"眉目麗しく、丈高く、足も胴も腕も形よく整い、黄金色の小さく巻いた髪、晴れやかな長面の顔(かんばせ)、高く座り良い鼻――。"
まるで物語に出てくる若殿のようじゃないか。
兄の隣に並んだ大柄な男を見てそう考える。名もなき小国からやってきた新兵の若者。陽の光をたっぷりと浴びた浅黒い肌は健康的なまでに艶やかで、笑うと愛嬌のある笑みとともに真白い歯が唇の隙間からちらりと覗く。
『中々見込みのある奴でな。長剣だけではなく、両手剣や長弓、ピルラ(重槍)やピラ(投げ槍)もすぐに扱えるようになったんだ』
そう嬉しそうに二人だけの晩餐で話していたソーの姿を思い出す。兄は決して相手によって態度を変えたりなどはしない。貧しき者にも富める者にも同じように接し、大らかな愛情とともに王子としての役目を果たしていく。
ソーよりも縦横に大きな身体が屈み、兄の顔に自分の顔を近づける。武術に関する指南でもしているのだろう。身振り手振りを交えて話すソーの顔は生き生きとした活気に漲り、閨での淫靡さをまったく感じさせないものだった。
本人に自覚はないのだろうが、兄の肌は太陽の下でも驚くほどに白い。軽鎧から覗く、鍛え上げられた肉付きのいい上腕がふるふると揺れる度、まぶし気な眼差しで傍らの男がそれをそっと眺めていく。
"兄上はあの大きな尻に背後から挿れられるのが好きなんだ"
そう囁いてやれば相手はどんな顔をするだろうか。自分も味わいたいと浅ましく喉を鳴らすだろうか。誰よりも勇ましく雄々しい、私だけの兄。秘密の恋人。関係を隠すことを望んだのは私だった。公にすることで元来の明るさや勇ましさを失って欲しくはなかったからだった。だがその英断は今は逆に自らの枷になっているように感じていた。あの兵士の眼差しは誰のものでもない者に対する憧憬だった。不敬を起こせば死罪が待っている。だが愛人である騎士に手を差し伸べる貴婦人のように、兄からの誘いがあれば――。あの榛(はしばみ)の瞳はそれを望んでいるようにも思えるものだった。
「ロキ!」
中庭に現れた私を嬉しそうに兄が出迎える。近付くと鍛錬でにじんだ汗の香りが鼻を掠め、情交の時に嗅ぐ香りと同じそれがより私の心を掻き立てる。四つん這いにさせ、交尾する雌犬のような姿で交わらせたこともあった。ソーは決して私を拒絶しない。何度抱いても初夜の花嫁のように初々しく頬を羞恥で染め、どんな淫らな体位も受け入れ、雄の欲望のままにたっぷりと犯される。中出しはがっちりと男に拘束された状態で種をつけられることを好み、荒々しくひだ奥にぶびゅぶびゅと射精すればするほど嫌がりながらも穴奥はとろけ、ひだに沁みていく雄汁にいつもうっとりと深い蒼の瞳を潤ませてしまっていた。
ソーの側にいた男が無言で跪き、私に向けて恭しく頭を垂れる。控えめで、実直で。主命に従う良い兵士となる条件がこの若者にはすべて備わっているかのようだった。
「兄上…」
兄の幹のように太く逞しい腕に触れ、自身の淫靡な欲を気取られない程度に軽く撫でる。私に会えて嬉しくて堪らないソーはにこにこと破顔したままだ。私よりも遥かに大柄な体躯なのに、屈託ない子供のような愛らしい兄。いつまでも憧憬の対象である強く美しい雷神。いっそこの国の者が訪れることのない場所へ連れ去ろうか。死者の国・ニヴルヘイム、黒妖精の国・スヴァルトアールヴヘイム、巨人の国・ヨトゥンヘイム。兄はきっと闇と氷に覆われた世界でも尊く輝き、私を照らす太陽になるだろう。荒れ果てた地で互いに寄り添う姿を想像する。それだけで、暗い歓びが自身を覆いそうになる。
「すまないな、ロキ。何か俺に話があるのかもしれないが、まだ訓練の途中なんだ」
武芸の才がない自分に配慮し、極力ソーが鍛錬の場面を私に見せることはしなかった。今日もあまり見せたくはないのだろう。気まずげに節ばった武骨な指ががりがりと自らの頬を掻く。
「いいさ。ただ通りかかっただけなんだ」
携えていた数冊の魔術書を見せ、肩を竦める。じゃあ、また夜に、そう告げると同じ言葉を返される。
自身がどうなるのかもまだ知る由のない兄は戦士の顔に戻り、傍らの兵士に指南を続けていく――。
「あっ…!ロキ…ッ」
夜特有の静かな冷気に満ちた回廊を抜け、ソーの部屋に入る。相手が言葉をかける間も与えずに唇を奪い、忙しなく相手を求める。
「んっ…!」
寝衣の裳裾をめくるとむちむちと女のように太く白い二本の腿が現れる。戸惑いで薄赤く染まった耳殻に口づけ、自分の望みをそっと耳孔に注ぎ込む。
「……」
一瞬の間が置かれ、こちらに背を向けた状態で兄が扉にもたれかかる。足を開くように命じると肩幅ほどに両足が開かれる。高揚する心とともに寝衣をめくり、腰布をむしりとるようにして剥ぎ、むちっ、と卑らしく熟れた肉穴を隠した大きな肉尻をぶるっ…と露わにさせる。闇夜に鳴り響く、遠い鐘の音は朝課を告げるものだった。二本の指でにち…っ、と皺の少ない桃色の穴ひだを剥き出しにし、もう腸液でぬるぬるになりはじめた中のはしたない肉ひだをのぞき込む。
「兄上…もうひだひだがひくひくとひくついてるな…私の亀首が欲しくてぱくぱくと穴の奥が収縮しているぞ…」
「っ……」
多淫でもあるソーの肉付きのいい身体は交尾を重ねるうち、完全な雄の肉器と化してしまっていた。穴は狭くきつく、それでいて極上の締め付けで長大な男根をずにゅずにゅと根元までくわえこむ。腸道は常に私の勃起した肉竿の形にぐぽりと卑猥に開き、ひくひくと物欲しげに穴奥をひくつかせ、欲情した私がひだ奥を亀頭で激しく突くと涙目で笑みながらぷしゃっ!と兄自身の竿から雌として潮を吹くまでになってしまっていた。
「仕方ないだろうっ…お前が…いきなり襲うから…ッ」
つんつんと亀頭で尻たぶの狭間をなぞるとあっ、あっ、と甘く短い悲鳴をあげながら背中越しに抗議の声が向けられる。もうそろそろか。そう考えながら手のひらでびくびくと震えるソーの白い尻たぶを撫でさする。人気がない筈の深夜の通路に硬質な靴音が響き、扉に背を向けた兄の身体がびくりと強く揺れ動く。
眼前の扉が何度か控えめに叩かれ、外見同様に魅惑的な低音の声が流れてくる。
「王子、私に所用があると聞いて参りました」
「いや、おっ、俺は呼んでいなッ…」
ねっとりと甘く耳朶に噛みつきながら雌にしたソーの身体に伸し掛かる。肉の輪は入り口は生娘のように頑なだが、一旦挿れてしまえば熟れきった女のように寛容だった。
「あっ…やあっ…」
扉の向こうには聞こえぬほどの小さな悲鳴を兄が漏らす。ずんっ!!と部屋に響くほどの大きな結合音とともにソーの肉穴を一気に犯す。
「ひっ……!!」
「どうされました?王子。どこか具合でも…」
純粋に心配する声がかけられる。
「なっ、何でもない。んっ…うっ…!何でも…ないんだ…っ」
第三者の前で兄を犯す興奮で肉穴の中の自分の男根がぶるんっ!とはちきれんばかりに勃起する。女のように大きく豊満な白い肉尻を背後からむにりと両の手でわしづかみ、くぱっ…と左右に尻たぶを恥ずかしいまでに広げ、敏感な穴ひだをごりゅごりゅと亀頭でこね、肉厚な桃色の肉の輪の入り口から男根の形にぐっぽりと開いた腸道、ソーの一番攻められると弱い部分であるひだ奥のしこりまでもを執拗にずりずりと犯し始める。
「あっ!いやだっ!あっ…あっ…!!」
暴漢に襲われる貞女のように、相手に気取られぬよう控えめに漏らす悲鳴がたまらなかった。だが心の嫌悪とは裏腹に、肉穴は常よりもきつくきゅうきゅうにしまり、ずぷっ!ずぷぷぷっ!と強引に勃起した肉棒が貫き、尻穴を浅ましいまでの早さでずにゅずにゅと執拗に犯すたび、雄の男根に屈した兄の顔が雌顔に変化し、肉悦の証である甘い吐息とともによだれまみれの紅色の舌を肉棒の突きにあわせてぶるぶると唇からはみ出させる。
「王子、あなたの侍女から言付かって来たのですが…私の思い違いだったようですね。申し訳ありません」
「いっ…いいんだ。んっ…んっ…気にしないでくれ…ッ」
べったりと私に伸し掛かられたソーの肉尻が何度も勃起した男根をくわえたまま上下に揺れ、ぶびゅっ…とはしたない雄の種汁まで尻穴から垂らし始める。
「王子…身分の卑しい私が言うべき言葉ではないのですが――…身命を賭してこのアスガルドと貴方をお守りします…」
そう言葉を告げると遠ざかる靴音が響き、徐々にそれが小さくなっていく。
まるで愛の告白だった。だがこの兄には、例え素面の時でも男の切ない想いが届くことはないだろう。ただ純粋に配下としての思慕を寄せられたと、そう捉える筈だった。
「んっ…!あうっ!ああっ!あああっ!!」
相手が去ったことでよりソーの声が大胆になり、はしたないほど大きな肉尻をぬぽぬぽと、怒張したいちもつで上から攻められながら甘い悲鳴を漏らし続ける。
「やっ!あっ!あっ!やあっ!やああうッ…!」
赤黒い竿にびっちりと浮かんだごつごつとした血管で桃色の肉穴をずりゅずりゅとこすりあげる。
「太いっ…太すぎ…るっ!あっ!あんっ!ああっ!!」
甘い悲鳴をあげながら兄が根元まで竿をくわえきった姿でずぽずぽと背後から大きな白い肉尻をはめられまくる。
「あっ!あっ!あッ!」
ずぷっ!ずぷぷぷっ!と犯されるたび悦びできゅんきゅんと豊満な肉尻のはざまにある肉の輪がいちもつを締め付け、中のびらびらとしたひだを好きなだけ勃起した雄の竿でごりゅごりゅとしごかれ、より腸道が卑猥な肉棒の形ににちっ…と変じていく。
「やっ!やあっ…!!」
ぐりゅっ…!!と種をつける為に深く伸し掛かり、赤黒く充血し、肉かさが欲情でびんびんに外向きにめくれあがった亀頭でずりゅんっ!とぷるりとしたひだ奥を強く擦りつける。
「んうううううッ!!」
女の肉芽と同じくらい感じてしまうそこを激しく攻められたソーに逃げ場はなかった。扉にもたれかかったまま、大きな嬌声とともにぷしゃっ!と水しぶきのように肉竿から淫蜜を噴き上げ、肉尻をがっちりと捉えられ動けない状態でずりゅッ!ずりゅッ!と尻奥にある突起状のひだひだを湯気が出るほど小刻みに執拗に勃起した男根で犯される。
「あうっ!あッ!あッ!あうんっ…!出してくれッ!ロキっっ…やっ…あっ…!たっぷり…出して…ッ」
男に中出しされる快感を仕込まれた兄がひだ奥をぬぽぬぽに犯されながら懇願してくる。大きな白い肉尻が物欲しげに竿をくわえたままぬちぬちと揺れ、きゅっ…!きゅっ…!と娼婦のように緩急をつけて肉厚な桃色の肉の輪で挿入された男根を締め付ける。
「ロキッ!ロキっ…!!」
自身の名を呼ぶ声を心地よく聞きながら、がっちりとソーの腰を背後から捉え、ひだ奥をあさましい早さで何度も突き、雌として服従した兄のびっちりと男の竿に絡みつくひだひだを堪能する。やがて甘い悲鳴とともに女のように大きな肉尻が眼前でぶるりと揺れ、びゅくびゅくと濃い種が兄の尻穴に注がれていく。
「あっ!あっ…あっ…」
いつも種をつけられる時のソーの顔は堪らなかった。少し悔し気で、ぞれでいて淫蕩な雌の悦びにも溢れていて。豊満な肉尻を子種を流し込まれるたびぶるりと震わせ、あんあんと喘ぎながら雌の悦び顔で種付けされる兄を眺めながら、好きなだけ射精を続けていく。張りのあるたぷたぷとした肉尻が男の欲望を出し尽くす肉便器として存分にずぼずぼと使われ、年輪状の中の桃色のひだひだにじわっ…、じわっ…と濃い種汁がしみ、より貫通済みの淫穴にされ、淫らな雌畜と化していく。
「あっ…うっ…」
大量の射精の後、湯気やどろどろの子種とともにぬぽんっ…と萎えた肉茎を抜く。同時に激しい情交に疲弊しきったソーの身体が糸の切れた人形のように頽れ、どさりと硬い石床に倒れこむ。
暫くは今夜の悪戯に対する叱責を受け続けるだろう。この甘美な身体を味わうことも長く途絶えてしまうかもしれなかった。
あの男を呼んだことで自分は何を確かめたかったのか。何があっても、どんなに魅力的な人物が兄の傍にいても、私へのソーの愛情は変わることはない。何か月もの間、抱えていた愚かな不安が自身への嫌悪へと変じていく。
何故愛し合っていても時折、心が苦しいのか。悪しき予感が私を苦しめるのか――。
どうしても離したくない者の手に触れ、そっと握る。情交で汚れた恋人の身体を清める前に今一度、私は兄の唇を奪うのだった。