ソアーベ 






「次の惑星までは、あと何日かかるんだ」
「この宙域でのワープ係数の制限速度が5だからな。まあ2,3日ってところだろう」
操縦席に座る俺に弟が静かに近付く。
「そうか。なら時間はあるな…」
意味ありげな手が自分の前腕に触れ、思わず窘める視線を相手に送る。
「ロキ」
僅かに微笑んだロキの美しい相貌に内緒だとでもいうように白い人差し指が唇に押し当てられる。
「――昨日もしたばかりだろう?」
呆れが声に混じる。宿敵であるサノスを追う航行の中で昨夜も弟に抱かれたばかりだった。ヨトゥンの男根は相手を狂わせる効果があるのか、自分の肉穴は頻繁にうずき、弟を求めるようになっていた。抱かれるとすぐに達してしまうし、まるで玩具のように長時間弄ばれてしまう。身体中が巨人の濃い精液でべどべとで、その状態でも激しく犯され続け、最奥に大量の種を植え付けられる。ひんひんとはしたない雌声を頻繁に漏らし、大きすぎる肉尻をぶるぶると揺らしながら種付けでも達する自分が酷くみじめで、事後は無意識に涙が滲むこともあった。くぱっ…、と弟の白い指に左右から種付け済みの肉厚な肉の輪を拡張され、受精でひくつく桃色の肉ひだとそのひだにたっぷりと白濁とした精液がかけられた姿。凌辱された体勢のまま、静かに涙を零す俺をロキは酷く喜び、種付け後の敏感な肉ひだを再度勃起した肉棒でズニュズニュとかきまわされ、ヨトゥンの"雌"として貪られ続けることもあった。時に横暴が過ぎる弟を叱りつければいい、とどこかで冷静な自分が囁きかける。だがその度に悪夢のような光景が蘇る。サノスによって殺されたロキの姿。赤く充血した目、鼻から流れる赤黒い血、生気を失ったその姿。あれを思い出す度、もう二度と大事な弟を手放したくないと思ってしまう。自分に与えられるものがあるならば、すべてを与えてやりたかった。


「ロキ」
呼びかけ、間近にある弟の紅い唇に自分の唇を押し付ける。驚いたように僅かに弟が目を瞠る。
「星雲が近くに見えるだろう?あれを抜ければ自動操縦に切り替えてもいい」
「優しいな、兄上。何かあったのか?」
脳裏に浮かぶ殺害されたロキの姿を咄嗟に打ち消す。
「別に何も――…ただ」
「ただ?」
「俺もお前が欲しいんだ。身体も心も…」
「兄上」
操縦桿を握る手の甲が冷やりとした手のひらに包まれる。頬に幾度か口づけがもたらされ、そっと言葉が紡がれる。
「もうとっくに捧げているよ。私のすべてを――…」
弟の言葉が温かな充足をもたらしていく。

眼前に迫る、無数の宇宙塵と星間ガスで形成された星雲は奇妙に歪んだ虹のようだった。宇宙船を操舵する自分の右肩に白い手が添えられる。その手に頬を一度だけ摺り寄せ、巨大な星雲へと船は呑み込まれていった。