弟の復讐

わたしは第二王子としての積年を恨みをはらすべく復讐を企てた。
その復讐とは国家転覆でも第一王子抹殺でもなく、兄のソーをわたしの慰み者にするという計画だった。
なんという甘美な復讐なのだろう。想像するだけで身震いがする。あの王者然とした傲岸不遜なソーを私の奴隷にするのだ。太くたくましい首に枷をつけ、全裸にしたソーを四つんばいにさせ忠誠を誓わせる。小水を出すたびにくわえさせてもいいかもしれない。むちむちとした筋肉隆々の身体に汚水をかけ奴を徹底的に辱めるのだ。

元々兄のことは憎くはあったが、その見目は嫌いではなかった。きらめく黄金の髪、きらきらと澄んだ青い瞳、笑うと真っ白な歯がのぞき、大胸筋はたゆまぬ鍛錬のおかげで女性のようなむっちりとした盛り上がりがあった。あの胸襟を好きなだけ揉んでいいといわれたら多分永遠に揉み続ける自信がある。揉み続けるうちにむちむちと肥大した乳首をいじめて勃起したことをからかい、赤子のように吸ってもいいなら王族の位すらもう捨ててもいい。とにかく兄の性格は嫌いだったがその身体はまったく嫌いではなく、むしろ好ましかった。

そもそもこうした行動に私を駆り立てたのは兄を取り巻く情勢のせいもある。元々鈍い本人は少しも気付いてはいないが、ソーをよこしまな目で見る同性は多かった。歩く筋肉だるま、しかも金髪。異性愛者からみれば全裸の金髪美女が無防備にあるいているようなものである。脱ぎっぷりもよく、例の3人組たちと剣の腕を競ってはすぐにほてる身体をさますために脱ぎ始める。そうしてあのむちむちとした大胸筋を見せつけ、まぶしく光る金の髪をなでつけながら真っ白な歯でにこりと笑うのだ。心を射抜かれる者がいない訳がない。今までソーの親衛隊を見つけては壊滅させてきたが、アスガルドを狙う侵略者たちのように倒しても倒してもその数は増え続け、きりがなかった。壊滅させることが無理ならその憧憬の的を手に入れればいい。そうすればもう奴らを見かける度不快に思うこともない。兄を性的にいじめていいのはこの私だけ、そうなればこの荒ぶる心も少しは落ち着くと思ったからだった。

ちょうど今私の手には無色透明の液体が入った小瓶もあった。体調の不振を訴え、数日は目覚めぬほど深く眠れる薬が欲しいと嘆願した私に魔術に長けた母が作ってくれたものだった。
『あなたの不安が取り除かれるといいのだけれど…』
そういって私の頬を優しくなでたフリッガ。甘い、甘すぎる。近親者に甘い性格は確実にあの愚かな兄にも受け継がれているのだろう。

ともあれ目的のものを手に入れた私は誰にも咎められぬよう衛兵に変装し、兄の寝室へと向かった。毎夜理由をつけては酒宴を繰り広げるソーは今宵も浴びるように酒を飲み、今頃爆睡しているはずだ。奴の頑健な身体が壊れるくらい辱めてやる。そう思うと口元に浮かぶ笑みを消すことが出来なかった。








「お前は…たった十人…むにゃ…俺はその倍だ…」
きっと夢の中でも戦場を駆け巡っているのだろう。その好戦的な気性にあきれながら寝台で眠るソーに近付く。
「……」
無防備なその姿を見て無意識のうちに自分の喉がなるのが分かる。薄布が腰のあたりにまとわりついている以外、兄は何も身に着けていなかった。むっちりとした大胸筋の上に触れられるのを待つようにぷるんと尖る乳頭は濃い桃色で私はすぐにでもくわえたくなる衝動を抑えながらそっとソーに近付き、腰周りを隠す薄布をめくりあげた。幼馴染の男たちと今まで抱いた女の話で盛り上がることも多かった兄の陰茎はその経験を物語るように淫水焼けし、亀頭だけが艶々と赤かった。それなりの太さの肉棒の上にふさふさと金色の陰毛が生え、陰嚢の下にはむっちりとした女のように大きな白い尻たぶがあり、その狭間にひくひくとうごめく紅色の愛らしい肉穴があった。兄が寝た女の話をしたことはあっても男の話はしたことがない。つまり眼前の無防備に眠るこの男は同性に抱かれたことのない生娘だ。兄を貫通させ女にさせる。なんという魅惑的な復讐なのだろう。わたしは徐々に熱を持つ自分の肉棒が下衣を圧迫するのを感じながら、小瓶をとりだし、薄い金色のひげにおおわれたつやのある紅色の唇に指を充てた。すぐに薬を流し込むはずだったがどうしても触れたくなり、兄の肉厚な唇をそっと自身の下唇で噛んでみる。酒の味がする口付けだ。そう思いながらつうと舌で唇を舐め僅かに開かれた隙間に液体を流し込む。これで覚醒したソーによってムジョルニアで殴られることはなくなった。母がわたしに望んだ安らかで深い眠りを今ソーは体験している筈だ。下衣の前をくつろげ、長大な自身をでろりと取り出す。巨人族の末裔としての名残りはこの生白い肌だけではなく、生殖器にまでおよんでいた。華奢な異性の身体にこれを差し込むのは気が引けるが、この丈夫な体躯を持つ兄ならば大丈夫だろう。ぐっすりと眠る兄の重く大きな太ももを持ち上げ、むにりと無防備な紅色の肉穴を自身の眼前に突き出す形にさせる。


「ふふ…私の恨みをうけとるがいい、兄上」

そういいつつも強引な挿入で裂傷を負う兄が不憫で濡れた舌でむちむちとした肉穴に触れてみる。しわの少ない肉厚な紅色の肉の輪は挿入をまつようにひくついていて、くぱりと指でひろげるとうごめくぬめった肉ひだが穴の中に見え、生娘の穴だと思うと興奮で息が荒くなる。兄の女のように大きくむっちりとした白い肉尻に自身の顔をうずめ、舌でぬちゅぬちゅと肉厚な穴のしわをなめると安眠をむさぼっていた筈の兄の身体がびくりと震える。瞬時にあの忌々しいハンマーが現れるのではないかと焦りあたりを見回すと、頬を染め荒く息を吐く兄の顔が目に入る。意外と長いまつげがびくびくと震え、僅かに開いた唇からどこか甘さを含んだ低い吐息が漏れる。その顔を見ながらおそるおそる紅色のむちむちとした肉穴をまたにちゅりと舐めるとくっと、兄の精悍な顎があがり、甘くかすれた声が濡れた赤い唇から漏れる。その姿を見て自身の頬もまた欲望で薄赤く染まるのを自覚する。肛虐で感じるなどなんてはしたない男だ。そう思いながらむっちりとした処女の肉穴の中にまで自分のぬめる舌をずっぽりと挿入すると、ソーが見事な金髪を寝台の上にぱさぱさと散らせながら上気した肌でいやいやをするように身体をふるわせる。
「ふっ…くっ…あうっ…」
汗がうっすらと浮かんだ女のように大きな白い肉尻がむっちりとした紅色の肉穴に舌を挿入されずぽずぽとほじられる度にびくびくと上下に動く。この傲岸不遜なソーが、次代の王となる男が、肛門を犯されて感じているのは明らかだった。
「んうっ…んううっ…」
快感で曲げられた足の指が白い敷布をかき、波形のようにしわを作る。
兄の濡れた赤い唇からぽってりとした柔らかな舌がちろりとのぞく。
ソーの処女穴はその形も味も卑らしく、私は自身の指も使いながら貪欲にそれを犯し始めた。むっちりとした紅色の肉の輪を手でくぱりと開き、ぱくぱくと淫らにひくつく尻穴につうと唾液をたらし、濡れた指をいれにちゅにちゅとこすりあげる。腸道の奥にある豆のようなふくらみを人差し指の腹でさぐりあて、ねっとりとその淫豆をしこしことこすると眠ったまま犯されるソーの唇から人目をはばかることのない大きな甘い淫声が漏れ、ぶるん、と兄の陰茎がゆるく勃起する。私はたまらず兄の身体を横這いにさせ、眠るソーのむちむちとした大きな白い肉尻に自身の巨大な肉棒をすりつけた。
「兄上…なんて重くて大きな身体なんだ…この女のように大きな白い肉尻もむちむちとした肉穴も…その美しい黄金の髪だって…全部わたしのものだ…」
たっぷりと舌と指でぬちゅぬちゅと犯しほぐれた紅色の肉厚な肉穴に先っぽをひっかけるようにして勃起した巨大な亀頭を含ませ、ぐっと腰を押し付ける。
「んくっ…ああっ…!」
さすがに生娘の兄にこの大きさは酷だったようでソーの顔が痛みを感じたものになる。逃げようとするその隆起した上半身と大きな女尻に似合わぬ色気のある細腰を背後からがっちり掴み、ゆるく勃った陰茎を抜きながら腰を進めると徐々にではあるが私の長大な肉棒がずにゅずにゅとむっちりとした紅色の肉厚な雌穴に飲み込まれていく。
「あああっ…あうっ…!」
初めて男を受け入れ肛門を犯される兄の声が泣く寸前のように濡れてくる。意識を奪われたまま義弟によって女にされるアスガルドの第一王子。その境遇に同情しないでもなかったが、女のようにむちむちと大きな白い肉尻が処女穴すらぬっぽりと丸見えになった状態で尻たぶをひろげられ、血管が醜悪なまでにくっきりと浮かび勃起した巨大な肉棒をねっとりと熟れた肛門でくわえこむ様や、ずぽずぽと恥ずかしい接合音まで立てられながら白い雄の子種にまみれた穴の中の敏感な肉ひだを、にゅぽにゅぽと交尾される雌のように犯されるさまは眩暈のするほど扇情的な光景だった。

「兄上…あにうえっ…」
そう声を発しながら私は噛み付くようにソーの唇を自らの唇で奪い、ぴちゃぴちゃと水音を立てながら濃厚に舌をからませあい、兄の柔らかく肉厚な舌をたっぷりとあじわった。
「んうっ…んんっ…あうっ…!」
ソーの今や全身が性器のように敏感になった身体は口付けだけでも簡単に発情し、女としてくたりと私にその身を預けながら従順に陵辱を受け入れる。
「ふんっ…んうっ…んううっ…」
兄の口端からだらだらと交じり合った唾液が垂れ、太い首や金色のひげを汚していく。深遠の眠りについたまま雌として卑らしい体位で交尾させられ肉器としての喜びを植えつけられる哀れなソー。雄雄しい王子が女のように口付けされることを好むなど誰が想像できただろうか。背後からぶるんと勃起した大きく濃い桃色の乳頭をくにくにと揉むと私をぬっぽりとくわえた女尻がきゅうと男の肉棒をしめつける。そのまま短く甘いあえぎ声を何度も発しながら子種が欲しいかのように汗まみれの大きな肉尻をぶるぶるとふるわせる。兄の陰茎は今や腹につくほど勃起し、軽くこするだけで長いまつ毛にふちどられた瞼とくぱりと開いた鈴口から歓喜の涙をこぼし始めるほどだった。その様が愛らしくて盛り上がった胸板ごと勃起したむちむちの乳頭をもみしだき、ソーの性感を限界まで高めていく。
「ああ…兄上…あなたの肉ひだがぬっぽりと絡み付いて私のものがとろけそうだ…腰をとめられそうにないよ…」
何度も私の勃起した巨大な肉棒を受け入れた肉厚な紅色の肉穴は拡張でぬっぽりと男の肉棒の形に卑らしくひろがり、ぬちゅりと挿入された肉棒の動きにあわせてぷるぷると揺れる女のように大きく汗まみれの白い肉尻のはざまで、その熟れきった性器穴を視姦させるかのように私に見せつける。
「ああっ…んうっ!んうっんうっ…!」
寝顔は精悍な男のままなのに頬は艶かしく上気し、漏れる吐息はねっとりと甘い。片方の太ももを持ち上げられた下半身は接合部が丸見えで女として交尾させられているのが丸分かりの恥ずかしい姿のまま背後からずちゅずちゅと肉棒で生娘だった肉穴を攻められる。淫らなあえぎが頻繁にソーの唇から漏れ自分の劣情を煽っていく。
「父上に感謝せねばならぬな…兄上に王の座を譲ろうとしなければこの極上の名器をわたしが味わうこともなかったのだからな…」
できることならこのまま幾夜も睦みあっていたかった。それほどに兄の身体は魅惑的だった。誰よりも雄雄しい王子である筈なのに猛りきった男の肉棒を挿入されると、卑らしい雌声をあげながら淫汁まみれの肉ひだでぬっぽりと男根に絡みつく。雄による肛門への種付けをにゅぐにゅぐとねだる極上の交尾穴は今や完全にこの男が雌になったことを示していた。

「ソー…わたしの兄上…あなたはもう私の女だ…」
荒い息をつきながら男にしては柔らかな赤い唇を奪い、どこもかしこも太く逞しい汗まみれの大きな身体を抱きしめる。完全に雌になった兄の熟れきった肉尻をずぽずぽと犯すと淫らな熱が下腹部にたまり、ソーの生娘だったむちむちの肉穴に子種を植えつけるための腰の動きが早くなる。
「あっ!ああっ!あくっ!ああうっ…!」
「兄上…そのような愛らしい声を出して感じているのか…?意識のないままわたしに純潔を奪われ可哀想に…」
ほんのいたずら心と自身の中にうずまく憎しみの一部から兄を犯そうと画策したものの、こんなにも肉悦におぼれ、また抵抗するすべのないソーを不憫に思うとは想像だにしなかった。誰のものでもない黄金の輝きをはなつ男を手中に収めた満足感は感じていたが、抱けば抱くほど平時の兄と愛し合いたい気持ちが強くなる。

「わたしのソー…私だけの兄上……」
限界まで高ぶった欲望が瓦解し大きな渦となって私を襲う。激しすぎる肉棒の挿入の動きに耐え切れずおびえた声を無意識に出す兄に交尾する雄として無慈悲にのしかかり、鍛えられた細腰をぐっと掴み勃起した醜悪な外見の巨大な男根でずちゅずちゅとせわしない注挿をくり返す。強い快楽とともにひゅっと息を呑む音が自分の口から漏れるのを自覚しながら、大きくむちむちとした汗まみれの白い肉尻の狭間にひくつく肉厚な雌穴に自分の欲望をびゅくびゅくと注ぎ込む。
「あっああっ!あああうっっ…!!」
男らしくかすれた低音の、だが蜜のように甘い淫声がソーの濡れた唇から漏れる。どこもかしこもむっちりとした逞しく大きな身体をきつく抱きしめ、びくびくとふるえながら女として犯される兄の生娘だったむちむちの処女穴に腰をすりつけ、自身のけがれた子種をねっとりと何度も何度も植えつける。ソーの男根が触れられずとも雌としての強制受精によってあっけなくはぜ、大きな白い肉尻をふるわせながらぶびゅぶびゅとその淫汁を寝台に撒き散らす。


「はっ…くっ…」
陰茎の並々ならぬ大きさのせいか、受精は長く量も酷く大量で射精を終えてずるりと萎えた自身をぬくとぽっかりと私の勃起した肉棒の形にひろげられた兄の肉穴は女として陵辱されたことが丸分かりの恥ずかしい淫穴になっていた。たっぷりと男のかたい男根でぬちゅぬちゅといたずらされたソーのそのむちむちとした紅色の雌穴からは、ぶびゅりと種付けを終えた白くにごった子種がしみだし、肉穴の中のぬるぬるとした肉ひだはみな私の白い子種でぬぷぬぷに塗れたっぷりとけがされていた。
「んっ…あっ…んうっ…」
わたしは女として手篭めにした兄のそそがれた子種の感触に淫らにたえる広く逞しい肩に口付けし、そのまま緩く背後から抱き寄せた。初めて体内に種をつけられた腕の中の身体が落ち着くのをじっと待つ。滑らかな手触りの黄金の髪に好きなだけ口づけ、このまま私の熱を受け入れてくれた愛しい兄と眠りにつきたい気持ちはあったが、元来の悪戯心がむくむくと頭をもたげ甘やかな願望を阻害する。私よりも遥かに雄雄しい、だがどこか愛らしい顔は涙で濡れていた。感じるはずのない罪悪と行き場のない熱情がこの身を占めるのを感じながら自身の衣装を調え、寝台を降りる。兄よりも細い手でそっとその汚れた頬をなで、流れた涙のあとを指でぬぐう。いくら弟の邪心に気付けない愚鈍なソーでも、深い眠りから目覚めたとき、汚れ乱れた寝台と自身の白肌にいくつも残された口付けの跡、身のうちに残るそそがれた欲望に自分の身に起きた不運を悟るだろう。明日の朝、兄の顔を見るのが楽しみで仕方がなかった。すぐに犯した男がわたしだと気付くだろうか。おびえた青い瞳が閨事の相手を知り、頬を恥辱に染めるのだろうか。変化した衛兵の姿で自室に戻りながら愉悦の笑みを顔に浮かべる。身のうちを満たす暗い喜びが手に入れたものの大きさを表すようだった。








「もうしたのだほきほまえもたへるか」
「兄上、いつもいっているでしょう。食事中は口を開けるなと」
「ほうか」
そういってぶしゃっと汁を垂らしながら謎の食べ物の節を折り、よこそうとする兄に手を上げて拒否の意を示す。
「そんな肉か魚か木の実かそもそも食べられるものかも分からない野生的な外見の食べ物はいりません。ヴォルスタッグと狩りに出かけては怪しげなものばかり獲ってくるのはいい加減やめたらどうですか。先日ヘイムダルが三日三晩寝込んでビフレストの監視に支障をきたしたのはあなたの差し入れのせいでしょう」
「ふまいんだぞ」
「美味いかどうかは関係ないんです。兄上は黒く全身がどろどろと溶けかけた奇妙な獣だって羽をむしってうまいうまいと食べるじゃないですか」
ここに第三者がいれば私のこめかみにびきびきと浮かぶ青筋に恐れをなしたに違いない。翌朝期待した甘やかで危険な邂逅はいくらまっても訪れはしなかった。痺れをきらし駆けつけた私の前で鈍い筋肉だるまの兄はのほほんと食事をし、けろっと、本当のほんとうにけろっとした顔でうまいな〜とかいいながら醜悪な見た目のものをがつがつと貪っている。

「ところで兄上…その、…体調はいかがですか…?」
気を取り直し落ちつかなげにうろうろと食事をとるソーのまわりを歩きながらそれとなく探りをいれてみる。太く白い首筋に目をやるとしっかりと私がつけた所有の跡が残っていた。昨日の淫らな一夜がわたしの妄想ではないことが改めて分かりほっと息をつく。
「うん?そうだな。悪くはない」
その答えに膝下から崩れ落ちそうになる。頬を赤らめるとか、涙を青い瞳にうかべおびえた顔で私をみるとか、期待した展開はなにもなく、なんの肉かもわからぬ獣の骨をぷっと豪快に口から吹きとばす姿に次代の王が兄に決まった時以来の強烈な憎しみがふつふつとわいてくる。

「あの…寝台は汚れてはいなかったのですか…?こう…濡れていて妙な匂いがするとか…」
「寝台?ああ、そういえば朝目覚めて"よく寝たな"と呟いた瞬間に飲みすぎたせいで大量に吐いてしまってな。すぐに下女が始末をしてくれたのだ」
にこにこと笑う可愛らしい筋肉男の両のこめかみを左右から押さえてぐりっ!と押し潰してやりたくなる。
「さすがに酒は少し控えねばならぬな。起床早々腹もくだしてしまって散々だったぞ」
うんうんとしたり顔でうなずく兄の傍でぼうっと自身の意識がなくなっていくのがよく分かる。
常日頃兄の身体を丈夫だ、むしろそれくらいしか取り柄がないんじゃないかと思っていたが、まさかムジョルニアの素材である超金属のウルと同じくらい頑健だとは想像すらしていなかった。こうなればもう平時の兄を襲うしかないのか。触れた瞬間、私の細い体は魔法のハンマーに粉砕されるだろうが本懐がとげられるならそれもいいのか。ぶつぶつと病的に呟くわたしの傍で腹を満たした兄が椅子から立ち上がり、満足そうに唇をぬぐう。

「しかし珍しいなロキ、お前が俺を訪ねてくれるなんて」
嬉しそうにそういわれ、自分の頬が赤みを帯びるのがわかる。私の気持ちとは違う種類の感情だが兄もまたわたしのことが好きなのだ。ならばまたいつか、この黄金に輝く男をわたしのものにする機会もやってくるのだろうか。
「…すこし話しませんか?兄上」
すがすがしい朝の光を浴びながら問いかけると満面の笑みをソーが浮かべる。
ああ、やはりこの男がどうしようもなく好きなのだ。
そう狂おしい感情をみとめた私は皮肉げな笑みを口端に浮かべ、バルコニーへと兄をいざなうのだった。





END