「刹那は悪い子だね」

まるで子供に言う言葉を使いながらも、アレルヤは腰を、ぐり、と押し付ける。
その仕草は、手馴れたセックスへの前戯だった。
何を言っているんだと刹那は強い目で見つめるが、アレルヤは笑っている。
ぐり、ぐり、と続けて腰をいれられると、きゅうん、と引き絞られるような感覚がわきあがってくる。
いつものように与えられる愛撫だけれど、刹那はふいと顔を逸らす。

わるいこ。

…そんなこと、言われるまでもなく、判っていることだけれど。


「ロックオンは?」
「寝ている」
「じゃあ、あっちはいいこ?」
違う、寝る子は育つ、だろう。
「でも、人のものは取っちゃいけないって」
なら、それはお前の台詞だ。
「…刹那はロックオンのもの?」
ちがう。 「ならいいいんじゃないかな?」

「それでも、ダメだ」
「じゃあ、やめる?」
「……やめない」
「ほら、刹那はわるいこ」

唇が触れ合うか合わないかのギリギリで吐息を感じながらアレルヤは言葉を吐く。言葉遊びだ。言っている事に意味などあまりない。
アレルヤは、なまめかしく時折唇をわざとくっつけてみたりと、遊んでいる。この男はいつの間にこんな小細工を覚えたのか。
確か4年前は、ロックオンと刹那の逢瀬を少し見ただけで顔を染めていたのに、4年でこの変化は卑怯だ。

思いを篭めて睨みつけてみれば、左右で違う色彩の目が、笑いを篭めて細められる。

「だって刹那が僕を誘ったんじゃないか」
「……」

身も蓋もない。
あぁ、確かにそうだけれど。
仕方がなかった。彼が目覚めなかった。待っていたのにずっと。ずっと。だから手を差し伸ばす優しい腕に縋ってしまっただけだ。

「浮気する刹那は悪い子だ」

今更何を。
股間に手を伸ばされながら、そんな言葉。
むず、と熱くなりかけたモノを引きずり出す。
ついさっきロックオンとしたばかりのそれは、あっという間に熱を持って硬くなっていく。
「もう滲んでる。はやいなぁ」
先端に指先を当てて、揉むように刺激を与える。じわじわとあふれ出してくる先走りの体液を指先に絡めながら、アレルヤは楽しげだ。

「病み上がりじゃ、やっぱり物足りなかった?だから僕の部屋に来たんでしょう、刹那。強欲だね」
うるさい。
うるさい。
口悪くなった。それは、この男が、ハレルヤまでも体内に抱擁したからか。
口端をつりあげて、意地悪く言うハレルヤより、笑顔の中に全ての感情を押し込んで、罵ることも褒めることも同じ表情で告げる。その方がよっぽどこわいしタチが悪いのに、そんなアレルヤハプティズムに抱かれて喜ぶ自分は、なんなんだ。

悔しくて、唇を押し付けた。
もう、こんな口からは、何も喋らせない。