深い闇の中から浮上するように、城之内は目を覚ます。
海馬が薬の量を調整していたのであろうか、長年身体に染み付いた生理的な現象か、空が白み初める前の一番暗闇が深い時間だ。
「俺、なにしてんだ…?」
程よくスプリングのきいたベッド、肌触りの良い肌がけ見慣れない部屋。記憶が落ちるように無くなっているために、一瞬自分の置かれている状況が読み取れない。
「あっ、そう…か…海馬に指名されてたんだっけ。」
広いベッドに横たわって、間接照明に照らされぼんやりと浮かび上がる天井を見つめていると、ようやく昨夜のことを思い出した。
「あの野郎、なんか飲ませたな。」
と、毒づいてみるものの不思議なことに怒りは湧いてこない。それより海馬は諦めてくれただろうか?
「今さら、気取っても仕方ないよな。本当のことだし。」
ふと窓を見ると、空が白みはじめている。配達の時間だと城之内は部屋を出ようとする。
毛足の長い絨毯が敷き詰められた部屋は足音の心配は要らない。ゆっくりとした歩調で城之内は部屋を進む。
(……かいば…)
部屋に合わせた色使いの見るからに豪華そうなソファで横になっている海馬に気がついて、城之内は足を止めた。
(社長さんは寝ている姿も絵になるんだな。)
鍛えられ均等のとれた体躯は男ながら見とれてしまいそうだ。ボタンを緩めて睡眠をとる海馬はドラマに映る俳優のようで、城之内は皮肉交じりに苦笑する。
さすがに疲れているのか寝顔の影が濃い。城之内は落ちかけているブランケットをそっと掛けなおす。
世間は海馬をスーパー高校生や時代の寵児だと褒め称え羨望の眼差しを向けるが、海馬は決して天才でも超人などでもない。徹底した自己管理と惜しまない努力の上に今の地位を築きあげたのだ。
(努力を努力と思わないところが天才なのかもな…)
金と欲望に流されるがままに生きてきた城之内とは正反対の、スポットライトの当たる表舞台に立つ海馬。
「もう、おれになんか関わるんじゃないぞ。」
城之内の口から自然に紡がれる言葉。
海馬に惹かれ求めれば求めるほどに募る、漠然とした不安はなんだろうか。
長い月日を人間社会の底辺であがき続けてきた城之内は、愛情や友情といった人とのつながりに餓えていた。しかし、人間の裏の顔と欲望を目の当たりにして人とのつながりに恐怖心を抱くようになっていたのだ。
(今は笑顔を向けている遊戯たちも、きっと俺の本当の姿を知れば離れていってしまうだろう…)
かつては友と呼んだものが引きつった笑顔をして城之内から離れていったことがフラッシュバックのように蘇り、遊戯たちに重なっていった。
手にしていたものを失くす喪失感は二度と味わいたくはない。
最高の笑顔と人懐っこさを壁にして、遊戯たちと一線を引く。今だけ楽しく振舞って過去にも未来のも踏み込ませはしない。
なにも持たなければ失うことはないから…
何もいらない
きっと、今ならまだ引き返せる。
なにも、無かったころに戻ることができるはずだ。
おれも、あいつも。
だから、もうおれにはかかわるな。
城之内は思いを振り切るように部屋を後にした。
カチャリと小さな音をたてて扉が閉まるのを見計らったかのように、海馬は身体を起こす。
「ばかものが。」
乱れた前髪をかき上げると、時計を見る。
「薬の量はちょうどだったらしいな。」
部屋の中は徐々に白み始めて、夜明けを告げている。しだいに輪郭を濃くする世界を感じながら海馬もまた自分に言い聞かせるように言った。
「俺は諦めない。必ずそこから救ってやる。だからお前も諦めるんじゃない。」
寝不足気味の頭を覚まそうと海馬はコーヒーを入れるべくしてたち上がった。
いつものように新聞配達をして、いつものように登校する。教室にはいつもの友と呼ぶ者がいて城之内を迎えてくれる。
「城之内君、風邪は治った?」
後ろのドアから城之内と本田が教室に入ってくるのに気付いた遊戯がいつものように駆け寄ってきた。
「おうっ、昨日はありがとな。もう大丈夫だ。心配かけちまって悪かったな。」
いつものような笑顔で城之内も応える。
「な、行った通りだろ?遊戯。お前ぇは心配性なんだよ。」
本田が城之内に気付かれないように遊戯にウインクをした。
「…そうだね。本田君もおはよう。」
遊戯も合わせるように微笑むと、
「城之内君、昨日も言ったけど英語のテスト大丈夫?僕はこっちが心配だよ。」
「おわぁっ!!やべえよ。俺、昨夜も爆睡したから全っ然っやってねえよ。範囲はどこだっけ?」
城之内はあわてて教科書をめくる。
「ほら〜せっかく教えてあげたのに。まぁ城之内君がやってくるなんて思ってないけどね。」
遊戯はここからここまでだと、鉛筆で印を付けながらさりげなく城之内に昨夜のことを聞いてみる。
「ねえ、あれから家で寝ていたの?」
「…ぁたりまえだろ?朝は配達のバイトしたけどな。それまでは爆睡さ。」
城之内は視線を上げずに答えた。机に単語を書き写しているのか、こつこつとシャーペンのシンと机がぶつかる音がしている。
「!だめだよ!城之内君。カンニングしちゃ!」
「堅いことゆうなよ〜遊戯〜」
せっかく書いた単語が消しゴムで消されようとしていて、あわてて手を押さえた。
「仕方が無いなぁ…」
騒いでいるとちょうどチャイムが鳴って担任がやってきた。がたがたと席につく他の生徒に混じって遊戯も自分の席へと向かう。
朝のHRが始まり、担任は出欠を取り始める。城之内は相変わらず机とにらめっこだ。すると、遊戯の隣にもう一人の遊戯が現れた。
「どう?」
「だめだったよ。」
首を横に振るもう一人の遊戯。誰にも聞こえない二人だけの会話。
もう一人の遊戯も城之内の様子を眺めている。こうやっていると普通の高校生にしか見えなくて、私生活とのギャップの大きさに改めて城之内の抱えている重荷を痛感させられていた。
「さっき手が触れ合った一瞬に、もう一度城之内くんの心の部屋に入ろうとしたんだけど、拒絶する壁が高くて手も足もでなかった…」
己の無力さに悔しそうに唇を噛むもう一人の遊戯。
陽気に振舞って心安く付き合う城之内。しかし、決して誰も私生活の部分には触れさせなかった。
「仕方が無いね。城之内君の頑固な所はいつものことだもの。気にすることないよ。」
この状況を予測していたのか遊戯は落ち着いている。
「城之内くんが駄目なら、海馬君から攻めてみようか。」
二人の遊戯は顔を見合わせた。遊戯は空席に目をやりながら、城之内と共にいた海馬の穏やかな顔を思い出してた。
海馬くんは何を知っているんだろうね。
一筋なわでは行かないだろうなあ。
午前中の授業も終わり、昼休みの屋上でいつものようにお昼を食べていると本田が聞いてきた。
「なあ、城之内。テストできたか?」
「俺に聞くなよ。」
コンビニで調達してきたおにぎりを取り出しながら、全く出来なかったと伝える。
「だよな〜城之内が出来る訳ねえよな……あれっ、お前パンじゃねえのか?」
城之内の手にある三角のおにぎりを見て変わったこともあるのだと覗き込んだ。
「へへっ、たまはな……やらねえぞ。」
「ばーか、てめえになんか、たかんねえよっと、玉子焼きも〜らいっ。」
本田が遊戯の弁当箱の中から、昨日のお返しとばかりに厚焼き玉子を横取りした。
「本田君!ひどいやっ」
「おおっ、やっぱ遊戯んちの玉子焼きはうめえな。」
美味しそうに玉子焼きを頬張る本田。これ以上取られる物かと弁当箱にあわてて蓋をする遊戯。周りには杏子もバクラもいて楽しそうに笑っている。
どこにでもあるごく普通の高校生の姿だろう。
城之内はおにぎりを一口かじると、どこか遠くに感じる光景を眺めている。
俺がここにいなくても、こいつらはこのままなんだろうな。
もし、俺がいなくなったらこいつらは少しは悲しんでくれるかな。
口の中に広がるしゃけの塩辛い味が城之内を現実に引き止めているようだ。城之内は近い将来ここにいることはないだろうと予感めいたものを感じていた。
もうちょっと『高校生活』ってやつを楽しみたかったな。
城之内は雲間から見え隠れする太陽を眩しそうに見上げた。
「失礼します。」
コンコンと扉をノックした磯野が社長室に入ってきた。
「なんだ。」
海馬は書類から目を離すことなく応えると、
「受付に武藤遊戯さまが瀬人さまに会わせろと来ているのですが、どうされますか?」
普通ならアポも無く海馬に取り次ぐことなどしない磯野だったが、海馬が一目も二目も置いている遊戯が海馬に会いに来たのだからよほどのことだろうと、追い返すことはしなかったのだ。
(…遊戯が…か。さすがに城之内のこととなると行動が早いようだな…)
おそらく昨夜のことを探るために来たのであろう。
(まあいい。お互い腹の探りあいになりそうだな。)
遊戯がどこまで城之内のことを知りえているのか、海馬も興味がある。
「よかろう、通せ。」
磯野は軽く会釈すると、社長室を後にした。
海馬は読みかけの書類をまとめながら遊戯を待つ。
程なくして、磯野に案内された遊戯が社長室に入ってくる。
海馬は磯野に外に出るように指示をした。これで、部屋には海馬と遊戯の2人だけとなった。
学校が終了して、そのままカイバコーポレーションに来たのだろう遊戯が学生服のままだ。この部屋に入ったときから遊戯は海馬から視線を外さない。磯野が出て行ったのを扉が閉まる音で確認すると、ゆっくりとした足取りで海馬のいるほうへ近づく。
「…………」
デスクを挟んで対峙する二人。
表に出てきているのはもう一人の遊戯だ。柄にも無く緊張しているのか表情が強ばっている。
挨拶の言葉も無く社長室には重い空気が漂う。海馬は余裕があるように、デスクにひじを突いている。
「何の用だ?手短に願おうか?」
沈黙を破ったのは海馬だった。
「単刀直入に言おう……城之内君のことだ。」
もう一人の遊戯が感情を押し殺した低い声で海馬に伝える。
「凡骨がどうしたというのだ?俺よりも貴様の方が詳しいだろう?」
「知らばっくれるな!」
バンッ!
遊戯がデスクを叩く。
デュエルのときとは違う冷静さを欠いたもう一人の遊戯の言動に海馬は目を細めた。
(よほど、城之内のことを気に入っているようだな。)
「フッ…知らんもんは知らん。第一、凡骨なぞ相手にして何の得になるのだ?」
「ふざけるな!俺は見たんだ。昨夜海馬と城之内君が一緒にいるところを。関係ないとは言わせないぜ!」
大きな瞳で海馬を睨み付けるもう一人の遊戯。
「あれは、たまたま会っただけだ。貴様には関係ない。」
「たまたまであるはずないなんかない!」
もう一人の遊戯は城之内の心の部屋に入れなかったことが悔しいのだろう、海馬に八つ当たりするように問い詰める。
「ならば直接凡骨に聞けばいいではないか?」
「……!……」
感情を荒げるもう一人の遊戯とは対照的に冷静な態度を崩さない海馬。図星を付かれたもう一人の遊戯は言葉に詰まった。
「……それが出来るならここになんか来るわけ無い。」
「ほう…」
もう一人の遊戯の手が硬く握り締められて震えていた。城之内に問いかけられない己の不甲斐なさを十分に感じているようだ。無意識の首から提げている千年パズルをいじる。
「城之内くんの心にこれ以上負担は掛けられない…」
(心?負担?)
遊戯の独り言のような小さな声を海馬は聞き逃さない。
「フッ…いつものオカルトグッズか。」
「何だとっ」
馬鹿にされたような言い方に、もう一人の遊戯に怒りが湧いてくる。
「そのオカルトグッズに何をされたか覚えていないのか?もう1度心を砕いてやろうか?」
「やれるものならばやってみるがいい。以前のように俺の心は弱くはないぞ。」
海馬もまたもう一人の遊戯を睨む。
両者の間にピンと張り詰めた空気が流れる。このまま、デュエルに突入しそうな勢いだ。
「ちょっとまってよ。」
千年パズルがキラッと煌めいた一瞬に表に表れたいつもの遊戯が二人を静止する。
「!!」
余りにも鮮やかな人格の交代に海馬さえ息を呑んだ。
「もうっ、もう一人のぼく、僕たちはケンカしにきたんじゃないんだよ。」
(すまない。)
「いつもの君らしくないよ。」
(……。)
傍目からは独り言を言っているようにしか見えないが、おそらくもう一つの人格と会話をしているのだろう。海馬には見ることは出来ないが、きっと遊戯の隣にはシュンと肩を落としているもう一つの人格がいるはずだ。
「ごめんね。海馬君。」
宙から海馬に視線を移した遊戯がにっこりと謝罪する。
「………。」
いつもの害のなさそうな微笑みに、さすがの海馬さえ毒気が抜かれそうだ。
「もう一人の僕は言葉が足らなかったね。僕から説明するよ。」
(こちらの人格の方が役者は上らしい。)
友人と接するような柔らかな物腰の遊戯からは敵意を感じないが、その目は決して笑っていない。海馬は表情を変えないまま遊戯の真意を探っている。
「海馬君は知っているだろうけど、城之内君は昨日学校を無断で休んだんだよ。それでね僕たちは城之内君の家に行ったんだ。そこで僕たちは城之内君の深くて暗い心の闇を見たんだ。」
「心の闇だと?抽象的な表現だな。」
遊戯は首を振ると説明を加える。
「抽象的なんかじゃないよ。海馬君は城之内君の家を見たことある?僕たちは見たよ。ゴミが溢れかえっていて普通の生活をしているとは思えない。父子家庭と言うことを差し引いてもあれは尋常じゃなかった。」
遊戯は城之内の部屋を思い返している。
窓を閉め切り日の射さない、アルコールと腐臭のただよう家。
殺風景な城之内の部屋。
何の意図があったのか枕の下にしまさわていた色あせた1枚の写真。
そして、もう一人の遊戯の涙。
あの止めることの出来ない涙は、城之内の涙だともう一人の僕は言った。
もう一人の遊戯が見た、城之内の心の扉。
錆付いて重い鉄の扉の向こうには本当の城之内がいるはずだ。しかし頑丈な扉とはうらはらに城之内の心はいつ壊れてしまってもおかしくないくらい、もろくてはかない。
「海馬君には判ってもらえると思うけど、僕は城之内君の荒れた生活の一端を、もう一人の僕は城之内君の心の闇を目撃したんだ。」
(なるほど、形は違えどもそれなりの事実を握っているようだ。)
「そして夜に街で城之内君を見かけて、悪いことだと思ったけどね心配でたまらなかったから後を付けさせてもらったんだ。そこで海馬くんと一緒にいるのを見ちゃって気になったからここに来たんだよ。」
「それで何か聞きたい?」
パズルの力で城之内の心に踏み込んでいる遊戯たちは、海馬とは別の形で城之内の普段は見せない部分を掴んでいるようだ。問題は城之内の仕事まで知っているかどうかなのだが。
「城之内君はここ数日様子がおかしかったんだ。普段の城之内君は理由も無く人を殴ったりなんかしないよ。」
遊戯が核心に迫る。
「屋上に続く階段で海馬君は城之内君のそばにいた。手すりが邪魔をして何をしていたのか見えなかったけどね。そして昨夜は城之内君と待ち合わせをしているようだったよね。僕たちは海馬君と城之内君は仲が悪いと思っていたよ。一体いつの間にご飯を一緒に食べるくらい仲良くなったんだい?」
どうやら遊戯は城之内と海馬の仲を気にしているようだ。海馬は仕事のことまでは掴んでいない様子にほっと胸をなでおろした。
「俺と城之内がか。ならば今夜ここに来るがいい。俺が説明するより貴様の目で直接確かめればいいだろう。」
海馬は引き出しから名刺を取り出すと、裏に何かを書き込んで遊戯に渡す。
名刺を手にして遊戯は書かれていることを見て首を傾げる。
「なに……?」
「今夜7時にそこに来い。貴様の求める答えが見つかるかもしれない。」
「本当?」
不審気に名刺と海馬を交互に見る。
「ああ、俺は嘘はつかん。そこで待っている。」
海馬から求めていた答えを引き出せたのか、遊戯はにっこりと微笑んだ。
「今夜ね…必ず行くよ。」
仕事の邪魔をして悪かったと付け足して遊戯は帰ろうとした時
「遊戯、名刺には俺の携帯番号がある、何かあればいつでもかけてくるといい。」
「有難う海馬くん。是非そうするよ。」
遊戯は手を振って扉を閉めた。
名刺を手に最上階から地上に降りるエレベーターの中で遊戯は面白そうに笑っている。隣にはもう一人の遊戯もいた。
「来て良かったな。」
壁にもたれて腕を組んでいるもう一人の遊戯。
「そうだね。本当はもうちょっと違う答えを引き出したかったけど、収穫は十分みたいだね。協力有難う。もう一人の僕。」
言葉尻にハートマークが付きそうなくらい、遊戯は上機嫌だ。早速携帯を取り出して海馬の番号を登録し始めた。
「相棒を敵に回さなくて良かったぜ。」
「そう?」
「あぁ、相棒の役者ぶりには完敗だよ。」
海馬に誘導されているように見せかけて情報を引き出す遊戯の手腕に、もう一人の遊戯は遊戯を敵には回したくないと心底そう思った。
「表の人格の遊戯か…害のなさそうな面をしてなかなかの策士だな。」
海馬は椅子に深くもたれ掛かると、大きく息を吐く。
「掌の上で踊っているのは俺たちかも知れん。」
遊戯の底の見えない思慮に海馬もまたもう一人の遊戯と同じ事を感じている。
「まあいい。多少予定は狂うが、こちらとてただで情報をやるわけにはいかない。利用価値はありそうだ。」
海馬は足元にある重そうな銀色のケースを机の上に乗せると、中にある物を取り出した。
遊戯たちがカイバコーポレーションを後にする頃、城之内はいつものマンションの一室にいる。
城之内はシフト表に記載されている内容を見て驚きを隠せない。
「チーフ、マジでおかしいだろ?こんな馬鹿げた指名を受けたなんて専務に知られたら、チーフだってただじゃすまないよ。」
指名したのはVIP。
指定の場所はドミノ高校の体育館。
時間は19:00。
カードを必ず持参すること。
こんな馬鹿げた指名を入れるのは海馬しかいない。そもそも、”売れっ子”の城之内に同じ人物からの指名が連続して入ることはない。多くの客をこなす為には、どんな力を持つ名士であろうと城之内を独占することは出来ないのだ。
そんな城之内を独占する海馬。一時は大金が入っても長期的には倶楽部のためにはならない行為に城之内は不安を感じている。
「いいのよ。気にしなくても。第一、かっちゃんには客を選別する権利は無いんだから、大人しく言うとおりにしなさい。」
チーフは城之内の肩に手を置くと更に続ける。
「かっちゃんにとって悪い指名ではないでしょ?たまには楽して稼いでくるといいわ。専務には上手く言っておくから、心配はいらないのよ。」
城之内が海馬に抱かれていないことに、チーフは気付いているのかいないのか、にこやかな表情からは真意は見えない。
「でもっ……」
渋る城之内の背中を押すと、有無を言わせないままに送り出す。
「いってらっしゃい。」
ひらひらと手を振るチーフに何を言っても無駄なのだと、城之内はため息をついて指定の場所に向かうことにした。
遊戯の名刺にはこう書かれている。
ドミノ高校体育館。
カードを持参。
と。
海馬が何を意図しているのか、城之内にも遊戯にもわからない。
ドミノ町の夜がやってくる。
ごぶさたでした。やっとUP出来そうです。何やらやっているうちに時間だけが過ぎちゃいました。こんなに時間がかかったのは初めてです。う〜ん相変わらずおばかな貴腐人です。
待たせた挙句にこの内容かよ〜と言われそうですが、これです(えっへん)
期待に添えていなかったらどうしよう。
貴腐人的には王様より表ちゃんか上手のはず。海馬やバクラくんより厄介な奴のような気がしてなりませんことよ。海馬は何をしたいのでしょうかねぇ。
次で複線は大体引き終えるので、ラストに向けて拾っていきますね。
傷跡で一番の難所を抜けました。えっ?と思われる方もいるとは思いますが、本当です。これでスピードが上がるかなあ?(ドキドキ)早く、城之内を楽にしてやりたいです。
他人事のように思っています。
背景はこちらからお借りしました。