夜と夜の間 



「ここにいたんだ」

背後から声を掛けられる。ニフルハイム軍の襲撃により、廃墟と化した王都。王都城の最上階にある庭園も同様に美しい景観を失い、破壊された彫像や迫持(せりもち)の欠片が僅かに在りし日の面影を残すのみとなっていた。

「好きだよね、ここに来るの。いつも何時間でもここにいる――」
軽い欠伸がアーデンの口から漏れる。シガイや魔導兵の増加を制御することを条件に最も憎むべき男の手に堕ちた。復讐を誓いながらも講じる手立てもなく、望洋とした日々がただ流れていた。

「ベッドの中でやけに肌寒く感じる時は大抵君がいないんだよね…で、大概ここから王都をボーッと見てる」
「……」
首筋に冷やりとした唇が押し当てられる。タンクトップを身に着けた胸元に両手が伸ばされ、ゆっくりと、だが慣れた仕草で豊満な胸筋を揉みこまれる。
「あっ…ッ…」
「さすがに10年も抱いてると嫌でも反応しちゃうよね……最初は抵抗してたのに今では俺に突かれながら胸を吸われるのが好きで…吸ってる音にも感じちゃって、中がびくびくってすぐイッちゃう…」
「…っ…くッ…」
着衣の上からぶるりと膨らんで勃起した乳芯を探り当てられ、くりくりとそれをこね回される。
「あッ…くそっ…!抱くんなら寝室に戻ればいいだろ…ッ…」
「ふふっ…抱かないよ。さっき散々君の気持ちいいオマンコにびゅくびゅく…って精液しぼり取られたばかりだからね…俺が君のいうところの"バケモノ"でも流石に回復する時間は必要だよ…」
「…ッ…」
悔しさと情けなさで頬が赤らんでいく。長期に渡る執拗な調教で男を味わうこともすっかり俺の身体は覚えてしまっていた。アーデンにぶちゅぶちゅと種をつけられるたび、無意識に腰を振り、笑みを浮かべてしまう。自分の恥ずかしいほど大きな肉尻を殺したいほど憎い男の勃起した逞しいチンポににちゅっ…とすりつけ、中をうがたれることを望んでしまう。玉座の上で、王都警護隊の制服を身に着けた姿で犯されたこともあった。自分の中でぶびゅっ、ぶびゅっ、と射精を繰り返す簒奪者の肉竿に陥落の笑みを浮かべながら、俺ははしたなく腰を振ってしまっていた。そうしてアーデンと共に何度も果てた。仲間達を裏切る罪悪感を感じながら――。

「ガーディナで初めて会った時から欲しかったんだよねー…。すごく俺好みの気の強さで焦茶色の目が綺麗で――俺に抱かれるようになって益々美人で色っぽくなって……回復したらまたしようね、いつもみたいにたっぷり俺のペニスで君のむちむちした大きなお尻から潮を噴かせてあげる…」
「あっ…!」
所有を示すかの様に、ひと際強く乳頭の先っぽが手でしごかれる。革のボトムの中で、何度もアーデンの逞しい男根にずにゅずにゅと犯された大きな肉尻の中がじゅんっ…と発情した腸液で濡れてくる。ペニスで突かれれば突かれるほど、肉穴の中のはしたない肉ひだがぬるぬると分泌液で濡れ、触れられてもいない肉棒が犯される快感でびゅくんっ…!と女の潮噴きのように射精してしまう。アーデンに伸し掛かられ、ペニスで重量のある肉尻を押しつぶされながらの卑猥な交尾をされたこともあった。目を背けたくなるほどの浅ましい速さでガクガクと腰を動かされ、むちむちに熟れた肉の輪を逞しい肉茎がずるっ…、ずるううううっ…としごくだけで全身が快楽でびくびくと震えてしまい、俺は惨めな結合姿を晒し続けた。覆い被さる男に何度も気持ちいいかと聞かれながら、ぱんぱんに膨らんだ肉茎でむちむちの肉壺をズニュズニュと貫かれ、最後は年輪状のひだひだが子種だらけになるまで雌として種を植えられ続けた。

「んっ…ッ…」
快感を煽るように壮年の男の手が体中を這っていく。肉付きのいい、犯す男の手に馴染んだ身体。夜毎繰り返される、穴ひだがめくれ上がるほど激しく肉竿で抜き差しされ、涙目で悦ぶ姿。共にイクことを強要され、だらしない笑みを浮かべながらブチュブチュと種付けされ続け、"女"としてはしたないほど大きな肉尻で中イキを繰り返す浅ましい性奴の姿。
「…ッ…」
惨めさで眦に涙が浮かぶ。だがそれすらも己のものだというように、アーデンの舌が雫を舐めとっていく。


「――君がさ、ここにいつもいる理由。何となく分かるよ」
「…?」
「だってここから凄く遠いけど見渡せるもんね。ハンマーヘッドもレスタルムも…」
「……」
「仲間に会いたいんだろう?だったらそうすればいい」
悪戯で熱くなった肌をゆったりと撫でさすられる。
「……俺はお前の側についた裏切者だ。今更どんな顔して会えんだよ…」
「常夜になってから市民の被害はあった筈なのにシガイの数はここ10年変わらない。暴走した魔導兵達が爆発的に増えることもない…」
むき出しの肩に背後からざらついた顎ひげが擦り付けられる。
「――皆分かってるんじゃないかなあ…」
「…それでも、だ。それでも俺はもうアイツらに合わせる顔なんてねえよ」
「……」
失われた庭園の青々とした草花の香りを思い出す。仲間達の顔も、何よりも守るべき王子の顔も脳裏に浮かび、徐々に消えていく。慰めるようにアーデンの唇が俺の口元にそっと押し付けられる。

「…寒くなってきたね。中に戻ろうか」
自分の手を引くアーデンの肌には灯る熱があった。また城内に戻れば、数えきれないほど夜を過ごした寝室で淫蕩に身体を暴かれてしまうのだろう。だが今夜はそれでいいのかもしれなかった。朝の光を見れば、クリスタルと融合したノクトの帰還を待ち望む心が、微かな希望が湧いてくる。暗い夜は希望すら呑み込むようで、今はそれを忘れたかった。