太陽の色だ。

 そういってソーは嬉しそうに手にした織物を見せた。鮮やかな黄色。古来から娼婦の纏う色だと知らぬ彼はそれを酷く気に入ったようだった。不名誉な色だからと仕立てるのをやめさせると残念そうに顔を曇らせた。黄金の眩い髪に深く澄んだ碧の瞳、人目を引く白瑪の肌、こちらの心を照らし出すかのような彼の温かな陽気さと相まって確かにあの色は彼にふさわしいものだった。

 私はその夜、穏やかなソーの寝顔を見つめながら、娼婦の黄衣を纏い、僅かな金で抱かれる彼を夢想した。肌を触れられる際にソーが見せる反応は男も女も知らぬ初々しいものだった。彼を抱けばどんな顔を見せるのだろうか。きっと甘いであろうあの柔らかな唇を思い切りすすりたかった。舌を絡めあうことで生じる淫らな心地も彼に教えたかった。そうして私を懸命に受け入れ、初めて味わう挿入の痛みで浮かぶであろう涙をそっと舐めとりたかった。

 毎朝彼の細く、手触りの良い髪を梳き、それを結わえた。彼が気付かぬよう、両耳の後ろに小さな編みこみをそれぞれつくり、後頭部の中央で結った髪には上等な緋色の布を纏わせた。そうすることで自分の所有物だという我欲をささやかに満たした。自身の選んだ衣装を着せ、また欲望のともる指先でそれを脱がせ、人間の慣習にいまだ不慣れな彼に様々な事を教えていった。

 彼のすべてが欲しかった。だがそれは終焉を呼び込むものだった。ソーの優しさと陽気さに自分の暗く沈む心は救われている。それだけで十分だと考えた。だがどこかでもう一人の自分が囁いてもいた。すべてを壊し、奪えばいいと。きっと支配されても尚、彼は私を慕う筈だと。

 眠る彼に毎夜問いかける。
 私たちの旅はどこまで続くのか。この痛み苦しむ心を君は救ってくれるのか、と――。