砂漠は暑い。 360度どこを見ても乾いた砂だけの、死の世界。 砂の海を抜ける風は熱く、生きているものの水分を根こそぎ奪っていく。 灼熱地獄の砂漠を行くには、それなりの準備は必要で、経験も要る。 商人や盗賊でさえ死を覚悟する場所。方角を間違えるだけで死の扉が簡単に開いてしまう灼熱の大地。 そんな…… 紙一重の死が待つ、広大な砂の海を渡って行く小さな子供がいた。 ジョーノだ。 『愛しき…4』 はぁはぁはあはあ… 暑い… ジョーノは足を止めると、雲ひとつない真っ青な空を見上げる。 じりじりと照りつける真上にある太陽は、王宮で感じるよりも数倍大きく見え、それだけでジョーノの気力を奪い取っていった。 暑いながらも、日光から逃げる場所がある王宮と違い、ここは日差しを遮るものなど何もない。目の前に広がるのは、生命の欠片さえ見つけられない、砂の山と岩の塊だけ。 「神殿…まだ遠いかな…」 ジョーノは腰に巻きつけている麻の袋に手をそっと回した。 こりりと指先に感じる硬い感触。 それは神官さまが使う大切な呪具の一つらしい。中を見ることは許されていないが、ジョーノの命よりも大切なものだとラーラに教えられていた。 今朝、朝食もそこそこに、西の神殿へこれを届けるように仕事を言いつけられたジョーノは、教えられたとおり砂漠をまっすぐ西へと進んでいた。 ラーラから『2時間も行けば着くから』と説明を信じて疑わないジョーノは言われた通り2時間以上歩いている。しかし、一向に神殿は見えてこない。それどころかいっそう深くなる砂漠は終わりが見えず、ジョーノの中に漠然とした不安が募ってきた。 焼けた砂は熱くて、小さな足を焼いていて、簡単に布を巻きつけただけの足は、裸足同然で赤くなっている。 それでもジョーノは砂に足を捕られながらも懸命に前へ進んで行った。 ラーラの言う『2時間』が実は『馬の足で2時間』だということをもちろんジョーノは知らない。 「はぁ…はあ…はあ…はぁ…」 とうてい出来ることの不可能な無理難題を、ジョーノは柔らかく焼けた砂に足をとられながらも、懸命に前に進んでいく。 全ては麻袋に入ったものを神殿まで届けるため。 それだけのためにジョーノは砂を一歩一歩、踏みつけていった。 それからどのくらい進んだのか、ジョーノは少し大きめの岩場に影があることを見つけると、引き寄せられるように岩陰に潜り込んでいく。 少しくらいなら休んでもいいだろう。 ジョーノは後ろめたさを感じながら冷たい岩肌にもたれ、大きく深呼吸をした。 「ちょっとだけ…休も」 慣れない砂漠に、歩き続けた足は棒のようになっている。足に巻いた布は擦り切れていてほとんど役にたっていなかった。 赤くなった足を擦りながら、ジョーノは眉を顰めた。 水も、食べ物も、日よけさえ持たされず、まるでちょっとそこまでのお使いのようだと思っていたのに、まさか砂漠の真ん中で迷子になるなんて思っても見なかった。 360°変わることの無い景色に今はもう、どこが西の方角なのか分からない。かといって自分が通ってきた足跡も砂にまぎれてしまっていて、帰り道さえも分からなくなってしまっていた。 「どうしよう…どうしたらいいの……」 広大な砂漠にたった一人放り出され、一体これからどうすればいいのか。 大人でも竦んでしまうむき出しの自然の大きさなんて、ジョーノは経験したことが無かった。 ……もし、迷子のままでいたら……どうなってしまうのか… 殴られる暴力の先にある恐怖とは、質の違う何もない先にある死の形。白く滲んだ世界が黒く塗りつぶされていくようだ。 その強烈な恐怖に大きな瞳に涙が浮かんでくる。 「、ぅえっ」 それはすぐに一杯になり目蓋から零れ落ちて、乾いた砂に落ちていった。 「、ぅ…えっ、こわ、ぃ、よう…」 頬を流れていく涙は、重力に引かれ砂に吸い込まれていく。しかし、乾いた砂によってすぐに蒸発していった。 濡れては乾き、また濡れて。 意味の分からない自然現象を霞んだ視界に収めつつ、泣いても何の解決にもならないと頭の端で理解しつつも、ジョーノは涙を止められなかった。 「、、んっぇっ…ぐっくぅ、」 岩影にぴったりと身を寄せて、膝を抱えて一人泣き続けていると、ふいに人の気配がした。 「ぇっ…!?」 唐突に現れた気配に、ジョーノがハッと顔を上げるとこちらを見下ろす3つの視線。 「………だ……っれ?」 泣いていたためにしゃくりながら出た声は裏返っている。しかし、そこに安堵感が混じっているのも事実だ。 一人ぼっちの怖さは確実に無くなった。 「…ぉじ、さん?」 だからといって、その視線の主はジョーノの助け手になるとは限らなくて、にやにやと細まった三日月のような目に、ジョーノは思わず、後ろへずり下がってしまった。 王宮にいる兵士達と同じくらい、男達はたくましい身体をしている。日よけのフードと腰に下げている大きな刀。それに負けない筋肉の浮かんだ太い腕と足。何よりもその身を囲んでいる、歪な気配が男達がまともな人間でないことを示していた。 そう、男達はこの辺りを荒らしまわっている盗賊だ。 「ガキんちょだぜ」 「んで、砂漠のど真ん中にガキがいるんだよ」 「おおかた、商隊からはぐれたじゃねえか?」 「なるほど。迷子ちゃんってわけか」 「迷子ちゃん…って割には汚ねえぞ。捨てられた奴隷ってのがしっくりくるな」 「言えてる」 「ははははっ」 男達は口々に言いながら、がたがたと震えているジョーノを囲んでいった。 「しっかし、汚ねえな。服だってぼろぼろだぜ?」 確かに男の言うとおり、ジョーノの服はぼろ布同然と言っても過言でない。しかも手入れをしたことのない髪はザンバラで前髪は重く顔を覆っている。 どこからどう見ても貧相な子供に、男たちはバカにしたように笑いあった。 「ま、汚いっていっても、こいつ珍しい色してるよな」 「お頭好みの色っすよね」 「垢を落とせば見られるかもしれねえな」 ジョーノを小バカにしながらも、男達はジョーノを値踏みすることを忘れない。ただの子供でも、売ればいくらかの金になるし、その手の趣向を持つ人に売ればもっと値はつりあがる。 小綺麗な顔を持っていれば尚いいし、なんなら売らずに族たちの慰み者にすればいいことだ。 そういえば、つい先日お頭のお気に入りが使い物にならなくなったことを思い出した男の一人が、ジョーノをもっとよく見ようと、前髪を掴んで無理やり立ち上がらせる。 「ィッタァっ!!」 髪を引き上げられる痛みに声を上げるジョーノ。あまりにもの痛さに止まった涙が再び溢れてきた。 「ふ〜〜〜〜ん」 「へ〜〜〜っ」 「こりゃ、拾いもんかも」 前髪を上げ、その下から出てきた顔に男たちの唇がいやらしく吊り上る。 ただの汚いガキだと思っていたが、こうして間近で観察すると、予想外にいい。 赤く染まる頬は柔らかく、小さな唇はふっくらとしている。 何よりも、大きく見開かれた瞳は蜂蜜色というよりも黄金色に近いかもしれなくて、涙で濡れて潤んで艶やかだ。 まだまだ、子供ながらも整った顔立ちに男達はヒュゥッと口を鳴らした。 「見た目は汚いが、磨けばいいぜ。こいつ。まじ、使えるかもな」 「はぁ、たく、てめえも趣味が悪いな」 と、悪態をつきつつ、男も確実にジョーノに欲情している。 「…まてよ。お頭が一番先だろう?先におれっちが手を付けてたら後が怖いぜ」 「だな」 「…でもよぉ」 どうしてだろうか。 怯えているジョーノが男達の性欲を煽って仕方が無い。ただ分けのわからない不安に泣いているだけのに、それが男の欲望を鷲掴みにするのだ。 「たまには…いいんじゃねえ?」 「お頭の口に入る前に、毒見ってことでよ」 「いっつも、お頭のお下がりか、娼婦ばっかで飽きてたんだよな」 男達の濁った視線が怯えているジョーノに注がれていく。 股間はいきり立っていて、服を押し上げている。収まりきらない欲望に、男達が沸きあがってくる涎を飲み込んだ。 「毒見か。上手いこと言うな」 「だろ、もしかしたらお頭の好みじゃないかもしれねえ。そしたら、うんと怒られるからな」 「ま、孔なら別のところもあるし、処女だけ残しといたら大丈夫じゃねーの。それに、俺達に見つけられなかったら、ここで干からびて死んでたはずだしよ」 「命の恩人に恩返しもしなきゃならねーしな」 「そりゃいい。それでいこうぜ」 「決まりだな」 犯ると決まれば話は早い。 男達は一斉にジョーノとの距離を詰めていき、手を伸ばしていく。 「ひっっぃぁっ」 男の一人が、べろりと分厚い舌を出した。 別の男が、怯えて固まるジョーノの服を引き裂く。 髪を掴んでいた男がジョーノの両手を頭上に捻り上げ、身体ごと持ち上げていき、剥き出しの脚が地面から離れていった。 「やぁあっ!!」 ジョーノは逃れようと必死に身体をよじる。しかし、貧弱な力が大人の力に勝てるわけも無く、無残にもジョーノの服と言えない服がただのぼろ布と化していった。 「なっぁ、やだめてっ……ご、ごめんなさいっ……ゆるしてくださいっ…ゆるしてくださぁ…いっ…」 一気に丸裸にされてしまったジョーノが泣きながら叫んだ。 ジョーノの頭の中はこれから起こるであろう、暴行への恐怖で一杯になっている。こうして身体を拘束されて何回ラーラに殴られてきたことか。 失敗や粗相のお仕置きとして、何度も何度も繰り返された虐待への恐怖にジョーノは泣きながら許しを乞う。しかし、男達はそんなことはお構いなくジョーノの肢体を舐めるように隅々まで見入っていく。 「おい…」 「まじ、やべえぜ」 「そっちの趣味はねえけどよ、いける」 男の視線に曝されるジョーノの裸に男達は一瞬で魅入られてしまった。 貧相に見えた身体は実は華奢なだけで、均等の取れたバランスを持っている。まだ膨らまないなだらかな胸にある小さな乳首はピンク色につんと尖り、蕾のようだ。 絞まった腹にはアクセサリーのように臍の穴があり、少し膨らんだ下肢にぴったりと口を閉じた縦の筋がある。 それはまさに、何者にも汚されていない証だ。 正真正銘の初物に、男に理性なんて簡単にぶち切れた。 「お頭にやるものもったいね〜な〜」 砂漠の容赦のない日差しを受けていたのに関らず、肌はシルクのように白く滑らかだ。男はその感触を味わうように、傷一つない肌を撫で回していった。 「ゆるし、て、くださ…いっ」 ぱさぱさと髪が鳴る。 肌を這い回るごつごつした掌がいつ牙を剥くか、その怖さに蜂蜜色の瞳から涙がぽろぽろと零れ落ちて止まらない。 泣き濡れる顔には幼さが残っているものの、華奢な身体はまさに少女そのもので、幼女でもなく大人の中間地点にある綻ぶ寸前の蕾のような身体は、絶妙なラインを保っていた。 そして、まだ未開の身体からは仄かに甘い香りがしてくるようで、男達を急速に酔わせていく。 それはまるで虫を引き寄せ食す食虫植物のようだった。 もちろんそんなことジョーノが分かるわけもなく、ただ自分に迫ってくる恐怖に震えている。 「そんなに泣くなって。別におめえを食うわけじゃねえんだからよ。って、ま、喰うことは変わんねえかっ!ガハハハ!!」 「安心しな。残さずに喰ってやるからよ!」 「食うのはお嬢ちゃんのほうだがな。俺達のちんぽとせーえき、全部残さずに食わせてやるぜ」 ガタガタと見て分かるほど震えているジョーノを口々にからかい、 「うわっ、たまんねー。俺、我慢できねえかも」 一人の男が我慢しきれなくなったのだろう、乱雑な手つきでいきり立ったペニスを引き出して、見せ付けるように扱いた。 「、、っぃぁ!?」 その初めて見るものは大よそ人間の一部とは思えないような代物で、凶悪な肉塊にジョーノは目を閉じることも出来なかった。 「……っ!?」 「どうだ。立派だろう。俺様の自慢の息子だぜ。これでたっぷりと気持ちよくさせてやるからよ」 ジョーノの戸惑う視線に男の鼻息が荒くなる。血走った男の目と淫悪な形相にジョーノが暴れだした。 「やめてっはなしてぇ、ぃやだぁあ」 「へへっ怖がんなって、これからこれが気持ちよ〜〜くしてくれるんだぜ」 本能で危険を察知したジョーノの怯えた顔に流れる涙は、ことさら男達の劣情を煽りたて、これから穢される無垢な少女の悲しい運命に強烈に雄を刺激していく。 「大人しくしてれば、良くしてやっからよ。せいぜい気張って股を広げてな」 「ゃだっ、やだぁっ!」 地面に足が付くか付かないかのすれすれのところへ引き上げられているジョーノは、正しく男達の獲物だ。 素っ裸で身体を捩っても、屈強な男に通じるはずも無く採れたての魚のように跳ねている。 「今から泣いてたら身体がもたないぜ?なんせ、これから俺達を相手に鳴くことになるんだからな」 「子供では味わえない大人の世界につれてってやるぜ」 「っひぅっ!」 脂ぎった顔がジョーノを覗き込んできてくる。 性欲にまみれた卑猥な顔。 だらしなく涎が沸いている分厚い唇。 そして、硬く膨らんでいる赤紫色の肉… 大人の男の欲望を目の当たりにし、ジョーノの頭の中はぐちゃぐちゃだ。 逃げようにも身体を吊り上げられ、浮いた足はむなしく宙を蹴るだけでどうにもならない。何よりも男達はそれさえも楽しんでいるのか、醜くい顔に、これまで受けてきた暴行とは質の違う恐怖がジョーノを追い詰めていった。 ぎゅっと目を閉じても、見えてくる男達の陰惨な気配に、足元から絶望と恐怖に飲み込まれていくようで、ジョーノは無意識の底で、誰かに助けを求めた。 こわい… どうしよう、どうしよう、どうなるの。 こわい 誰も助けてくれる人なんていないのに。 思いつかないのに。 ただ、何かに手を伸ばしてしまった…… こわい コワイ 怖い コ ワ イ 何もない虚無の暗闇へ、小さな手が伸ばされて― 『 タスケテヤロウ 』 ………? 地の底から何かが滲み出てくる。 「…ん?急に大人しくなったぜ??」 今まで暴れていたのが嘘のように、ジョーノの動きが止まった。 「観念したんじゃないっすか」 だらんとぶら下がるジョーノ。 表情は髪に隠れてうかがえないが、涙も止まっているようだ。抵抗をあきらめたのだろうか? 3人の男達はジョーノの豹変振りに首をかしげつつ、お互いの顔を見合わせている。 「所詮はガキってことさ。大人しくなったなら、とっととやっちまいましょうぜ」 静かになったジョーノに、こらえ性の無い男が手を伸ばしていき…… ― その、手が触れる寸前……… 「っ!!」 ジョーノが顔を上げた。 「…っへ!?」 ゆっくりと…… 「ぐぅっ!」 ゆっくりと上がる……… 「ふふふふふふ」 ゆっくりとコマ送りのように現れた顔は、さっきまでとはうって変わって、別人のように淫らだ。 小さく膨らみを持っている唇が赤みを増して、ルージュを引いたように艶やかに笑みを形作り、その奥には柔肉が赤く蠢いている。 そして、泣き止んだ瞳が赤く……そう、赤く色を変えていた。 ナイルに沈む夕日に照らされた黄金のように、赤く、爛々と、淫らに輝きを放っていて、 「お、め、な……に…もん、だっ…」 「くすっ!うふふふっ」 男の手の中で、無邪気にジョーノは真っ赤に濡れた口を開けて、笑った。 「っ!!!!! っ ! 」 その魂を底から冷やすようなジョーノの声を、耳が理解する前に、男達は驚愕の悲鳴を上げることもなく、何も考える間もないまま、 何かに 呑み込まれていった。 ****** やっとここまで出来た……(汗) まだまだ、序の口なのに。 次はマハードさまが出てきます(予告) |