「えっ…」
自分の空虚に呟く声が自室に響く。何の断りもなく我が物顔で部屋に入ってきた兄は丈長の外套を脱ぐと、現れた筋骨逞しい身体に纏う寝衣も当然のように脱ぎ始める。
「あ、兄上。なっ、何を…」
薄絹の寝衣は真っ新な白色でうっすらと赤みがかった白肌とつんと勃ちあがった桃色の乳頭がその寝衣ごしに透け、思わず生唾を飲み込みそうになる。
「ずっと触りたかったのだろう?ロキ」
どこか悪戯を思いついた少年のような笑顔でそう兄が私に問いかける。確かにそうだ。ずっと間近で見つめ、触れたかったものがすぐ目の前にある。だがこれは長い間秘めていた気持ちの筈だった。何故ソーに今、それが伝わってしまったのか――。
「……ッ」
脱ぎ捨てられた寝衣が軽い音を立てて床に落ち、素裸の兄を直視できず思わず目を反らす。
「ここはお前に脱がせてもらおうか…」
温かく大きな掌が私の腕に触れ、ソーの腰布に手を触れさせられる。
「ロキ、俺はお前の"もの"になるんだ。だから俺のすべてを見てくれないか…?」
「……」
明らかに現実ではありえない光景だった。自分の願望がすべてかなえられた世界。妄執の果ての夢だと自嘲しながらも目覚める気にもなれず、欲望のままに跪き、眼前の腰布を剥ぎ取っていく。
「――ああ、兄上…アンタは髪だけじゃなく下生えも見事な黄金なんだな…僅かな下生えの下に綺麗に剥けた薄紅色の大きな男根もあって…両の尻たぶもこんなにむちむちと大きくて…なんて卑らしいんだ…」
獣欲をはらんだ雄の眼差しで執拗に見つめられることに羞恥を感じるのだろう。笑みを称えたままの兄の眉根が微かに寄せられ、その頬がうっすらと赤らんでいく。筋肉の層が積みあがった彫刻のような身体は何一つ身に纏わない状態でも見惚れるほど素晴らしく、熱い吐息を漏らしながら肌を撫でさすると惑うように瞼が伏せられ、長く濃い睫毛がその精悍な面差しに影を作る。
「あッ…!」
ソーの焦る声を聴きながら陶酔しきった顔で初々しい色をした男根にむしゃぶりつく。同時にむちむちとした卑らしいほど大きな肉尻にも手を伸ばし、ぐにぐにと揉みこみながら親指の腹でじっとりと肉穴を探り始める。
「んうっ…んうっ!」
じゅぽじゅぽと派手な音を立てて口淫すると目を閉じたままの兄がぶるぶると抗うように顔を左右に振り、その無力なまま犯される貞女のような姿が否が応にも自身の興奮を煽っていく。
「もう鈴口から生臭い汁が垂れているぞ…弟である私に犯されるのを待っていたのか?誰よりも勇猛果敢な兄上がこんなにはしたない男だったなんて…失望したよ…」
長兄に対し欲望を覚えた頃からソーの男根を男性器ではなく、女の肉びらの上にある肉豆が肥大したものだと、そう妄想するようになっていた。雌としての快楽を感じるための露出した女性器。その妄想のままに桃色の立派な男根をくわえ、歯と唇でにゅぐにゅぐと犯しながら敏感な受精器を責め、初めて味わわされる"女"としての快楽に耐え続ける兄を追い詰めていく。
「あっ!ロキッ…もう駄目だっんっ…出るッ…!」
かすれた低音とともに肉棒にしゃぶりつく自身の頭を強く捕まれる。お返しとばかりに竿を執拗に舐めあげ、豊満な白い肉尻の奥にある桃色のすぼまりをにちっ…と二本の指で開くと中の敏感な肉ひだに外気が触れ、その刺激で甘い声とともに兄が達してしまう。
「あっああっ!ああっ…!!」
恥ずかしい中のひだひだが丸見えになった状態で女のように大きな尻がぶるぶるとみだらに激しく揺れ、腹につくほど反り返った大きな男根からびゅくびゅくと勢いよく雌蜜が垂れていく。
「ッ…!」
射精する心地よさと弟の口淫で果てるみじめさに淫蕩な顔のまま、悔し気にぎゅっと兄の唇が噛みしめられる。
「あっ…あっ…」
女として達した証である熱い蜜を執拗に口の輪で搾り取り、大きく喉を嚥下させながら犯されたソーの男根を余すところなくむさぼり尽す。
「んうっ!!」
指で押し開かれたままの桃色のすぼまりにも強引にずぬっ…!と指を突き立て、初めてひだを犯される兄の初々しい嬌声を聞きながら、むっちりと指に絡みつく媚肉の具合を堪能する。
「ああっ…あっ…」
吸いつくような手触りの肌理の細かい白肌、凛々しくも美しい顔、金色の絹糸に似た艶やかな黄金の髪、頑健そのものの体躯、前腕と臀部や胸部に乗った肉は柔らかく、食いつくされるのを待つかのようにその肉付きのいいむちむちとした身体に淫猥な汗がじんわりと滲んでいく。
「あッ……!」
初めからソーは私のものになるための存在だった。弟である自分に無償の愛を注ぐ太陽のような兄。惹かれない筈がなかった。
「んっ…んうっ…」
指の腹でねっとりと中のひだひだを大きく指を動かしながらしこしことしごくと官能でソーの女のように大きな尻がもじもじと揺れ始める。卑らしい動きで敏感な肉ひだをいじられるのに耐えきれないのだろう。ぎゅっ…と跪いたままの私に縋るように逞しい身体が覆いかぶさり、挿入した指が発情した腸液でぬるりと濡れてくる。
「ひっ…!んんっ…!」
わざと激しく強引にぬこぬこと中の指を動かすと豊満なむちむちの肉尻がぶるぶると上下に揺れ動き、くぱっ…と生娘の穴が熱く淫らに開いていく。
「兄上…床に腰を下ろして…足を開くんだ…」
獣のように理性を手放した状態で兄と交わってみたかった。私の命令にソーは無言で頷き、羞恥で頬を赤らめながら腰を下ろし、むっちりと肉のついた太ももを左右に広げ始める。丸見えになった犯されて蜜を放出し、でろりと萎えた兄の男根はまだ鈴口にその凌辱の名残である白い精が滲み、むちむちとした両の尻たぶのはざまにひそむ桃色のすぼまりは男の指による凌辱で中のひだをたっぷりと犯され、肉厚で皺の少ない入口はひくひくと浅ましいひくつきを繰り返す。その卑らしい姿を見つめながら金糸織のサーコートの下で下衣をめくり、自身のいきりたつものを兄の腿にすりつける。
「んうっ…!」
重く大きなソーの両足を抱え、ぶるっ…と露出した尻奥のすぼまりにむちゅっ…と充血した亀頭を押し当てる。兄のむちむちとした大きな肉尻の上に血管がびちびちと浮いた赤黒い巨根が杭のように押し当てられ、犯される女としての悲鳴をあげながらその逞しい杭が一気にずるんっ…!と兄の尻穴へと入っていく。
「ぐうッ…!痛い!ロキっ!ひっ!ひんっ!やめろッ!いたいっ…!!」
初めて味わうソーの肉穴は生娘でありながらも娼婦のようにむちむちとした肉ひだで肉根を包む卑らしい肉壺で、寄生する生物のように穴中にびっちりと肉棒を埋め込み、ひだひだをずりゅずりゅとこすりあげる動きが止まらなくなる。
「ひあっ!あっ!あっ!ああっ!」
「兄上…あにうえ…」
「ひうっ!やっ!やっ!やああっ!!」
ぱんぱんぱんっ!と激しい注挿音が女のように大きな兄の尻から響き、ついでどろっ…と竿の形にひろげられた桃色の肉の輪から白濁とした雄汁が垂れてくる。
「ひっ…!」
軽く中で出したことでよりぬめりで穴中の注挿が容易になり、初めて味わう雄からの中出しで心とは裏腹に兄の体が発情で熟れ、敏感そうな桃色の乳首が眼前でぶるんっ!とみだらに勃起する。それを噛みつくように吸い付きながら、ただひたすら獣の欲情でぬぽぬぽと腰を動かし、ソーの豊満な肉尻のはざまにむちっ…と隠された生娘の穴をひたすら勃起した肉棒でずんずんと卑らしく突きまくる。
「やっ…あっ!ああっ!!」
焦りの混じる淫声が不意に薄紅色の唇から熱く漏れる。痛みを訴えていた抗いの声は穴奥をずぽずぽと責めることで徐々に止み、ずるんっ…!と硬い亀頭が我が物顔でひだ奥をこすると完全に堕ちた証としてびくびくと全身をひくつかせながら、だらしない悦び顔を無防備にソーが見せてしまう。
「あっ!ああっ!あうっ!ああッ…!」
奥がいいのか。そうねっとりと問いかけながら執拗に小刻みにひだ奥を突いていく。
「んうっ…んっ…!んっ…!」
苦悩するかのように眉根を寄せ、瞼を閉じ、違うと弱弱しく叫びながらもひだ奥を突かれて豊満な肉尻をぶるぶると官能で揺れさせる兄の姿は食まれる雌以外の何ものでもない姿だった。観念させるように伸し掛かり、ひだ奥のしこりをぷるぷると卑らしく突きまくるとやがて否定の声も消え、穴奥を犯されるたび頻繁にソーの口から甘い雌声が漏れるようになっていく。
「あっ!ひんっ!ひんっ!」
大切な想い人を自分の雌犬に変えた興奮は予想以上のものだった。交尾の悦びを覚えた身体はどんな責めも甲斐甲斐しく受け入れ、その女のように大きな白い肉尻で雄の猛りをぬぷぬぷと鎮めてしまう。穴はせまく、熱く、だがいきりたった巨根もやすやすと受け入れ、中出しのための激しい注挿も中のむちむちとしたひだひだでごりゅごりゅと卑らしく竿をしごき、ねっとりと種が肉ひだにかけられ、穴奥に種付けされることをひたすら待ち続ける。
「あっ!あうっ!ああッッ!!」
兄の両の足首を強くつかみ、左右に大きく押し広げた状態で激しく腰を振り、敏感なひだ奥を犯す。
「ロキッ…!ロキっ…!あっ!あっ!あっ!んうううッ…!」
自分を求めるソーの甘い声に理性の全てがかき消されそうになる。
「あっ!あんっ!あっ!ああっ…」
ずぷずぷと大きな注挿音が立てながら、中の穴ひだがめくれあがるほどの浅ましい早さでソーのむちむちとした肉穴への抜き差しを繰り返す。白く大きな肉尻が何度もにじゅっ…と亀頭によって割り開かれ、卑猥な形をした勃起男根が肉厚な桃色の肉の輪をずぷぷぷっ…と押し広げ、中のむちむちの肉ひだを男の欲望のままにずりゅずりゅとこすられまくる兄がはしたない笑み顔で発情した雌声を漏らし続ける。
「兄上…」
自分のものになった女のように大きくむっちりとしたソーの真っ白な肉尻にひと際ずんっ…!と強く、固く太い杭を打ち込み、ひだ奥を駄目押しのように充血した亀頭で犯す。
「ひっ!ひんっ…!」
中で出すためにそのまま小刻みにぷるぷるとしたひだを突き、恥ずかしいほど大きなむちむちの肉尻に隠された肉穴をひたすら種付けの為にぱんぱんと男根で激しくほじり、射精のために大きく膨らんだ肉棒を肉しごきで熟れたソーの肉の輪でごりゅごりゅと性奴のように抜きあげ、兄の生娘だった初々しい穴への種付けをひたすら欲し続ける。
「ああんッ!!」
何度目かの注挿の後、びくんっ!と互いの身体が強く揺れ、あっ、あっ、と呆然とした声を漏らしながら兄が尻の中にたっぷりと種をつけられる。
「ひッ!ロキ…あついっ…!ひっ…ひんっ…!お前のものが俺の中ではじけて…ひだに熱い種汁がびしゃびしゃって…かかってる…っ」
男を知った"女"の顔でそう譫言のように兄が言葉を漏らす。興奮で乱れる吐息とともに最後の一滴まで注ぐことを宣言すると諦観が兄の顔ににじみ、むちむちとした女のように大きな白い肉尻が雄の中出しの卑猥な動きでぶるぶると執拗に挿入した竿で揺らされ続ける。
「あっ!ああっ……!」
ぶびゅっ!ぶびゅっ!と中で弾ける熱い種がねっとりとソーの初々しい身体にしみていく。こんなにも雄々しく勇ましい男が女のように私に犯され、ひだ奥にまで種をかけられ、凌辱されている。その事実だけでも興奮が増し、終わらぬ中出しのせいでぶちゅっ、と竿の形に広げられた桃色の肉すぼまりから種付け済みの雄汁が溢れ、その大きな肉尻をますます卑らしく交尾される雌穴として映し出し、中のひだひだに否応なくべっとりと私の白濁とした精がかかり、そのつやつやとした表面が中出しを知った受精具として赤みを帯びた桃色に変じ始める。
「あっ…」
最後の射精で官能の声がかすかに兄の唇から漏れる。
涙を浮かべたソーの眦に甘く口づけながらゆっくりと種付けを終えた竿を抜いていく。完全に抜き終えると安堵のため息が兄の口からこぼれ、汗で濡れた額を指でぬぐい、その健やかな額にも軽く口づけを落とす。
「…愛しているぞ、ロキ」
受精で息を乱しながら、ソーがそう言葉を漏らす。
「……」
兄弟としての親愛ではなく、恋人としての愛情の言葉に、やはりこれが夢であることを認識する。だが叶わぬ夢だからこそ堪能したい思いもあった。目覚めるまであとどれだけ時が残されているのか。名残惜しい気持ちで私もだ、と言葉を返す。朗らかな笑みが兄の顔に浮かび、奇妙に切ない心でそれを見つめると徐々に視界に靄がかかり、意識が薄らいでいく。この束の間の幸せを忘れたくはなくて想い人の手をつかむと労わるように暖かな掌が肌を撫でる。穏やかな幸せは陽光のようで、眠りの淵から浮上していく自身を最後まで暖かく包み込むのだった。
「………」
翌朝、目覚めたばかりの私に湯気を立てる熱々の塊肉が手渡される。
「もうすぐ年に一度の狩りの日があるだろう?昨夜大猪を狩る夢を見てな。これはいい兆候だと思い狩りにでかけたらこの通り、夢の通りになったんだ!」
呵々大笑する兄がそう機嫌よく話しながら自分に差し出した塊よりも更に大きな猪肉にかぶりつく。
「うん!美味い!!どうした?ロキも早く食べてみろ。料理長はやたらとやれ辛子だ大蒜だ、エイゼルワインをきかせた緑のソースだと香辛料を加味して調理したがるが新鮮な肉は素焼きが一番だと思わぬか?この野趣溢れる味…どんな料理よりも美味だ!」
「……」
ぷすぷすと燃え焦げる音を立てるまだ熱い肉の塊からは野趣溢れるというより溢れすぎた獣臭が漂っていた。朝食は白パンとエールで軽く済ませる自分にとって拷問のような食事であるものの、兄の好意を無下にもできず仕方なくもそりと手に持った肉を口に含む。
「………」
弾力があるというか、ありすぎる硬い肉が嚙み切っても噛み切っても口の中に残り、あぶり残しのあった猪の毛が歯に挟まり、ますます眉間の皺が深くなる。しかも表面は焦げすぎている癖に焼きの足りない中は生肉の部分もあり、それらすべてひっくるめて美味だとがつがつ食べ続ける眼前の兄をますます冷めた目で見てしまう。
「…………」
朝起きた時、初恋が成就した少年のように夢の内容を覚えていた自分にうかれたものだった。これはきっといい兆候だ、とそう思っていた。よもや官能的な兄との一夜を夢で堪能した自分に対し、兄自身は野生児の本能のままに大猪を狩る夢を見ていたなどと誰が思うだろうか。その上、正夢と信じて狩りに出かけ、邪な期待に胸を膨らませる自分に生焼けの猪肉を差し出すなどとは誰が予測できただろうか。
今頃、自身の予想では昨夜見た夢の内容を幾分ぼかしながら兄に伝え、惑うソーの男らしくも愛らしい顔を笑みながら見つめている筈だった。
だが実際は兄弟そろって猪肉にかぶりつく朝だった。何か違う。だいぶ違う。正夢だと思った自分を呪い殺した上に火あぶりの刑に処したかった。
「昨日あの夢を見た時にこう思ったんだ。あれを狩ってお前に食べさせてやりたい、とな」
恥ずかしげもなくそう兄が私ににこにこと語りかける。病弱だった子供の頃から成長した現在に至るまで、いまだにソーの優先順位は自分が一番なのだと思うと落ち込む心にも若干救いの光が差し込み始める。美味いかと笑顔で聞かれ、無言で頷きながらかじりついた肉を咀嚼する。甘やかな恋人同士とはほど遠い関係。兄は今日も凛々しく美しく、仕留めた獣肉以上に美味な身体を無防備に私の前で晒し続ける。自制は美徳であり、感情の起伏が少ない自分の心もまた、自身が好む部分だった。だがソーを目の前にするといつもそれらがあっけなく崩れてしまう。夢の中だけで我慢するべきか、大槌と同じくらい頭の鈍い眼前の男にすべてを晒し出すべきか。悶々と悩む自分にまるで齧歯類のように、頬の裏側いっぱいに猪肉を詰めた兄が満面の笑顔で笑いかける。
「ふふっ…やはり兄上は兄上だな…何も変わらない…」
「?」
「気にするな兄上。今はそのままでいいさ……今はね…」
謎めいた言葉にソーが軽く首を傾げる。大らかで陽気で暖かい兄。私の太陽、私のすべて。それを手に入れるのはまだもう少し先でいい。無垢なまま育った唯一人の兄弟を見つめながらそう私は思うのだった。