Rotten to the Core





「ソー、何故そこに布が垂れているのですか」
「ん?」

ある日、人間界を学習中のヴィジョンにそう指摘されたのは俺の脚衣だった。股間を覆う長い前垂れにヴィジョンは興味を持ったようだった。
「ああ、これは単純に武具としての部位保護だ。確かミッドガルドにもあっただろう?なんだったかな…ほら、中世の…」
「16世紀に現れたブラゲットですね。その部分を装飾化し、誇張したものが広まりましたが不謹慎だとの批判が高まり、世紀末には廃止されました」
「ああ、そうだ。それ」
さすがは物知りだな。そう褒める自分を何故褒めるのかというようにヴィジョンが小首を傾げる。
「つまり今、貴方の股間は保護されているということですね」
「ま、まあ、そうだな…」
昼日中からする話ではないものの、知識を貪欲に吸収しようとするヴィジョンの姿は好ましく、つい色々なことを教えてしまう。

「そうであれば、ソー。こうすると今の貴方は無防備なのですね」
「ん…?」
ヴィジョンに対する被験の場として与えられたスターク・インダストリーズの研究室の中でぺろっと自分の前垂れがめくられる。
「……」
無防備かといわれれば無防備だが今は戦いの最中ではない。しかも他に人がいない場所とはいえ、同性にめくられて居心地の悪さしかない。
だが純真なヴィジョンに怒る訳にもいかず、固まったまま静止してしまう。
「下半身がずいぶんと太いんですね、ソー。日頃の鍛錬の成果でしょうか」
そういいながらふにふにとヴィジョンが前垂れをめくられたままの俺の太ももをさする。
「臀部もこんなに大きくて…女性なら安産型というのでしょうが、男性の場合はなんというんでしょうか」
「あっ…!」
動きやすいように軽くしなやかな素材で作られた薄手の脚衣の上から感触を味わうようにふにっ…と臀部を揉まれ、思わず妙な声が出てしまう。
「…こうされると弱いのですか?ソー」
「あっ!駄目だ!ヴィジョンッ!んっ!んうっ…!!」
自分の制止を無視してむにむにと重量のある尻肉がつかまれる。
その刺激に耐えきれず、びくびくと震えながらヴィジョンの逞しい胸元にしがみつく。
「あっ!あっ……」
初めて味わう刺激だった。人工皮膚に覆われた赤く大きな手に自分の肉尻を揉みこまれると熱い吐息が幾度も漏れてしまう。
「はっ……」
「あなたには前だけではなく後ろを守る武具も必要ですね…」
がっしりとした重みのある身体が自分を抱きすくめ、黄金に光る髪を撫でさする。
「ただ私といる時にはそれは必要ありません。私があなたを必ず守りますから…」
ファンドラル顔負けの気障な言葉を囁かれながらそっと唇を奪われる。誰もいない研究室の中でそのまま全てが奪われることも知るよしもない俺は、瞳を熱で潤ませながら、淫らな心地を与えるヴィジョンの手の感触を味わい続けるのだった。