problem 


「ね、イグニス。今日も一部屋でいいでしょ?俺みんなでキングスナイトやりたいな〜」
能天気なプロンプトの声が助手席から響く。
「ああ、節約も必要だし、そうするか…」
ルームミラー越しに後ろのグラディオを見ると、その言葉に明らかに安堵の表情を浮かべるのが腹が立つ。
成り行きで、ではなく、ちゃんと長年の片思いを告白してグラディオとは結ばれた。同性同士でのセックスはお互い初めてで、二人して大いに戸惑いながら何とか最後までやり遂げることができた。
"男同士でやろうと思えば出来るんだな"
行為の後、俺の精液が溜まったコンドームを風船のようにぶらぶらと弄びながら、良かったとも、良くなかったとも言わず(俺は最高に良かったが)、グラディオは呟いた。あれ以来、中々二部屋取る余裕もなく、セックスもそれきりだった。
仲間達には母親のようだと揶揄われたりもするが、俺だって健全な22歳の男だ。抱き心地の良い、最高の恋人が常にすぐ側にいて我慢しろという方が酷だった。欲を言えば週に一度はしたい。もっと言えば3日に一度はしたかった。初めて埋めたグラディオの中は熱くてひくついて、ペニスを引くと中の肉ひだが抜けるのを嫌がるように絡みつく、極上の身体だった。いつもの強気な顔が半ば惚け、言葉にならない声を何度も漏らしながら、自分が突き上げるたびにびくびくとしがみ付くのが堪らなかった。ゴムが中で引き攣れるのをグラディオが痛がり、初めてのセックスはたったの一回で終了した。自分の中にある邪な部分を見せたくはなくて、出来るだけ紳士に恋人には接してきた。198cmも身長がある巨人のような体格の癖に、いざ恋人になるとグラディオは小悪魔だった。こちらの悶々とした思いを何も考慮せずに、短時間二人きりになるとふざけてキスを仕掛けてくる。しかも小悪魔ならもっと大胆に攻めて欲しいのに、今時10代の恋人同士でもやらないような頬への軽いキスだけを繰り返す。そうして恋人としての務めは果たした!と言わんばかりの晴れやかな顔で、ノクト達と馬鹿騒ぎをし始める。何なんだこれは。飲み干したエボニーコーヒーの缶を怒りと共に握りつぶしたことも一度や二度ではなかった。相手の感情を推測するに、恋人としては嫌いではない。だがアレは楽しくないからやりたくない。結果一部屋万歳…!としか思えなかった。
「なに作ってんだ?お!いつものやつか…!」
レスタルムでの定宿であるリウエイホテル。部屋のキッチンでノクトが昔テネブラエで食べたという思い出の菓子を試作する俺に、グラディオが声をかける。後の二人は市場に散策へ出かけ、残ったのは自分達二人だけだった。
「何だ…?軍師様は今日はヤケに機嫌わりいな」
視線だけを投げかけ、無言でオーブンの温度調整をする俺に半ば笑いながら恋人が言葉を漏らす。
「そういやドライブ中からずっと機嫌悪かったよな。何かあったのか?」
王子の参謀役としていついかなる時も感情は抑えるべきだった。完璧に制御出来ている筈なのに、この幼馴染兼恋人はいとも簡単に見抜いてしまう。
「――いいんだぞ」
オーブンの窓越しに卵液を塗ったパイ生地に火が通るのを観察しながら言葉を紡ぐ。
「何がだ」
「嫌なら別れてもいい」
「はあッ!? 」
心底驚いたのだろう。元々大きな地声が更に大きなものになる。
「オイ、唐突すぎんだろ。別に喧嘩もしてねえのにいきなり別れるとか…」
「一か月だ」
「?」
「初めてしてからもう一か月になる。あれから一度もやってない」
「あー…まあ、その…」
バツが悪いのだろう。快活だった口調が不明瞭なものになる。
「…俺は下手なのか?」
男なら死んでもいいたくない台詞だ。だがこの際背に腹は変えられない。
「いや下手とかいわれてもよ…俺だって野郎と寝るのは初めてだったし…」
焦った時の癖なのか、硬い顎髭を掻く速度が速くなる。
「じゃあ何故二度目がないんだ」
「部屋が中々二つ取れねえだろ」
「なら取れたらするのか?」
「……」
バナナを入れたフィリングの甘い匂いが漂ってくる。バターの香ばしい匂いも。口論を一旦止め、理想的な焼き加減になったタルトをオーブンから取り出し、角型のケーキクーラーに載せていく。
「もういい。心配するな。これ以上手は出さない」
「だから早合点するなって…っ…」
詰め寄る身体を軽く手で押し止める。ぶるんっ…、と美味そうに盛り上がったはちきれんばかりの大胸筋が焼き付くようにして目に映り込む。素裸の上半身に上着だけを羽織った自分の姿がどれだけ煽情的か、自覚のないその様子にも憤りが湧いてくる。
「仕上げ用の粉砂糖を買い忘れたんだ。市場に行って買ってくる」
会話を中断させるにはいい口実だった。苦虫を噛み潰したような顔のグラディオを一人残し、部屋を出る。あのまま共にいれば、いつノクト達が戻ってくるかも分からない状況で欲望をぶつけてしまいそうだった。惚れ惚れするほどの剣の腕も、豪放磊落な性格も、良く陽に焼けた肌も、意思の強さを秘めた彫りの深い顔立ちも、全てがどうしようもなく好きだった。アミシティア家の長子としての重責に不平を漏らすこともなく、ただ王子の側にあり続ける姿も、グラディオの"王の盾"としての覚悟が垣間見えるようで、益々憧憬と愛しさが募るばかりだった。
「……」
別れを切り出したのは自分なのに胸が痛くなる。その痛みを自業自得だと言い聞かせ、市場へと続く入り組んだ路地を進んでいく。

「オイ、今日はもう一部屋取るぞ」
道中で狩ったデュアルホーンの肉を使い、骨付きステーキでの夕食を摂った後、不機嫌さを滲ませながら3人の前でそうグラディオが宣言する。食後のデザートとして昼間作ったタルトを手にしたノクト達と共に、思わず呆然とした顔で相手を見つめてしまう。
「コイツと話があるんだ。オーナーにはもういってある」
強引に腕を引かれ、廊下へと連れ出される。
「えっ、ちょっ、ちょっとグラディオ!キングスナイトは?」
「また今度な」
「別にいーけど喧嘩すんなよ」
「おう」
二人それぞれに返事を返した後、俺の腕を掴んだまま無言でグラディオが螺旋状の階段を上っていく。上階の端まで進み、鍵を開け、乱暴な足取りで部屋に入る。元いた部屋と同じ、セピアブルーを基調としたクラシカルな内装の室内。大きく開かれた窓から見える雑多な街並みの上にある夜空にバルブから噴射される高温の蒸気が白く薄く流れていく。
「――明らかに不自然だったぞ」
「だな」
窓辺に目をやったまま、グラディオが答える。
「明日なんて説明するんだ」
「好きなようにいえよ。お前と付き合ってるってバラしてもいい」
甘い期待が胸に沸き起こる。逸る心のまま、こちらに背を向けた大柄な身体にそっと寄りかかる。浅黒い肌からは整髪料と香水、僅かな汗の混じる体臭がし、初めて抱いた夜を想起させていく。
「嫌なんじゃないのか」
「お前とやることがか?いーや…ただちっと…」
「……?」
「よく分かんねえんだ。ああいう時、どういう態度取ればいいのか…」
「別に普通にしていればいいだろう」
「だから普通ってなんだよ。普通って。そっからして分かんねえし…」
率直な言葉に思わず笑みを漏らすと、凄味のある目線を向けられる。
「グラディオ、正直言って俺もまだ分からない事だらけだ。事前知識は雑誌と動画だけだったし…」
それでも初めて繋がったあの瞬間は言葉にいい表せない喜びだった。あの歓喜をまた味わいたかった。出来れば何度でも――。
「だからお前が受け入れてくれるなら…」
恋人のうなじに唇を落とし、痕をつけるように強く吸っていく。刺激に弱いのか、それだけでびくびくと大柄な身体がおもしろい位に震え、自分の中に隠されていた獰猛な欲望を焚きつける。
「二人で色々知っていこう…」
甘い言葉をかけつつ、性急な仕草でグラディオの上着を脱がせていく。筋肉とほどよい脂肪のついた巨乳ともいえるむっちりとした大きな胸を揉みしだくと、漏れる声を我慢する吐息が何度も肉厚な唇から漏れる。この極上の身体はもう自分のものだ。そう傲慢にも考え、少し乱暴に両の乳頭を指でしごく。
「あっ!ああッ…!ああっ…」
乳辱で簡単に屈強な筈の男が床に膝をつく。黒革のボトムごしにくっきりと豊満な肉尻のラインもあらわになり、鍛え上げられた上半身に反して細い腰がより一層欲情を昂らせる。
「がっつくなよ…イグニスッ…あっ!あっ!」
性急な仕草で覆いかぶさると非難するように声が漏れる。
「やっ…!ああッ…!」
搾乳される雌牛のように綺麗な桃色をした乳芯をしこしこと激しく上下にしごき、ぶるんっ、と卑らしく勃起させる。その肥大させた先端ごとぐにゅぐにゅと両手で大きく巨乳を揉みこみ、敏感な胸を徹底的に犯していく。
「あっ!あっ!あッ…!!」
「こんなに卑らしい胸をしているんだ。あまり露出の多い恰好は控えてくれ…」
「あっ!ああっ!俺を妙な目で見るのはお前くらいっ…ああああッ!」
両方の乳頭を徹底的にしごかれ、跪いた姿勢で切なげに豊満な肉尻がぶるぶると揺れ動く。そのはざまに自分の硬くなったペニスを着衣のまま擦り付け、むっちりとした左右の尻たぶで亀頭をしごく。
「イグっ…ニス…ッ」
肥大してぷるぷるとしこった桃色の敏感な乳頭を執拗に指でこねられながらグラディオが声を漏らす。
「夜はなげーんだ…ッ…もっとゆっくりやれよっ…あっ!ああッ!!」
左右の勃起した乳頭を二本の指でそれぞれはさまれた卑らしい姿でぶるぶると豊満な胸が激しくもみしだれかれる。眼前の恋人が"雌"として感じているのは明らかで、胸をもまれるたび、ぶるりと肉厚な舌が垂れ、発情した犬のようにぱんぱんに勃起したペニスを革のボトム越しに見せつけながら、がくがくとはしたない腰振りを繰り返す。
「そうだな、ならベッドにいこう…」
優しく呼びかけながら発情で膨れ上がった両の桃色の乳頭をぐにッ…!と強く上に引っ張り上げる。
「あッッ馬鹿っ…!!」
巨乳ともいえる豊満な胸の先端を左右に強く引っ張りあげられた恥ずかしい姿でびくんびくん、と眼前の身体が激しく痙攣を繰り返す。胸だけで達してしまったのだろう。漏らす吐息は怪しいほど甘く、亀頭を肉厚な尻たぶで挟まされたまま、ぶるっ…、ぶるっ…、と重量のある肉尻が上下に揺れる。
「ッ…」
「グラディオ、今ここで脱ぐか…?」
中ではぜた精液の感触が不快なのか、自分の下腹部を確認した恋人の眉間に皺が刻まれる。相手が頷いた後、脱がせようとした手が振り払われ、立ち上がったグラディオが黒革のボトムを下着ごとずり下ろす。
「……」
いつ見ても野性味のある美しい肢体だった。長い手足を持つ筋肉の層が積み上がった見事な体躯は肉付きが良く、胸は大きく、太ももは太く、肉尻はまろみがあり、柔らかで、雄の欲望を掻き立てる。
「何見てんだよ、このエロ軍師」
振り返った恋人が悪戯好きの少年のような笑顔で自分に笑いかける。太く凛々しい眉の下にあるきらきらとした琥珀色の瞳と長い睫毛、笑みを湛えた肉厚な唇が酷く蠱惑的で。こんな時でも、いや、こんな時だからこそ、やはりグラディオが小悪魔に思えてしまう。
「んっ…」
同じように立ち上がり、相手の耳朶に唇を寄せ、不器用に愛を告げると、くすぐったそうに恋人が首を竦める。後ろから抱き着き、柔らかく唇を奪うと侵入を許すように、そっと唇が開かれ、熱を持った舌同士が絡み合う。待ち望んだ触れ合いに、幸せすぎて眩暈がしそうだった。この一か月、積りに積もった鬱憤が甘い情交で呆気なく溶けていく。
「なあ、イグニス…」
「なんだ」
互いの唾液で濡れた舌をちろりと覗かせながら、どこか蕩けた顔でグラディオが自分を見つめる。
「今日つけなくていいぞ。たまってたんだろ?いっぱい俺で抜いていいからな…」
昔の漫画なら確実に自分の眼鏡は衝撃でヒビが入っていたことだろう。
「あっ!おいっ…」
無言で強く恋人の腕を引き、ベッドに向かう。
「ほんとにお前はむっつりだよな…」
人の悪い笑みを浮かべながら、グラディオが寝台の上で仰向けに寝そべり、どこか期待する目つきで両足を開く。
「きっちり俺をイカせろよ、軍師様…」
「ああ…」
眼鏡のブリッジを直しながら頷き、魅惑的な恋人の身体に伸し掛かる――。

翌日、晴れやかな気分でハンドルを握る自分とは対照的にグラディオの機嫌は最悪だった。 ノクトとプロンプトの希望でケニーズクロウ本店でしか食べられない"ケニーズ・スペシャルサーモン"を求めてオールドレスタまで車を飛ばした俺達は、食後それぞれに別行動を取り始める。移動販売式の武具屋"キュラス"で吟味を続ける同学年コンビを横目で見ながら給油をする俺の側に、強面の男が荒々しく近付いてくる。
「――やり過ぎだろ」
「沢山してもいいと言ったのはお前だ」
「そりゃ言ったけどよ…なげーし何度もやりやがるし…ちったあ俺の身体の負担も考えろ」
「良くなかったか…?」
相手の目を真摯に見つめるとじわじわと褐色の頬が朱が染まる。最後は半ば意識を失った状態のグラディオを抱き続けた。肉厚な肉の輪は挿入する度に嬉しそうにペニスをくわえ、狭くむちむちとした年輪状の肉ひだでずりずりと肉棒をしごきあげる。最奥にあるぷるりとしたしこりは突くたび、はしたない雌声を何度も恋人が漏らし、せがむように自分の身体にしがみつく。中で出すことを伝えるとその度に覚悟するようにぎゅっ…と切なげに眉を寄せる顔がたまらなかった。豊満な胸に吸い付きながら重量のある肉尻の奥に種をつけると"女"になったことを高音の混じる嬌声が伝え、たっぷりと中の肉ひだに男の子種がどろどろと染みていく。度重なる情交ではしたないほど大きな肉尻が自分の種でいっぱいになり、甘い吐息が漏れるたびに挿入し過ぎて締められなくなった肉厚な肉穴から白濁としたそれがどろっ…と垂れていく。その淫らな犯されきった姿が更にこちらを煽り、夜が明けるまで何度も極上の身体を味わい続けたのだった。
「ったく…腰はいてーし、今もお前のあれの形にケツの中が開いてる感じがすんだよ…」
「…すまない。今度からは気をつける」
謝罪してはみたものの、自分の好み過ぎる外見と心を持つ最上の恋人に対して、どこまで自制できるかは疑問だった。
「イグニス、グラディオ〜ッ!ねえ見てー!」
目当ての武具が見つかったのか、プロンプトがこちらに手をあげる。給油を終えたノズルをコルニクス鉱油のマークがついた給油機に戻し、合流しようとする自分の肩を大きな手が軽く掴む。
「まあ、またその内、な」
照れ隠しの様にぼそりと呟かれた言葉が嬉しくて、思わず時と場所を忘れて口づけそうになる。
「ああ、近いうちに。必ず…」
よほど幸せそうな顔をしていたのだろう。グラディオの頬にどこか呆れの混じる笑みが浮かぶ。快晴の青空と家族ともいえる仲間、そうして最愛の恋人。今日も良い一日を過ごせそうだった。