…これは、おい。疑いようがないぞ?
もしやと思い、目線を移動させてみれば、やはり。勃起してやがる。

「せーつーなー」
「………」
あ、またダンマリか。でも刹那の顔色は、さっきとは全然違っている。もう隠しようがない。これは快感に耐えてるって顔だ。
…お前。もしかしてさ?
俺とヤっても全然感じないくせに。
直接触られて扱く事で、やっと感じるぐらいなのに。

……おもちゃには簡単に感じるのか、お前は!

「刹那、お前俺に喧嘩売る気かこのやろー」
言ってみたが、刹那は人生初の玩具体験に夢中だ。
もっとも、夢中といっても、眉間に皺を寄せるぐらいで声なんか出しもしない。…けど気持ちいいならそろそろ限界だろ?あぁ、もう完全に勃ちあがってやがるし。
開放してやろうか?…でもその前に、な?

俺は強引に刹那の顎を持ち上げ、目線を合わせた。
それだけでも感じたのか、ひくりと瞳が動いて、目を細める。
「刹那、お前、おもちゃなら感じるのか」
「………」
答えはない。どっちかっていうと、快感を我慢してる顔だ。…や、お前、そこは我慢しなくていいところだろ。流されたらイけるんだし。
「声、出してみろって?」
「…こ、え?」
あぁ、そういう普通の声じゃなくてな。
「息を吐けばいいんだ。息を殺したままじゃ辛くなるから、息を吐き出してみろ。ほら、口あけて」
刹那の顎を軽く持ち上げて、やってみろと言えば、刹那はまたばきを数回する事で考えて、そしてゆっくりと口を開き、息を軽く吸い込んで、次に大量の息を吐き出した。

「…っあ、はあっ…!」

その声は、俺が初めて聞いた刹那の喘ぎ声で、不覚にも、どくっと胸が高鳴った。

うわ、おい、お前、その声は犯罪ッ…!
こいつこんなイイ声だして鳴くのか!?男だろ、お前!

「…っ、は…、ぁ、…」
そんな俺にはお構いなしに(当たり前だ)、刹那は息を吐き出す事を覚えて、その度に感じている声を出す。
といっても、呼吸と同時に出る擬音ばっかりだが、それでも俺にとっては破壊力抜群だった。
「刹那…いいぞ…」
自然と、俺も力が入っていて、刹那を覗き込むように見ていた。くそ、してぇな俺も。

吐き出す声に、ぞくぞくしながらも、徐々に勃起しているのを確認する。あとちょっとだな。…それにしてもこいつ、腰が揺れてるぞ。今までそんな事は無かっただけに、これは新鮮だ。どうやら刹那はおもちゃがお気に召したらしい。俺があげてやったおもちゃに懐く刹那。…まるで父親の気分だなこれは。

「…っ、う、…あ、っ!」
「イイところに当たってるのか?ほら、動いてみろもっと」
「っ、…っ、」
刹那が素直に腰を動かす。気持ち良いって腰を揺らしながら、快感を残さず拾う為の集中か、ぎゅっと目を瞑る。
そしてついに我慢できなくなったらしい。ナカの刺激だけじゃ飽き足らず、手を伸ばして自分のを扱き出そうとした。
「おっと、それはストップ」
「!??」
もう少しで手が届くってところで、刹那の手首をとった。両手ともだ。
刹那が俺を見つめる。目と目が至近距離で合った。
「どうせなら、ナカのおもちゃだけでイってみろって」
「っ!!」
そんな、って表情をしながら俺を見つめてくるけれど、刹那、悪いな。俺にとって、お前のそんな顔も新鮮だ。
「ほら」
イかせるのは簡単だが、どうせなら俺にもっと、お前の姿のそういう新鮮な姿を見せてくれ。
「ほら、さっきやったみたいに、集中して腰を深く動かせばいい。イイところには当たってるのか?イきそうだぞ、お前の」
「…っは…あ…」

ゆらゆら揺れる腰。俺に両手を持たれている所為で手は動かせない。が、本能的に払いのけようと力を込める。けどそう簡単に俺だってお前の手を離してやる気はない。刹那の力に負けない自信はある。少しばかりしんどいが。
そうしている間にも、ゆらゆら揺れる刹那の腰。限界まで勃起しているから、股間は痛そうに見える。
刹那、そろそろ集中してイかないと、タイミング逃すぜ?
ほら、揺れ続けてるから、ナカからおもちゃが出てきちまってるじゃねぇか。
仕方なく、片手を離して刹那の尻に手を伸ばす。一息に、ずくっと奥まで突き入れた。
「ひぁああっ!」
大きな悲鳴。と同時に、刹那が俺の肩をつかんだ。無意識なんだろう。
まるで女のように肩に縋って震える刹那は、正直、めちゃくちゃ可愛い。

「もうイっちまえよ、刹那ほら」
拘束したままの刹那の片手の甲に、ちゅ、とキスを落として、その場所を舌で舐める。指が小刻みに震えていた。…あぁそういえばこんな風に触れるのは初めてかもな。俺達、性欲を発散させるためだけの相手だから、キスなんかしないしな。

「あ、ぁ、う、…あ、もう、…!」
「いいぜ」
最後に刹那の希望を聞いてやって、言葉だけで射精を促してやると、あっけなく果てた。目の前にいた俺は、服を着たまま刹那の精液を腹に浴びた。まぁいいか。




刹那のおもちゃ遊びを見ていただけで、俺のモノも勃ちあがってきやがったから、イったばかりの刹那のナカから玩具を引き抜き、間髪おかずに俺のを挿れた。
ひくっ、と一瞬震えた身体に、(お、いい反応だねぇ)、と思ったのもつかの間。刹那の呼吸が収まったと同時に、いつもの無表情に戻ってしまった。…体温も、だ。
そこからは、俺が腰を振ろうが何をしようが刹那の表情は熱っぽいものにもならず、声も出ない。
「お前な…」
あまりの態度の急変さに、思わず額を押さえる。こいつ、ホントに現物に興味ねぇな!?
ベッドに寝転がるだけになった刹那に、恨みがましい目線を向けると、
「…長くかかりそうなのか?早くしてくれ」
そんな事を言うから、俺は刹那の身体を一晩遊びつくしてやった。