「いたた・・・・」 「大丈夫か?啓太・・・・さっきから・・・」 「うん・・・なんか筋肉痛みたい」 休み時間、生徒が行き交う校舎内。 伊藤啓太と遠藤和希は移動教室があり片手に教科書やノートを持ちながら階段を上っていた。啓太は一段上がるたびに眉間にシワを寄せイタタと呟く。そんな様子に和希は心配そうに何度も振り返る。 「昨日なにしたんだよ?体育もなかったし・・・・なんか慣れないことでもしたんじゃないか?」 「えっ?・・・・うーん。」 歩みを進めながらも啓太は瞳をクリッと上げて顎に手を添えて考える・・・・が 「特になにも・・・・いつも通りだったけどなぁ・・・・」 「なんにもないのに筋肉痛か?」 「・・・・・・・・・うん。思いつかない・・・・・」 二人で首を左右に傾げながら廊下を歩いていると 見知った声が二人の足を止める。 「やぁっ!ハニーじゃないか?こんなところで会えるなんてっ!」 「成瀬さんっ」 「げ・・・成瀬さん・・・・」 嬉しそうに微笑む啓太と裏腹に和希はゲンナリした表情になる。 もちろんそれを見逃さない成瀬は金髪をなびかせながら笑顔で威圧する。 「あっ遠藤もいたんだ」 「いましたよっ!・・・・・・・・もぅっ」 和希は警戒心丸出しの表情で先輩を半ば睨むように見つめていた。 隣に潜む負のオーラにも気づくことなく啓太は突然に会えた先輩にニコニコしながら話しかけた。 「成瀬さんも移動教室なんですか?」 「いや。今から少しだけ打ち込みに行こうと思ってさっ」 見れば成瀬の方にはラケットのバックがかかっている。それを見て啓太は小さく口をあけて瞳をパチパチとして納得したように頷く。その姿に瞳を細めると成瀬は啓太の両手をソッと握ろうと・・・・・・前に立ちはばかる壁。遠藤 和希。 「成瀬さんも急がれてるんですよね?俺たちもそんなにゆっくり出来ませんから」 「遠藤・・・・まだいたのかい?僕達の甘い一時を邪魔しないでくれたまえ」 「あま・・・・!?・・・・・なに言ってるんですか!ほらっもぅ行くぞ啓太!」 半ば強引に和希にひっぱられ啓太は微かに足元をよろけさせる・・・・それを逃がすはずのない美しい金髪をたたえたハンターがすぐに啓太を受け止め、ギュッと抱きしめる。 啓太は突然の事に言葉を発せられず瞳を大きくして頬を赤くし・・・・すぐに両手に力をいれるが相手はスポーツマン。簡単に離れる事もできずモガモガともがく事しかできない。 と、小さく「痛っ」と啓太が呟いて身を微妙に硬直させる。 成瀬は腕の中の幸せを見下ろしながら心配そうに首を傾け・・・・ 「ハニーどうしたの?痛かった?」 「いえ、成瀬さんのせいじゃなくて・・・・ちょっと筋肉痛に・・・あの離して下さいっ」 「筋肉痛?じゃあ僕が丁寧にほぐしてあげようか?優しくしてあげるよ・・・・・?」 「あの・・・・・成瀬さんっ・・・だから離してもらえませんか・・・?」 「どこ?ふくらはぎ?・・・・それとも腕?」 「ぅ・・・・・・あの・・・・だからぁ」 話が進んでいるようで進まない。自分の訴えが聞いてもらえない様子に、どうしていいか分からず啓太は成瀬の腕のなかに納まったまま・・・本当に小さく・・・小さく呟く。 「お・・・しり・・・・・・・・です。」 「え・・・・・・おし・・・・・」 「ちょっ!成瀬さん!!」 慌てる和希も成瀬の腕を掴もうとした瞬間。後ろから冷ややかな声が響く。 「こんな場所で何をやっている?」 和希は肩を恐る恐る振り返ると・・・・そこには呆れ顔の西園寺と側近の七条が立っていた。成瀬は悪びれた様子もない、どちらかというと挑発的な微笑みでパッと啓太を抱きしめたまま振り返り爽やかなスポーツマンの声を発する。 「やぁっ。七条に西園寺じゃないか!こんな所でどうしたんだい?」 「移動教室だ。どうして、こんな人通りの多い所で騒いでいる?周りの生徒が驚いているぞ」 そうなのだ。確かに西園寺の言ったとおりここは廊下・・・・移動教室やお手洗いなどの用事で通る生徒も多々いる。そんな場所の真ん中を陣取ってワイワイしていたら、ただでさえMVPを囲んで有名スポーツマンが離しているのに嫌でも余計に目立ってしまう。 そこに会計部も加わったら更になのだが・・・・・。 啓太はというと成瀬の中に納まっているのを大好きな人に見られてしまい。頭がクラクラしてしまっていた。どんなに力を入れてもビクともしないものだから瞳で懸命に恋人に訴えてみる。視線をしっかり受け止めた七条は笑顔を崩さないままスタスタと成瀬の元に近づく。 「成瀬君。伊藤君を放してください?伊藤君が困っていますよ?」 「いやっハニーが筋肉痛で困っているようだから・・・・僕が介抱しようかと思ってさ。」 「伊藤君が筋肉痛・・・・?」 「だから、僕に任せてくれないかな?七条・・・・僕はこの手は専門分野だしね。」 「伊藤君、どこが筋肉痛になったのですか?」 お互いに火花を散らせながらの会話の中で突然に話を振られて啓太は驚いてピクッと肩を揺らす・・・・・・そして二度も言うことになってしまったことに少々恥ずかしさを感じながら 「あの、お・・・・・おしり辺りが・・・・・」 一瞬だけ時が止まったかのように思えた。 と、七条が満面の笑みで成瀬の腕に手を添える。成瀬はその笑顔に少しばかり圧倒されてしまう。 「では・・・・やはり腕を離してもらえますか?成瀬君。」 「なっ・・・・・だから、僕が・・・・」 「これは僕の責任なんです。」 「え?」 開いた口が塞がらない様子の成瀬の腕から七条はサッと啓太を助け出し、自分の元に引き寄せてチュッと軽くその額に口付けを落とす。 啓太は視界がコロコロ変わって驚きを隠せないまま頬をホワホワと赤くして大人しく七条の上着を両手で握って抱きついた。この瞬間、和希は心の中で崖から突き落とされる体験をしていたという。 驚きを隠せないまま成瀬は七条に尋ねる。 「責任って・・・・七条・・・」 自分の元に恋人を迎えられて輝きが増す笑顔の七条は周囲には聞こえないように身を少々前屈みにし・・・・・ひっそりと・・・・ 「昨夜は机の上でだったので・・・・・慣れない体位に筋肉痛になったのでしょう。なので僕の責任なんです。」 笑顔で語る七条の傍で啓太は、瞳をこれでもかというくらい大きくクリクリさせて「あぁっ」と思い出したかのように叫ぶと、咄嗟に真っ赤になった顔を七条の胸元で隠す。 「な・・・・なにもこんな所で・・・・」 七条の上着でくぐもったその声は、今にも泣きそうなくらい情けなく・・・・ そのやり取りに呆れて仕方がない様子の西園寺は踵を返す。 「わたしは次の教室に行く。」 「あっ・・・・・俺も行きます。西園寺さん」 落ち込んでドツボの和希はヨロヨロしながらその後に続いて去っていった。 「それでは僕達も失礼します。」 あきらかに向っていた方角とは逆に七条は、顔を上げる事ができない啓太を連れて歩みをすすめる。 そんな様子にポカンとしていた成瀬は、首を左右にブンブン振ると気を取り直して去り行く二人の背中に向けて、いつも通り爽やかに声をかけた。 「ハニー、またねっ!」 そんな変わらない成瀬の言動に七条は歩みを進めながらも小さく溜め息をつく。 啓太は上目で相手を見ると赤みがひかない頬のまま不思議そうに首を可愛く傾げた。 「どうしたんですか?七条さん」 その啓太の表情は少々心配そう・・・ 七条は安心させるようにニッコリ微笑み啓太の頭を優しく撫でた。 「この後、どうしましょうか?」 「え?この後って・・・・授業が・・・」 「授業のことなら大丈夫です。それに僕が責任を取るといったでしょう?今からでも痛い場所をしっかりほぐしてあげますよ?」 「し・・・しちじょうさっ!?」 「もちろん君が嫌なら無理にはしませんけど」 と・・・微妙に身を屈めて耳元で話しながら、七条の片手がするするっと啓太の背中を降りていき・・・・・・双尻を布越しにやんわり握る。啓太の頬は再び真っ赤になり身を小さくよじって相手を見つめ・・・視線を恥ずかしそうに落とす。 「ヤ・・・・じゃないから困ってるんです」 「ふふっ・・・・・」 嬉しそうに紫の瞳を細めると七条は啓太の手を握り先ほどよりも軽い足取りで目的の場所に向かいはじめる。 「しっかり、揉んであげますね」 「だからっ・・・・こういうことは、こんな所では言わないで下さいっ」 休み時間、生徒が行き交う校舎内。 騒がしかった廊下も やっといつも通りの姿に戻ったようである。 |
| 啓太しっかり揉んでもらいなさい!(殴 ってことで初登場の成瀬でございました〜いやはや彼にはいつまでもあきらめずに正々堂々と 啓太を狙っていて欲しいですね。(^^)まぁ七条さんがもちろん阻止しますけどvv このお話は実際に苺姫が筋肉痛の時に思いついたお話で・・・書き始めたのはいいものの なかなか展開に悩んだ作品です(苦笑 でもまぁなんとか丸く収まったかな〜v和希にとっては地獄タイムになっちゃったかもですが(ぉぃぉぃ |