夢の君 現つの君
その熱い身体の乱れようは。
おかしい、と思わせるほどだった。
「、ッあぁ!…け、いじ…ッ」
腕の中で艶めかしく喘ぐ政宗は、抱擁を求めてか首に手を回してきた。
一気に近づいた二つの汗ばんだ身体が触れ合い、分け合う熱に、また昂ぶらされる。
「けいじ…ッ、…もっと…ぉ…」
切なげな表情で強請られては、無下にすることも出来ない。
俺は政宗を抱き起こし膝に乗せた。
水音をたて深く繋がる身体に、政宗は音なき声を上げて首筋を曝した。
「、はぁ…っぁ…、けい、じ…」
暗闇にも浮き出る程の白い肌に、むしゃぶりついて跡を残した。
鎖骨辺りを吸えば、きゅう、と後ろが締まり、気を抜けば達してしまいそうな自身を叱咤する。
「、なぁ、…うごけよ…ッ…」
辛いだろうと動きを止めていたのは要らぬ心配だったようだ。
政宗は我慢しきれないのか、自らゆるゆると腰を揺らしている。
鼻先をペロリと舐められ、熱い吐息に火傷しそうだった。
いつもならここで幾らか焦らしもするのだが、今宵は俺の方が焦れていた。
政宗の細い腰を抱え、思い切り揺さ振った。
「ッあぁ!、や…ァッ…、けい、じ…っ!」
あられもない嬌声をあげ、政宗の顔は一層淫らになっていく。
その変化を楽しむ程度には余裕が戻った。
今にも零れそうな程に溜められた涙を舐め取り、上体を倒した。
政宗は俺の下腹に跨がるかたちになる。
滅多にこの体勢にはさせてもらえないから、怒られるかと構えたが、何も起きなかった。
ただ止まった動きに、少しの不満を乗せた煽情的な視線だけが俺を射た。
「慶次…」
呼び掛けにも答えず、政宗の脇腹を撫でていると、焦れてきたらしい政宗は自ら動き始めた。
「ぁ…ッん…!…っう…」
俯く政宗の髪がパサパサと揺れ、汗に濡れたそれは僅かな滴を飛ばした。
素直に動いている政宗に、俺の欲は更に増していく。
俺の胸に置かれた手を捕り、それを政宗の中心に導いた。
張り裂けんばかりに膨らみ、先走りを垂らす政宗自身は一擦りでも弾けそうだった。
俺は一つ笑み、少し虐めてやろうと、政宗が羞恥で堪らなくなるだろう飛び切りいやらしい言葉を頭に用意した。
その邪念が、きっといけなかった。
口を開き、
『―――――、』
けれど、それは音にならなかった。
不思議に思い政宗を見上げると、政宗はにやりと笑い、そして渦を巻くようにして闇に溶けた。
「―――ッ!!」
慌てて身を起こせば、そこは暗闇などではなく。
巳の刻は優に過ぎているであろう陽の高さだった。
勿論、上に政宗はいない。
「…、ぁ…?」
背中に寝汗が伝い、ようやっと夢であったと気付いた。
しっとり濡れた夜着が気持ち悪い。
「…勘弁してくれ…」
思わず額を押さえた。
余りにも生々しすぎる夢だった。
自分はどんなに飢えすぎてるんだ。
確かに昨日は政宗の調子が悪く、一つ屋根の下に居ながら、一緒に寝ることもなかったけれど。
おまけに、俺自身、“元気なまま”だ。
寸止めを食らったそれは、ちょっとやそっとでは収まりそうにない。
「…とりあえず、廁…」
こんなこと、いつぶりだろうと立ち上がり掛けたとき。
「慶次、起きてるか?」
政宗が入ってきた。
…何でこんな時に。
「、あぁ起きてる」
「朝餉は食わねぇのか?」
もう調子は良いのか、政宗は機嫌の良さそうな笑みを浮かべ近寄ってくる。
このままいくと、いつも通り隣に座る。
正直、熱が燻っているのにその距離は辛い。
何とかして、それを阻止しようと考えた。
「ま、政宗!風邪をひいたみたいなんだ」
「マジかよ、平気か?」
「だから、あんまり近寄ら…、」
言い終わらないうちに政宗は隣に来ていた。
…失敗。
心配そうな政宗がひんやりとした手を額に押さえ付けてくる。
それだけで愛しさが込み上げてきた。
もう、諦めた。
我慢するのは。
「…熱は無いみたいだけど?」
「政宗、すまん」
「ん?…、ッ!」
抱き寄せ、思い切りに口を吸った。
抱き心地は夢のままで、やはり現実味がありすぎた夢だと改めて思う。
いきなりだったからだろう、抵抗する政宗も愛しくて堪らない。
「…ん、だよ、急に…!」
「…政宗、」
すまん、ともう一度謝って、政宗の帯を解いた。
緩んだ袴を除けると、白い脚がすらりと覗いた。
「ば、かやろう!明るい内から何考えて…ッ!」
「政宗が悪いんだ」
強ち嘘ではない言い訳をして、すぐに下帯に手を掛けた。
さすがに政宗の抵抗が激しくなったが、そこは心得ている。
内股を撫で上げれば、
「…っぁ…!」
動きは止まる。
「…最後までは、しない」
残り僅かな理性でそれだけは宣言して、政宗の下帯を解き、俯せに寝かせた。
腰を浮かせ、後ろからそれを掴む。
挿入するように腰を寄せるが、いつもとは位置を少しずらして。
政宗の閉じた股の間に滑り込ませた。
「な、…っ?」
普段とは違う感覚に驚いてか政宗は振り返りこちらを見た。
それに笑みを返してから、腰を動かせた。
「…、ぁ!…ちょ、まっ…けい、じ…!」
政宗の前もいじりながら腰を揺らし、追い込む。
情けないことにすぐにでも達してしまいそうだが、そこは我慢して。
何の粘性もあるはずがない政宗の股は、俺の先走りでヌルヌルとしていた。
「や、…けい、じッ!…ばか…、やめ…!」
「いまさら…、無理だ…っ」
「ぁ、あ…っ!んぅ…、ゃ…ぁ…」
政宗の声が高くなり、艶が濃くなってきた。
感じている、それだけで嬉しくなる。
背に顔を寄せ、下から舐め上げると政宗の肩がふるふると震えた。
政宗自身からも蜜が零れ始め、擦る俺の手がベタベタになっていく。
それごと愛撫を強めると、政宗は腰を引きながら耐えていた。
「、けぃ、じ…!も、ぅ…っ!」
「俺も限界だ…っ」
「ッあ!…あ、あぁ…、ん〜〜〜ッ!!」
「―――、っ!」
パタパタ、と二人の精が布団に飛び散った。
政宗を寝かせ、その横に寝転がり余韻に浸ろうと目を閉じた瞬間、
ガンッ
顔面に凄まじい衝撃を食らった。
慌てて目を開けると、政宗が拳を握り睨んでいる。
「納得いく言い訳があるんだろうな?」
口元は笑っているが、目は笑っていない。
明らかに怒っている。
けれど、もう言い訳する気にはなれなかった。
むしろ被害者は俺だといいたいくらいだ。
「政宗が悪いんだ」
先ほどもした言い訳に、
「あともう一つ、」
弁解ではないけれど、機嫌取りを兼ねての言葉を添えた。
「政宗を好きすぎる俺も、悪い」
一気にかぁ、と染まる政宗の頬を見て、これは成功だと心中安堵した。
「愛してる、政宗」
できれば、現つで乱れてほしいものだ。
終
愛して止まない(むしろ病んでる)神尾さんへの贈り物です!
お許しを得たので、公開させていただきましたー!
神尾さん有難うございます!!
エロ大好き!
政宗様は騎上位が苦手らしい、よ。
尽くしたいけど、恥ずかしいから出来ないでいるんだよ。
そのうちきっと頑張るに違いない(笑)
06.03.25