ぼくはホイッピング・ボーイです。王子の学友で、王子が勉強を怠けたり、度の過ぎたいたずらをしたりして笞刑を受けなくてはならない時、身代わりとしてムチで打たれる役目です。家庭教師といえども臣下なので王子の体にむちを当てるのは恐れ多いということでぼくがムチで打たれているわけです。ぼくはいつも緑色の服を着ています。丈は短く、やっとお尻が隠れる程度です。腰に太いベルトを締めています。やはり緑色のハイソックスをはいています。ストッキングははかずに太ももは剥き出しです。
「さあ、王子さま、昨日勉強したドイツ語の単語の復習をしてみましょ う。２０問出しますぞ。間違ったり、できなかったりした単語の数だけムチを差し上げますぞ。」
家庭教師の先生が言った。ぼくは心の中で祈りました。
「王子様、どうか満点をお取りください。」

先生が黒板に英単語を書きます。それをぼく達がドイツ語の単語になおして回答用紙に書きます。ぼくは満点の自信があります。王子の間違えた分のムチを受けるだけでなく、自分が間違えた分もムチで打たれるのです。だから、必死で予習復習をするのです。
王子が解答用紙を提出しました。先生が丸つけをします。紙の上を走る先生の赤ペンをぼくは食い入るように見つめます。赤ペンの動きで丸かバツかわかります。王子の解答用紙にバツがつくたびに自分のお尻にムチがピシリと打ち当たるような気がします。
「王子様、ちょいと不勉強ですな。半分しかできてませんでしたぞ。バツだった１０問分、痛いムチを差し上げなくてはなりませんな。」
先生は樺の枝のムチを手に持ちました。ぼくは立ち上がって椅子の背のつかまりお尻をぎゅんと突き出します。ぼくがこういう姿勢をとると、短い緑の服の裾は自然に上にあがり、緑のショートパンツがもろに見えます。このショートパンツはムチ打ち用に都合よくできていて極端に短く、尻たむらが半分以上露出してしまいます。

先生は樺の木の枝のムチをゆっくり塩水の入った壷に浸し、引き上げて布でよく水気をぬぐいました。そして、ムチを振り上げました。
「ひとーつ」ピシーリッ、ムチがお尻にとびます。「うっ」と小さくうめいてしまいます。「ふたーつ」ピシーリ「みーっつ」ピシーリ。ムチとムチの間にはかなり長い間隔があります。ひとつ打たれてその痛みを味わいながら次のムチの痛さを予想して怯えて待っている時間が一番いやです。「よーっつ」ピシリッ「いつーつ」ピシリ。お尻が燃えるように熱く感じます。残りの５回はムチを受ける姿勢を変えます。机の上にかがみ込んでムチ打たれます。両手両膝で体を支え、しかも肩を低くしてお尻を高く上げます。もちろん、お尻を王子の方に向けるというような無礼はしません。顔を王子の方に向けています。

その時王子は、
「ぼくのためにすまないね。」
と、目に涙を溜めて優しい言葉をかけてくださった。お尻に食い込むムチの痛さには涙ひとつこぼさずに歯を食いしばって耐えたのに、王子のこの優しい言葉を聞いて急に涙のダムが壊れたようになり、机の上にぽたぽたと熱い涙をたらしてしまいました。この王子のためなら、たかが１０や２０のムチ打ちなんてなんでもない、という気持ちになってきました。この気持ちはお尻を堂々と高く突き上げるという行動となって表れました。

「さあ、先生、用意ができました。どうぞ残りのムチをおあてください。」
と、言わずもがなのことまで言いました。
先生は、「わかっておるわい。」といわんばかりに、「むーっつ」と数えるのと同時に、高々と突き出されたぼくのお尻にピシリッと、樺の木の枝のムチを振り下ろしました。ピリッと、熱いものがお尻に走りました。
「ななーつ、やーっつ、ここーのつ、とうっ」ピシーリ…ピシッ…ビシッ…ビシーッ。
１０のムチ打ちが終わりました。ぼくは机から降りて少しお尻をさすりました。ちょっと身構えて椅子に静かに坐りました。「ズキッ」案の定、坐る瞬間に痛みました。
次は数学の勉強です。 （完）