「ロキ、何を読んでいるんだ?」
長椅子に腰かけ、頬杖を付きながら書物に目を通す弟に声をかける。いつも通り、整ったやや神経質な面立ちが僅かに眉間を寄せ、自分が見聞きしたことのない表題を口にする。
「"オーカッサンとニコレット"?聞いたことのない題名だな…」
「古い歌物語だよ。でも例え新しいものでも武器や兵法に関する書物か軍事史にしか興味のない兄上には無用なものだろう?」
からかうロキの肩を軽く押すとつくつと馴染みのある笑い声が聞こえてくる。いつもの時間。 愛してやまない弟との何気ない、温かい時間。笑い声がやむと血のように紅い唇が物欲しげに小さく開く。最近よくするようになった"あれ"を強請られていると知った俺は慌ててロキが手にする書物に目を通す。
「えーと…"可憐な巻き毛の金髪の乙女。青い目は笑みをたたえ、その顔立ちは見るも麗しい。歯は白く小さく、その肌はこの美しい乙女が通りすがりに踏んだ雛菊がひどく黒ずんで見えるほど、白かった"――…」
「誰かを連想させないか?」
「金髪の巻き毛に青い目、麗しい顔……母上か?確かにぴったりだな」
笑みながら頷くと同じように笑みを返される。
「母上も美しいが、私の"花嫁"のことさ――…」
貂(てん)の毛皮の長衣を纏った弟の膝の上に書物が置かれ、白く柔らかな手がそっと自分の手を包み込む。
「……ッ…」
『ロキッ!? 駄目だっ!!いやだっ……!!!』
数か月前いつものように互いの性器を擦り、情交を終える筈だった俺は弟に寝台の上へと押し倒され、強引に広げられた両の尻たぶのはざまに小さく形のいい頭を押し付けられていた。
『ひあッ…!!』
誰にも見せたことも触れさせたこともない、排泄に使う恥ずかしい肉の輪をにちっ…と開かれ、中のぬめぬめとした媚肉に冷たくぬめる舌を押し当てられる。
『兄上はいずれ私のものになるからね…ここもちゃんと慣らしておかないと…』
『あんうっ…!!』
ぶりゅっ!ぶりゅっ!と中の敏感なひだが乱暴に舌でこそぐようにしてこすられ、犯される。両足をはしたないほど大きく左右に広げさせられた姿で、肛門の奥を犯された俺は味わったことのない恥辱で眦に涙をためながら王子とは思えない痴態を見せつけ、その衝撃で呆気なく自分の竿からちょろちょろと尿を溢れさせてしまっていた。
『初めてここを犯されて怖かったのかな?兄上…』
熱く上ずる声でそう宥められ、益々屈辱でぼろぼろと涙を零してしまう。ちゅぷっ…と名残惜し気に肉ひだから舌が離され、清潔な白布で汚れた腹と男根を丁寧に拭われる。小さな弟、青白い肌と灰緑の目を持つ華奢で弱弱し気な血の繋がらないただ一人の弟。庇護の気持ちは成長した今でも変わらなかった。国を、民を、そうして大事な弟を守りたい。その一心で鍛錬を続け、勇士として邁進してきた。まだ成人した者の体躯には及ばないものの、少年期特有の体格からは脱しつつあった。弟であるロキも養母であるフリッガの教えの元、魔術師として著しく成長し、痩躯ながら身の丈も同じように伸び、少女と見紛うほどの華奢な少年ではなくなっていた。
『お前は意地悪だな…っ』
弟の前で涙を零したことを恥じ、丈夫な前腕で濡れた頬を乱暴にぬぐう。まだ薄い下生えの下、勃起していた男根が不意の肛虐に萎えてだらりと垂れ下がる。 その萎えた男根の鈴口に血のように紅い唇がそっと触れ、ちゅっ、と音を立てて亀頭の穴を吸われてしまう。
『あッ…!』
それだけでまた勢いよく自分の男根がぶるりと頭を擡げてしまう。
『意地悪なのは兄上の方さ。婚姻を挙げるまで私は兄上を"花嫁"として愛することが出来ないのに、肉付きのいい卑らしい身体で犬みたいに纏わりついて…日増しに大きくなる腿や尻をたっぷりと私に見せつけて…』
ぱくりと半勃起した男根が薄い唇にくわえられ、ぬぽぬぽと小刻みに抜かれてしまう。
『あっ!あんっ!あっ!』
顔を腕で覆ったまま、はしたない声を上げ、ロキの望むまま大きな肉尻を口淫にあわせてぶるぶると揺らしてしまう。
淫らなことは全てこの年下の弟に教え込まれた。読み書きを教える者のように丁寧にじっくりとロキは俺の身体を押し開き、その一つ一つに肉悦を覚え込ませた。精通も弟の手によって経験し、口淫される心地よさも、胸の尖りを犯され虐められる快感も、舌を絡ませあう淫らな遊びも、全て執拗に仕込まれ、ロキの望む通りの反応を見せるまでになっていた。
『んうっ…!』
若木のままの身体は淫らに一部が熟し、俺は弟の眼前で着衣を脱ぐだけで卑らしい期待に胸の尖りをぷるんと勃起させ、むちむちとした両の太ももの間にある半勃ちの亀頭を見せつけながら、きゅんきゅんと疼く肉穴を隠すためにもじもじと尻を揺らし、熱く濡れた吐息を漏らすようになってしまっていた。
『あっ…!』
ふわふわとした快楽の渦が自分を包み、もう少しで達しそうになるところでぬぽん、と勃起したままの肉棒を唇から離される。
疑問を顔に浮かべる俺にロキが優しく微笑みかけ、形のいい白い二本の指をそっと肛門に押し当てられる。
『嫌だッ!いやだっ!ひっ…!!』
意図を察し逃れようとする俺の肉尻にずにゅっ…!と白い指が突き入れられる。
『あうっ…!』
自分の吐いた精に塗れた指はぬめり、恥ずかしい肉ひだの奥までずりゅうううっ…と掻き分けながら長い指が潜り込み、うねうねと虫のように小刻みに動くことで敏感なひだ奥が雌として卑らしく刺激されてしまう。
『ひあッ!』
感じたことのない強烈な肉悦にびくんっ!と寝台の上で身体が強く震え、弟の指を肉穴に挿入されたままびゅくびゅくと自分の竿から快楽の雌蜜をみだらに射精してしまう。
『やッッ…!嫌だっ!やっ!やっ!やあっ!』
無意識の怯えが声になって漏れ、止まらぬ射精とともに激しく肉穴を指でぬぽぬぽと突かれ始める。
『あうっ!あんっ!あんっ!あんっ!』
むっちりとした大きな白い肉尻が肉厚な桃色の肉の輪をずんずんと犯される度、ぶるっ!ぶるるっ!と両の尻たぶが大きく震えてしまう。
『んっ!んうっ!んっ!んっ…!』
アスガルドの王子としての屈辱がすぐに卑らしい雌としての快感に変じていく。
『あっ!あっ!んむっ…』
敏感な穴ひだを犯されながら口づけを強要される。ロキの巧みな舌使いが更に俺の官能を高め、ただでさえ大きな胸が発情でぱんぱんに張ってしまう。
『あっ!ああんッ!ああッ…!!』
はしたないほど大股開きにさせられた状態で白く細く形のいい指にむっちりとした肉尻の狭間をにゅくにゅくと犯され、桃色のむちむちとした肉の輪の中にある年輪状のひだひだをこすられ、ぷるぷるとしこられ、ついで乳頭がぷるんと勃起した豊満な胸をちゅうちゅうと執拗に吸われていく。
『んうっ!んっ!んっ…』
どこからどうみても"女"として男に貪られる自分の身体が惨めだった。だが狂うほどの快楽もその中にしか存在しなくて、調教済みの俺の身体は嫌がりながらもみだらに悦び、卑らしい声を上げていく。
『あっ!ああっ!ああんっ!!』
その日一日中、弟の部屋の中では自分の淫らな声が響き続けた。最後は透明な滴に変わるほど竿は何度も何度も達し、びゅくびゅくと健康な精を噴き上げ、突かれすぎた腸道はすっかりひだを犯される快楽に目覚め、ぬちっ…とロキの指が抜かれた後は卑らしくぱくぱくと中の桃色のひだひだをひくつかせ、凌辱した男にくぱっ…と左右から皺の少ない穴ひだを広げられ、物欲しげにぷるぷるとした肉ひだが腸液をぴゅくぴゅくと滲ませながらひくつく様をじっとりと所有者として視姦されてしまっていた。
「兄上…」
意味ありげな手がねっとりと俺の肉尻を着衣ごしに撫でる。それだけで淫らな予感に熱く身体がびくびくと震えてしまう。女のようにはしたないほど大きくて白い、むちむちとした自分の肉尻。その狭間にある桃色の肉厚な肉の輪を舌と指で責められるといつも肉悦のあまり何も分からなくなってしまう。アスガルドの王子としての自身が弟の腕の中では雌畜に堕とされ、身も世も無いほどあえがされ、穴という穴を犯される。ロキの花嫁になることが時折怖かった。だがもう逃れられないことも熟れていく身体は理解していた。
「ロキ…その物語の最後は…二人とも幸せになるのか…?」
「ああ勿論。数々の冒険の末に、オーカッサンと勇気ある麗しい乙女ニコレットは種族の違いを超えて結ばれるんだ」
「そうか。ならば良かった」
「兄上…いずれ私たちもそうなるんだ。アスガルドの王子とヨトゥンヘイムの王の息子は結ばれる…」
「俺たちが和合の証になるのか?」
「ああ、勿論そうだよ…」
穏やかに語り掛けられながら上衣と下衣が脱がされていく。"私の花嫁"。そうロキが俺を呼ぶようになったのはいつの頃からだろうか。初めてその言葉を告げられた時、戸惑いと羞恥で頬を赤らめる自分を弟は喜びの眼差しで見つめていた。その瞳の中には確かな幸福があった。それだけで、男でありながら奇妙な"花嫁"としての自身を俺は受け入れてしまっていた。いずれ婚姻式が訪れれば自分の全ては完全に弟のものになる。争い憎しみ合う二つの国に和平を齎し、俺自身も愛する者と結ばれる。密やかな声でロキの名を呼び、口づけを強請る。やがて甘く熱い声が部屋を満たし、弟の愛玩する肉具として俺の身体は貪られていくのだった。