なんとなく










 デュエルと出合って数ヶ月。
 多分まぐれと、幸運で大会で賞金を手に入れた。と、言っても別段何か変わったわけじゃない。賞金は静香の治療費に変わり(………溜まってた家賃とか光熱費とかちょっとは使わせてもらったけど。)すっからかんだ。

 でもって、デュエリストの端くれに名前を連ねただけで、俺も何にも変わらなかったと思う。

 新聞配達と、喰いぶちを稼ぐためのバイトは相変わらずやってっし、街を歩いたら昔の因縁の奴と鉢合わせになるのはしょっちゅうさ。



 現に今だって、チンピラさんが5人くらいいるんだぜ。
 なんかダチがどうとか、弟が世話になったとか適当なこと言ってるし。だいたい何人を殴ってきたなんて覚えてないさ。
 俺が頭が悪いの知ってんだろ?
 ま、適当にあしらってトンヅラしよう。ケンカしたら、ゆーぎが嫌な顔するんだからさ。




 俺ってチョー友達思いだぜ。





 ………なんて、楽勝だと油断してたら、あいつら特殊警棒やらスタンガンやら凶器を隠し持ってやがった。
 くそっ、ざけんじゃねえ。






 てっ!!!!





 後ろからガツンとやられて、脇腹に電流が走った。
 身構える前に膝の力が抜けてきて、やばいってマジで思ったとき、親父と同じタバコのにおいがして、



「オレ様の島で何やってんだ?」
 親父みたいなドスの効いたダミ声が頭上から降ってきた。大っ嫌いな親父を連想させるそいつに、何故か身体の力が抜けてそいつに支えられてしまった。




「「「「「すっ!!!スンマセンッ!!!」」」」」
 そいつの凄みのある一声で、チンピラ達は震え上がり、退散していった。
 全く……情け無い奴らだぜ。それにやられた俺もそーとー情けないけど……。

 とにかく、窮地は脱したようだ。
 内心ほっとしつつ、まだ痺れでがくがくと笑っている膝に力を入れて、何とか立ち上がろうとした。
 でも、やっぱ駄目でそいつに支えられないと立っていられない。


「  仕方ねぇな。」
 そいつはちょっとの間、何か思案するとめんどくさげにオレを肩に担ぎ上げる。ふわっとした浮遊感がして、ケツがむずむずしたけど逃げる気にはならなかった。


 そいつからするタバコの匂いがそうさせたんだと思う。




「………きー………ス…?」
 極彩色のネオンが暗くて顔はあんまわかんなかったけど、オレを窮地から助けてくれたのはそいつだった。









*****









 キースに連れてこられたのは、場末のスナックの2階だ。雀荘やぼったくりバー。カラオケスナックとはいいがたいサービスもしているいかがわしい店が軒を連ねている横丁の一軒。
 耳を澄まさなくても下品な笑い声と、へたくそなオヤジの歌が聞こえてきて気分が悪くなる。
 オレがチンピラに絡まれたところからそう離れていなくて、キースの縄張りってのも頷けた。



 部屋に下ろされるころには、足の痺れも取れてきて擦り切れた畳の上に腰をおろす。


「…………。」
 担がれてた時もそうだけど、こいつと話すことなんてなくて、会話が見つからない。キースも同じなのか、何も話しかけてこなかった。
 思い沈黙が流れる中、キースが立ち上がると、ぶら下がっているタオルを取った。で、そのまま流しのあるほうへ行く。
 置いてきぼりになった俺は仕方ないから、狭い部屋をぐるっと見渡した。


 6畳の和室が二間と申し訳なさそうに付いている台所。オレの家よりも1部屋少ないかな。ま、汚さも俺ん家のほうが上だな。それを差し引いてもこの部屋もそーとー汚れてる。
 鴨居にはギラギラしたドレスが針金ハンガーに下げられてるし、コタツの上はもちろん流しにも汚れた皿やコップ、飲みかけのペットボトルが山積みになっている。
 畳の上には脱ぎ散らかした下着や洋服が散乱してて、どれが綺麗なのなんて判別できないありさまだ。
 家のそうだけど、部屋中にほこりとタバコのヤニに匂いが漂ってて、なんとなく黄色みを帯びてる。それに、安物の香水の匂いがプラスされてて、場末のスナックにふさわしい部屋だ。
 キースもオレにもお似合いの場所な気がする。

 あちこちに見え隠れする女の影は違うけどな。


 なんて、ぼんやいと考えていたら濡れたタオルを持ったキースがしゃがんだ。

「……っと?」
「じっとしてろ切れてるから。」
 キースはごつごつと骨ばった手で、オレの髪をかき上げてタオルをおでこに押し付けてきた。
 その冷たさにヒヤッとなったけど、すぐにその冷たさが気持ちよくなった。じんじんとしてた所から熱が抜けていって、怪我をしてたんだとようやく気が付いた。

 ずっと殺伐とした中で生活してたから、小さな怪我なんて日常茶飯事のことだったし、ちょっと血が出たくらいでかまう必要なんてない。これくらい珍しいことじゃないんだ。


「バンソーコっつー気の利いたもんはないから、止まるまで、押さえとけ。」
「わりぃ……。」
「たく、ガキがこんな時間にうろついてるんじゃねえんだ。ガキはガキらしく、家でゲームでもしとけ。」
 ちっと舌打ちをして、タオルをオレに押し付けるとキースが頭を小突いてきた。
「仕方ねえだろっ。バイトの帰りなんだからよ。」
 言い方も力加減も、オヤジそっくりでムッとしてくる。ふてくされたおれはぷいっと横を向いた。
「   あれ?」
 そしたら、壁際に置かれたカラーボックスの上に置かれている、デュエルディスクに気が付いた。もちろんカードも一緒に束になってて、綺麗に磨がかれているディスクとカードが部屋の雰囲気にあってなくて、滑稽な感じがする。
「………デュエル……やってんのか?」


 ペガサスの城で、死ぬほどの屈辱の酷いめにあって、それでもまだデュエルを捨てていないキース。いい大人なのに変なの。
 オレのこと子供扱いしたのに、キースのほうが子供みたいだぜ。
「ま……な…。」
 痛いところをつかれたみたいで、キースは無精ひげの生えた顎を弄っている。
「デュエルで喰っていけるのはほんの一部の人間だ。どんなデュエリストだってたいていは別のことしてる。特にオレみたいなたちの悪いのはどうしようもねえ。」
「……。」
 オレは無言で頷いた。
 デュエルで喰えないのは同感だ。どんなに楽しくても、それだけじゃ腹は膨れない。遊戯や海馬は別格なんだ。
「でも、なんでかな。捨てられねえ。
 死にモノぐるいで丘に流れて、こんな汚いところにたどり着いて、客引きや、やましいことしてても、デュエルだけはやめられねえんだ。
 ああ、てめえに言っても仕方ないけどよ。」
「ううん。わかるぜ。その気持ち。」
 オレだってデュエリストの端くれだ。キースの気持ちは痛いほどよく分かる。
 負けて悔しいのも、思いのままに行かないのも。そして、勝ったときの満足感も。
 なんでか、キースに興味が湧いてくる。今までは嫌な汚い大嫌いな大人だったのに。変だな。
「ちっ。ガキのくせして大人ぶりやがって。デュエルと同じで生意気だな。」
 キースは苦笑いして、冷蔵庫から冷えたペットボトルを放り投げる。
「そのガキに負けたのはどこのどいつだよ。けけけ。」
 嫌味ったらしく笑って見せた。多分、キースは怒らないだろう。

 なんとなく、そう思ったんだ。


「なぁ、こんなとこでなにやってんの?」
 部屋に漂う倦怠感に、大体の想像は付いたけど、やっぱ、キースの口から聞いてみたい。
 純粋な好奇心だと思う。
 この部屋と、手入れされたディスクがあまりにも不釣合いで、壁に開いた穴を覗いてみたい心境だ。
 穴から覗く世界はオレと同じだろうか。
 プライドが泥にまみれて、すすけて、なんとなく時間を食いつぶしているのかな。そうだったらいいな。
 冷たいペットボトルのキャップを捻りキースの返事を待つ。


「別にたいしたことはしてない。
 小金を持ってそうな客を捕まえ、達の悪い客と話し合いをして、チンピラを追い出すってとこか。後は男に飢えたバーさんとやる。ババアだって女だからな、ほっときゃ、客に手を出そうとするからな………おっと、ガキには大人の世界は早かったな。」

「ば……っ、馬鹿にすんなっ!おれだって、それくらい別に、、、なんとも無いさ。」
 後半の生々しいところに思わず中身を拭き出しそうになるのを飲み込んで、座りなおす。と、余計に部屋に掛かってる女物のものに目がいって赤面してるのが分かる。
 隣の部屋にしきっぱなしになってる、せんべい布団とかゴミ箱のティッシュの山とか、全部がセックスに繋がって、反射的に唾を飲み込んでしまった。ゴクッて必要以上にでかい音がして、キースがけけけって笑い返しやがった。

「そりゃ、大人な発言だね。」
「うるさいっ!」
「オレ様はこう見えても役に立ってんだぜ?
 客を引き込んで、やっかいごとを片付けて、しかもババアとSEXだ。外人並みだからババアも喜んでぜ。けけけ。」
 真っ赤になって固まっているオレを小馬鹿にしてるキース。冷蔵庫の上に置いてあったタバコを咥えて、火をつけた。
「それって、ヒモなだけじゃん。」
 大人の余裕のキースに張り合う。オレだってそれなりに修羅場はくぐってきてるんだ。女は、まだ、ナイけど……。
「ご名答!!ババアを喜ばせて変わりに、この部屋に居候してるオレはまさにヒモって奴さ。」
 キースは煙を深く肺に収め、ふうーーーっうって、吐き出す。天井に煙が消えていく。
「それでも、オレ様の居場所はここなのさ。汚くてどぶ板みたいなところでも、住んでみると意外と快適なんだな。
 たまに客と、賭けデュエルも出来るし。住めば都ってやつだ。」
「ふ……ん。」
 なんか、聞いちゃいけないことを聞いたような気がして、バツが悪くなってきた。どうしよう、も、帰ろうかな。配達もあるから帰らないとまずいだろう。
「じゃ、オレ、帰るわ…その助けてくれて…ぁっ!?」
 そそくさと帰ろうとしたら、大きな手が肩を抑えてきた。その力の強さにぎょっとして、顔を上げられない。
「せっかくだから、もう少しゆっくりしてけ。」
 咥えタバコのキースが、隣に座る。それだけで、すっげえドキドキしてきた。
 もう、自分の耳から心臓の音が聞こえてきそうだ。その低音のリズムに被さるように、下からおばさん達の甲高い声とおっさんの下品な笑い声が異常に耳について頭がぐしゃぐしゃになってくる。
 キースの言ったことを必要以上に意識してしまって、ここで女とキースがやっちゃってて、それは下にいるおばさんで、あのティッシュとか、薄い布団とか、もしかしたらこの濡れたタオルもって、全部がヤバすぎる妄想がいっぺんに膨らんでくる。ついでに別のところも膨らんできて、マジでヤバイ。

「…あっ、おれ、帰る。明日もあるし…。悪かったな助けてもらって。」
 あそこが完全な勃起状態にならないうちに退散しようとしたら、キースが腕を掴んできたんだ。

「!?」
「おまえ、ドーテーだろ?」
「はあああっ!???」
 いきなり何を言うんだこのおっさんは!!
 あまりにも突然のことに、すっとんきょうな声が出て、口を閉じれないままパクパクとさせてしまった。
「だから、ドーテーかって聞いてんだよ。たってんぞ。」
「っ!!!!!」
 隠していたつもりの、股の小山を指差されてとっさに手で隠す。
 たく、どこ見てんだよ。おっさん。
 恥ずかしさにキースを睨み付けて誤魔化そうとしたけど、反対に俺を値踏みするようなキースに何も言えなくなってしまった。
「これっぽっちのことで、おったててるなんて、ガキの証拠だな。けけっ。」
 はぁ……完全に形勢逆転だ。


「お前の場合、ドーテーっていうより、女とも付き合ったことないだろ?」


 ――図星です。


「ドーテーの純なガキにゃ、ここはきついよな。なんせ大人の世界だからよ。ま、運が悪かったってとこで、早いこと忘れちまいな。」
「……ぐっ…。」
 また、でかい手で頭を叩かれた。

 でっかい、大人の手。
 オレよりもずっと大きくて自由で、何でも捕まえられる、大人の………。


「童貞で悪かったな。だけど、そんなこと大人の世界とは関係ないっ!」
「はぁ?」
「オレん家は、この部屋よりもずっと汚くて、くさくて、親父は寝てばっかだし、電気だって水道だってガスもよく止められるし、女の人はいないけど、ずっとずっとここよりも汚い大人の世界なんだっ!!」

 あれっ。
 オレ、何言ってんだ。こんなのキースに言ってもしょうがないのに。

「ここのほうがなんぼでもましだぜっ!!天国みたいなもんだっ!!」

 なに、バカみたいにムキになってんだ。誰にも、遊戯にも本田にも誰にも言うつもりなんてないのに。なんで、なんで、こんなおっさんに当たんなきゃなんないんだ。

「かえるっ!!」
 自己嫌悪に陥っていりそうだ。しばらく浮上できなさそうだ。変に思われたままでいいから、ここから逃げないと。
 じゃないと、もっと変なこと言ってしまいそうで怖い。


「すまん。わり。からかいすぎた。」
 キースは座りなおすと、困ったように頭を掻いた。きっと軽くからかったつもりだったのに、オレの反応に困惑してるんだ。ふうっと大きくタバコを吸い込んで、残りのタバコをビールの空き缶に捨てた。
「お前も、苦労してんだな。まじ、悪かった。」
「……えっ…あっ、そのこんなの言うつもりじゃなかったから、その、えっと…。」
 混乱している俺もしどろもどろになりながら、下を向く。顔なんて上げられるか。

「じゃ、わびにお前に女の扱い方を教えてやる。」
「はぁあっ??」
「オレが、変なこと言ったから、お前を泣かしちまったからな。オレさまの秘伝を伝授してこの先困らないようにしてらるぜ。」
「いらねえよ。ってか、泣いてねえし。第一、キースにそんなの教えてもらうつもりはねえよっ!!」
 激しく頭を振って否定しつつ、後ろへずり下がる。なんとなく嫌な予感がしてならない。でも、スイッチが入ったようなキースはオレが下がる分だけにじり寄ってきて、気がついたら布団のところまで追い込まれていた。
「………良い心がけだ。」
「ちがうっ!!」
 くそっぉ。いいように扱われてるだけじゃんか。
「オレ、んな趣味ないぜ。」
「オレ様も同じだ。どんなに困ってても男の相手をしたことないさ。」
「じゃ、やんなよ。」
 キースの理解不能な理論に、必死に抵抗する。
「ま、気にすんな。どうにかなるからよ。」
「そんなの関係ないだろ?」
「オレに任せろ。」

 いや、まて、気にすんなとか理論的に間違ってるからっ!!!
 徐々に大きくなっていくキースに、もう半笑いでごまかしながら逃げようとするけど、大きな手で掴まれて……
「ちょっ…マジでへんだっ……っ…!」
 キスされた。
 
 ぎゅむっと閉じた唇をぬめって舐められて、気持ち悪くて逃げようとしたら舌が入ってきた。
「んんんっ!!」
 ばかっっ!!!口の中舐めんなよっ!!
 口の中一杯の舌にいいようにされてる。オレも男だからプライドにかけて抵抗しようとするけど、力が入らなくなってくる。


 親父と同じタバコの匂い。こつごつした手。でっかい体。酒だって強そうだしきっと浴びるほど飲むんだろうし、ケンカだって負けないだろ。
 キースの全部が親父に繋がっていって、でも、それは似て非なるもので、親父はオレにこんなことしないし、こんなふうにとなりで話してなんかくれない。
 親父はオレのことなんて……っ!!


 その続きを考えそうになって、オレは考えるのを止めた。だって、それ以上考えたら泣きそうだったから。


「んっ…ふぅっ…」
 そんな間でも、キースはキスに没頭してて夢中にオレに吸い付いてる。唾液もオレのとで混ざってて口の中がタバコの味で一杯だ。
 息継ぎの間から漏れる声が鼻にかかってて、気持ち悪い。
「どうだ。上手いだろう。」
 やっと唇を開放してくれたキースは満足そうに俺を見てる。サングラスをしてないキースをマジかで見るなんて思っても見なかったぜ。
「……上手くない。」
 おっさんにキスされて、上手いも上手くないもわかるかよ。
 意地をはって思いっきり口を尖らせる。
「へへえ。ま、いっか。こっちのが、正直に答えてるしよ。」
「ま、、、、まてっ!!!どこ触ってんだ!!!!も、いいよ。キースのテクはわかったから。」
 エスカレートしてくるキースに、オレは身をよじって逃げる。でも反対にがっしりと捕まえられて、また、キスされた。
「んっううううっ!」
 くそっ。
 上手いとか下手とかなんて、わかんないんっだって!!
 軟体動物みたいに自在に形を変える、舌技に身体が熱くなってくる。性欲だらけの高校生なんだ、たとえ相手がキースでも反応しちまうじゃないかっ!!
「ふぅぁっ、、、っ!」
 身体をぎゅっと抱き込まれ、久しくなかった他人の体温に思わず両腕を背中に回してしまってた。キースの汗臭い匂いがどこか懐かしく感じて。


 もう、親父のこととか考えるのは止めよう。

 奥に引っ込んでた舌で、キースのを舐めてみる。へぇ…他人の舌ってこんなんなんだ。
 もっと触ってみたくて、キースのを突いたら、きゅぽんって音を立てて唇が離れた。
「………ぁ。」
 うっすらと目を開けたら、興奮してるキースがいた。
「キスはこんなもんだ。次は実地で、セックスを教えてやるぜ。」
 くんって、後ろに押されてそのまんま布団に倒された。ここでキースもせっくすしてんだよな。
 下のスナックが近くなって、薄い布団を通じてじかにおばさんの声が聞こえてくる。これじゃ、おばさんと同じじゃないか。
 にやっと勝手に口が歪んで、めいいっぱい強がって笑って見せた。

 こんなの、平気さ。ってな。


「おれ、男だぜ。」
「ま、なんとかなるだろ。お前となら出来そうだ。」
「わけわかんね〜。」
「お前もいずれは女を抱くんだ。そのときのために女の気持ちを覚えとけばいい。」
「はははっ。ウケる。」

 キースとせっくすすることなんて、別に何でもないことさ。ただ気持ちよくなって終わりなんだからよ。

「オレ様は外人並みだからよ。いい気分にさせてやるさ。」
「そのまんまじゃねえか。」

 
 干したことのない湿った布団から、キースの匂いと香水の匂いが混じってて、なんだか胸が痛くなる………ような気がする。
 でも、そんなのオレには関係ないんだ。
 親父がどうとか、おばさんがとかオレには関係ない。

 ただ、ここで擬似せっくすをするだけさ。
 馬鹿なりに楽しめばいいんだから。



 そう、自分に言い聞かせてオレはだんだんと近づいてくるキースに、腕をまわして、
「気持ちよくなかったら、ぶん殴るぜ。」
 強がって、なのに、大きな手で抱きしめられて、















 泣きそうになった。












 おしまい。
 







すっげ〜たのしかった!!
キース城之内祭り!!