Happy new year 








「あのブロンドの髪、とてもゴージャスだったよ」
ヘムズワース家恒例のニューイヤーズパーティー。毎年趣向を凝らしているそのパーティーに、彼の友人として招かれた僕は自分なりに趣旨を理解した仮装をし、クリスと同じくらい温かい彼の家族に迎え入れられた。

「そうだろう。君がまた僕に惚れ直すんじゃないかと思ったよ」
「ははっ」
髭を短く整えた彼が豪快に笑う。ベッドの中での話はどんな内容も楽しい。行為を終えた後はすっきりして、気だるくなってしまうけど、彼の綺麗な瞳と好奇心に満ちた少年のような笑顔を見るとその気だるさもどこかへ吹き飛んでしまう。

「君のファンは君が嘘つきだっていうだろうね」
「どうして?」
問いかけながら彼の長い下睫毛に口づける。クリスを抱くといつも彼のそこに涙が溜るのが好きだった。彼は酷く感じやすい。肌を撫でるだけで発情し、頬がうっすらと上気してしまう。こんなに大きくて逞しい身体をしているのに、ボトムとして貫かれるのが好きで、いつも僕が中で出すまで肉尻で執拗にペニスをはさみこむ。快楽を感じると彼は涙をこぼす。それが綺麗でいつも見惚れてしまう。恋人であってもどこかで冷静になることが必要だった。実際今までそうしてきた。だがクリスに対しては、それが時折危うくなってしまう。ある程度、適した段階で自分を押し止めるべきなのかもしれなかった。

「だってラグナロクのインタビューでいってただろ。"一回仕事をしただけだ。彼の事はそこまで良く知らないよ"って――」
「ああ…」
インタビューは本音と冗談を織り交ぜるのが好きだった。クリス・ヘムズワースとはそこまで親しくはない。それは実際真実の部分もあった。仕事仲間とは仕事を重ねることで信頼を築き上げてきた。彼とはまだ一度しか仕事をしていない。クリスと出会う前までは彼をここまで気に入るとは思いもしなかった。インタビューや複数の映画で見かけた彼は少し僕にとってはスマート過ぎた。だが一度だけとはいえ、共に仕事をし、ソーというキャラは僕にとって忘れがたい愛すべき者となり、それを演じたクリスは急速に僕の中で存在を増していった。

「それなのにうちの家族の新年のパーティーに君がいて、マイリーと一緒に写ってる」
楽しげに彼が弟であるリアムの有名すぎる彼女の名前を口にする。
「じゃあ、もし糾弾されたらこういうよ。君の家の養子になったトムみたいに、僕も養子になったんだって」
また彼が低い声で陽気に笑う。彼の家族の前では僕は友人だった。だがあのパーティーでも皆に隠れて新年を祝うキスを何度もした。もし彼が、僕にプロポーズしたら僕は迷うことなくそれを受けるだろう。黄金の心を持つ僕の恋人。だが彼がどこまで本気なのか、僕はどこまで彼に夢中なのか、魅力的な彼に遊ばれているだけなのか、本心なのか。色々とお互いに確かめる期間が必要だった。

「……」
柔らかな声で彼が僕を呼ぶ。微笑むことでそれに応える。
彼の額を指で撫で、新年にしたキスをもう一度僕たちは繰り返した。