ロターレ




 たまたま宴席でふざけたまま話が進んで、互いで試してみないかという話になった。

 彼にとっては悪ふざけの延長でしかなかったが、長年眩しく見つめていた人物が一糸纏わぬ姿になるのは私にとっては拷問のようだった。武勇に長けた心優しき次代の王。時に傲慢で世の中の全てを知るかのように振舞う姿も若さに溢れた魅力になっていて――。

「どうした?おじけづいたのか?」

 そうソーがいいながら腰布をとり、皮の剥けた立派な男根を見せ付ける。頬が林檎のように真っ赤だ。明らかに悪酔いしている。宿屋に王子と近習の者が泊まることはこの界隈ではよくある話で、酔いつぶれた彼を酒場に一人残しておくことも出来ず、ともに幾度か夜を過ごした。

「まったく…色気のかけらもない誘い方だな」
 呆れたため息が自然と口から漏れる。皮のベルトを外し、胴着と脚衣を脱ぐ様をにやつきながら彼が眺める。私が腰布だけの姿になると厚手の板で出来た簡素な寝台に腰かけたソーが豪快な笑い声をあげる。

「ははっ。しかし、いざこうしてみたものの…俺もお前もやり方なぞ知らぬし…困ったものだな」
 彼をいつも何人の女が、そして男が見つめているのだろう。櫛と油でよく手入れされた女の髪よりも艶やかな黄金の髪、一瞬で見た者を惹きつける凪いだ海に似た蒼の瞳、血潮が透けるほど透明な白瑪の肌。何ものにも屈せぬその堂々とした佇まい。
 ソーが王になるべくして生まれて来た者だということは疑いようのない事実だった。美しい宝石を女達が求めるのと同じで高貴なものを己がものにしたいという欲望は私のみならず、多くの者が抱いている気持ちだった。その求めてやまないものがすぐ側にある。腰布の中でわずかに頭をもたげた昂ぶりを気付かれないか、それを見た彼に嫌悪されやしないかと私はじっとりと汗を掻いていた。

「ソー、君はそうしているだけでいいよ。あとは私がやるから…」
 彼の前に跪き、酔いででろりと萎れたそれを口に含む。
「おい!ファンドラルッ…」
 焦る声が頭上から聞こえる。
 湯浴みをしてきたのだろう。汗の味もしないそれは無味でもごもごと私は肉棒を口の中で転がした。両の太ももを左右に広げた姿はむちむちとした大きな肉尻も淡い色をした肛門もすべてが丸見えで柔らかい陰嚢を手で揉み込むとくっ、とソーが息を呑む。口内の肉根が芯を持ち始め、熱い吐息が無意識にその薄紅色の唇から漏れる。
「悪くはないが…友にこういった事をされるのは居心地が悪いものだな…」
 口で幾度かしごき、半勃ちにしたそれから顔を離す。決まり悪げに顔をしかめる彼を見ながら、陰嚢の下にある柔らかな壁に覆われた入り口に唇を押し付ける。

「っっ!」
 その瞬間、びくりと彼の脚が引きつり、股間の男根が硬く熱を持ち、喜ぶ身体に反して青ざめた悲鳴が漏れる。
「…そこは駄目だっ…」
 私は夢中で嫌がる彼の肉穴を舐めた。
「友よ、やめてくれッッ…そのような穢れたところを…!」
 皺の少ない桃色の壁は柔らかく肉厚で舌でれろれろと舐め、よだれまみれにすると肉壁がむちっ…と挿入を待つかのように卑らしく熟れてくる。
「うっ!ぐっ…くっ!」
 王宮の上質なそれとは比べるべくもない麻でできたごわついたシーツを掴み、ソーが肛虐に耐える。
「んうっ……!」
 むちむちの穴の中には紅い媚肉がのぞき、尖らせた舌でそれを舐めしごくと柔らかな肉ひだをしごかれる肉悦で熱い吐息を漏らしながら、とろとろと彼の肉竿から先走りの雫が垂れてくる。
「ふっ…んうっ…」
 男の手でも余るほど大きな肉尻はむっちりと柔らかく、その白い女尻を叩いてうっすらと色づかせたい欲望にかられそうになる。これまで慈しみ、守り抜いてきた王子の身体がこんなにも淫らな味がするものだと誰が気付くだろうか。重量のある肉尻に顔をうずめ、びくびくと震える太い太ももを撫で摩りながら、欲望のままに舌を動かし肛門を舐めしゃぶる。

「はっ…あっ…あっ…!」
 声が甘く惚けてきたことを彼自身は自覚しているのだろうか。
 こんなにも自然に男を誘う幼馴染の姿を私だけが知っている。そう思うと優越感と征服欲がましていき、腰布の上からいきりたつ自身を掴んだ手は無意識に自らのものをしごきだしていた。

「ソー…君の中が私の唾液で一杯だ…ちゅぽちゅぽと穴から水音が聞こえるのが分かるかい…?私がこうして…君の肛門を犯しているんだよ…」
 そういってくぱりと二本の指でひくつく肉穴をひろげ、じわりと男の唾液が溢れる中の媚肉を丸見えにさせ羞恥心を植えつける。
「ひっ…!ファンドラル…もうやめろっ…やめてくれ…っ!」
「君のこのぷるりとした肉ひだは嫌がってないぞ…ほらこうして舐めると…」
 そういって卑らしくれろれろと舌でむちむちの肉ひだを激しくなめまわす。

「あっ!ひんっ!ひっ!」
 尻をぶるぶるとみっともなく震わせながら、厚い胸板の上に愛らしい飾りのようについた桃色の乳頭がぷるんと勃起する。
「君のものからたっぷりと汁が垂れてきた…もっと奥もなめるとどうなるかな…?」
 父母と民の愛を受け健やかに育った王子は屈辱を受けることに慣れてはおらず、その分羞恥から来る淫らな悦楽にも弱かった。
「はっ…んっ…!」
 自分よりも大きく逞しい彼を自由に扱うことは常ならば困難なことだった。だが酔いと羞恥ですっかり大人しくなった身体は軽く押すだけで寝台の上に横たわり、冷静さを欠いた私はソーの嫌がる声にも耳を貸さず、ひたすら自身の顔を女のように大きくむちむちとした肉尻に強く押し付け、あごひげを尻肉にこすりつけながら激しく小刻みに頭を動かし、飢えた獣のごとく肉穴を穴の奥の奥までしゃぶりつくした。

「あっ!あっ!ああっ…!」
 むちっと熟れた桃色の肉壁はしゃぶればしゃぶるほど壁を卑らしくひくつかせる。挿入した舌に肉ひだが絡みつき、にゅぐにゅぐと煽動しながら更なる陵辱を望んでくる。
「んっ…ぐっ…んうっ…」
 どこもかしこもむっちりと卑らしく肉のついた、大柄な身体が汗まみれになりがら寝台の上でぎしぎしと音を立てる。女を喜ばせる為にあった淫水焼けした立派な一物は今や雄が舐めしゃぶる為の女の肉芽で、ぴんと爪ではじけばむくむくと更に肥大しそうな乳頭は花の色がついた甘く美味な菓子のようだった。

「はっ…」
 彼のここは排泄の為の穴ではなく、男の欲望を受け入れる為の入り口だ。そうなるよう今、私がこの何よりも大事な友を女として躾けたのだと思うと、煮えたぎるような肉欲に自我すら奪われそうになる。
 準備のできていないそこにすぐにでも押し入りたかった。愛を告げながら私のものにしたかった。だが肉の喜びに震えながらもソーの顔にはどこか苦しみが滲んでいて、すべてを奪うことには躊躇があった。

「……」
 自身を落ち着かせるように深く息を吸い、自分の痛いほど勃起したものをさすりながら舐めほぐした穴に指を入れていく。
 見聞きした知識でしかないが、木の実のような膨らみが中にあることは知っていた。異物が入ることでひくりとソーの肉尻が怯えるように震え、だがその膨らみをこすると淫らな声を上げながらむちむちの肉穴ににゅぶりと指を挿入された卑らしい姿のまま、汗まみれの女のように大きな尻がびくびくと激しく震えだす。
「はっ!あうっ!ああっ…!」
 自分の身に何が起きたかを理解できないのだろう。縋るような眼差しが私を見つめ、蒼玉の瞳に涙がじわりと滲んでいく。
 腸道のちょうど中ほどにある、その膨らみをこすりながら尻を犯されて感じまくる愛しい王子の痴態をじっとりと執拗に視姦し、己の肉竿を激しくさする。

「友よ…万物の神と大地の子よ…どうか怯えないでくれ…君に喜びを与えてあげるから…」
 ずぷずぷとむちむちに熟れた桃色の肉壁の中で指を動かせば動かすほど、年輪のような中の卑らしい肉ひだがねっとりと絡みつき、木の実大の膨らみがこすることで更にぷくりと膨らんでいく。
「あっ!んあっ!あんっ!あうっ…!」
 中の媚肉が熱くとろけて柔らかい。一本の指が彼の大きな肉尻の上で支配者のようにずにゅずにゅと激しく動き、その度に一物から雫を垂らしながら肉尻を震わせ、よがる姿がたまらなく淫猥だった。
「ふッッ!くっ…んうっ…!」
 わざとずちゅずちゅと穴に入れた指で大きな音をたてさせると恥ずかしさと惨めさでソーは悔しげに唇を噛み、精悍な顔をシーツに擦り付ける。だが雌として感じているのは明白で、むちっ…と性の肉具として熟れた桃色の肉壁をほじればほじるほど、穴はきゅうとすぼみ、まるで膣のように肉ひだが濡れ、甘い雌声が彼のかみ締めた唇の隙間から絶えまなく漏れてくる。誰よりも大事な友の中に自身を沈めたつもりで肉竿をしごき、挿入した指を根元まで深く突きいれ膨らみごと熟れた肉ひだをにゅぐりと強く撫でさする。
「ああっ!!」
 頬を真っ赤に染めたソーが私の下でびくりと震え、びゅくっ!と勢いよく彼の一物から精が噴きだし、鍛え上げられた見事な腹部を濡らしていく。

「はっ…ふっ…」
 濡れた舌を薄紅色の唇から覗かせながら、涙にけぶる瞳を瞬き、荒い息継ぎを彼が繰り返す。女として達したソーが何よりも愛しかった。巨人殺しと怖れられるほどの戦神でありながら、秩序のある寛容さで民を見守り、国の行末を憂う若き王子。誰からも愛されるオーディンの息子。

 自分の脳裏にいくつかの愛の囁きが浮かぶ。
 どれも陳腐な言葉だが、一つでも私に口にする勇気があれば良かった。だがそれを持ちえていないのが自分であることもよく知っていた。腹部を己の精で濡らし、ひくひくと身を震わせる穢れなき王子の姿を見つめながら自身の肉棒も頂点を迎え、びゅくびゅくと掌の中に生暖かい精が溜まっていく。

「……っ…」
 達した互いの身体を擦り合わせ、吐精の余韻にしばし浸る。
 かすかな寝息が聞こえ、自分の下にある男を見ると腹を濡らしたまま彼は深い眠りについていた。酔いと吐精からくる開放感がソーに休息を与えたのだろう。いかにも豪気な友らしいその寝姿にくつくつと笑いながら、互いの汚れを布でぬぐい、彼の隣にごろりと身を横たえる。

 私のサーベルを磨いてみるかい。精悍な横顔を眺めながら、遊びなれた女達に囁く言葉をひそと呟いてみる。

 君が私だけを見てくれるのならば一途に私も君を想うのに。
 通じぬ思いは私には不似合いなものだった。多くの女達と愛を語らうことが自分には向いていた。ただ一人を愛することは気が重い。
 だが彼ならば――必死に守りぬいたこの神の子ならば、一つの愛に殉じることも出来るのではないか。そう私に予感めいた確信を伝えてくる。


 酔いつぶれた所為で今日のことを彼が忘れてしまっても、私は決して彼を責めないだろう。ただあの瞬間、ソーは私のものだった。その事実が私を長く慰めるのだという事をよく知っていた。