「お帰りなさい、郁。どうでしたか?」

会計室のドアが静かに開いて、西園寺郁が姿を現した。
そして帰ってくるなり、小脇に抱えていた書類の束をテーブル上に放って、やれやれと溜息を付く。。

「復旧に、もう暫く時間が掛かるそうだ。昨日も殆ど寝ていないらしいぞ。
それにしても、遠藤もバカだな。システムのセキュリティーは万全だったはずじゃないのか?」

「さぁ?不思議ですねぇ。あの遠藤君がよりに寄ってウィルス入りのファイルを開いて、
システムをダウンさせてしまうなんて。ウッカリにも程がありますね。」

「学生と役職の両立で、忙しくしていたからな。疲れていたんだろう。」

「そうですね、無理して10代に混じって体育をしたり、クラスマッチにでたり、体育祭に参加したり、部活動をしたり。
10代の子の話題や行動に合わせたりしちゃうから、余計に疲れるんでしょうね。
そんな日頃の疲れが溜まって、判断力が鈍ってしまったんでしょう。」

「言いすぎだぞ、臣。」

「おや?そうですか?全部本当の事じゃありませんか。」

そう言って、クスッと微笑む七条。

七条が退院して数日たった昨日。
この学園のはね橋が上がったまま、おりなくなるという、不具合が生じたのだった。
はね橋で、本島との連絡や行き来を行っていた学園島は本当の意味でも隔離された孤島と化してしまい、
たまたまその日、本島へ外出していた生徒が、学園島へ戻れなくなったり、病院に行けなくなったり、
物資が途絶えたり、本島に住む教師や職員も行き来できなくなり、学園は臨時の休校となってしまっていた。
学園の責任者でもある遠藤和希率いる鈴菱の面々は、物資調達にヘリを臨時に手配したり、
本島との連絡船を緊急手配し、駆けつけたマスコミやその他の対応に追われていた。
少しでも早い復旧を行うべく、この学園のセキュリティーのシステムを作り上げ管理していた遠藤自らが、
サーバー棟のシステム管理科に入って、不眠不休のシステム復旧を行っている最中だったのである。

「それにしても、こんな時に、丹羽も気の毒だな。
さっき学生会室を覗いてみたら、一人でてんてこ舞いになりながら、事務処理をしていたぞ。
おまけに部屋の入り口前で、トノサマが昼寝をしていたから、逃げようにも逃げられないしな。」

ははっと、西園寺がキレイな顔を綻ばせて、無邪気に微笑んだ。

「トノサマがあんな所でお昼寝・・・・ふふふ・・・・本当にお気の毒に。
よりに寄って、重要書類の最終提出期限日に、副会長が本島から戻ってこられなくなるなんて。
日頃、サボってばかりだから、こんな目に遭うんですよ。自業自得です。」

「丹羽も、今回の事で、サボってばかりのデスクワークの大変さが、分かるだろう。まぁ、いい薬だな。それはそうと、臣。」

「はい、郁。」

「海野先生が、お前に礼を言っていたぞ。」

「お礼?」

「あぁ。トノサマに、今日の昼ご飯をあげてくれて、ありがとう・・・とか言っていたな。」

「なんだ、そんなことですか。お礼なんて別にいいのに。」

トノサマすみません・・・・・心の中でそう付け足した七条は、ほくそ笑むと、窓の外へと目をやった。

光をふんだんに取り入れるための、大きな窓の向こう側の景色に、只今トラブル中のはね橋が霞んで見えていた。



学園のはね橋のトラブルの発端は、遠藤が個人的にビジネス用に使っていた、パソコンのウィルス感染が原因だった。
優秀なシステムエンジニアでもある遠藤のパソコンは、遠藤本人に寄って、万全のセキュリティーが施されていた。
そんなパソコンがあっけなくやられた理由とは。

先日、悪いと思いながらも啓太に内緒で、こっそりデジカメに収めていた啓太の例の姿の画像。
遠藤は、デジカメからその画像データをパソコンに取り入れ、こっそりファイルして保存していたのだった。
そして後日、遠藤は、その啓太の『マル秘画像』のファイルを開こうとして、ウィルスにやられ、今の事態に陥ったのだ。
裏で、啓太の『マル秘画像』にウィルスを仕掛けたのは、他でもない七条の仕業。
啓太に話を聞いて以来、七条は、遠藤が本当に写真を取ってなかったか確認する為に、
遠藤のパソコンに極秘で侵入して、データを全て調べ上げていたのだった。
案の定、啓太のナース姿の画像は、高度なセキュリティーの下、厳重に保存されており、
七条は持ちうる技術と知識を総動員して、手強い遠藤のパソコンに挑んだ。
そして発見した啓太の画像に、開くとすぐに感染し画像が消滅して、はね橋にトラブルが起こるように、
プログラムを組んで、侵入の痕跡を消し去っていたのだった。

遠藤がいつ、ファイルを開いて、はね橋が上がるかは、日にちまでも計算は出来なかったが、
そのエックスデーが、たまたま中嶋が本島へ外出した日だったという事は、七条に取って、輪を掛けて嬉しい結果となった。
学園島に戻ってこられない中嶋に代わって、丹羽が苦手なデスクワークを、否応なしにこなさなくてはならない状況に陥ったのだ。
そして丹羽が学生会室から出られないように、不自然に熟睡するトノサマを、入り口前に置いたのも、この七条。

こっそり啓太のナース姿をカメラに収め、保存していた遠藤。
そして、自分を病院送りにし、啓太を自分に断りもなく、お姫様抱っこしてバイクに乗せた丹羽。
そんな2人へ、それなりのツケ払わそうと考えていた七条は、こうやって2人に仕返しをしたのであった。
七条を病院送りにしたお蔭で、七条には苛められ、中嶋や西園寺にまで、チクチクと責められた丹羽も気の毒だったが、
元々七条の怪我には無関係だったのに、巻き込まれ、協力し、大変な思いをしている被害者は、
不眠不休でパソコンと向き合う、お人好しの理事長、遠藤和希かもしれない。







                                            おしまい



























子悪魔ダーリンは入院中・寿 美歩 様

ぷっはーーー!!!ごごごご御馳なりました!
もぅかなり興奮しましたよーーー!!!(テンション高
リクエストさせていただき本当にありがとうございましたvv
病院でエチーなんてvvなんて素晴らしいんでしょ!和希の扱いも苺姫のツボを刺激しまくりで
そんでもって想像以上にエロくて苺姫は悶死しそうでしたvv
ナース啓太・・・・なんて萌えな言葉なんでしょvv
王様グッジョブ!七条さん大喜びだYO!
記念に残る素敵な大好きな作品ですvこころからお礼申し上げます!!