普段は部活動を行う生徒達の威勢のある声で制されているベルリバティースクール

しかし今日ばかりは少々雰囲気が違うようだ。

色鮮やかに飾られた校庭。
模擬店の立ち並ぶ道なり。
老若男女が活発に行きかう教室。

そう、本日は一年に一度きりの学園祭。

生徒の才能を入学対象にしているため、高い能力を持つ学生が多い上に、0(ゼロ)が幾つつくか分からないほどの整った設備。しかも交通手段が橋一本という孤島がゆえの閉鎖的なイメージを拭えない学園は、この日はここぞとばかりに宣伝して学園祭を行い、地域に浸透することも目指している。そのために内容はそれぞれの年齢やニーズにあったものばかりで、毎年たくさんの来客から好評を得ていた。











「よし、ここは問題ない。次へ行くぞ」
「はい郁。」

西園寺が踵を返すと同時に、今まで後ろにいた七条はサッと前に移動して扉を開いた。西園寺は特に何を言うこともなく当然のようにその扉をくぐって廊下に出ると次の教室へと向かっていく。それはまるで位の高い貴族と従者のよう。
周囲では突然の会計部の来訪に戸惑う生徒や、見目麗しい二人のやり取りに見惚れる客たちの視線が集中するが、そんな日常茶飯事な事は気にも留めない。
七条は手に持つ名簿に記入をしながらその後に続いて歩き、楽しそうに声をかける。

「郁。今年は特に会計を偽っているようなクラスはありませんね。」
「ああ。そうだな・・・去年は幾つか会計報告の偽りがあったからな。」
「会計部を欺こうとしたクラスには、ちょっとしたお灸をしちゃいましたし・・・・それが効いたということでしょうか。」
「ちょっと?・・・・あれが少しなのか?」
「ふふふっ」

背中しか見えないものの怪訝そうな西園寺の表情を思い浮かべ、七条は紫の瞳を悪魔のような笑みで細めた。それはもう、背中に黒い羽がはためくような勢いで。

楽しい学園祭でも会計部は忙しい。各クラスを歩いて周り、会計報告と一致した内容が存在するかしないかを確認する。去年、会計に経費申請するもののクラスの模擬店が当日行われていなかったこともあったため、七条曰くちょっとした「お灸」をすえることとなったようなのだが・・・・・・・。

「今年はチェックをすることも公表していましたし・・・特に僕が動く必要はなさそうですね。」
「まぁ、そうだと助かるな。」

呆れた様子で西園寺は眉間にシワを寄せるとヤレヤレと呟き、再び七条の手で開かれる扉をくぐって教室に入る。その途端、西園寺の動きが静止してしまった。
七条は固まる西園寺を他所に、立ち位置を変えてその隣に立つと嬉しそうに教室の奥に手を振る。その視線の先にはカーテンに潜む影が見え隠れしていて、七条は穏やかに声をかけた。

「伊藤君。」
「なに・・・・?ここに啓太がいるのか?」

西園寺が我に返り険しい表情で教室を見渡すと、そこは女装した気味の悪い男ばかりで再び硬直状態に陥りそうなほどむさくるしい風景である。
どうやら、啓太のクラスは今流行の「メイド喫茶」なるものを模擬していたらしい。だが、その格好もさまざまでメイドの他にウエディングドレスやナース等さまざま。
「女装喫茶」と名づけた方が相応しい感じもする。
七条は迷うことなく奥のカーテンに向かって長い足を伸ばして行くと、中でモジモジしている愛おしい存在に優しく声を降らせた。

「伊藤君。出てきてください。」
「し・・・七条さん・・・・なんでっ・・・ここにっ!」

ほら、隠れていたってすぐに分かってしまう。
僕の可愛い恋人・・・・伊藤啓太君。

突然きた七条を見て驚き、慌てて隠れたのであろう。不自然に皺のない丸みのを保ったカーテンの裾から、啓太の愛くるしい双尻が微妙に見えている。まさに「頭かくして尻隠さず」とは言ったもの。
その双尻を包む紺色の布地はあきらかに学園の制服とは違う所を見ると、きっと啓太も半ば無理やりに女装をさせられているのであろう。

さて・・・どうやってこのカーテンという名の城壁を崩そうか・・・・
七条は顎に手をあてた後、動揺を隠せない啓太の様子に苦笑しながら、ガッチリ布の裾を握った啓太の手の上に自分の手を重ねた。微かにビクリと啓太が動いたような気がする・・・・・・そこで七条は、啓太の心に響くように配慮しつつ、声のトーンを落として悲しそうに訴えることに決めた。

「せっかく伊藤君に会いにきたのに、このまま別れなくてはいけないんですか?僕は伊藤君もご存知の通り各教室を回らないといけないので・・・・・とても残念なのですが、ゆっくりしていられないんです・・・」
「あ・・・・でも・・・・・あの・・・」
「ね?お願い・・・伊藤君。」
「・・・・・・・・・・・・わ・・・・笑わないで下さいね・・・。」
「はい。」

作戦成功。
鉄壁のカーテンから、オズオズと出てくる啓太の様子に、七条は安心したように表情を緩ませると、次の瞬間には紫の瞳を大きく見開くことになった。啓太の姿は、まるでAVに出てきそうなミニスカートの警察官。
腕章のついた水色のシャツの下は、紺色の短めのタイトスカートをはいている。その間から窮屈そうに伸びる柔らかそうな両太股に、その足をカバーするストッキング。足元は慣れない黒のヒールを履いているためか動きはぎこちない。
細身とはいえ男の身体のラインは隠せないが、帽子の下でサラサラと動いている啓太の髪と同じ色のロングウイッグのおかげで、その目立ちが柔らかくなっているようだ。瞳の大きな可愛い顔立ちも手伝って、ますます女の子のような感じもする。
これには思わず七条も息を飲んでしまった。

「・・・・・・可愛いですね。伊藤君。見惚れてしまいました。」
「か・・・かわいくなんか・・・・」
「そんなことないですよ。可愛いです。こんなに愛らしい警察官なら喜んで捕まってしまいたいくらいですね。」
「あははっ・・・・七条さん」

啓太は照れ隠しに冗談を聞くように笑って見せると、頬を微かに桃色に染める。
これは・・・可愛い過ぎますね。とても悩殺的です・・・・・
七条は笑顔ながらもムラムラとする股間を心で制しながら啓太の手を引くと西園寺の前に連れて行く。西園寺は啓太を見ると凛々しく微笑んだ。

「啓太。なんだその姿は」
「あぅ・・・・これは皆が無理やり・・・・」
「まぁ。他の輩よりは私は似合うと思う。」
「そ、そんな・・・・」

西園寺と啓太の会話に微妙に眉をひそめた七条は、恥ずかしがる啓太の肩に手を回し、片手で唇に人差し指をあてた。

「ダメですよ郁。僕の伊藤君ですからね?」
「臣。」
「だって、郁が物欲しそうに見つめるからですよ・・・・」
「黙れ臣。さては、ここに来る前にやけに嬉しそうにしていたのは、このためか。」
「ふふっ・・・・」
「しかし、この衣装のバリエーションからして・・・・・」

あの裁縫好きの男が頭によぎり・・・
西園寺は握った拳を顎に当てながら重々しく口を開いた。

「遠藤か・・・」
「あ・・・・・バレちゃいました?」

教室内の厨房として区切られている所から声がしたかと思うと、頬を指でかきつつ啓太の親友である遠藤和希がチャイナドレス姿で出てくる。顔立ちの整った男なのでそんなに不似合いとまではいかないが、啓太の後に見るせいか、その反動はかなり大きく感じてしまう。七条はニッコリ微笑むと啓太に向かって首を傾ける。

「この模擬店を提案したのは誰ですか?」
「えっと・・・和希です。衣装を貸してくれるっていうことだったので、クラスの半分以上が賛成して・・・でもどうしてですか?」
「いえ・・・・・遠藤君は伊藤君の女装姿を見たかったようですね。」
「へ?なんでですか?」

不思議そうに首を傾げる啓太を見て七条は苦笑すると、向こう側にいる遠藤を音の無い笑顔で威圧する。

「呆れた人ですね・・・・・・・」
「ほっといてください。それよりもどうするんですか?何か飲んでいくんですか?」

口を尖らせ、ぶっきらぼうに言い放つと腰に手を添えて背の高い七条を見上げる。
オロオロしながら啓太は遠藤と七条を交互に見て、慌てて首をふった。

「七条さんは見回りが・・・・・っ」
「いえ、大丈夫です。紅茶を頂きましょうか」
「え?だ・・・大丈夫なんですか?さっきゆっくり出来ないって・・・」
「大丈夫ですよ。ね?郁?」

七条が訴えかけるように西園寺に視線を送ると、西園寺は微かに肩を竦め整った唇を動かす。


「好きにしろ」

















「お待たせしましたっ」




「ありがとうございます。伊藤君」





恥ずかしさは拭え切れないものの徐々に慣れ始めた啓太は元気よく紅茶の入ったカップを七条の座るテーブルに出し、トレイを胸元に抱え上げる。
七条が案内されたのは人目になるべく触れられないような教室の一番奥のテーブルだ。
美しい銀髪に日本人離れした整った顔立ちの彼は、大いに客を呼び寄せる存在になるものの学園の生徒にとっては恐れ多い会計部の七条臣だということで目立たない席になったらしい。

「伊藤君・・・・・暫くここにいてくれませんか?」
「・・・・はいっ。そんなにお客さんもきてませんし・・・少しだけなら大丈夫です」
「ふふっ・・・嬉しいですね。」
「えへへ・・・・」

啓太は柔らかく微笑むと、七条の隣に座った。そして首をキョロキョロと左右に動かすと、七条に向かい顎に人差し指をあてながら首を傾げてみせる。

「西園寺さんは・・・・どうしたんですか?」
「おや、郁が傍にいたほうが良かったですか?」
「え?や・・・あの・・・どうしてかなぁって・・・・」
「郁は会計室に戻ると言っていました。郁には、ここの場所は相応しくないでしょう。」
「ああ・・・・確かにそうかもしれませんね。」

確かに、学園祭の模擬店で優雅にティーを口にする西園寺なんて想像はできない。
啓太は肩を竦めると苦笑してみせると途端にモジモジし始め、視線を落としたまま言葉を繋ぐ。

「俺・・・学祭中、会計部は忙しいから七条さんと一緒にいられないのかと思ってて・・・・だから・・・その、嬉しいです。」
「僕も伊藤君といられて嬉しいです。休憩時間もあるのでしょう?その時は一緒にお店を回りましょうか。」
「えっ!?忙しいんじゃ・・・」
「今年は特に目立つような偽造経費申請はないようですし、僕はそんなことよりも恋人と過ごしたいですからね。・・・・それとも迷惑でしょうか・・・・」
「そ、そんなことっ!俺、七条さんと一緒にお店回りたいですっ!一緒にいたいです!」
「良かった。では、お迎えに来ますからね。こんなに可愛い啓太君を一人で歩かせるなんて危険なこと絶対にさせませんから・・・」
「し・・・・七条さん。」

顔をあげて見つめてくるひどく愛おしい表情に七条はクスリと微笑む。
たまらない・・・・こんなに狂おしくも愛おしい存在が隣にいるなんて・・・・今まで生きてきた中で覚えのない感情に胸がキューンと詰まってしまいそうになる。





なんて心地よい息苦しさ。


無防備な笑顔で可愛い言葉を口にして


こんなに誘惑されてしまっては・・・・・僕も我慢ができませんね。





七条はニッコリ微笑むと、唐突に啓太の太股に手を滑らせる。先ほどから気になって堪らなかった滑らかな皮膚の感触に熱い吐息が漏れてしまう。同時に啓太の身体が突然の七条の行動に驚き、ビクッと跳ねたのが手元から伝わってきた。しかし躊躇することもなく七条はそのままストッキング越しに何度も撫でると、啓太の耳元に唇を寄せて囁いた。

「前々から何をするのかは知っていましたが、まさか・・・・こんなに足が剥き出しだなんて・・・・驚いちゃいました。」
「し・・・・七条さん・・やめてください。こ・・・こんな所で・・・」
「大丈夫・・・見えません。丁寧にテーブルクロスがかかっていますし・・・・遠藤君の配慮のおかげで目立たない場所ですし・・・・・。ね・・・・少しだけ足を開いてもらえませんか?」
「だ・・ダメですってば・・・・・」

七条は啓太に気づかれないように咄嗟に周りに視線をめぐらせる。決して人がいないわけではない・・・が目立ちそうな啓太と七条の存在にも慣れてきたのと、目に付きにくい場所のおかげか、それぞれの会話を弾ませ特に二人を気にする様子は今のところみられないようだ。
啓太は両太股に力を入れて七条の手を阻むよう両手でスカートの裾を握って抵抗を試みている。しかしそれにも勝る七条の巧みな手の動きと、甘い甘いテノールボイス。
七条の唇は、噛み付きたくなるくらい柔らかい啓太の耳元を掠める。そのたびに啓太の力が抜けてしまうようで七条は翻弄しながら、その隙にどんどん大きな手をタイトスカートの中に侵入していった。

「だ・・・・・めぇ・・・」
「声を出さないで下さいね。」
「・・・・・・・・・・っ」

啓太は周りに聞かれないように息を潜めているらしい。それが益々興奮を煽っているのか啓太自身はどんどん膨らんでいった。七条の長い指先が啓太の股間の中心に触れ指で根元を刺激するように何度も摺り上げると、その度に唇を噛み締める啓太の様子に笑みが深くなってしまう。七条は空いた片方の手で啓太の腰や双尻を布越しにやんわり撫でたり鷲づかみにしてみたりと更なる興奮をうながす。

「さて・・・・・僕は逮捕されちゃうんでしょうか?イケナイ警官さん。」
「しちじょ・・・・・さ・・・・・ぁ・・・」

すでにスカートの裾はかなり上に上がっていて、しっかりと啓太の股間を守るブリーフが見えている。快感をいっそう得たいらしい啓太の両足も無意識に自然と開いてしまっているらしく、なんとも卑猥な光景が七条の視界に映っていた。啓太が微かに揺れるたびに長いロングウイッグもサラサラと流れる。
七条は邪魔なストッキングを思いっきりズリ下げると、啓太自身を小窓から外気に触れさせ、瞬時に取り出したハンカチで包み巧みに追い上げていく。布越しでも分かる啓太自身の熱や硬度に七条の股間もますます熱くなってしまう。啓太は声を殺したまま腰を一瞬ビクつかせるとハンカチの中に欲望を吐き出してしまったのでった。

はぁはぁと小さく荒い呼吸を繰り返す恋人をなだめるように撫でながら啓太自身を丁寧にしまってスカートの裾を下げ、瞼に軽いキスをして七条は満足げに微笑んだ。

幸い、二人の行動に気づくこともなく教室内は相変わらずガヤガヤと賑やかだ。
これも啓太の幸運のおかげか・・・・・

啓太は息を整えた後、精一杯の睨みを効かせた・・・・つもりで七条を見上げてくる。その頬も軽く膨れていて・・・・怒った表情も腰にくるなんてことは口にしないほうがいいだろうと七条は苦笑した。

「も・・・・もうっ・・・・もう七条さん・・・っ」
「すみません。あまりにも君が魅力的で大胆になってしまいました。」
「もう〜・・・・こんなことしちゃダメです・・・・っ」
「はい。ここではもうしません。」
「七条さん・・・目が笑ってませんか・・・・?」

うらめしそうに見つめる啓太は少々涙目で、すぐに下半身を正して立ち上がる。少々のぼせたためかフラフラとしながら厨房に戻っていくのを見送り七条はハンカチを大切にポケットにしまうと冷めたカップに口をつけていた。さて、股間の熱をどうやって収めようかとふと静かに思考をめぐらせる。
その時だった、教室に声の大きな3人の男が入ってきたのだ。

「なんだここっ、すっげぇ・・・!」
「見ろよ、うけるんですけど!」
「あぁ〜俺はコーラ!」

まだまだ若い連中で、髪の色も不自然なほどに染め上げている。教室の誰もが眉をしかめるような無礼な振る舞い。七条は心の中で舌打ちをしながら静かに紅茶を飲んでいると、聞き捨てならないセリフが飛んできたのだ。

「可愛いー!本当に男!?」

見れば、よりによって啓太が接客をしているではないか。七条はあきらかに好色そうな視線を啓太に送る男達に、一瞬だけ思わず表情をしかめてしまった。

少し、失敗してしまったようです。

先ほどの行為のせいで余計に啓太からフェロモンが漂っている。ただでさえ可愛いのに輪をかけて危険な状態にしてしまったようだ。
そんな啓太はなんとか笑顔で接客しようとしているが、からかいながら声をかけてくる男達に翻弄されているようで・・・・しかも男の手が中を確かめるようにスカートの裾をめくろうと・・・・・・






ガタンッ






普段は音も立てないような男、七条がワザと大きな音を立てて席を立つ。
そしてツカツカと啓太と男達の傍まで近寄ると、七条よりもたいして背の高くない男達が少々動揺の色を見せた。「な・・・なんだよっ」と野良犬がキャンキャンと吠えるような牽制の仕方に益々眉間にシワがよってしまう。しかし、そこは七条・・・笑顔は保ったまま鋭い視線で男達を見つめた。

「呪われたいですか?」

「は・・・・はぁ?なに言ってんだお前・・・っ」
「呪われたいですかと、聞いているんです。」
「こいつヤバくね?」

あざけ笑う男達の様子に動じることもなく、淡々と七条の声が静かな教室に響く。周囲は唾を飲み込んでこの状況に集中しているようだ。その中に遠藤の姿もあり、ひどく険しい顔をしている。隙があれば今にも飛び掛らん勢いだ。七条は片手をポケットにゆっくり入れると男達に一歩・・・・一歩と近づいていく。その度に男達は言いようのない威圧感に微笑顔が消えて後ずさりしてしまう。





「質問する相手を間違えたようですね。君達を呪います。」





ジリリリリリリリリリリ

そう七条が影のさす端整な顔で、恐ろしい微笑みで言い放った途端。
校内の非常ベルがけたたましく鳴り響いた。

むろん男達は急な出来ごとに軽いパニックになりキョロキョロとし始める。教室のスピーカーからは「火事発生。緊急避難を行います。」の言葉が流れ、事の真実みに必死な形相になり我先にと慌てて教室を転がるように出て行ったのであった。
三人の男達の慌てぶりに、教室の中にいた呆然としていた生徒達が、それに続いて一斉に扉に向かった瞬間。

・・・・・・・・・・・

さっきまでの騒音が嘘のように静かになってしまったので、教室内にいた生徒達は訳が分からず硬直してしまう。するとスピーカーから「避難訓練の終了をお知らせ致します。」の一言。
一気に安堵の溜息が飛び交った。その中、啓太は揺れる瞳を七条に向けてくる。
七条はニッコリ微笑んで見せると、啓太の頭を小さく撫でた。

「ふふっ・・・急な避難訓練で驚きましたね。もう大丈夫ですよ」
「び・・・・ビックリしました〜・・・・」

今頃、防火シャッターに閉じ込められた狼は反省もしているでしょうね。

肩を微かに震わせて七条がひそかに笑う。するとその胸元にコテリと安心しながら身体を預けてくる啓太。ふと、そのの表情を見下ろすが、七条の様子には何の疑問も持っていないようだ。フワフワのクセ毛に愛おしくキスを落とすと、彼の安心を促すように背中を撫でるように触れる。静かに腕の中にすっぽり納まる啓太からくぐもった声が聞こえる。

「七条さん。さっきはありがとうございました・・・」
「僕は何もしていませんよ?運よく助かりましたけどね。」
「ううん。・・・助けにきてくれました。それだけでも・・・俺、とっても嬉しかったんですから」
「ふふっ・・・・・では、どういたしまして・・・・ですかね。」
「そうですよっ」

顔をパッと上げた啓太が照れたように笑うと、七条もひどく幸せそうに瞳を細めて答えた。すると途端に啓太の瞳が大きく開くとパッと七条から離れてしまう。七条は「おや・・・?」とワザとらしく方眉を上げるが、理由は充分承知していた。周囲の視線が刺さるように二人に注がれている。
背中にジト・・・っと恨みがましい視線を感じ、振り返ってみると遠藤が腕を組んだまま見つめていた。なのでニッコリと飛び切りの笑顔を返してやった。そんなやり取りに気づくこともなく啓太は再び首を傾げている。

「そういえば・・・先に出て行ったあの人達・・・どうなったのかな?」
「ああ・・・・今頃呪われているでしょうね。」
「のろ・・・・?あれ、本気だったんですか?」
「もちろんそうですよ。」

啓太は頭に人差し指を添えながら小さく唸って視線を落とす・・・・そして次の瞬間に愕然とした表情になると、七条に恐る恐るといった感じで伺いを立てる。

「し・・・七条さん・・・・・ま、まさか・・・・」
「おや、なんですか?伊藤君。」
「さっきの避難訓練って・・・考えてみれば学祭中に行うのも不自然で・・・・・・・もしかしてなんですけど・・・・・し・・・・七条さんがぁ・・・・」
「本当に、運がよかったですね。それがなにか?」
「あ・・・・いえ・・・・。」

あまりにも恐ろしくて結局真実は七条の口から聞くことは出来ず、啓太は三人の男の行く末を思うばかりであった。












運がよかった。


本当はちょっとした「お灸」のつもりで用意していたんですが・・・・















七条はクスリと微笑みながら、ポケットに入っていた携帯PCを握る。


そうして啓太の休憩時間を今か今かと待ち望んでいたという。










































やっとこ書けた学祭ネタ☆こういうの大好きなんですよねー!
今回は啓太はミニスカポリスに大変身v何を着ても似合う啓太ですvv
七条さんの「お灸」本気で熱いです。火傷します。
自分の好きな萌えをこれまた凝縮したSSでした〜