17 Crimes
「ロキ、おい、起きろ。お前がそこにいると俺が眠れないだろう…?」
民達の意見を纏めた嘆願書を手にし、自分に割り当てられた部屋に戻る。岩で作られたコーグはああみえて器用な異星人で、サカールで飲んでいたオレンジ色の温かいお茶を就寝する俺に持たせてくれた。極彩色のシーツがかけられたベッドの上には会議の途中で退屈だといって退室した筈の弟の姿。起こそうと身体を揺すると煩わしそうに手を払われる。
「まったく…」
溜息を吐き、夜着に着替える為に上半身の胴鎧を脱ぐ。自分の胸元に赤い痕があるのが見える。弟の告白を受けるのは何度目になるだろう。すべて断ってきた筈だった。だが完全に拒絶した訳ではなかった。幾度かは受け入れ、幾度かは拒んだ。昔の、幼少時の仲睦まじかった時代の弟が取り戻せるのではないか。いつも愚かな一縷の望みを抱いてしまう。弟は時折興奮するとヨトゥンの荒々しさを見せることがあった。頑丈な自分でなければ、華奢な女であれば、彼女達を壊してしまっていただろう。行為の激しさで血が滲むこともあった。事後気まずげな顔で謝罪の代わりに抱きしめてくる弟を見ると胸が痛くなる。自分で自分を制御出来ない部分があるのだろう。どんなに忌まわしく思ったとしても自分に流れる血を断つことは出来ない。どこかで苦しんでいるのではないか。そう思うと、その不器用さすら酷く愛おしかった。
「…どうしてもっと広い部屋にしないんだ?」
背後から声がかけられる。下衣を脱ぐ手が一瞬躊躇で止まる。だが気にせず上半身同様、下半身も何も身に着けていない姿になっていく。
「俺にはこれで十分だ。部屋が十分に割り当てられていない者達もいる。俺だけ広い部屋を使う訳にもいかないだろう」
「さすがだ。兄上。王になる者の度量はやはり広いな」
いつも通りのからかう声がかけられる。それに鼻を軽く鳴らして答え、用意された夜着に手をつける。
「お前ももう遅いんだ。部屋に戻れ」
「いつも思っていたんだ。この狭いベッドの上だとアンタも私も上手く動けない」
弟の履いている黒いブーツが床に着く音がする。
「たまには立ったままするべきじゃないかってね…」
「俺は疲れてるんだ。今日は帰れ」
「折角こうして仲睦まじくなったのに、私を拒否するのか?残念だよ、兄上…」
少しも残念だと思っていない声音で話しかけられる。背中に冷やりとした指が、そうして俺の臀部に弟の下半身が押し当てられる。
「兄上、知っているだろう…?私を本当に受け入れてくれているのは兄上だけだ…」
「……」
「だから拒まないでくれ…」
弟の常套手段だ。自分を憐れに見せ、同情を誘う。何度裏切っても傷つけても、俺が手を差し伸べると分かっている。
嫌な奴だ。
思いがそのまま言葉として出ていたのだろう。背後で微かに笑う気配があった。
「んっ…ん…ッ…」
ぐにっ、ぐにっ、と両の乳頭を指で強く引っ張られる。ぶるんっ、とすぐに勃起して桃色の肉豆が弟の指の中で卑らしく膨らんでしまう。綺麗に整えられた爪がぐにぐにと入りたそうに乳穴をほじる。穴という穴はすべて弟に犯されてしまっていた。酷く太くて長い肉棒がずるん、と音を立てて俺の腸道に挿入され、そうして最後は孕むほどの量を最奥に植え付けられる。ヨトゥンのペニスが中で射精を始めるといつも王としての自分も、雷神としての自分も、愛する女性がいた自分も全て掻き消えてしまう。ただ弟を愛する自分だけが、過剰なほどに与えられる快楽の中で残されてしまう。昔はこんな遊び方はしなかった。両脚を開き、弟を受け入れひたすら腰を振る。まるで喧嘩するように荒々しく唇に噛みつき、弟の種で受精する感覚をびくびくと悶えながら味わい続ける。弟はある日、俺を抱きながらサカールの闘技場で切られた俺の髪の一部を持っていると告白した事があった。地球のライフモデルデコイのように俺の分身を作り、時折遊んでいるのだとも。きっと分身の俺は傷つけられ、犯されているのだろう。自分の欲望を完全に制御することは出来なくとも、ある程度は出来る。だが一切制御しなければ、どういう交合を味わわされるのか。弟は俺に対して歯止めを欠けている部分をその分身を使い、解放しているのかもしれなかった。
「あっ…あっ…」
ゆっくりと、だが確実に弟の長大なペニスが入ってくる。ある時から挿入を拒むのは止めてしまった。拒むとそれだけを弟を興奮させることになる。そうなると翌日の公務に支障が出るほど手酷く抱かれてしまう。
「ロキ、支えになるものが欲しい…」
首筋に噛みつくようにして弟が口づける。白い指が鳴らされると部屋の端に置かれてあったサイドボードが一瞬で眼前に現れる。自分の腰ほどの高さのそれに広げた両手を載せ、更なる挿入に耐える。
「兄上と一緒で、兄上の"入口"はとても頑ななんだ…」
「んっ…!」
みちみちと慣らされていない肉の輪が弟の勃起したペニスの形に拡張される。何度も貫かれた身体は痛みと僅かな期待を自然に拾ってしまう。
「ああっ…」
「すぐに中がとろけてくる癖にいつも生娘ぶって…」
慣れた仕草でずんっ…!と強く長太い肉茎を挿入される。やけどしそうなほどに熱くて、太い肉筋がびっちりと浮いたヨトゥンの男根。柔らかい自分の淫肉を押し広げられた瞬間、無意識に身体が震え、言葉にならない甘い吐息が漏れてしまう。
「兄上は本当に立派だよ…希望を忘れず皆(みな)に接して…太陽のように明るくて温かくて…」
ずちゅっ!ずちゅっ!と音を立てて激しくペニスを抜き差しされる。重量のある自分の肉尻が犯されることでびくびくと揺れ動く。
「夜は娼婦のように私に腰を振っている癖に…昼間のアンタはまさに聖人だ…」
「あっ!あっ!ああっ…!あっ…」
快楽を拾う様に調教された身体が歓喜に震え、サイドボードに爪を立ててもだえてしまう。
「んっ…!んんっ…!」
ずぷっ、ずぷっ、と抜き差しする速度が早くなる。痛みはあるのに中の肉ひだを激しく犯されると感じてしまう。最奥までぎちりと長大なペニスを埋められ、そこからずりっ、ずりっ、と年輪状のひだひだを小刻みにしごかれ、大きな声が漏れぬように唇を噛みながら激しく身悶える。
「んっ!ああっ!あっ!あっ…!」
徐々に甘い吐息が漏れる声に混じっていく。無意識にぶるぶると女のように大きな自分の肉尻を揺すってしまう。ぱんっ!ぱんっ!と興奮したロキが激しく腰を打ち付け、弟の濃い下生えがざりっ…!と自分の肉の輪にすりつけられ、それすらも感じて熱い肉棒をくわえこんだ自分の肉ひだがびくびくと痙攣してしまう。何度も亀頭が見えるほどとろとろの肉穴からヨトゥンのペニスが引き抜かれ、引き抜いた時と同じ荒々しさで押し込まれる。びくびくと震える俺の脚の間から弟の精液がぼたぼたと零れ落ちていく。もうすぐ何も考えられなくなってしまう。
ただ弟を愛する雌の家畜に変化してしまう。奴隷としてたっぷりと自分の豊満な肉尻で雄のペニスを慰め、主の子種を漏れ出るほど注がれてしまう。
「あっ!ああっ…ロキっ…ロキッ…!」
己の陥落を示す様に弟の名を呼ぶ。頭を強く掴まれサイドボードに押し付けられる。金属の眼帯がその表面にぶつかり、衝撃とともに鈍く重い音を立てていく。
「ああっ!あっ!あっ!あっ!」
伸し掛かったロキが更に激しく俺を犯す。
弟は愛憎から俺を犯すこともあった。どうして私を受け入れるんだ、と俺を罵ることもあった。
弟だからだ。そういうといつも悔し気な顔をした。想定していた言葉を聞きだせたとも、聞きだせなかったとも取れる表情だった。自分達や周囲が考える以上に、弟との絆は複雑なのかもしれなかった。いつか俺をロキは裏切り、去っていくだろう。そうしてまたある日、何食わぬ顔で戻ってくるだろう。弟にとって自分が還る場所なのだとしたら――。そう考えると、無意識に甘い声が漏れ、最奥まで挿入された長大なヨトゥンの男根をにゅりっ…と中の肉ひだで卑らしく挟み込み、ヌプッ、ヌプッ、とはしたなく己の淫肉で勃起したそれを抜き差ししてしまう。弟が嘲り、喜ぶ声が聞こえてくる。
「あっ…!んっ!んっ…!」
男娼のように貪欲に腰を振り、快楽を貪りながら、サイドボードに載せた自分の手の間近にある白い手の甲に口づける。すぐに頬に冷やりとした唇が押し付けられる。ロキが微かに何かを呟いたような気がして耳を澄ます。だがその囁きを確かめる前に酷く熱い奔流が俺の腸道を犯し、快楽とともに俺の意識は沈んでいくのだった。