傷跡.20



       
 約束の時刻が来ても城之内の来る気配がなかった。
 「どうして、こない…」
 海馬は携帯を取り出すと、城之内を拘束するクラブの番号を押した。
 『………どうかされましたか?…』
 海馬の暗い声にチーフが問いかける。
 「城之内から何か連絡はないか。」
 『連絡…ですか…』
 電話の先の相手は明らかに戸惑っている様子だった。今までに”無断欠勤”などしたことの無いであろう、城之内が指定の時間を過ぎるなど初めてのことだったからだ。
 『申し訳ございません。こちらでも連絡をとってみますので…』
 「やつは携帯を持っているのか?」
 仕事先でも居場所を掴んでいないことに、海馬の不安は増すばかりだ。普段の行いが悪いとはいえ城之内に何かあったことに間違いはないだろう。
 向こうからの返事は予想通りで、城之内は携帯電話を持っていなかった。おそらく自宅に電話をしても繋がるかどうかさえ怪しい。はやる気持を抑えて何かわかれば、連絡をするようとと告げ海馬は電話を切る。そして、すぐ磯野を呼び出すと城之内を探すように指示を出した。
 「どこにいる!」
 城之内の過去を調べておきながら、海馬は普段の城之内とどう連絡をとるかを考えていなかった自分の愚かさに、携帯を握り締めた。
 だんっ
 携帯を握る手で雨に打たれるガラスを力任せに叩いた。強化ガラスのそれは割れることなく衝撃を吸収する。磨かれたガラスの先には雨に煙るドミノ町がある。この光のうちのどれかに城之内が照らされていることを願い、海馬は藁にすがるような思いで遊戯の携帯の番号を探した。もしかしたら一緒にいるのかもしれない。
 しかし、聞こえてくるのは空しい応答メッセージだった。
 「くそっ!!」
 念のために遊戯の自宅にも電話をしてみると、遊戯もまた帰宅していないようだった。と、いうことは二人は一緒にいるということなのだろうか?むしろそうであって欲しい海馬は携帯を閉じた。
 「なにをしているのだ、城之内…」
 繋がらない遊戯の携帯…仮に二人が一緒にいるとしても、この言いようのない胸に広がる不安はなんなんだ。
 その時、海馬の携帯が鳴る…
 ディスプレイに記される磯野の文字。
 「……どうだ…………」
 『……………………………』
 携帯の向こうから流れてきた磯野の報告に海馬は身体に震えが走った。
 「すぐに車を回せっ!!俺も今から行く!!!」
 椅子に掛けてあった、真っ白いジャケットを羽織ると海馬は部屋を飛び出していった。
 




 「これは?!」
 磯野から報告を受けて、海馬が向かった先はドミノ町にいくつかある公園の一つだ。
 頼りない外灯の元、雨でぬかるんだ地面にあるたくさんの足跡と遊戯のかばんが残されていた。
 重なり乱れた足跡に、ここで何があったのか容易に想像がついた。
 が、この近辺に城之内と遊戯の姿を見つけることは出来なかった。近所の人の話から人の争うような声と車が走り去る音がしたらしく、二人はどこか別の場所に運ばれたのだろう。
 「どんな手段を用いても構わん。城之内と遊戯を探し出せっ!!!!」
 海馬は再び命令を出す。
 磯野は軽く会釈をすると、控えている部下たちに適当な指示を与えていった。磯野の指示の元、黒服をきた者達が夜の闇に散在していった。
 黒服の部下たちが行くのを見届けると、磯野は傘を手に呆然と立ち尽くしている海馬の元へ歩を進めた。
 「瀬人様。お体が濡れてしまいます。お車に参りましょう。」
 「……ああ。」
 磯野促され我に返った海馬はリムジンに戻る。そう、ここにいても始まらないのだ。今の海馬に出来ることは部下たちからの報告を待つことだ。
 後部座席に沈みこむように座ると、海馬は右手をじっと見つめた。掌の中に城之内の体温が残っている。ぐっと掌を握りしめ大粒の雨が降りしきる外に視線を馳せた。
 あの時手を離さなければこんなことにはならならなくてすんだはずだ。
 何故、手を離してしまったのか。
 後悔の思いがぎりぎりと海馬の胸を締め付ける。

 
 ドミノ町の長い夜は始まったばかりだ……




 ぴちょん



 ぴちょん



 ぴちょん



 ぴちょん



 ところどころ破れ、穴の開いた屋根から雨が滴り落ちて埃と泥で汚れているコンクリートにいくつも水たまりを作っていた。灯りのないそこは真っ暗で、曇りガラスの窓からわずかに差し込む街の灯りが周りの物の輪郭を闇の中に浮かび上がらせている。雨音の反響でそこがある程度広い空間を有していることを知ることが出来る。
 公園で蛭谷たちに拉致された城之内と遊戯はドミノ町の一角にある廃工場へと連れ込まれた。役目を終えた様々な機械が工場内に雑然と放置され、異質な空気をかもし出しているようだ。外の雨音も加わり、大きな声を上げても誰にも悟られることはないだろう。
 
 「……ぅ…ん……?」
 堅く冷たい床の感触に遊戯が気が付いた。
 「…………?ここ…は…?…」
 一瞬、見たことの無い景色に遊戯は自分の身に何が起こったのか分からず戸惑った。そして、身体を起こそうとして、手足を縛られていることに気づいた。
 「なに……?あの時…」
 コンクリートの床のひんやりとした温度に遊戯の思考が次第に戻ってきた。
 もう一人の遊戯に導かれて、城之内を公園で見つけたと思えば柄の悪い連中に囲まれた。気が付けばここにいるわけで。
 「そうだっ…城之内君はどこにいるんだ…」
 次第に暗闇に慣れた遊戯は、ざらつくコンクリートに転がされた不自由な体制で周りを見渡し城之内を探した。1メートルほど離れたところに城之内が同じように身体を拘束されて倒れている。
 「よかった。」
 城之内の姿を見つけて一安心した遊戯は、床を這って城之内の傍に近寄った。身体の自由を拘束された体制で移動したために城之内の傍にたどり着いた頃には、遊戯も埃だらけになっていた。
 「じょうのうちくん…」
 遊戯はなんとか身体を起こすと、意識の無い城之内の様子を確かめる。
 裂けた額は血が乾き始めて変色した塊が張り付いている。影が濃く城之内に落ち、悲壮感がひしひしと遊戯に伝わってくるようだ。遊戯の知っている城之内とは別人のような姿がそこにはあった。
 「何があったんだ……城之内君…」
 学校を無断で休んだと思えば、公園で一人雨にうたれていた城之内は、声を掛けなければ闇に溶け込んでしまいそうなほど存在感が薄れていた。
 「ねえ、もう一人の僕………っ!!」
 遊戯はパズルの中にいる遊戯に声を掛けようとして、胸にあるはずのパズルがないことに気が付いた。
 「パズルがないっ!えっ?どこにいったんだ…」
 パズルがなければもう一人の遊戯がこの空間に存在することが出来ない。真っ青になった遊戯は目を凝らして辺りを見渡すが、どこにも落ちていないようだ。
 「どうしよう…」
 「………んっ……っ」
 遊戯の同様が伝わったのか、城之内が目を覚ます。
 「気が付いた。城之内君。」
 「………ゆ・う……ぎ…?」
 焦点の合わない視界に遊戯の心配そうな顔が映る。
 「よかった。目を覚まさないから心配したよ。」
 「遊戯……くっ…」
 城之内は身を起こそうとするが、遊戯以上に身体を拘束されているために身動きが出来ない。手足をもごもごと動かし、縄を解こうとするが、がちっりと縛った結び目は城之内一人の力では揺るみそうにない。
 「くそっ…ごめんな。遊戯。巻き込んじまって…」
 縄を解くことを諦めた城之内は、ごろんと遊戯のほうに転がって顔を向けた。
 「気にしなくていいんだよ。城之内君。」
 どこにいるのかさえわからない状況に置かれていることにもかかわらず、遊戯の声はいつものように優しい。
 「俺がもっとちゃんとしとけば…」
 いつもの城之内ならば、蛭谷から遊戯を逃がすことぐらい朝飯前のはずだ。しかし、あの状況下で普段の反応が出来るはずもなく、あっけなく蛭谷の手に落ちてしまったのだった。
 遊戯だけは巻き込みたくなかったのに。
 「ごめん。」
 城之内はもう一度あやまった。蛭谷の標的は城之内のはずだ。遊戯は巻き添えをくったに過ぎないのだから遊戯だけはここから出なければならない。
 城之内の琥珀色の瞳が揺らぐ。
 「あやまらないでよ。ね?とにかく、この状況をどうにかしないと。」
 本当は城之内に聞きたいことがたくさんあるのだが、今はここを出ることが先決だ。遊戯はあたりをもう一度見渡した。暗闇に慣れてきたおかげで周りの様子が伺える。割れたガラスの隙間から差し込む街の灯りに輪郭を浮かび上がらせている機械と、古くなったオイルと鉄錆の臭い。以前城之内が蛭谷に拉致された廃工場に似ている。
 「たく、あいつらのやることは変わんねえな。進歩がねえ。」
 城之内は呆れたように言うところから、蛭谷たちがたまり場にしていた場所の一つなのだろうか。
 「遊戯、後ろを向いて手を俺のほうによこせ。」
 「うん。」
 城之内の意図を読み取った遊戯は、背を向けると城之内の口元に手をもっていった。城之内は遊戯の縛られている縄を解こうと懸命に歯を立てる。
 「……っく」
 いくつも結び目を作っている縄は簡単に解けない。しかし、この縄を解かないことには逃げることも敵わない。緩む気配のない縄苛立ちながらも、城之内は縄に喰らい付く。



 「お目覚めか?」
 バチン。という音とともに、工場内に灯りが灯った。数個の生き残っている電球が屋内を照らす。
 「っ!」
 灯りの下に現れたのは、先ほど公園にいた蛭谷たちだ。みな一応ににやけたいやらしい笑いを浮かべている。
 「良い格好だな。城之内。」
 タバコを咥えた蛭谷が近づいてくる。
 「おかげさまでな。」
 中学のときから縁の切れないやつらだ。新顔もいるがほとんど見知った奴らに、城之内にも余裕がある。
 タバコをふかして、蛭谷はゆっくり近寄ると真上から城之内を見下ろす。
 「聞いたぜ。お前は面白い”仕事”してんだってな?」
 「はぁ?……!!!」
 仕事だと?
 いつに蛭谷の耳に入った?城之内は目を見開いた。蛭谷はにやりと唇を歪ませしゃがむと、驚いている城之内に顔を覗き込んだ。
 「水臭いじゃねえか。俺とお前の仲だろ?飢えてんならちゃんと言えよ。俺たちが相手になってやったのによ〜。」
 城之内の隠してきた仕事を知った蛭谷は、城之内の顎を掴むとヤニくさい息と一緒にタバコの煙を吹きかける。
 ひひひ…と周りの男たちも欲望を隠さない笑い声が上がる。
 「俺は高いんだぜ?」
 城之内は蛭谷を睨み付け、唾を吐きかけた。
 「お前の財布じゃ、俺に手を触れることもできやしねえ。せいぜいお話をしてもらうことくらいさ。」
 挑発をこめてにやりと笑う。
 「んだと、この淫乱野郎っ!調子に乗んな!!」
 城之内に唾を飛ばされてカッとなった蛭谷が、城之内の腹を蹴りあげた。つま先が容赦なく腹にめり込む。
 「ぐっ…ふっ…」
 つま先からの衝撃に胃液が競りあがってきた。
 「じょうのうちくん!!」
 身体を折り曲げて転がる城之内に遊戯の声が上がる。
 「てめえは、立場をわかってんのか?」
 蛭谷は金色の髪を掴み城之内の上体を起こすと、タバコを裂けた額に押し付ける。
 「やめろぉぉ。」
 遊戯の絶叫が工場に響く。
 固まりかけた血にタバコの火がじゅっと音を立てる。あたりには生臭い臭いが立ち込めた。
 「………」
 顔色をなくし震える遊戯とは対照的に城之内は冷静だった。タバコの温度に反応することもなく、蛭谷から目を離すことなくにらみつけていた。
 「こいつっ」
 怯まない琥珀の瞳に蛭谷が拳を握りしめたとき、それを静止する男が現れた。
 「やめとけよ、あんま傷をつけるとお楽しみが減るぜ。」
 蛭谷の連れを割って姿を現した、もう一人の男が近寄ってきた。蛭谷とファミレスにいたチンピラ風の男だ。
 「久しぶりだな。合いたかったんだぜ?城・之・内。」
 城之内の顔を確認するように腰を屈める、その男の首からは千年パズルが下がっていた。じゃらっとにぶい音をたてて揺れる千年パズル。
 なんでこいつがパズルをっ!!
 「ゆうぎっ!」
 城之内は反射的に遊戯を見る。顔色をなくしている遊戯の胸元には金色に輝いているはずのパズルがない。
 城之内と視線のあった遊戯は声もなく首を振った。
 (なんてこった…)
 目の前で揺れている千年パズル、手を伸ばせは届くところにあるのに後ろでに縛られているために、触れることすら出来なかった。
 「あんときは世話になったな。」
 チンピラ風の男は城之内のことを知っているようだが、肝心の城之内には心当たりがない。
 「あぁ、あんときはお前は普通じゃなかったから、俺のことは知らねぇか…だが、これは覚えてるだろ?」
 男はポケットの中からフリスクのケースを取り出すと、中から黄色い錠剤を掌の上に転がした。
 「それは…」
 忘れもしない毒々しい黄色い小さな粒………1度運んだことのあるドラッグだ。
 チンピラ風の男は面白そうに錠剤を掌の上で転がした。
 「あん時のお前が忘れなれなくてよ。探してたんだぜ?まさか蛭谷のダチだったなんてな。世間は狭いもんだ。」
 にひひと蛭谷と笑いあう。二人の…いや、ここにいる者たちのいやらしい視線が城之内に集まっていた。
 「お前とやってから、女相手じゃ勃たなくなっちまったんだぜ?この年でインポなんてどうしてくれるんだ?責任をとってもらわねえと。な。」
 チンピラ風の男が膨らんでいる股間をなでている。
 「俺はてめえに殴られたこの傷の借りを返してもらわねえとな。」
 蛭谷は鼻に貼ってある絆創膏を弄った。
 もう、この男たちの目的は明らかだ。
 「……なにが言いたい?」
 皆、城之内を犯すつもりなのだ。城之内はチラッと遊戯に視線を馳せる。状況の掴めていない遊戯は男たちの話す言葉の意味がまだ分かっていないようだ。
 これからこいつらを相手にするのかと想像すると城之内は泣きそうな気分になるが、反面うまくいけば逃げる隙が出来るかもしれない。
 「とぼけんな。いいんだぜ、相手は他にもいるようだし…な。」
 チンピラ風の男は顎をしゃくると、背後に控えていた子分が遊戯のほうへと足を踏み出す。
 「待てよ!!あいつには関係ないっ。」
 遊戯には屈辱的な行為をさせるわけにはいかない。遊戯が犯されるなんてあってはならないのだ。それならば、遊戯の前で男たちに犯されて醜態を曝すほうが何倍もましだ。
 「俺とやろうぜ……満足させてやるよ。」
 「物分りがいいじゃないか。」
 覚悟を決めた、琥珀色の瞳は城之内が意図しなくても、男たちの欲情を煽るには十分のものがあった。チンピラ風の男は城之内にドラッグを見せる。
 「まずは脱いでもらおうか。ストリップショーの始まりだ。」
 チンピラ風の男は子分の一人に縄を解くように指示を出す。
 「っと、変な気を起こしてもらっちゃ困るからな…おいっ。」
 遊戯の喉元にジャックナイフが当てられた。
 「……っ」
 銀色に光る鋭利な切っ先に、ごくっと遊戯が息を呑む。
 「遊戯!!」
 「保険だよ。お前がおとなしくしてれば、あっちの餓鬼には用はねえからな。」
 城之内の縄が切られた。
 「脱げよ。」
 有無を言わせない命令。遊戯とパズルを人質にとられた城之内には逆らうことは出来ない。自由になった身体をのそりと起こすと、城之内は濡れたシャツに手をかけた。
 「城之内くんっ!!」
 さすがの遊戯にもこれから起こることが理解できたようだ。
 遊戯の静止の声も空しく、城之内はシャツを脱ぎ去り、ジーパンも降ろす。
 「ははっ、色気がねえなぁ。城之内さまよ〜もうちょっと考えて脱げよ〜」
 周りからはどっと笑い声があがった。
 「やめてっ!!」
 城之内は無表情のまま下着と共にジーパンを脱いだ。青白い照明の下に浮かび上がるしなやかな肢体。同じ男のはずなのにその身体からは男を欲情させる色香が漂っているようだった。
 遊戯を初めその場にいる全てのものが息を呑んだ。
 「これでいいか。」
 すべての衣服を脱いだ城之内は顔をあげ、蛭谷たちを睨んだ。
 「まっ、しゃ〜ないか男だしな。これからがお楽しみの本番だ。こいよ。」
 チンピラ風の男が城之内を手招きした。そこには蛭谷を初め数人の男たちが股間を膨らませて待ち構えている。
 中学時代から何度も辛酸をなめてきた、城之内をいとも簡単に落とせるのだ。しかも、男としての最大とも表現できる屈辱を与えることが出来るのだ。蛭谷たちをこれ以上に興奮させる材料はない。
 「だめだっ、城之内君っ。いっちゃだめだよっ!!!」
 遊戯の静止も城之内には届かない。城之内は導かれるまま、男たちの待つところへ一歩一歩と歩き出した。
 「遊戯はそこで待ってろ。俺があっちの遊戯をつれてくるから。」
 城之内は振り返ることなく、遊戯に言葉をかける。必ず、パズルを取り返してくると言っているのだった。
 「いらないよ!城之内君っ無茶なまねはやめてよ!!もう一人の僕だってそんなこと望んでないよっ!!」
 待ってろよ、遊戯。必ずパズルを取り戻すからな。
 城之内は固い決意を持って、男たちの輪の中に入っていく。
 「じょうのうちくんっ!!じょうのうちくんっ!!!」
 だめだよ。行っちゃだめだ!!城之内君が壊れてしまうよっ!!!いやだあっ!!!もう一人の僕!!城之内くんを助けてよ!!!
 千年パズルが無ければ何も出来ない無力さに、遊戯の目から涙があふれて来た。あらん限りの声をあげ、心の中ではもう一人の遊戯に助けを求める。工場内に遊戯の絶叫が空しく響く。
 




 城之内は無言のまま男たちの前に立つ。
 「舌をだせ。飲ませてやるから。」
 チンピラ風の男は城之内にドラッグを見せる。
 一度体感した悪魔の薬。これを口にすれば最後、遊戯の前で醜態を曝すことは明らかだ。その結果遊戯が城之内の元から去っていくだろうと城之内はぼんやりと考える。
 まっ、いいか。俺には遊戯の友達でいる資格はないし…
 何故だろうか、今頃父親の言葉が思いだされる。
 『てめえなんかうまれてこなければよかったんだ』
 そうだ、俺にはもともと生きる資格なんてないし。でも、遊戯は違う。必ずここから助けてやる。
 城之内の口から赤く濡れた舌が出る。
 蛭谷がごくりと唾を飲み込む。こんな城之内を想像したことがなかった。
 「いい心がけだ。お望み通り飲ませてやるよ。」
 チンピラ風の男が掌の中に黄色いつぶを落とす。数にして5粒。
 城之内はその数を見て鳥肌がたった。以前に飲まされた1粒で思い出したくもないくらい痴態を示した。今、手の中にあるのは5粒。この5粒がどれほどの効果を表すのか考えたくもない。
 こっちに戻ってこれるかなぁ…
 城之内はぼんやりと考える。
 「やめろぉ!!城之内君、飲んじゃだめだ!!」
 遊戯が大きな声で止める。正体は分からなくても、黄色い錠剤がロクでもないものであることは明白だ。
 「だめだよ、飲んじゃいけない!!」
 遊戯の静止の空しく、城之内の赤い舌の上に黄色い粒が乗せられた。
 「ゆうぎ…おまえはそこでまってろ……よ。」
 「だめぇぇぇっ!!」
 城之内はごくりとドラッグを嚥下する。
 遊戯の絶叫が終わらないうちに、城之内の身体から力が抜け、くにゃっとチンピラ風の男にしなだれかかる。
 「じょうのうちくんっ!」
 チンピラ風の男は満足そうに金色の髪をなでると、ゆっくりと城之内をコンクリートの床の上に横たえた。
 床に寝かされた城之内が男たちの間から見える。
 ゆうぎ…おれのことなら……きに…すんな…
 城之内がゆっくりと遊戯のほうへ顔を向け、いつもと変わらない笑顔を見せた。大丈夫だよと。
 遊戯のよく知っている、城之内の微笑み。一体これまでの城之内はどれだけのことを、隠して明るくふるまっていたのだろう。
 「やめろっ!!城之内君にさわるな!!」
 涙で歪む視界の中、城之内は男たちの生贄となる。












 とりあえず、ここまでUPです。うっ……予想以上の長さに、続きは持ち越しです。おかしいなぁ20で終わるはずだったのに・・・・・こうなれば心残りの無いように書いてやる。
 相変わらず海馬は能無しだし……遊戯はさけんでばっかだし…城之内はいじめがいがあるなあ。
 はい、つぎの21は文句無くエロシーンです。ただの輪姦でしょう。淡々とねちねちと城之内をやっちゃいましょう。
 背景はこちらでお借りしました。