手を延ばせば届くはずのぬくもりが無い。ロックオンは目を醒ました。

おかしい。そんなはずはない。
川の字、にしては、1人多いのだが、4人揃って枕を並べて眠っていたはずだ。
昨晩のジャンケンで勝ち取った布団の場所は、たしかに刹那の隣だったはずで、だからこの手を延ばせば刹那の体温にたどり着くはずなのに。
広い、などと口が裂けても言えない部屋だ。長身のロックオンが手を伸ばせば、半径1メートル近くのものには手が届く。
いくら刹那の身体が小さいとはいえ、何処かへ行ってしまうはずはないのに。まだ夜明け前だ。起きるには早すぎる。
「せ、つな…?」
しかし、いくら手をのばしても、その手に刹那のぬくもりは届かなかった。
「せつなぁ〜…?」
呼んでも答えはない。まあ、返事が無いのは当然だろう。普段とて呼んだだけでは刹那は返事もしないし、寄ってくる事もない。
しかも、布団の中にいるはずなのに、異様に寒いのは何故だ。
布団を4つ引こうとして、4つ引く広さが無いから、いつも3つしか引けない。が、掛け布団は4つあったはずだ。1人1つずつ分け合っていたはずなのに。
薄目を開けてみれば、ロックオンの手が届かないギリギリの位置に刹那の丸まった背中が見えた。しかも、ロックオンの掛け布団に包まっている。

「おい、せつなーぁ!」
また俺の、とりやがった!
あまりの寒さに跳び起きて刹那から布団をむしり取ろうとし、いや、一緒に中に入った方が、刹那を抱きしめて眠れるじゃないか、と、眠い頭が妄想に働いて、いそいそと身体を動かす。…そこで、あることに気付いた。
丸まるようにして眠る刹那の身体に、寄り添うように眠っている男がいる。
アレルヤだ。
「なっ…!?」
思わず、布団を剥がした。
そこには、アレルヤの腕の中に擦り寄るように眠っている、刹那の安らかな寝顔があった。
ロックオンには触れもしないほど、あからさまに避けているのに。
誰が声を掛けても、シカトばかりで、そっけない態度。話さえまともに出来ないのに。
「なのに、なんで刹那、お前はアレルヤには懐いてるんだー!」
ロックオンの絶叫が響く。
アレルヤの胸の中の刹那は、ロックオンの大声に、ひくりと反応してまた目を閉じ、アレルヤの胸の中に顔を埋めた。
6畳1間の片隅で、ちゃっかり1人分の布団とスペースを確保していたティエリアは、「うるさい」、と眉をひそめてつぶやく。

いつもの朝(…というより真夜中)である。